私の大豆な男の子4
活男は勤労奉仕で海軍の軍人にあった。
かれは、活男の弁当を見て
大豆の粉のおかずをひとつつまんだ。
すると、小麦粉が入っているなと
いった。
めずらしいメニューなのになぜそれが
わかるのかと、活男は軍人に聞いた。
活男は家に帰ってめいこに海軍にはいりたい
という。
そこでコックになりたいというのである。
海軍の洋食は本格的で明治時代から
やっているので、自分もそこで修行が
したいというのである。
海軍の洋食??そうかも・・・あったかも。
何気に聞いたことがあるかも???
長年生きていると、記憶が多くて
どれがどれやら(笑)
で、めいこに、親の同意書が必要なので
かいてほしいと紙を渡す。
めいこは、じっとみて紙をまるめて
捨てた。
「おかあちゃん、なにするの?」
活男はびっくりした。
静も、めいこをみた。
「あほなんか・・・・・・。
あほなんか、あんたは!!!」
「かっちゃんが志願?」
その夜、希子と悠太郎は
帰ってきてその件を静から聞いた。
「それでああなっているのですか?」
と悠太郎。
必死でめいこに、「フルコースやで
フルコース!!!」
と、海軍の調理場のことを訴える。
「全然違うで、主計課っていうのは。
厨房におるんやで。」
「船しずんだら、いっしょやろ?」
「基地に配属のこともあるんやて」
「基地かて一緒や!」
「本格的な西洋料理!」
「今そんなもの出しているわけないやろ!」
活男はそれでもめげない。
「お母ちゃん、今大変やんか?
一人でもおらんかったら、楽になるのでは?」
「配給は人数分!」
「あと三年、あと三年で嫌でもわし
嫌でも兵隊に行くやんか。」
「そのうち戦争が終わるやろ。」
「徴兵では主計課は無理やねん。
志願せんと、なられへんねん。」
「志願したかてなれるものと違うやろ?」
言葉に詰まった活男。
そのとき、サイレンが鳴った。
訓練というので、防空頭巾をかぶって
決めたられた防空壕へ逃げた。
それが終わって、ほっとして家に帰る。
で、夕餉である。
「近頃訓練が多いなぁ
年寄りにはかなわんわ」
と静は言う。
「まぁ、敵機が来てからでは遅いですから」
と希子。
西門家の夕餉もさみしくなったものだ。
ちゃぶ台が以前は二台だったけど
今は一台である。
ふ久がぬけ、川久保もぬけ(どこへいった?)
泰介も抜けた。
めいこは、元気のない活男に
「これ、食べ・・・」と自分のおかずを差し出す。
活男は、ぼそっといった。
「戦争へ行かんでも、空襲で死ぬかも
しれへんやろ。」
「空襲が来んうちに終わるかもしれんやろ。」
めいこは、そういった。
悠太郎はじっと様子を見ていた。
うま介の共同炊事でのことだった。
室井夫婦、うま介は
活男のことをめいこから聞いて、
「コックになりたいから志願か・・・」と
いった。
「そう、何考えとんねんって話ですよ」
「いまどきはそうでもしないと
コックに慣れませんからね。」
室井は「え?そうなの?」と
世間に疎い。
このころの法律で、40歳未満の男子は
料理人とか美容師とか
新たな職についてはいけないと
なっている。
つまり、後継ぎでもないかぎり
そのような職には就けない。
職業選択の自由さえない時代である。
桜子は、「家でお料理するのは?」
と聞く。
家での料理はものすごく
時間がかかることになっている。
物を粉にしたり、燃料も炭だったり
なにしろ、ガスなんて、日本では
とれませんから、あれは輸入ですから。
この時代、輸入もストップですから。
「こんなことなら小学校出たときに
コックの修行に出したらよかった」と
めいこはいった。
勤労奉仕先の昼休みだった。
志願したのは一人だけだった。
「毎日、毎日、何のために食わして
来たんやと言われた」と友人の一人が言う。
「うちもや」、ともう一人が言う。
みすぼらしくなった弁当の
おかずを見て活男は
「そうなるよな」、と納得した。
昼休みが終わって移動の時
非常ベルが鳴った。
見上げると煙と火の手が上がっていた。
活男たちは逃げたが・・
さて、共同炊事のうま介の店では
めいこが、アイディア料理を
披露していた。
もちよった材料で蒸した飲茶のようなものを
作っていた。
そこに、室井が白つめ草とオオバコと
ユキノシタをもってくる。
雑草である。
配給もなくなってきたのでありがたいと
主婦たちはいう。
最近は、農業もする人がいなくなって
空き地で食べ物を作っている話が
あった。めいこはやってみようかなと
思った。
そこへ、活男のことで報告に来た
男性がめいこをよんだ。
活男の工場で事故があったとの
ことだった。
悠太郎が迎えに行っているという。
家に帰るとき、ふたりにあった。
活男にたいしたけがはないが・・・
一緒にいた、仲のよかった友達が
亡くなった。
めいこは活男が無事なので
喜ぶが、活男が辛そうに
友達のことをいうので、驚いた。
共同炊事場では
みんなが心配していた。
その夜、悠太郎は活男と話をした。
「おとうちゃん・・・・わし・・」
活男は意を決して、悠太郎に話をした。
そのころ階下では希子とめいこと
静が、事故の話をしていた。
人が死んだことで、志願も止めるだろうと
静が言う。
そこへ悠太郎と活男が
降りてきた。
夕餉となった。
「おいしかった?」とめいこは活男にきく。
めいこは、「甘いものがほしいやろ?
