いもに見ろ!3

「誰に断って商売してんのや?」
切れ切れのにーちゃんがいった。

「断り?」

「おい、ここはわしらの島なんや・・
勝手に店開いてどうするつもりや?」

「あかんかったんですか?」

「あたりまえや!しょば代払え!しょば代。」

「しょば代?」

「店開く場所代」と源太が言った。

「とりあえず今日の分」、といって切れ切れの
若い兄ちゃんは手を出した。

めいこは冗談じゃないと思った。

「あ、あの・・・こいつ、今日で止めるみたいなので
大目に見てやってくれませんかね?」と源太はいう。

「ちょっとやってみただけなので。」

するとめいこが「ええ?あの・・」
「もうやめとけ。」と源太。
「でもあの・・」
「うるさい、田舎へ帰れ!!」

別のにーちゃんは室井に「こらぁめがねぇ!」
と、大きな声で怒鳴った。

室井はその声につつかれて、
めいこがしっかりと持っていた
売上金を横からぶんどって
そのにーちゃんに渡した。

めいこが「ちょっと!!」と走り寄ろうとしたら
先ほどのしょば代といったにーちゃんが
めいこを静止して突き飛ばした。

転げためいこ。

お金は年長のにーちゃんのところへ。

年長のにーちゃんは、その中から
自分の取り分を取って後は室井に
返した。
そして、「うまいもん、つくりや」といって
さっていった。ほかのにーちゃんたちも
去っていった。

めいこは追いかけようとしたら源太に
止められた。

「なんで、お金取られなあかんの?」
「よそさんの土地で店だすんや。
しゃーないやろ?」

「そやかてここは建物疎開の場所やから
絶対あの連中のものではないと思うけど
おかしいやんこんなの。」

源太はめいこのやっているうまいもんだって
闇市なので立派な犯罪だといった。

「生きていくうえでしょうがない」とめいこは
いった。
すると源太は

「お前にもしものことがあったら
わしは、ツーてんかくに合わせる顔が
ないんじゃい!!!」

と怒鳴る。

めいこは、
「え??え??」
と、なんてことなのかわからない。

「なんでもない・・・・」

めいこは「とにかく私はここにおるから
もうしょば代もはろたしな!」

そういって、断固戦うつもりである。

源太はどうするものかと考えた。

その夜、蔵のまえに源太は大きな樽を
転がしてきた。臨時の家である。
めいこを守るためである。

驚くめいこに「おまえみたいな大きな仏さんが
ころがっとったらうっとうしいからな。
社会に対するご奉仕や。」

という。

めいこは月明かりに中で
悠太郎への日記を書いた。
『うまいもんといううまの芋で作った
食べ物を作って売りました。
みんな手伝ってくれました・・・。』

「悠太郎さん・・・・」

それを源太はため息をついてみていた。

翌日のこと、闇市に行くと

うまいもんというかんばんが
ここもどこも出ていた。

「すっかりまねされてしまった。

今日は昨日の一割も売れヘンな~~」
と源太は笑った。

めいこは、意地である。
室井に砂糖と醤油を安く買ってくるように
いった。

ラジオ局へ希子にあいにいった源太。

「しょば代のことやらうまいもんのことやら
向きになっているのはおかしい」と
希子に言った。
「どないかしとるんかな?」
「じつは、かっちゃんの戦死公報がきたのです。
家族のために生きてきた人が
何もかもとられてしもたのでしょうね。」

