腹心の友5
★九州の石炭王のお見合いのあと
蓮子は突然山梨の花の家にいってみたいと
いいだしました。
蓮子が人生の大きな曲りかと
にいることをまだ知らない花でした。
「あのお方はどこのお嬢様ずら」
武が列車にいた。
そしてじっと見ていた。
花は気が付いた。
「蓮様、あっちむいたらだめですよ。
変なのがいるから」
「変なの?」
武は、にたっと笑った。
二人が列車から降りて
田舎道を歩いていくと
途中で吉太郎がまっていた。
「兄やん~~~
迎えに来てくれたの?」
「ああ。」
「こちら蓮子さん。」
「ごきげんよう、お兄様の吉太郎さんですね。」
蓮子のあまりの美しさに
言葉を失い。固まる吉太郎。
「お目にかかれてうれしゅうございます。」
★吉太郎は空から天女が舞い降りたのかと
思いました。
家ではりんが布団を運んでいた
「来たよ」
モモが言った。
「帰ったよ~~」と花が勢いよく
帰ってきた。
「女学校の友達の葉山蓮子さん」
「ごきげんよう。
おじい様、お母様、ももちゃん
お目にかかれてうれしゅうございます。」
「こちらこそ・・・・」
家族と木場リンはきちんと座って
挨拶をした。
が・・・目が丸くなっていた。
「いつも花がおせわになっておりやす」とふじ。
「隣のものでございます」とリン。
「よろしく」
「ほんっとのお姫さまけ?」
と・・・もも。
「いつぞやの手紙に会った伯爵さまのお嬢様け?」
ふじが花に聞いた。
「そうだよ。」と花が答える。
一同、伯爵と聞いて、また固まった。
蓮子は、つい
「広いお玄関です事・・」といった。
(お玄関って場所は安東家にあったのか??)
食事は、ふじが作ったホウトウである。
山梨の地方の食べ物である。
「どうぞ・・・」といってふじは蓮子にお椀を
差し出した。
「お口に合わんと思うけど・・」
というが、蓮子は食べ見て、「おいしゅうございます」といった。
「花ちゃんが言った通りお母様のホウトウは日本一で
ございます。」
ももは、「伯爵さまの家ではいっつも飴やクッキーを食べている
のけ?」
と聞く。
「私は飴やクッキーよりもきんつばのほうが好きよ。」
ももはまた、「いいにおいじゃ~~」と蓮子のにおいをかいで
聞いた。
「伯爵さまの家では舶来のシャボンを使っているのけ?」
すると吉太郎が、「もも、そんなにいっぱい聞いたら葉山さまが
食べられんから」という。
「蓮子でいいです。
蓮子と呼んでください。」
吉太郎はまた、固まった。
「兄やんもちっとも食べてない」と花
「腹減ってねーのか」と周造。
「変な兄やん」、ともも。
吉太郎は黙って食べ始めた。
するとももが、「兄やんは兵隊さんになるだよ」、という。
驚く花だった。
「志願するの?」
と聞くが吉太郎は黙っている。
「ほら、蓮子さん、うんと食べなさい。」
そうふじはおかわりを蓮子にした。
「ありがとうございます。」
そこへ、大勢の人が来た。
徳丸親子とその連れである。
徳丸は葉山伯爵の令嬢がこちらに
きているというので、ぜひとも
我が家にきて泊まって欲しいという。
「しかもそんな貧乏くさいほうとうなどだして
失礼だ、一流の料理人に作らせますので
どうぞわが屋敷においでくださいませ。
このようなむさくるしいところではあまりにも
失礼だと思うので」
というが、
蓮子は「わからない方たちね。
私は今夜ココに泊まりたいのです。
みなさんと枕を並べて寝ることを楽しみにして
いるのです。邪魔しないでください。」という。
あっけにとられる徳丸
「では、ごきげんよう。」と蓮子。
「ご・・・ごきげんよう・・・」
蓮子がとりあわずに座ったので
徳丸はひきあげることにした。
「御苦労さんでごわした。」と、りん。
「いい気分じゃね~~」とりんはふじに
いった。
「そうさね~~」と周造もいった。
花は蓮子と笑った。
その夜、吉太郎は花に「女学校を出たら
どうするのだ?」と聞く。
「まだ、決めてない」と花は言う。
「兄やん、そんなに兵隊さんになりたいの?」
「うん、今すぐではないが心は決まっているだ。
そん時が来たらおらはこのうちを出ていく。」
「そう・・」と花は答えた。
蓮子の声がした。
それは与謝野晶子の詩を
読んでいた。
