チョッコレイトな開戦6

活男の死を受け入れることができなかった
めいこだった。

それが、元主計兵の訪問で、活男が
亡くなったことを聞き
実感するめいこだった。

かれは活男の話をしていった。

いつも笑っていたこと、
おにぎりを握るのが上手だったこと
母親の自慢話をしていたこと・・・

「うちの母親はごちそうさんと呼ばれているんや」

そしてごちそうさんと言われるとうれしそうに
笑うこと・・・

彼は活男の遺品である手帳を
置いて行った。

めいこは、活男の面影を感じた。

そしてその手帳を見て決めた。

源太に活男の葬式をするから
手伝ってほしいと。

活男の手帳は活男らしくて笑って
しまうとめいこはいう。

「源ちゃん、かっちゃんの
お葬式をやろうと思うんやけど。」

「やるんか?」

「ええかげん弔ろうてくれというている
みたいな気がするんよ。源ちゃん
手伝うてくれる?源ちゃんの助けが
いるんよ。」

めいこは流れる涙を手で拭いながら言った。

「なんでも・・何ぼでもいえよ・・めいこ。」

源太はそう答えた。

活男の手帳・・・そこには・・。

1月19日、けったいな夢を見た。
朝、わしは起きだして、いつものように
調理場へ行った。

けど、なんでかそこは台所で
お母ちゃんがぐつぐつとなんかつくっとる。

わしが、ボーっとみとると
お母ちゃんがいきなりくるっと振り向いて
♪こっちのめしはうーーまいぞ~~

という。

わしはふらふらとつられて、ちゃぶ台のまえで
待つ。

おかあちゃんはそこへ、カレーを踊りながら
持ってきた。
わしは、笑ってしまって
いただきます、といってカレーを食べようとする。

けど、なんでか食べられヘンで、いつのまにか
おかあちゃんは、おらんようになった・・。

ごちそうさん、は言えんかった・・

2月10日

肉じゃがとお浸し

ネギとみそ汁・・

今日もあかんかった

3月11日

ドーナツとちょぼ焼き・・

今日もあかんかった。

夢やもん・・・しゃーない。

けど生きて戻れたらおなかいっぱい食べて
・・・・・

源太は葬式のために、食材をさがして
回った。

そして、身近な人たちと一緒に活男の
葬式がはじまった。

食卓に並んだ手帳に書いてあった
メニューの数々。

活男の席をじっとみるめいこ。

「これがかっちゃんの
お葬式か・・・」とうま介が言った。

「これ、全部、勝っちゃんが夢の中で
食べられヘンと書いてあったんですか?」

と、川久保がきく。

めいこは、「手帳の中全部ではなく
なかには作れなかったものもあるし
かっちゃんが食べたいと思ったものでは
ないものに仕上がったないかもしれない」、と
言った。

「先にかっちゃんに取ったってええ??」と
静。

活男の席の横にあたる静は活男のお膳に
取り分けた。

カレーライス、漬物、ドーナツ、にくじゃが、
ちょぼ焼き、オムライス・・魚のてんぷら・・
オムレツ・・

「かっちゃんはよう食べるさかいなぁ~~」
と静が言った。

みんなじっとそれを見る。

めいこも手伝った。

泰介は活男に呼びかけた。

「活男・・・お前のおかげで今日はこんな
ごちそうが並びました。
おおきに・・・・。

ほな・・・いただきます!!」

「いただきます。」(全員)

涙をぬぐいながら、食べるめいこ、静・・
泰介・・・だった。

「おいしいなぁ~~」
みんなで囲む食事。
めいこは活男の食卓を見た。

夜も更けていく・・。

活男の食卓を見てめいこはいう。

「かっちゃんは・・・もう・・・
おなかすかへんのやなぁ・・・。」

蔵の二階へ上がる階段に
活男が座って食べていた・・・
みんなをみながら笑顔でいった。

「・・・・・・・。」(ごちそうさん)

その夜、『日記に今日は活男の
お葬式をしました。みな来てくれて
いいお葬式でした・・・』と書いた。

それを封筒に入れた。

「前むかんと・・・・・むかんと・・・ね・・。」

めいこは、自分に言い聞かせるように
いった。

さて、うま介の店が新装開店となった。

静は、「なんやいまひとつ、変わり映えせーへんね。」
といいながら、笑った。

「木本さんがこの店はこうじゃないといけないんだって」
と、室井が言うが・・・木本って誰だ?

「面倒くさかったんと違うか?」

と静が言ったので、一同大笑い。

厨房にいるめいこにうま介は声をかけた。

「ええよ、めいこちゃん、座っとって。」

めいこは、作っていたいからとおかずを作って
うま介にみんなに持って行ってあげてと
お皿を渡した。

「おおきに。」といって持っていくうま介。

その時、ドアが開いたので、めいこは
「いらっしゃいませ~~~」といった。

ふと、ドアを見ると
米兵がふたり入ってきた。

そして、「Coffee」といった。

めいこは、コーヒーがはいった缶を
じっとみた。

もちろん、アメリカ製である。日本には
このような品物は流通が困難となって
いる。

その缶を手に取って・・・めいこは
思いつめてしまった。

うま介はめいこに、「僕がやるから」といった。

めいこは、「うま介さん、ごめんな」、といって
店から出た。

様子を見ていた泰介は追いかけた。

「頭では分かっているんや

でもわたしはおかあちゃんやから
かっちゃんの仇の国の人に
コーヒーを入れたりはできヘン・・・。」

うま介の店の外で話すめいこ。

じっと聞く、泰介と静・・
そこへ希子と川久保、源太もやってきて
その話を聞く。

店の中からうま介や室井もみていた。

「うま介が復活するんはうれしい。
でも私は・・・来られヘンわ・・・。」

そういって帰って行った。

それを聞いた希子は、ある行動に出る。

放送局でモリス大尉にめいこの話をした。

「姉の息子は終戦間際に海の上で
戦死しました。
だから彼女はあなたに料理を出すことは
できないと思います。」

モリスは立ち上がって窓の外を見た。

そばの机の上には、モリスと小さな男の子が
一緒に写っている写真があった。。。

そんな時・・・

めいこのもとへ藤井がやってくる。
「すんません~~おくさん~~~」

めいこは藤井に挨拶をするが
藤井は帽子を取って
めいこをみて、思いつめたような顔をして
言った。

「西門君のことなんですけどね・・・・・。」

めいこは、ハッと緊張した。
静は立ち上がってじっと見ていた。

****************

活男の死が現実となった。

今まで信じられなかったけど
こうして、同じ海軍の同期の少年が
訪ねてきてくれて、遺品までもって
来てくれたら・・・受け入れるしかない。

活男の手帳から思いをくみ取った
めいこ。

悲しいだろうな・・・こんな理不尽なと
思う。

ひさしぶりに、回想であっても
幽霊であっても活男がうつった。

だから、アメリカ人を許せないとは
普通のお母ちゃんたちの思いだと
思った。

逆にアメリカ人にとっても息子を日本兵
に殺されたお母ちゃんがいるものだ。
そのお母ちゃんたちも日本人を許せないと
思っていたことだろう。

めいこはうま介の店は楽しく手伝っていたが、
米兵が来るとなれば・・・手伝えないだろう。

活男の死を受け入れて
次は、悠太郎の消息だが
藤井が何か情報を得たようである。

それがなんなのか・・・来週へ
続くとあった。

来週はいよいよ・・・最終回である。