私の大豆な男の子3
泰介の話は
二人にとって驚くものだった。
「ねぇちゃんが
夜這いしていた・・・。」
悠太郎は
「よ・・・よ・・・よ・・・」
めいこは、悠太郎を抑えて
泰介に聞いた。
「そ・・それ・・・
ほんまなん?」
泰介は
頭をうなずくように頭を下げた。
つまりこうだ。
泰介が諸岡の部屋のふすまを開けると
諸岡が押し倒されて、ふ久が襲っていると
・・・・。
「なに、やっているんですかぁぁあああ
あああ!!!」
泰介は
落ち着いてふすまを閉めた。
そして、ふ久を諸岡から離した。
「ねぇちゃんこそ、これはやり過ぎと違う?
どうみても諸岡さん、困ってはんねんけど!」
すると諸岡は
「困ってませんよ・・
困ってはいませんけど・・・
困ったなぁ。」
泰介はため息をついて
諸岡の横に座ってふ久をみた。
「ねぇちゃん、なんで急にこんなこと
いいだしたんや?
諸岡さんのこと急に好きになったん?」
ふ久は座りなおして正座をした。
「うちな・・・
諸岡君と泰介が一緒におるときに
妄想しとったんや。」
つまり、ふ久は二人がとても仲が良くて
男の友情ってええなと思っていたという。
女が入られヘン世界やなと思ってたのだ。
「妄想?けったいな趣味やな」と
泰介はあきれていった。
つまり、今何を話しているのかとか
次はこう話すだろうとか
そういうことを考えていたわけだ。
たまに、外れることもある。
この間の、諸岡が急に来て
どうしたのかと活男がきいたとき
ふ久は西門に会いに来たんやと
いうやろうなと思っていたら・・・・
ちがっていたということとかね。
「はじめはただの趣味やと思っていたけど
次の年、別のピッチャーの子を
連れてきたやん?
それでまた、同じことをやろうと思った
けど、できへんかったんや。」
泰介は、考えた。
「諸岡君やったらこんな時ものすごく
食べるのに・・・とか
不必要に礼儀正しいのに・・とか
比べてばっかりで楽しめんかった。」
ふ久が黙ってしまったので
泰介は、「それで?」と聞く。
「諸岡君がおらんようになると聞いたので
この人がもう見られヘンかもしれヘンと
思ったら・・・どうないしよう、どうしたら
ええんやろかと思って・・。
うちにできることは一つしかないやんか。
それがあんたのいうとおり好きなんかどうか。
うちにはわからんけど、うちは諸岡君の
子供がほしいって・・・・・思った。」
泰介はどうすればいいのわからない。
すると諸岡がいった。
「もっと・・・もっと早く教えてくださいよ。
もっとはよう、いうてくれはったら
ぜんぜん違ごうたのに。」
そういって諸岡は泣いた。
「うちに・・・
子供残してくれヘン?」
以上が泰介の報告だった。
「ねぇちゃんはすごく純粋だと
思う・・・。
あのひとは、結婚するしないは関係ないんや。
諸岡さんのことが好きで好きで
子供を残したいだけなんや。やり方はえげつない
けど僕は純粋で強い愛情の持ち方だと思った。」
「それで?」と悠太郎がきく。
「それだけです。あとはお父さんが考えて。
おかあさん、ご飯して。
活男、下でへばっとったで。」
「ああ・・・
うん。」
泰介は頭を下げて出て行った。
悠太郎は、考え込んでしまった。
この問題は、考えるポーズでは
解決できないのか
力が抜けている。
めいこは、立ち上がった。
そして、いった
「おとうさん、子供はものすごい支えでも
あるのですよ」
「だからなんですか?」
「それだけです・・・。」
めいこはでて行った。
悠太郎はため息をついた。
夕餉をかこむ家族たち。
なぜか、ふ久がよく食べるので
活男はびっくりしていた。
静もなんかあったのかと聞く。
悠太郎が下りてきた。
後で持って行こうと思っていた
といってめいこはご飯をよそった。
悠太郎は泰介に聞いた。
「諸岡君のうちは円満なんか?」
めいことふ久は驚いた。
泰介は正座をしていった。
「おじさんとおばさんは仲はよさそうやで」
「おじさんはなにをしているのや」
「工場をやっている・・・。」
「ふ久・・・
子供育てるというもは簡単やないで
お母さんがお前を育てるのに
どれだけ苦労したかわかるか?」
「うん」
「お前にできるのか?」
「子供というのは親の見えヘン
力で育つものや。
うちもそうするつもりや。」
「子供ができたら勉強もあきらめなければ
ならなくなるけど、それでええんか?」
「勉強はやる気になればどこででもできる。」
「それで・・・
ホンマに幸せになれるんか?」
「自分で決めたことや。
後悔はせーへん。」
家族は二人のやり取りに口をはさむこと
なく、聞いていた。
悠太郎は、「今日はぎょうさん食べなさいと
いった。」
「え?」とふ久。
「食べたら挨拶に行きますよ。
あなたも・・・」
と、めいこにいうと、めいこは
「今からですか?」と驚いた。
「失礼は承知ですが
時間もあまりないことですし。」
「そんなに急がなくても・・・」とめいこは
いった。
