初恋パルピテーション3
クリスマスの紙芝居をミニのために
英語でおこなった花と北沢は
帰りが遅くなった。

花は自分が嘘をついていることに
罪悪感を感じて、そのはなしをしよと
したとき、5時門限の鐘が鳴った。

「ごきげんよう、さようなら。」

と帰るが、門は閉まっていた。

★見栄を張って嘘をついてしまった花は
ほんとうのことを打ち明けようとして
今度は門限破り、花の初恋はどうなって
しまうのでしょう

塀を乗り越えて構内に入れたが
そこに、茂木と富山がいた。

「花さん・・・・あなた・・」と茂木は驚いてことばが
でない。

「門が閉まっていたので・・・。」

「泥棒のように柵を乗り越えるとは!!」

案の定の結末である。
ばれないわけがない。

「申し訳ありません!!」

と花は謝るが、問題はブラックバーン校長
だった。

校長室に茂木と富山、そして校長が
花を問い詰める。

「給費生が門限を破るなんて
あってはならないことです」、と富山。

「あなたは皆さんのご寄付のおかげで
ここで学ぶことができるんですよ。」と茂木。

「なぜ、遅れたのですか?」と校長・・・(英語で)

花は「申し訳ありません」と下げた頭を
あげて、ゆっくりと答えた。

「送ってくれた人と話をしていて
門限に遅れました。」

「それは男子学生ですか」

花は富山と茂木のほうを見たが
(かなりやばい・・・と思ったのだろう。)
しかし・・・本当のことを言ったほうが
ことは大きくならずに済むと思ったのか・・・

「はい・・・」と答えた。

先生方の怒りの空気がその場を包んだ。

「ゴーツーベッドフォエバーです・・・ね。」

頭を下げて出て行こうとした。

校長が「待ちなさい、はな!」と呼ぶ。

「そんな軽い罪で済むと思っているのですか。」

富山は校長に「もっと重い罪を。
停学か、退学か・・・。」という。

花は顔がこわばった。

翌日のことである。

★今日から冬休み。生徒はみんな家に帰りますが
花は今年も一人さみしく寄宿舎に残ります。
それどころか、とんでもない冬休みになりそうです。

花はみんなが帰るロビーで掃除をする格好をして
立っていた。

小さい人たちが花に、「よいお年を」
といって、頭を下げた。

花も「よいお年を」といった。

そこへあの醍醐達三人がきた。

「花さん!」
醍醐は花の恰好を見て驚いた。
「どうしたのその恰好。」

花は「門限を破った罰として
学校と寄宿舎の大掃除を命じられました。」
という。

「たった一人で大掃除をなさるの」
「まあ御気の毒に・・」
醍醐は、「掃除を手伝いたいけど
ご存知のように掃除は大の苦手なのよ」と
いう。

「お気持ちだけで結構よ」という花。

醍醐の両親がイギリスから帰ってきたというが
にぎやかなお正月ねと花は言った。

「良いお年を・・・」といって
みんな帰って行った。

がらんとした学校で拭き掃除をする花。

茂木は、「急がないと今年中に間に合いませんよ」
と花をせかす。

花は「はい!」と返事をした。

甲府では、吉平が帰ってきた。
「おとうおけーり」、と子供たちは
喜んだ。約2名を除いて・・・・。

吉太郎と周造だった。
半年もどこへいってたのかとふじがきくが
お饅頭だと、お土産を渡して
その場を濁した。

みんなでお饅頭を食べる。

かよは吉平に花の様子を聞く。

花は学校で一番の成績を
とったと喜んで言うとみんな
すごいと喝采した・・・が・・
さきほどから藁仕事の手を休めて
いないのが周造と吉太郎だった。

ももが「お饅頭うめーよ」と周造に
わたす、「おお、」と周造はうれしそうに
答える。
ふじは、「吉太郎も一休みして食えし。
朝から働きづめで疲れただろ?」
という。