さつまいも・・・」と言いかけたら
活男が「おかあちゃん、わし・・・
やっぱり行かしてほしい・・・」という。
めいこと静は「なんで?」と
あわてて聞いた。
静は、「今日ごっつい恐い目にあったやろ?
あんなんと違うねんで。
もっと怖いんやで」という。
希子も、「主計官というても兵隊やで。
ご飯炊いているだけやないのよ。」と
反対する。
「このまま好きでもないことを毎日やって
それで事故とか空襲で死ぬんやったら
せめてすきなことをやって死ぬほうがいい。
このままやとわし、
何のために生まれてきたんか・・わからん。
わからん・・・・。」
「あんたは、お母ちゃんを人殺しに
するきか。あかんもんはあかん!!!」
悠太郎はめいこと部屋で話をした。
悠太郎はさきに活男の気持ちを
知っていたので、黙っていたという。
めいこは悠太郎が志願をさせてやろうと
していることをわかっていた。
「子供の希望を握りつぶすのは
親の仕事やないってあなたは
この間言うたでしょ。」と悠太郎は言った。
「ふ久の結婚とは違う」とめいこはいう。
悠太郎はあえて最悪の場合を考えて
みたという。
「志願して行かせて戦死した場合と
説き伏せて、行きたくもない工場へ
行かせて死んだ場合と・・・
ぼくは後者のほうが耐えられないと
思いました。」
志願したかて望みどおりになると
は限らない、やりたくもない仕事を
させられるかもしれないとめいこはいう。
「あした、突然
戦争が終わるかもしれません。」とめいこ。
悠太郎はめいこを見た
「あなたは納得しないでください。
活男を行かせるのは僕です。」
「え?
ばかにせんとってください。
私は別に責任逃れをしたいわけでは
ありませんから・・・」
そういって、めいこは部屋から出て行った。
・・・・・・
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戦争は大きく人の人生を変えていきます。
思い通りにならないのです。
あたりまえが当たり前ではないのです。
そして、苦しむのはこうした庶民です。
特に若い子供たちは、なんのために
生まれてきたのかと問います。
自分がやりたい仕事につきたいとの
思いも、かなえられません。
好きでもないことを毎日させられます。
夢を見ることはご法度となります。
だれのための戦争でしょうか。
だんだん腹が立ちます。
お母ちゃんを人殺しにする気か
というのは、志願をさせて
活男が死んだら、させた自分が
殺したようなものだということです。
これは辛いです。
これが戦争です。
自分の子供は無事でも
自分の子供が打った弾が
人の子供を殺すかもしれません。
自分が人殺しにならなくても
息子は人殺しになります。
そしてめいこは人殺しの母です。
戦争体験者だったひとが
昔・・・・人を殺したことがある・・
なんて
話をどれだけの人が言ったでしょうか。
多くは口を閉ざしたと思います。
しかし・・・
だれもが心の中で人を殺してしまった
罪に深い傷を負っていると思います。
なにひとついいことなんてないのが
戦争ですね・・・。
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で・・・今朝起きて
真央ちゃんは???真央ちゃんは???
と携帯を見ましたが
ニュースがありません。
PCを起動したら・・・・
あああああ・・・
なんと・・・
つらい・・・・・・。
16位。笑顔なし。
あれほど、がんばって
耐えてきたのに
まだ・・・・
報われないのかと
・・・・(涙)
平岡君(スケボ銀)の鋼の心臓・・・
真央ちゃんに貸してあげてと
言いたいです。
