いもに見ろ!6
泰介は自分がやりたいことを
実行に移した。
身寄りのない子供たちに名前と
住んでいた場所を聞く。
また出征したひとの情報も集めて
いた。
それをまとめて闇市で掲示板を作って
尋ね人として多くの人に見てもらおうと
したのだった。
めいこは悠太郎と活男の情報も
ふたりを知っている人がいたらと
思い掲示板に
のせてもらった。
大変な評判となり人探し、尋ね人の
掲示板のまわりに人が集まった。
ある日、泰介のもとにひとりの
男が来た。
また、めいこのもとに静が急に現れて
「お金ある?お金!!」ときいて
「一攫千金や」といってお金を持っていく。
めいこは突如のことで追いかけた。
室井は「桜子ちゃんは?」と聞きながら
追いかけた。
古着屋さんのところでこれくださいと
静は言う。
「いりません!!!」と追いかけてきためいこ。
「いります!!!」と静。
「桜子ちゃんは????」と室井。
「どっちやねん!!!!」と店主。
大騒ぎとなった。
その後のことである。
「お買い得やったのに」と
静はおにぎりを食べながら言う。
専門家をいれないと、素人は
いい着物も安く売ることがあるらしい。
「そんなお金ないですよ。ただでさえ
借金あるのに」とめいこ。
「家たてたん?」と静。
「お米かったから」とめいこ。
「ぜいたくやな」と静。以下交互に話す。
「どっちがですか。」
「なんやお母さんが帰ってきたのに
うれしくないん?」
「うれしいですが、うれしさ吹き飛ばす
あれやこれやで・・・」
「あの、桜子ちゃんは?」と室井は聞く
「おばあちゃん!!!」と泰介。
孫と祖母の感動の再開だった。
泰介は子供を連れていた。
「この子誰?」と静は聞く。
「再会できる第一号」と泰介は言った。
泰介の活動の成果となる子だった。
めいこは、見覚えがあった。
そのこは、藤井のぬか壺を
盗んで逃げた子で
めいこが捕まえた。
それでめいこは「あ!」と思ったが
取り下げた。
「どないしたん、その子?」と静。
「掲示板の再会第一号なんや」と泰介。
「やったな、泰介!!」と源太。
事務所で子供の成人した兄がいた。
再会の感動でいっぱいとなった。
香月は、「あかん、わし、こんなのあかんのや。」
と泣く。
めいこは「これ、再会のお祝いです。」といって
子供の兄に、食べ物を渡した。
そして子供に、「おばちゃんのこと覚えてないか」と
きく。
「誰?」と子供。
「ま、ええか、どうぞ。」
兄は「ほな、いただこうか?
かっちゃん。」といった。
「・・・かっちゃんいうのですか?」
めいこは、じっと子供の顔を見た。
活男もおいしそうに食べていた。
それを思い出していた。
こどもは、「おばちゃん、ごちそうさん」
といった。
めいこは、うなずきながら
泣いてしまった。
声を上げて泣いてしまった。
室井は「あほな仏は声を上げて泣いた」と
メモにかいた。
源太はじっと見ていた。
蔵の中では、にぎやかな夕餉となった。
静はバラックぐらいたてたらという。
藤井さんに頼んだらというが
藤井はなかなか忙しそうだからと
話をした。
「あの、桜子ちゃんは?」と室井がきく。
思い出したように静は、「あ、」といって
手紙を渡した。
慌ててみる室井は驚いた。
『もうそちらには戻らないかもしれません
戻らないかもしれません 桜子』
「なんで、?
二回も?」と室井はとまどった。
「あいそ、つかされたんか?」と静は言う。
「なんかしました?
僕、なんかしました?
急に!!」
「人の心なんてそんなもんや。
やることやって惚れ直してもらうしか
ないわな」と静はあっけらかんと言った。
「ほら、室井さん食べて・・・」とめいこ。
『お母さんが戻ってきて
うちが明るくなりました。
かっちゃんて子にあいました。』
「今日はええこと多かったな~~」
「こんばんわ!」
希子が来た。
悠太郎のことだった。
満洲からの引き上げがまだ
行われてないという。
めいこは、「・・・大丈夫・・・
戻ってくるわ・・・・きっと・・。」
といった。
ーそしてその日は突然にやってきたので
ございます。
闇市で料理をするめいこだった。
「おはよう。」
と泰介がやってきて言う。
静はふ久と大吉の顔を見にいった
と泰介が言った。
めいこは、自分も行きたかったという。
今度行こうや、と泰介は言った。
そして、泰介は事務所へ向かった。
そこへ、背広を着た男性がやってきた。
めいこの前に立った。
めいこは野菜を切りながら顔を上げ
「まだ、ご飯が炊けてなくて」という。
「もうすこし・・・・」
待ってといおうとしたとき
「大変や~~
警察が来たぞ~~~!!!!」
と声がして、みんなが逃げ出した。
めいこは驚いた。
その男はめいこの腕をつかんだ。
警察だった。
うま介はおとこに頭から袋を
かぶせて、めいこを連れて逃げようと
した。
めいこはお金をもって
源太が呼ぶ方向を見て
逃げた。
闇市は大騒動だった。
源太、泰介、うま介、室井とともに
逃げようと話をしていたとき
めいこは、警察が米俵を
もって行こうとしているのを見た。
そして、すっと立ってそっちのほうへ
いった。
「めいこ!」と源太。
「おかあちゃん!!!」と泰介。
めいこは、警察官にぶちあたって
彼らを突き飛ばした。
そして、めいこも倒れたので
立ち上がりながら叫んだ。
「この・・・コメは・・・・・・
私のコメやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!」
大声で叫んだ。
「どんだけとったら
気ぃすむんやぁぁぁぁぁぁぁああああ
食べるもん取られて
家も
旦那も
子供も
なんもかんも取られて
ここにおるんや!!!
みんな、
・・・・みんな
そうや!!!」
周りの闇市の仲間は
うんうん、と、うなづいた。
「死んでしまうからしてるんや!
私らにこれ以上、死ね言うんか。
これが罪や言うやったらな
まず
飯食わせぇぇぇぇぇぇ!!!
あほんだら!!!!」
めいこを警察官が捕縛した。
「おかあさん!!!!!!」
泰介が叫んだ。
「ま、こうなるわなぁ・・・」と源太。
めいこは、警察官に何かの犯人のように
縄でつながれて連れて行かれた。
ー昭和二十年秋
それは、突然の出来事でございました。
******************
いいこともあるし、悪いこともある。
しかし、すっとしますね。
めいこの叫び!
コメを取られる悔しさは、家族を命を
取られる悔しさと同じなのです。
食べられなくなり、
すむところもなくなり
不安と心配と苦労で
笑顔がなくなり、
おいしいものを食べるときの
みんなの幸せそうな顔を
見ることがなくなり
いただきます
ごちそうさん
の掛け声さえ、なくなり
めいこは、家族を失い
ひとりで食べる辛さを味わい
ほんっとに
なんっっっにも
いいことがなくて
やっと手に入れたコメ、4500円は
倉田さんに無理を言って
借金をして手に入れたもの。
ほんまに・・・
普通に必死で生きている人を
ブタ箱に入れるシステムの日本でした。
愛国心など
育つはずもなく
実るはずもない
庶民を守れないのは
二流、三流以下の
国であると
思います。
戦争に負けて、よかったのよ。
