波乱の大文学会5
★ロミオとジュリエットの公演がいよいよ明日
に迫っていました。
お稽古に熱が入っている様子である。
衣装をつけての稽古はまたおもしろそうと
思ったりする。
花は小間使い役の上田が風邪をひき
代役をすることになった。
★というわけで花は脚本家と演出助手と小間使いの
三役を引き受けることになり、目の回るような
忙しさです。
廊下をあるいて上田の部屋に小間使いの
衣装を取りに行く途中で富山先生をみた。
富山はお稽古場を熱心に見ていた。
「おお、ジュリエット私はあのつきに誓う・・・。
そなたへの永遠の愛を・・
ジュリエットしばしの別れだ。」
「ロミオ様それはなりませぬ。満ち欠けを繰り返す
月のごとくあなた様のお心も変わって
しまうではありませんか・・・
ロミオ様、月に誓ってはなりません。」
そのジュリエットの台詞を
富山は小さな声でなぞっていたのだ。
「富山先生・・・」
花は驚いて声をかける。
富山は花を見てびっくりして走って去っていった。
「つぎ、三幕一場面決闘の場面をいきます。」
そこへ蓮子が花のところにやってきた。
台詞で相談があるという。
「”父の決めた人と結婚するなんてできません”のところ
だけど・・私は父の操り人形ではありません・・に変えたら
どうかしら?」
「すごくいいと思います。」
舞台では決闘のシーンが行われていた。
亜矢子は花と蓮子がなかよく話をしているのを見て
演技に集中できない。
「ロミオ、どこをみている!!」と言われて
はっとするが、また花と蓮子が気になる。
これではいけないと、決闘シーンに、力が
はいり、相手役が転ぶほど力が入ってしまった。
そして衣装を破ってしまったのだ。
花は驚いて駆けつけるが、どうしてそうなったか
わからない。
亜矢子は「ごめんなさい・・つい力が入ってしまって・・
本当にごめんなさい」と身のおきどころなく謝る。
茂木先生のもとで衣装をつくろう花だった。
「いよいよ明日ね。お父様はいらっしゃるの?」
と、きかれて花は吉平がまた行商に行って
東京にいないので誰も来ないという。
家族を招待できる
みんながうらやましいと思う気持を話した。
「そう・・・」と相槌を打った。
花は富山先生のことを聞いた。
「富山先生はロミオとジュリエットを演じたことが
あるのでは?」と。小声でつぶやいたのは
確かにジュリエットの台詞だったからだ。
「彼女がここの学生だった頃ジュリエットを演じたことが
あった」と話す。
元気でよく笑う明るいお嬢さんだったと。
なぜ、あんなにも反対したのかと花は聞く。
「何か辛い思い出でもあるのですか?」
「さぁ」、と茂木は答えて「相変わらずお裁縫が下手ね。
私が変わりましょう」といって繕いをやってくれた。
そのころ、葉山伯爵邸では、
夫人が蓮子からの手紙を伯爵に渡して
いた。
ふたりは果たし状のような文面を見て
何事だろうと思った。
「まさか、舞台に立つのでは?」と夫人。
「なに?」と伯爵が聞くと
「あそこの大文学会には華族のおうちの方々も
大勢いらっしゃいますのでまた悪いうわさでも
たったら・・・」と夫人が言った。
伯爵はもう一度文面を見て「明日ではないか」と
と顔色を変えた。
★ついに本番の火を迎えました。
衣装を着けてメークをする間中
蓮子と亜矢子は台詞の確認をしあって
いた。
「・・父上が決めた許婚のパリス公爵と言うお方が
いるではないか」
「それは。。。兄が勝手に決めたことで
兄が考えているのは。。」
「違う!!!」
亜矢子はつい、大声を出した。
「兄なんて台本のどこにも書いてありません。」
蓮子はあがっていると感じた。
様子を見ていた花も心配になってきた。
案の定、外でしばらくじっとしている蓮子がいた、
どきどきしているのか
顔が青ざめていた。
花はそばに行って「蓮子さんも人並みに緊張
するのですね
練習どおりにやればきっと大丈夫ですよ。
私も上がり症なので
足が震えています」と言った。
「そう」、と蓮子。
ふたりは、ため息をついて笑った、
「あの例の復讐の件私でよければ付き合います。
どうせやるなら本気でとことんやりましょうよ
その相手はいらっしゃるのですか」
「招待状は送った」
「よし、まけるもんか
客席から怖い顔でにらんでも
ひるまないで頑張りましょうね」
「どうして付き合ってくれるの」
「それは。。。。
友達だから・・・」
蓮子は、じっと花をみた
校長室には茂木と富山がいた。
「一時はどうなるかと思いましたが
やっとこの日を迎えられましたね。」
茂木が言う
富山は出て行こうとした。
校長はどこへ行くのと聞く。
「私は仕事が残っていますので」
といった。
富山は劇を見ないらしい。
講堂の客席には葉山夫妻がやってきて
椅子に座った。「来たわ。」と蓮子は舞台の陰から
見て言った。
葉山はプログラムを見て驚いた。
ジュリエットが・・・葉山蓮子となっている。