めいこはあたらしく別の味の
うまいもんを作っていた。
「いっこもらおか~~~」と客が来た。

「あ、三円です・・・。」

希子は続ける。
「心の奥底でもうのすごく
怒っているのではないかなと
思います。

なにに向かってかなとはわかりませんか
あそこでみんなを迎えるんやと
聞かないのです。
気合で元通りにしてやろうと
思っているのではないかと
思います・・・」

「そういうやつやからな・・・・」と
源太は思った。

めいこのところに昨日の
子供が来た。
「ちょっとまっとき・・」

振り向いたすきに子供は
仲間を呼んだ。
めいこは元に戻ると
「5人???」と驚いた。

「作ったれや。
いもはわしが手配するから」

と、そこへ源太が帰ってきて
いった。

めいこは、「よろしゅーおねがいします」
といった。

「先にこれ食べとき、またすぐ来るさかい」
と子供たちにある分だけ渡した。

「おまえ・・何持ってこられても
料理できるか?」

「毒あるもんや難儀な下ごしらえとか
なかったら・・・」

「うん・・・。」と源太。

めいこがそろそろ闇市に
なじんできたころだった。
「今日はうまいもの親父が来ていない。
暇やな」と室井が言った。

「おい!おばはん~~」

とあの日のしょば代のにーちゃんがいう。
香月とかいう名前らしい。

「なんですか?」

ぶすっとして答えると
「そこのおっさんな、新入りやねん。
ひまやったらいものふかし方
おしえてやってくれ。おうじょうしとるし」
という。

蒸し器も上手に使えないらしい。

「ええけど、あなたに言われたから
やるんと違うからね!」
と香月にいった。

「はぁ?」

「お芋さんがかわいそうやから
やるんですからね?」

めいこはその新入りのおやじに
いものふかし方を教えて
おいしい味付けも教えた。

「ほんまおいしい、いも売るのは
はじめてでな。」

その親父は戦争で仕事を失って香月たちに
仕事をあっせんしてもらったという。
このへんは自分たちのようなひとが
たくさんいるという。

その新入り親父はめいこにお礼として
野菜の苗をくれた。

「うまいもんてなに?」
いきなり声がした。

うま介が戻ってきた。

「食べられる?」
今芋が切れているというと
そこに、市場の野菜のおやじと
女将がやってきた。

「めいちゃーーーん」

再会を喜んだ。

「屑の野菜をかわへんか?」という話で
めいこはすってんてんになることを
覚悟で買った。

子供が持ってきたのは、変わったものだった。
めいこが食べられるものなら
なんでも買うてくれるからと
おっちゃんにいわれたといった。
木の箱の中には・・・

うし蛙が・・・・鳴いていた・・・。

うっと驚くめいこ。

「かえる・・・・・げんちゃん・・・・・・(怒)
わかった・・・買う・・・・。」

「あのおばはん何もんや?」
香月は源太に聞いた。

「なんでも始末できるから
売りに行ったらこうてくれるからと
みんなに言ったら、だいぶ集まったらしい」
と源太。

香月は、「実は・・・話し言うんわな」

といった。

めいこの店はゲテモノである。
うまいもん、15個5円
ほうるもん、5円
かえるもん、まである。

つまりうまいいもと
ほかすもの・・・と
蛙ものである・・・。

めいこは協力者を前に
いった。
「みなさん、ご協力ありがとう
ございます。

ご存知かと思いますが
わたしは現在正真正銘の
すってんてんでございます。
売れなければ明日はございません。

なにとぞ、ご協力のほどお願いします」

「うまいもん~~~」

「ほうるもんにかえるもん~~」

客引き・・・
料理係
レジ係~~?

とみんな協力して
あのカエルも
おいしく、串焼きになった。

「おばちゃん、手伝うことある?」
子供たちも来た

「ある、ある・・」

「うまいもん、ほうるもん、かえるもん
どうですかぁ???」子供たちも
客寄せである。

どんどん焼く、どんどん売る
めいこは楽しくて仕方がない。

「おおきに~~~~~」
最後の客が帰った。

「これでしまいです~~~

みなさん、おおきに~~~」

売り上げが上がった。
疲れて一休みするめいこ。

「楽しかったな~~」とめいこ。

ーめいこぉ~~~~~

「え?」

「どないしたん?」と女将。

「よばれてる・・・・」

ーめいこっ!!!

あれは、おばあちゃんの声・・

つまり・・・

卯野家代々のぬか壺の
声・・・・。

ふらふらと声のする方向へ
いくめいこだった。

**************

源太のおかげで、チンピラと
余計なトラブルを起こさずに
すんだ。
めいこはあまりにも世間知らずというか
恐いもの知らずというか・・・
希子に言わせたら
意地になっているし
怒っているらしい
ということだ。

やっとの思いで帰ってみれば
みんなで囲む食卓はない。
一緒に食事をすることもできない。
まだ、みんな帰ってきていない。

なんのために、こんなつらい思いを
しとるんや!とめいこは
怒っているのかもしれません。

で・・・

しょば代???

頭に来るのですよね。

なんで払う必要がある???
よく考えれば、めいこのやっていることも
届け出なしの闇市である。

文句は言えない。

ついに、朝ドラのヒロインは
犯罪者かぁ・・・・。

食べるため、生きるため・・・
人間、食べなければ死ぬのです!

宮本先生の言葉が重たい。

そこへ、糠床の、おばあちゃんの声が
聞こえました。

めいこぉおおおおお

はたして、声の主はどこに?