「君、死にたまふことなかれ。
君死にたまふことなかれ
末に生まれし君なれば
親のなさけはまさりしも
親は刃をにぎらせて
人を殺せとをしへしや
人を殺して死ねよとて
二十四までをそだてしや」
・・・・吉太郎はじっと蓮子を見た。
驚いていた。
「これ、差し上げます。
私はもう暗記するほど読んだので。
吉太郎さんが持っていてください。」
詩が載っている本を吉太郎に渡す
蓮子だった。
それを受け取って吉太郎は何を思ったのか、
周造の部屋に行った。
「おじいやん、おらここで寝ていいか?」
その夜は月がきれいだった。
蓮子は、買っていた小鳥を大事に
手のひらにあたためて、
そして逃がした。
ふじは、そのようすをじっとみていた。
花とモモはもう寝ていた。
ふじは囲炉裏の火をくべてあたたかくしようと
した。
そして、蓮子に大きな悩みがあるのではと
いった。
蓮子は、うなずいた。
「お母様にもいえねーようなことか?」
「私の母は早くになくなりました。」
「はぁ・・・」
「芸者だったそうです。」
「蓮子様のお母様だったらさぞかしきれいな人だった
だろうね。」
「私は顔も知りません。
うまれてすぐに父に引き取られて
乳母に育てられました。
一度でいいから会いたかった・・・。
花ちゃんがうらやましいです。
こんなにやさしいお母様がいらして」
「蓮子さんはうちの家族じゃ。
こんなすすけたおかあでよければ
いつでもホウトウを作って待ってるだよ。」
「おかあと読んでもいいですか」
「おかあと呼べし・・・はははは」
蓮子は涙が出た。
ふじは蓮子を抱きしめながらいった。
「大丈夫だ。大丈夫だ。蓮子さん。
いつでもここに帰ってきて・・泣けし。」
蓮子はふじに抱かれて泣きじゃくった。
★蓮子はこのときある大きな決断をして
いたのです
ごきげんよう
さようなら
****************
感動的でした。
吉太郎のあっけにとられた顔。
何も話せないほど蓮子を見て驚いたこと。
吉太郎は与謝野晶子の本をもらって
読むのかな???
字を学ぶのかな??
そして、問題は、蓮子の
お見合いのことである。
蓮子は心に何を思っていたのか
かっていた小鳥を逃がした。
自由になりたいという思いなのか?
だから小鳥も自由にさせてあげようとしたのか?
蓮子の母は芸者で葉山の父の浮気で
できた子だった。
伯爵とは腹違いの兄妹である。
だれにも、相談もできず
つらいことは全部自分の中に押し込んで
生きてきた蓮子に安東家はどう映っただろうか?
そして蓮子の決断とは??
いったい
なに???
★九州の石炭王のお見合いのあと
蓮子は突然山梨の花の家にいってみたいと
いいだしました。
蓮子が人生の大きな曲りかと
にいることをまだ知らない花でした。
「あのお方はどこのお嬢様ずら」
武が列車にいた。
そしてじっと見ていた。
花は気が付いた。
「蓮様、あっちむいたらだめですよ。
変なのがいるから」
「変なの?」
武は、にたっと笑った。
二人が列車から降りて
田舎道を歩いていくと
途中で吉太郎がまっていた。
「兄やん~~~
迎えに来てくれたの?」
「ああ。」
「こちら蓮子さん。」
「ごきげんよう、お兄様の吉太郎さんですね。」
蓮子のあまりの美しさに
言葉を失い。固まる吉太郎。
「お目にかかれてうれしゅうございます。」
★吉太郎は空から天女が舞い降りたのかと
思いました。
家ではりんが布団を運んでいた
「来たよ」
モモが言った。
「帰ったよ~~」と花が勢いよく
帰ってきた。
「女学校の友達の葉山蓮子さん」
「ごきげんよう。
おじい様、お母様、ももちゃん
お目にかかれてうれしゅうございます。」
「こちらこそ・・・・」
家族と木場リンはきちんと座って
挨拶をした。
が・・・目が丸くなっていた。
「いつも花がおせわになっておりやす」とふじ。
「隣のものでございます」とリン。
「よろしく」
「ほんっとのお姫さまけ?」
と・・・もも。
「いつぞやの手紙に会った伯爵さまのお嬢様け?」
ふじが花に聞いた。
「そうだよ。」と花が答える。
一同、伯爵と聞いて、また固まった。
蓮子は、つい
「広いお玄関です事・・」といった。
(お玄関って場所は安東家にあったのか??)