「あなた、どんな役なんですか?」
「主役だ・・・」忌々しそうに言う。
「あの恥さらしが・・・。」
そこへ校長たちがやってきた。
「ここはあいていますか?」
と聞くと葉山は、どうぞといった。
隣に座った校長に葉山は言った。
「この演目は品行方正であるべき
この学校の生徒にふさわしくないですね。」
校長は黙っていた。
英語で葉山は中止にしませんかと聞くが
時はすでに遅く、開始のベルが鳴った。
蓮子は花に言った。
「なぜ、この役を引き受けたかわかりますか?」
という。
花はじっと聞いていた。
蓮子は14齢で兄が決めた人と結婚した。
そして16才で子供を生んだ。
何もわからず結婚、出産をした。
子供は取り上げられた。もともと家の名前を守るだけの
仕組まれた結婚だったから。
そして自分は実家に帰された。
今の自分の中には何もない。
空っぽだと言う。
「生きていてもしょうがないの・・・・。」
「そんな・・・」
「花さんとは住む世界が違うの。
友達に慣れっこないの
これ以上私に近づかないで。」
「いやです。なぜだからわからないけど
ほっとけないです。蓮子さんのこと。
あなたは空っぽではない。。。」
舞台ではパリス公爵がジュリエットに求婚をして
いる台詞が聞こえた・・・
蓮子はじっと花を見て・・そして
蓮子の腕をつかんでいる花の手を
払うように舞台へあがっていった。
★さぁ、幕が開きました・・・
ジュリエットの登場に会場から拍手が沸いた。
「ああ、どうすればいいの・・・
パリス公爵の愛を受け入れることなど
私には到底出来ませんわ・・・。」
舞台の袖からじっと見つめる
花だった。
★ごきげんよう
さようなら・・。
********************
ついにわかりましたね。
蓮子の過去が。
充分ではありませんが、なんと悲しい過去
だったのでしょうか。
花の家は小作農で貧乏で食べることにも
事欠く毎日ではあったけど
蓮子のように家の名前を守るために
好きでもない人と結婚させられて
子どもを産まされて
取り上げられて
実家に帰されて・・・
お金が大事か、愛情が大事かという
比べることのできないものを比べる
事になりました。
また、富山先生も、ロミオとジュリエット
に関する過去を持っているようです。
なぜ、あれほどまでにこの演目を
反対したのかと・・・未だに謎です。
葉山氏がやってきました。
この蓮子の演技をどうみるのでしょうか。
そして復讐とは?
★ロミオとジュリエットの公演がいよいよ明日
に迫っていました。
お稽古に熱が入っている様子である。
衣装をつけての稽古はまたおもしろそうと
思ったりする。
花は小間使い役の上田が風邪をひき
代役をすることになった。
★というわけで花は脚本家と演出助手と小間使いの
三役を引き受けることになり、目の回るような
忙しさです。
廊下をあるいて上田の部屋に小間使いの
衣装を取りに行く途中で富山先生をみた。
富山はお稽古場を熱心に見ていた。
「おお、ジュリエット私はあのつきに誓う・・・。
そなたへの永遠の愛を・・
ジュリエットしばしの別れだ。」
「ロミオ様それはなりませぬ。満ち欠けを繰り返す
月のごとくあなた様のお心も変わって
しまうではありませんか・・・
ロミオ様、月に誓ってはなりません。」
そのジュリエットの台詞を
富山は小さな声でなぞっていたのだ。
「富山先生・・・」
花は驚いて声をかける。
富山は花を見てびっくりして走って去っていった。
「つぎ、三幕一場面決闘の場面をいきます。」
そこへ蓮子が花のところにやってきた。
台詞で相談があるという。
「”父の決めた人と結婚するなんてできません”のところ
だけど・・私は父の操り人形ではありません・・に変えたら
どうかしら?」
「すごくいいと思います。」
舞台では決闘のシーンが行われていた。
亜矢子は花と蓮子がなかよく話をしているのを見て
演技に集中できない。
「ロミオ、どこをみている!!」と言われて
はっとするが、また花と蓮子が気になる。
これではいけないと、決闘シーンに、力が
はいり、相手役が転ぶほど力が入ってしまった。
そして衣装を破ってしまったのだ。
花は驚いて駆けつけるが、どうしてそうなったか
わからない。
亜矢子は「ごめんなさい・・つい力が入ってしまって・・
本当にごめんなさい」と身のおきどころなく謝る。
茂木先生のもとで衣装をつくろう花だった。
「いよいよ明日ね。お父様はいらっしゃるの?」
と、きかれて花は吉平がまた行商に行って
東京にいないので誰も来ないという。
家族を招待できる
みんながうらやましいと思う気持を話した。
「そう・・・」と相槌を打った。
花は富山先生のことを聞いた。
「富山先生はロミオとジュリエットを演じたことが
あるのでは?」と。小声でつぶやいたのは
確かにジュリエットの台詞だったからだ。
「彼女がここの学生だった頃ジュリエットを演じたことが