「子供欲しいんだったら
いそがんとあかんでしょう?」
その場にタメイキが出た。
悠太郎の結婚許可だった。
「ええの?」とふ久がいった。
「こっちがよくても
向こうさんに断られるかもしれへんけどな。」
「父ちゃん・・・
おおきに。」
悠太郎はパクパクと食べた。
静は希子と顔を見合わせて
笑った。
ふ久と一緒に食べる最後の
夕餉となった。
支度をしたふ久は
風呂敷づつみをもって
両親のあとにつづいて
玄関を出た。
そして、振り返った
ふたりに、深々と
頭を下げた。
ふたりも頭を下げた。
夜の道を三人はだまって
諸岡宅へ向かった。
家の中では
川久保が、「おにいさん決めはったら
早いな」と感心していった。
「そうでしょ?」と
希子と静は笑った。
泰介は「あんなんで嫁にもらってくれるのか」と
心配した。「実際、結構、迷惑のような気が
する」という。
静は「息子の子供を産みたいというてくれる嫁
なんて、家を質にいれてもほしいやろ・・」という。
「ま、そうですよね、」と川久保。
泰介は、ふと、後片付けをしている
活男が元気がないのに気が付いた。
悠太郎、めいこが帰り道話をしている。
諸岡家のお母さんが
泣いていたという。
「諸岡君が涙もろいのは遺伝かな」
さっきから黙っている悠太郎に
めいこはいった。
「そやから、急ぐことはないと
いうたやないですか。」
明らかに悠太郎はショックを
受けている。
こんなかたちで一人娘を
嫁に出したのだ。
というよりは悠太郎はふ久を
嫁に出すことは考えてなかった
はずだった。
「一晩寝ると決心が崩れそうで・・」
「ふ久ってわがままやないですか。
自分のたのしいと思うことしかしないし
やりたいことは必ずやるし。
そんな子ですから、大丈夫です。」
悠太郎は、「今・・・と言葉を切った。
猛烈に卯野のお父さんと
お酒が飲みたいです・・・。」
一方、諸岡家では
球を投げる格好をする諸岡と
ふ久。
こうなげると回転して
ドロップするとかシュートするとか
話をしている。
ふ久は回転が問題やという
「ちょっと今から投げてみて」
「え?今からですか?ふ久さん。」
「立って・・・!」
この二人、ある意味仲がいいかも。
翌朝、これもあれもと
泰介に食べ物を持たすめいこだった。
「僕よりあいつに食わしてやってや。
活男・・元気ないやん。」
勤労奉仕で疲れているのかと
めいこはいった。
「そうか・・・。」
あまり笑わなくなったなと思ったと泰介は言う。
その活男の職場。
勤労奉仕中に海軍の兵隊から
全体への話があった。
海軍に従事してほしいとの
話しだった。
そんなことより、おなかがすいた活男だった。
昼ごはんになった。
「一身をなげうつか・・・」と友達たちは
海軍へ入ることを考えている。
おまえは?と聞かれて
活男は答えられない。
弁当を開けると
大きなおにぎりと
大豆と小麦粉の
天ぷらだった。
そこへ海軍の軍人が来た。
敬礼といって立ち上がったが
軍人はいいからといった。
活男たちが座って
食べようとしたとき、
活男の弁当を見た軍人が
「なんだね、その肉は?」と
聞いた。
活男は、大豆ですといった。
「いかがですか?」
と差し出した。
ひとつ食べた軍人は
「小麦粉も使っているのか」と
いった。
活男は「なぜわかりはるのですか?」
と聞いた。
軍人はにんまりと笑った。
西門家では
めいこが鶏を食糧難対策で
貰い受けることができたと
喜んでいた。
これで、卵を産んでもらおうと
いうのだった。
そこへ活男が帰ってきた。
なぜかにこにこしながら言った。
「おかあちゃん・・・
わし・・・
志願する・・・」
めいこは、わからない。
「海軍に志願する・・・」
めいこは・・・
・・・・・・・・・
***************
一難去ってまた一難。
子供は親の知らないところで育つ
とかといいますが
海軍へ志願するって???
活男・・・戦争へ行くのか!!!!
末っ子なので兵隊へ行くなど
まだ先と考えていなかったと思われる
めいこだった。
めいこは、よくぞ言ったお国のために
がんばっていらっしゃいと
いうか????
自分の子やで??
源太のときも、なにかしらつらそうだったのに。
源太のこともあるし・・
戦争など、わが子が苦労するのが
目に見えている。
めいこの反応は?
娘ふ久のことで
悠太郎が悩んだのと同じく
息子のことで
めいこが悩む番となった。
苦労するね・・・・
子育ては・・・。とくに戦争中は
すべてが苦労だけです。
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朝ドラマが終わるとオリンピックですね。
これをみますけど
先週はあの男子フィギア
羽生結弦君の美しさに
圧倒されて・・・いましたが
なんと、ごちそうさんは
このような展開となって
いきましたので、目が離せません
でした。
オリンピックにもまけない
面白さだと思います。