かよは「聞いたけ?おねーやん、一番だと!」
と吉太郎に言う。

吉太郎は「おなごが学問をしたって
ろくなもんにはならない」という。
吉平は「なにをいう!」というが
「そんなもん、嫁に行くのに邪魔なだけさ」と
吉太郎は言った。

「あの女学校で一番を取るのはどれほど
大変か、花の苦労もわかってやれ」と
吉平がいっても
「わかりたくねー」と言って立ち上がって
去っていった。

花のことではどうやら、家族の間に
深い溝ができているようである。

さて、学校と寄宿舎を掃除している花。

たまに、白鳥さまが見に来る。
「もっと力を込めて
もっと早く!!!」という。

「はい・・・」

「廊下が終わったらカーテンとシーツのお洗濯。」

「はい」

「先生のお部屋も心を込めてお掃除するの
ですよ。」

「はい」

「それから、学校中の窓ガラス拭き!!」

「はい・・・・・」

洗濯したシーツを乾かしている花。
シーツが風に揺れている。

ふと、北沢のことを思い出した。

『花子さまのお父様は貿易会社を
経営なさっているのですね。』

『Will you marry me?』
あの紙芝居のシーンで言ったセリフ。

花はじっと考えた。

急にパンパンと手をたたく音がした。

シーツの向こうで白鳥さまがにらんでいた。
「なまけるな、急ぎなさい!!」

「はい・・・」花はシーツのしわを伸ばした。

教会へ歳末の寄付金をもっていった
茂木と富山。

牧師は丁寧に受け取った。
そして、横にいた、ミニを呼んだ。

「おたくの生徒さんに渡してくれますか?」

あの日、花と北沢がミニのために
紙芝居をしてくれたことを感謝して
ミニは、その時の絵をかいてくれた。

みんなが帰った後でミニのために
特別に英語で花が紙芝居をしたと
牧師は話した。

茂木は富山に言った。
「それで花さん帰りが遅くなったのだわ。」

そして学校に帰って校長にその話を
した。校長は絵を見ていた。
茂木は、「事情をくみ取って花の罰を
軽くしてほしい」といった。

富山は「門限を破ったのは事実ですから
罰を軽くするのはおかしいと思います。」
という。

「それにその絵をご覧になってください。
男の学生とこんなにもくっついて。
ふしだらな!
茂木先生はあんな生徒になぜ肩入れを
するのですか?」

「あんなって・・・・」

「彼女は教師に対して反抗的です。
わたくしは授業を妨害されて
迷惑をしているのです。」

校長はじっと絵を見ていたが
富山に、「なぜそんなにも感情的に
なっているのですか」、と聞く。

富山は「失礼しました」という。

校長は、「いい考えがある」といった。

花は学校中のガラスを拭いた。

寄宿舎もふいた。

そして

先生方の部屋も・・・

礼拝室も・・・

★5日間花は孤軍奮闘しやっとの思いで
すべての掃除を終わらせました。

礼拝室で最後のふき掃除を終えた。
花は「終わった・・・」とつぶやいた。

そして、両腕を伸ばして
「やったぁ~~~~~~」と大声を出した。

すると拍手が起きた。
先生方が入ってきて拍手をしてくれた。

「花ありがとう。ご苦労様。」

「おかげで学校も寄宿舎も
ぴかぴかになりましたね。」

「Hana Thank you!!」

「My pleasure!」と花。

そこへ校長が入ってきた。

花は校長に掃除ができたことを
報告した。

すると校長は、大掃除の給金ですと
いって、茶封筒を差し出した。

「What?」

校長は「三円入っています」といった。

「三円・・・とんでもない、罰当番でおそうじした
だけですから・・・」

茂木は「遠慮しないで」という。
「校長の気持ちですからありがたく
頂戴しなさい。」

「それでも三円は多すぎます」と花は言うが。

実は、これは校長からのプレゼントでこのお金で
甲府へ行く往復切符を買って
家に帰りなさいということだった。
ここにきて5年間、一度も帰っていないことを
知っていたのだった。

「Hana・・・・」と校長が言った。

「はい?」

「Go home!!!!」

あの大きな声で叫んだ。

そして振り向いて出て行った。

花は、校長に、「ありがとうございます」と
礼を言った。

茂木も微笑みながら出て行った。

先生方から拍手が起きた。

花は「ありがとう」、と言って
茶封筒をしっかりにぎりしめた。

さて、甲府ではふじが朝市から
文字を習っていた。

そこへ郵便屋が来た。

電報だという。

みれば、花からで明日帰るとのこと。

吉平は「花がケーってくるぞ~~~~」という。

「て!!」とふじ。
「て!!!」と朝市。

さて、学校では花はスコット先生と
クッキーを作っていた。
家族へのおみやげである。

スコット先生のクッキーはおいしかった。
「こんなうめーもん家族にも食わしてやりテー」
といったのは、10歳の時だった。

そこへ茂木が入ってきた。
花は茂木に言った。

「明日朝早くの汽車で帰ります。」
「乗り遅れないようにね。」
「今スコット先生とクッキーを焼いています。」

「おうちの方へのお土産?」

「うんとおいしいクッキーを焼いて
びっくりさせてやりたいのです。」

「そう。」

スコット先生は「優しくこねるのよ」という。
「優しくですね・・・」と花。

すっかりスコット先生との会話もスムーズに
できるようになった花である。
茂木はうれしそうに見ていた。

翌日、汽車に乗った。
あのクッキーを大事そうにもって。

そこへ入ってきた男子学生は
花を見て

「て!」・・・・といった。

花の知り合いか?
タケシか?

「次は甲府・・・甲府です・・・」
車掌が告げて歩いている。

★じっと座っていられないほど花の胸は
高鳴っていました。
なにしろ五年ぶりに家に帰れるのです。

ごきげんよう

さようなら

**************

男が絡むとろくなことがない。
門限破りをしてしまったではないですか。
しかも嘘はいけません。
ろくなことはありません。

冬休み、家に帰る生徒たち。
その様子を見ていると
ハリーポッターの映画で賢者の石で見た
シーンを思い出す。

わくわくする気持ちと
しばらくさようならという
さみしい気持ちを交差しながら
子供たちが帰って行く。

ところが甲府の家族は
どうやら、花が思っているような
状況ではない様子でした。

確かにふじは花に本をいっぱいよんで
キラキラしてほしいといったし
吉平もそうだった。
よくよく考えると
おじいちゃんも、反対ではないがさみしかったと思う。
かよも花の代わりにももの世話をしなくては
いけない・・・

まっくろになって子守から水汲みから
家の手伝いをするかよだったから
あの恰好で家に帰ると
花は反感を買うぞと思う。

あの恰好・・・・あたまにおリボンをつけて
赤い着物を着た格好である。
顔もまっくろではなく、髪の毛もきちんと
ゆってある。
昔はバラバラの髪の毛だったけど。

そして手にもったクッキー。
遠く隔たった花を家族は喜んで迎えて
くれるのだろうか?
こんな、状況の家に帰る花。

おとうが進めた学問への道は
花を大きく変えました。
これから我が家には花の
居場所がなくなり
自分にあった居場所をさがすこと
になるとおもいます。

おとうはそれを見て何を思うだろうね。
おとうの社会主義は
これをどう意義付けるのだろうね。