嵐を呼ぶ編入生6

校長室に呼ばれた花。

まさしく、処分の宣言をされる瞬間
葉山蓮子がいきなりはいってきた。

そして・・・

校長に花にお酒を飲ませたのは自分だと言う。
「どうぞ、わたくしを退学にさせてください。」

花は驚いた。

そこにいた富山、茂木もあっけにとられて
事態を見守っている。

校長は「あなたは何を言っているのかわかって
いるのか」と聞く。

「あなたは高速を破った上に何も知らない
級友をまきぞえにしたのです。」

茂木は尋ねた。
「いぜん、あなたに事情を聴いたとき
花さんが勝手に飲んだと言いましたね。

今日、本当のことを言いにきたのは
なぜですか?」

それを富山が通訳すると校長は
答えなさいといった。

蓮子はしばらく黙っていたが
「別に・・・理由なんてございません。」

と、答えた。

「いずれにせよ、私は退学になるのですから
もういいじゃないですか」

「もうがまんできません。
あなたなんなんですか?その態度は。」

と富山がヒステリックにいった。

校長はそれを制して処分を発表すると
いう。

「安東花!」

「はい・・・」

「葉山蓮子!」

「・・・・・・・。」

「二人とも退学処分にしません。」

花は驚いた。

それを蓮子につげた。

花は「ありがとうございます!!」と
校長に深々と頭を下げた。

おどろく二人の先生だった。

富山は納得ができないと言う。

校長に「安東花はともかく葉山蓮子は
退学にすべきです。
彼女が伯爵家令嬢だからですか?」と聞く。

校長は違うと言う。

「では、なぜですか。」

英語のやり取りを葉山は花にきいた。

花は通訳をした。
「蓮子さんを退学にしないのは伯爵令嬢
だからなのかと聞いたら違うとおっしゃっています」
という。

続けて校長がいうことを通訳した。

「神様はどのような罪深い人間でも
悔い改めればお許しくださる。

そして彼女のような生徒を救うのが修和女学校の
使命だからです。

ただし、ここに居たければ条件があります。

集団生活のルールは守れますか?
今日から誰もあなたのことを特別扱いしません。
自分のことはすべて自分ですること。
真摯な気持で勉学に励むこと。
食事はみんなと一緒に食堂で取ること。

