い草のあじ6

ひとりで食事をするめいこ。
ひとりで食べることは、生まれてこの方
めったにないことだった。

みんなで囲む食卓の幸せを
モットーに育って
モットーに生きてきた
めいこだった。

活男の死亡告知書をみながら、もくもくと
食べた・・・が・・

どうにもならない気持ちになった。
めいこは箸をおき
叫んだ。

「こんなことのために

ご飯

作ってきたんと

ちがう・・!!!!」

しばらくして和枝が帰ってきた。
めいこを呼んだが、返事がない。

それで部屋を開けるとだれもいない。
食事の後だけが残っていた。

花は自分が気が付かなかったことを
悔いた。探しに行きますという。

和枝は「いかんでええ・・・」というが
花は「変な気を起こしたら・・・?」という。
和枝は
「死ねんかった・・・
このくらいではわては死ねんかった・・」
・・といった。

山の中を死亡告知書を握りしめた歩く
めいこだった。
夜の山道、足を取られた。倒れて
ふと気が付くと懐に入れていた
悠太郎の手紙がない。
さがすと少し離れたところに落ちていたので
手を伸ばした取ると
そのまま、坂道を転がって落ちた。

倒れためいこは
見上げると空は満天の星空。

めいこのおなかがぐーーーーっと
なった。

めいこは星空を見て行った。

「かっちゃん・・・
おかあちゃんなぁ・・・かっちゃんが
おったとしてもそっちにはいけそう
もないわ。
お腹のすかん国にはいかれへん。
かっちゃんもな
戻ってきたほうが何ぼか
ええんとちがうかいな・・。」

朝、台所で食事の支度をする和枝。
花は、「さすがに探しに行ったほうが
いいのでは?」というが。

そこへ、花の父親がやってきた。

花が出ると
そこに・・憔悴しためいこが
一緒に連れられて
帰ってきていた。

「大丈夫ですか???」
花は叫んだ。

「山の中で道に迷ったらしい。」

「ええ?」

めいこは生気がぬけたように
たっていた。

和枝は、「武男さんおおきに。お茶でも
飲んでいって・・・。」といった。

そしてめいこを見た。

いきなり、めいこの胸倉をつかんで
畑に連れて行った。

「枯れているやろ??
せっかくできてきた芽が!!
あんたがほおりだしたからやで!!」

めいこは枯れた芽を見た。

「あんたがやることやったらへんから
死んでもうたんやで!!!」

和枝はめいこの襟首をつかんでゆすった。
生気のないめいこはされるがままだった。

「あんたが殺したんや!!」

「もう無理です。

そのとおりです。

あの子を殺したのは・・・

私です・・・。」

後は泣くばかりのめいこだった。

和枝はじっと見ていた。

そのご、めいこは畑の作業をした。

帰ると和枝がきいた。

「草むしり、しましたんかいな?
ほな、おかいさん(おかゆ)でも
おあがり。」

めいこは台所にいった。

「活男君の戦死、本当かどうか
確かめに行こうとしはったんか?」

めいこはだまってうなずいた。

「あのな、一つだけ教えときますわ
活男君がホンマにのうなったんかどうか
しりまへんけど、子供なくすというんは
一年やそこいら泣き暮らしても
どうにもなりまへんで。」

めいこは和枝をじっとみた。

「慣れるのに10年、20年・・・・

ひとによっては一生かかりますさかい。

それは覚悟したほうがよろしいで」

そういって向こうへ行こうとした。

「あ、あの・・・」めいこは和枝に言った。

「ごはん、一緒に食べてくださいひとりで
寝て起きて働いて
ごはんたべるだけやなんて・・・わたし・・」

「あんさんは見送るお人やろ?
心も体も生きる力が強くて
おそらく、見送って、見送って
最後は一人で生きるお人や。
一人に慣れはったほうがええ!!」

めいこは、その日から
ひとりでご飯を食べることになった。

ひとりで、いただきます・・・といった。
ひとりで、食べた・・
ひとりでごちそうさんでした・・・といった。

ひとりで、畑にいって働いた。

そして夜は一人で寝た。
枕元の隣に・・・悠太郎の手紙を置いて・・・
さみしさのあまり手紙を抱きしめた。
暗闇はいつまで続くのか。

はつか大根ができあがったころ
畑が荒らされた。
イノシシだった。
めいこは、竹を編んで柵をつくった。

雨の日は畑に行くこともなく
写真をみて過ごした。
希子が送ってきてくれた結婚式の
写真である。三人の子供たちも
映っていた。

なんども、なんども・・・悠太郎の手紙を
読んだ・・・。

そして夏になった。
畑に野菜が育った。

みごとに育った・・・。

その夏・・・

戦争が終わった。

座敷で山下の一族が
玉音放送を聞いた。

めいこは、とれたばかりの
みずみずしい茄子を見てつぶやいた。

「終わった・・・・?
終わった。」

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つらいですね・・・・
今週のお話は・・・・。
杏さんの演技力の見せ場です。

あの頼りとする泰介も出征して。
ついに一人になっためいこです。
その辛さをぐっとがまんしていたはず
なのに、活男の戦死・・・。

あの日、海軍に志願したいといった活男。
反対しためいこ。
おかあちゃんを人殺しにするのかと
いっためいこ。

悠太郎は、志願をさせるのは僕ですから
といってくれたが、結局めいこは
自分が活男を殺してしまったと
思ったのですね。

和枝さんは強いです。
自分の子供を亡くして
どれほど、つらかったことかと
思います。紺色のにおい袋を
もっていましたが、あれはお子さんの
着物の布で作ったとか。

子供をなくした悲しみは
いつになっても、一生・・・
忘れることはないのですね。ひとによったら
一生、泣いて暮らすというのはこれは和枝さん
のご自身のことなのですね。

忘れようとするように必死で畑仕事
をして野菜を育てるめいこ。
自分の子供をそだてるように、おそらく
打ち込んだと思います。

そして、終戦の日、茄子を手に取った
こと。
「ごめんなすって」のお話で、正蔵が
希子のお見合いをぶち壊しに来た
お話がありました。

それを思い出していたのでしょうか。

わかりにくい天皇の話を聞いて
戦争が終わったことを知り
喜ぶような表情をしていためいこ。

悠太郎さんが帰ってくるかもしれません。
泰介も帰ってくるかもしれません。

来週はいよいよ、にぎやかな友人
たちがいる大阪へめいこが戻る
ようですね。

でも、大変そうです。