あった」と話す。
元気でよく笑う明るいお嬢さんだったと。
なぜ、あんなにも反対したのかと花は聞く。
「何か辛い思い出でもあるのですか?」
「さぁ」、と茂木は答えて「相変わらずお裁縫が下手ね。
私が変わりましょう」といって繕いをやってくれた。
そのころ、葉山伯爵邸では、
夫人が蓮子からの手紙を伯爵に渡して
いた。
ふたりは果たし状のような文面を見て
何事だろうと思った。
「まさか、舞台に立つのでは?」と夫人。
「なに?」と伯爵が聞くと
「あそこの大文学会には華族のおうちの方々も
大勢いらっしゃいますのでまた悪いうわさでも
たったら・・・」と夫人が言った。
伯爵はもう一度文面を見て「明日ではないか」と
と顔色を変えた。
★ついに本番の火を迎えました。
衣装を着けてメークをする間中
蓮子と亜矢子は台詞の確認をしあって
いた。
「・・父上が決めた許婚のパリス公爵と言うお方が
いるではないか」
「それは。。。兄が勝手に決めたことで
兄が考えているのは。。」
「違う!!!」
亜矢子はつい、大声を出した。
「兄なんて台本のどこにも書いてありません。」
蓮子はあがっていると感じた。
様子を見ていた花も心配になってきた。
案の定、外でしばらくじっとしている蓮子がいた、
どきどきしているのか
顔が青ざめていた。
花はそばに行って「蓮子さんも人並みに緊張
するのですね
練習どおりにやればきっと大丈夫ですよ。
私も上がり症なので
足が震えています」と言った。
「そう」、と蓮子。
ふたりは、ため息をついて笑った、
「あの例の復讐の件私でよければ付き合います。
どうせやるなら本気でとことんやりましょうよ
その相手はいらっしゃるのですか」
「招待状は送った」
「よし、まけるもんか
客席から怖い顔でにらんでも
ひるまないで頑張りましょうね」
「どうして付き合ってくれるの」
「それは。。。。
友達だから・・・」
蓮子は、じっと花をみた
校長室には茂木と富山がいた。
「一時はどうなるかと思いましたが
やっとこの日を迎えられましたね。」
茂木が言う
富山は出て行こうとした。
校長はどこへ行くのと聞く。
「私は仕事が残っていますので」
といった。
富山は劇を見ないらしい。
講堂の客席には葉山夫妻がやってきて
椅子に座った。「来たわ。」と蓮子は舞台の陰から
見て言った。
葉山はプログラムを見て驚いた。
ジュリエットが・・・葉山蓮子となっている。
「あなた、どんな役なんですか?」
「主役だ・・・」忌々しそうに言う。
「あの恥さらしが・・・。」
そこへ校長たちがやってきた。
「ここはあいていますか?」
と聞くと葉山は、どうぞといった。
隣に座った校長に葉山は言った。
「この演目は品行方正であるべき
この学校の生徒にふさわしくないですね。」
校長は黙っていた。
英語で葉山は中止にしませんかと聞くが
時はすでに遅く、開始のベルが鳴った。
蓮子は花に言った。
「なぜ、この役を引き受けたかわかりますか?」
という。
花はじっと聞いていた。
蓮子は14齢で兄が決めた人と結婚した。
そして16才で子供を生んだ。
何もわからず結婚、出産をした。
子供は取り上げられた。もともと家の名前を守るだけの
仕組まれた結婚だったから。
そして自分は実家に帰された。
今の自分の中には何もない。
空っぽだと言う。
「生きていてもしょうがないの・・・・。」
「そんな・・・」
「花さんとは住む世界が違うの。
友達に慣れっこないの
これ以上私に近づかないで。」
「いやです。なぜだからわからないけど
ほっとけないです。蓮子さんのこと。
あなたは空っぽではない。。。」
舞台ではパリス公爵がジュリエットに求婚をして
いる台詞が聞こえた・・・
蓮子はじっと花を見て・・そして
蓮子の腕をつかんでいる花の手を
払うように舞台へあがっていった。
★さぁ、幕が開きました・・・
ジュリエットの登場に会場から拍手が沸いた。
「ああ、どうすればいいの・・・
パリス公爵の愛を受け入れることなど
私には到底出来ませんわ・・・。」
舞台の袖からじっと見つめる
花だった。
★ごきげんよう
さようなら・・。
********************
ついにわかりましたね。
蓮子の過去が。
充分ではありませんが、なんと悲しい過去
だったのでしょうか。
花の家は小作農で貧乏で食べることにも
事欠く毎日ではあったけど
蓮子のように家の名前を守るために
好きでもない人と結婚させられて
子どもを産まされて
取り上げられて
実家に帰されて・・・
お金が大事か、愛情が大事かという
比べることのできないものを比べる
事になりました。
また、富山先生も、ロミオとジュリエット
に関する過去を持っているようです。
なぜ、あれほどまでにこの演目を
反対したのかと・・・未だに謎です。
葉山氏がやってきました。
この蓮子の演技をどうみるのでしょうか。
そして復讐とは?