これまでの習慣をすべて捨てて新しい
自分に生まれ変わるのです。

信じています。
あなたはきっと変わることが出来る。」

花の通訳は通じたらしく校長も
二人の先生も満足に安心した顔で
蓮子を見ていた。

校長室を出た富山と茂木。
茂木は富山に花の通訳はどうでしたか
と聞く。

「完璧からは程遠いですが
意味はつかめていたのではないでしょうか。」

茂木は「そうですか・・・」といって
笑顔になった。

笑わない富山はさっさと行ってしまった。

茂木はうれしそうに窓の外を見ていた。

一方廊下を先に歩く蓮子を追いかけて
花は蓮子にありがとうと言った。

「私今朝はすっかり諦めていたのです。
学校に残れるなんて夢見たいです。
ありがとう!!」

蓮子は表情も変えずに花を見ていった。

「正直、驚きました。

あなた・・・英語だけはたいしたものね。」

「ああ。。。さっきは夢中だったのです。
校長先生の言葉をきちんとお伝えしなくては
と思って・・。」

「でも、花さん何か勘違いをしているみたいね」
葉山は花を助けようとしたわけでなく
本当に退学になりたかったと言う。

「うちの家族は私を厄介払いしたくて
ここの寄宿舎にいれたのです。
わたくしは、思い通りにさせてたまるかと
つまり復讐をしたかったのです。」

花から笑顔が消えた。

家族に復讐・・・ぶっそうである。
どういう意味だろうと思った。

そして蓮子は去っていった。

「待ってください・・・」

蓮子の後姿を見送る花だった。

寄宿舎の廊下には友人たちがたくさん
待っていた。醍醐亜矢子は花を見て
声をかけた。

花は「ご心配をおかけしました。
また皆さんと一緒に学べることになりました。」

と報告すると歓声があがり、亜矢子は花を抱きしめた。
「よかった」、「本当に良かったわ」

「よく、退学にならずにすんだわね・・」

花は「葉山さんのおかげです。何もかも話して
くれましたから。」

というと亜矢子は表情を曇らせた。

「あの方とあまりかかわらないほうが良いわよ。
彼女は伯爵家のご令嬢で一度嫁いだけどもめごと
を起こして離縁されたのですって。」

花は複雑な顔で聞いた。

校庭の植え込みベンチで富山と茂木が話を
していた。
茂木は葉山のことを多少は、知っているのかもしれない。

「葉山様はこの学校に来るまでにいろいろとあった
らしいです。」

「いろいろ?」

「離婚して自暴自棄になって
毎日芸術家志望の男性たちをはべらせ
遊び歩いていたとか
毎日浴びるようにお酒を飲んでいたとか・・

もう、耳を覆いたくなるようなうわさばかりです。
清らかなうちの校風になじむのは難しいでしょ。」

それを影から蓮子が聞いていた。

夕食の時間になった。
みんな、ぞろぞろと食堂へ向かった。

花は先に言っててと言って
蓮子の部屋に行った。

ドアをノックして、声をかけたが
返事がない。
食堂で待ってますからといった。

「イエスキリストの御名によって
アーメン・・・」

「アーメン・・・・・」とみんなで食事前の
お祈りをした。

「さぁ、いただきましょう」、と茂木が言う。

「いただきます」、と食事を始めた。

花は蓮子が来ていないことを
心配した。

あのとき、私はあなたよりも
八つも年上ですといった。
それがどうしたのですかと花は答えた。

あなたはいつも周りの人に守られて
何も傷ついたことはないでしょ?

蓮子はちょっと怒った顔をして
わたくしは16の時・・・・といって・・・

あれまでの会話だったけどあれから
何を言おうとしていたのかなぁ~~と
花は思ったのだろうか?
考え事をしていたら「花さんどうかなさったの?」
と友人が聞いた。

「いらっしゃらないわね・・・・」と茂木が言った。

花は食事をしていると

ドアが開いた・・・。
蓮子だった。

「珍しい方がいらしたわ・・・」

「一度も食堂にいらっしゃらなかったのに」

「どういう風の吹き回しかしら」

花は立ち上がった。

そして蓮子のそばにいった。
「蓮子さん、私の隣が開いていますからどうぞ」

というが

蓮子は、無視してテーブルの端っこに座った。

茂木が食事を持っていこうとしたら
白鳥が「茂木先生・・わたくしが・・」といって
トレーを受け取った。

花たちはそれをじっとみていた。

白鳥は食事を蓮子の前に置いた。

蓮子は、しばらくだまっていたけど

「ありがとう・・・」といった。

「なんですって?ありがとう?
目上の私に向かってその言葉遣いは
なんですか?
ありがとうございますと言いなおしなさい。」

蓮子は、無視してナプキンを手に取った。

「ちょっとあなた、聞いているのですか
いつもいつも、そのような態度をとって・・」

「白鳥さん・・・」茂木が割って入った。
「お席に戻りましょう。」

そして白鳥は花に言った。
「あなたもあなたですよ。お世話係なんだから
しっかりしてください。」
花は、いつもの白鳥に笑顔で答えた。

「白鳥さん、いただきましょう?」
とまた茂木が助け舟をだした。

「はい・・・・。」

花は蓮子をじっと見ていた。

蓮子はスープを食べている。

★生まれも育ちもまるで違う二人がこの先
生涯の腹心のともになろうとは
まだ神様しかご存知ありませんでした。

★その頃甲府の町では
軍隊が来たのです。

人々は万歳を繰り返している。
日の丸の旗がたくさん振られて歓迎ムードとなって
いた。

その様子を目を丸くしてみていたのは
吉太郎だった。

「て・・・何百人もいるで」
徳丸は、「これですごく景気が良くなる」と喜んだ、

「甲府連帯ばんざーーーい!!!!」
武も喜んだ。

★甲府に軍隊が来たことで人々の運命は
大きく変わっていくのでした。

★ごきげんよう

さようなら・・・

****************

息が詰まるようなお話でした。
結局、退学は免れた花と蓮子。

おとうが一番喜んでいるのではと思います。

しかし、蓮子はこのさき、メイドのいない
生活ができるのでしょうか。
部屋のなかがゴミ屋敷にならなければいいのですが。

自分のことは自分でするということは大事なことです。
なんでもメイドにさせていれば良いなんて
その人の魅力になりません。人間性が磨かれないからです。

で・・・あの千円の小切手・・・すてたのでしょうか?
いいえ、握り締めただけだと思います。

「わたくしは16のとき・・・・」あの言葉はどういう意味でしょうか。

恋人がいたけど好きでもない人と結婚させられた
といいたかったのかな?
それとも、なにか大変なことがあったのでしょうか。

謎です。

とにかく蓮子様はこの学校になじもうと
決意されたと思います。

で、吉太郎は???

軍隊を見る吉太郎の顔つきが
異常に熱心です。

わたしは彼が読み書き計算ができるのなら
たとえ軍隊に入っても大丈夫だと思いますが
できないなら・・ちょっと厳しいと思います。

人間、なんでも教育が基本ですよね。

では良い週末を。