初恋パルピテーション5
「花には黙っていろと口止めされたけど
かよちゃん、年明けたらすぐ
製糸工場の女工になるだ。」と朝市は言う。
驚く花だった。
今年は台風の影響でろくにコメが取れなかった。
それで、かよは、女工の働き口をみつけて
来たという。昔の花みてーだと朝市。
そういえば、家が苦しくて花は奉公の口を
徳丸に世話してもらいに行ったことがあった。
「知らなんだ・・・」
花は座り込んだ。
「おらはずかしい。
みんなの苦労も知らんで
おらのためにみんな無理してごちそう
こさえてくれただな
朝市、穴があったらはいりたい
ここに穴があったら今すぐに入りたい・・・。」
朝市はそんな花を覗き込んで
「もぐらみてーじゃん」という。
「さなぎが蝶になって帰ってきたと
思ったら・・・もぐらみてーじゃん・・・(笑)」
朝市は笑うが、花はこんなことしてらないと
立ち上がった。
やがて、1909年明治42年の
正月を迎えた。
朝の日の出に周造、吉太郎、ふじは祈った。
「あけまして、おめでとうございます。
今年は天候があれねーでお米がうんとこさ
とれますように・・・」
花、かよ、もも・・たちも手を合わせた。
花はかよの祈っている顔を見た。
「おねげーします・・・・・。」と全員でいった。
さて、徳丸の家。
花は徳丸を訪ねてきたのだった。
「なんでー正月早々に・・・」と文句を言う。
しかし
「えーーっと、おまえは????」顔を見たが解らない。
「ご無沙汰しております。安東花子です。」
「ああ~~、ふじちゃんの娘の?」
「おまえ、はなたれの花か!」
武の言ってた娘っこは花だったとわかった。
花は徳丸に働き口を世話してほしいという。
「私はよく働きます。この間は学校中を
一人で掃除をしました。英語も少しなら
わかります。」
徳丸は花が東京の女学校へ行ったことを
知っていた。
花は働き口があれば女学校はいつでもやめます
という。
「て?」と武。
「ほんきけ?」と徳丸。
よろしくお願いします。
花は頭を下げた。
徳丸はふじの家も相当困っているなと
つぶやいた。
「そう簡単にこの不景気に働き口はみつからねー」
と徳丸は言う。
「地主様何でもしますからおねげーします」
と花は土下座をして頼んだ。
ふじは朝市と石版に文字を書いていた。
文字の勉強だ。
かよは「何をしているのだ?」と聞く。
ふじは、「かよが製糸工場へいったら
自分でハガキぐらいかけれるようになりたい
から」といった。
かよはよろこんだ。
するとそこへりんがやってきた。
「花が女学校をやめて働くだと?」
徳丸にお願いしに行ったそうだと
いう。相変わらずの情報屋である。
ふじもかよも朝市もびっくりした。
朝市は気が付いた。自分がかよが
女工になることを言ったからだという。
ふじもかよも黙ってしまった。
帰ってきた花にふじはそこに座ってという。
徳丸に働きたいと言いに行ったことを
ふじから聞いた花。
かよは「ゆるせねー」という。
「途中で学校を投げ出すなんて情けなくて
悔しくて力が抜けた
何のために働きに出るだか
おらまでわからなくなっただ・・・」
「みんな心の中で応援しているだよ。」とふじ。
「東京でりっぱな学校でがんばっている
花のこと思っているだけでみんな
力が出てくるだよ。
ここらでみじめなことがあっても
おらたちには花がいるというだけで
勇気が出るだ。」
「だけどおらだって家族の役にたちたい。
みんなが苦労しているのにおらだけ
勉強しているなんて・・・」と花は言う。
すると、吉太郎がいった。
「わからんやつだ!
花が今やめたら、おかあたちのこれまでの苦労が
みんな水の泡だ。」
そう怒って吉太郎は畑へ行くと言って
出て行こうとした。
「畑へ行くならおらも。
地主さんに働き口なんかないと断られただ。
畑ならおらも手伝えるから。」
「さっさと東京へ、けーっちまえ!!
ここにいられても食い扶持が増えるだけだ!」
吉太郎は戸をあけて出て行った。
周造はおいかけた。
花も追いかけて外へ出た。
かよは「なあんだ、地主さんに断られたけ・・」
といってふじと顔を見合わせて笑った。
「兄やん~~~」
花は追いかけた。
周造は、立ち止まって花にいった。
「あの…自分の手を見て見ろし。」
花は手を出した。
「この手はもう百姓の手じゃね~
この手は米を作るよりわしらが作れんもんを
作るのにつけーし・・・。(使いなさいってことか)」
花は周造をみた。
「みんなそう思っているだ・・・・」
周造は花の手を取っていった。
それから片手で花の頭を撫でた。
周造はくるりとまわって畑へ行った。
「・・・・・・・・・おじいやん・・・」
花は自分の両手を握った。
やがて帰る日が来た
「ほいじゃーね」と花。
「おねーやん、お嬢様たちにまけるんじゃないよ
一番とらな承知しないよ」
「かよも体に気をつけて頑張るだよ」
「うん、」
「じゃ、いってきます。」あまたを下げた。
ふじもかよも、もも・・も
頭を下げた。
「はな、こびっとするだよ~~~」とふじはいった。
あぜ道の横から朝市が来た。
「朝市・・・」
「持つから」と言って鞄を持ってくれた
「おねーやん、元気で」
とももがいった、
みんなが手を振った
かよも、じっと見送った。
花と朝市は笑いながら歩いていく。
「武にあったのか、あいつは
となりまちの商業高校へ行った」という。
「朝市のほうが勉強が好きだったのにね」
「学校へ行かんでも勉強はできる」
「え?」
「おら勉強続けるじゃん
学校へいかんでも本が読めるところ
花が教えてくれたじゃん・・・」
そうだった、教会の図書室だった。
二人で夜中に忍び込んでみつかって
池に落ちて・・・朝市だけが捕まって
と二人で思いだし大笑いをした。
あははは・・・
花は立ち止まった。
「ここでいい。」
「うん。」
かばんを渡す朝市。
「だけど朝市なんで急に勉強を始めようと
思ったの?」
「花にまた会えたからじゃ
会えてよかった・・・」
「おらも、みんなにあえてよかったさ。」
「みんな?」
「あ、みんなに食べてもらうの忘れた。」
花はクッキーを出した。
花が焼いたという。
「朝市も食べていいだよ」といって
「ほな、さいなら」といった。
「さいなら・・・」とボソッと朝市。
もういちど
「さいなら・・」と手を振る朝市。
花も
「さいなら・・・・」と
手を振りながら別れた。
あぜ道の向こう側へと
帰って行く花だった。
??ごきげんよう
さようなら・・・・・。
**************
クーーーーーーーー!!!!
朝市の心がわからないかね?
初恋パルピテーション!!
いいシーンですね。
そして徳丸!!!
あのおやじ!!!
絶対、働き口があるのに
ないといったに違いないです。
花に勉強させてあげたいと思ったのか
それともふじを悲しませたくなかったのか
・・・。
あのおやじ・・・ええやつやん~~~。
そして周造の手の話。
この手は米を作るよりわしらが
作れんものを作るために使うものだと
花に言った言葉・・・いいですね。
実家へ帰ったことは花にとって
一層、頑張ろうという励みになりました。
良かった、よかった。
涙が出る・・・。