食事は、ふじが作ったホウトウである。
山梨の地方の食べ物である。
「どうぞ・・・」といってふじは蓮子にお椀を
差し出した。
「お口に合わんと思うけど・・」
というが、蓮子は食べ見て、「おいしゅうございます」といった。
「花ちゃんが言った通りお母様のホウトウは日本一で
ございます。」
ももは、「伯爵さまの家ではいっつも飴やクッキーを食べている
のけ?」
と聞く。
「私は飴やクッキーよりもきんつばのほうが好きよ。」
ももはまた、「いいにおいじゃ~~」と蓮子のにおいをかいで
聞いた。
「伯爵さまの家では舶来のシャボンを使っているのけ?」
すると吉太郎が、「もも、そんなにいっぱい聞いたら葉山さまが
食べられんから」という。
「蓮子でいいです。
蓮子と呼んでください。」
吉太郎はまた、固まった。
「兄やんもちっとも食べてない」と花
「腹減ってねーのか」と周造。
「変な兄やん」、ともも。
吉太郎は黙って食べ始めた。
するとももが、「兄やんは兵隊さんになるだよ」、という。
驚く花だった。
「志願するの?」
と聞くが吉太郎は黙っている。
「ほら、蓮子さん、うんと食べなさい。」
そうふじはおかわりを蓮子にした。
「ありがとうございます。」
そこへ、大勢の人が来た。
徳丸親子とその連れである。
徳丸は葉山伯爵の令嬢がこちらに
きているというので、ぜひとも
我が家にきて泊まって欲しいという。
「しかもそんな貧乏くさいほうとうなどだして
失礼だ、一流の料理人に作らせますので
どうぞわが屋敷においでくださいませ。
このようなむさくるしいところではあまりにも
失礼だと思うので」
というが、
蓮子は「わからない方たちね。
私は今夜ココに泊まりたいのです。
みなさんと枕を並べて寝ることを楽しみにして
いるのです。邪魔しないでください。」という。
あっけにとられる徳丸
「では、ごきげんよう。」と蓮子。
「ご・・・ごきげんよう・・・」
蓮子がとりあわずに座ったので
徳丸はひきあげることにした。
「御苦労さんでごわした。」と、りん。
「いい気分じゃね~~」とりんはふじに
いった。
「そうさね~~」と周造もいった。
花は蓮子と笑った。
その夜、吉太郎は花に「女学校を出たら
どうするのだ?」と聞く。
「まだ、決めてない」と花は言う。
「兄やん、そんなに兵隊さんになりたいの?」
「うん、今すぐではないが心は決まっているだ。
そん時が来たらおらはこのうちを出ていく。」
「そう・・」と花は答えた。
蓮子の声がした。
それは与謝野晶子の詩を
読んでいた。
「君、死にたまふことなかれ。
君死にたまふことなかれ
末に生まれし君なれば
親のなさけはまさりしも
親は刃をにぎらせて
人を殺せとをしへしや
人を殺して死ねよとて
二十四までをそだてしや」
・・・・吉太郎はじっと蓮子を見た。
驚いていた。
「これ、差し上げます。
私はもう暗記するほど読んだので。
吉太郎さんが持っていてください。」
詩が載っている本を吉太郎に渡す
蓮子だった。
それを受け取って吉太郎は何を思ったのか、
周造の部屋に行った。
「おじいやん、おらここで寝ていいか?」
その夜は月がきれいだった。
蓮子は、買っていた小鳥を大事に
手のひらにあたためて、
そして逃がした。
ふじは、そのようすをじっとみていた。
花とモモはもう寝ていた。
ふじは囲炉裏の火をくべてあたたかくしようと
した。
そして、蓮子に大きな悩みがあるのではと
いった。
蓮子は、うなずいた。
「お母様にもいえねーようなことか?」
「私の母は早くになくなりました。」
「はぁ・・・」
「芸者だったそうです。」
「蓮子様のお母様だったらさぞかしきれいな人だった
だろうね。」
「私は顔も知りません。
うまれてすぐに父に引き取られて
乳母に育てられました。
一度でいいから会いたかった・・・。
花ちゃんがうらやましいです。
こんなにやさしいお母様がいらして」
「蓮子さんはうちの家族じゃ。
こんなすすけたおかあでよければ
いつでもホウトウを作って待ってるだよ。」
「おかあと読んでもいいですか」
「おかあと呼べし・・・はははは」
蓮子は涙が出た。
ふじは蓮子を抱きしめながらいった。
「大丈夫だ。大丈夫だ。蓮子さん。
いつでもここに帰ってきて・・泣けし。」
蓮子はふじに抱かれて泣きじゃくった。
★蓮子はこのときある大きな決断をして
いたのです
ごきげんよう
さようなら
****************
感動的でした。
吉太郎のあっけにとられた顔。
何も話せないほど蓮子を見て驚いたこと。
吉太郎は与謝野晶子の本をもらって
読むのかな???
字を学ぶのかな??
そして、問題は、蓮子の
お見合いのことである。
蓮子は心に何を思っていたのか
かっていた小鳥を逃がした。
自由になりたいという思いなのか?
だから小鳥も自由にさせてあげようとしたのか?
蓮子の母は芸者で葉山の父の浮気で
できた子だった。
伯爵とは腹違いの兄妹である。
だれにも、相談もできず
つらいことは全部自分の中に押し込んで
生きてきた蓮子に安東家はどう映っただろうか?
そして蓮子の決断とは??
いったい
なに???
