貧すればうどんす5
朝、めいこはアルミ缶のなかを見ると
見事
氷は
溶けていた・・・
「なんでやねん!!!」
なんで、氷冷蔵庫へ入れヘンの???
活男のことば、「もう一回や!もう一回!!」に
救われる。
めいこは頑張ろうと思った。
うま介の店では源太が氷を見つけられずに
すまんと謝っていた。
このご時勢・・・しかたないとうま介は言う。
しかし・・・・・・・
そこへめいこが大事そうに持ってきた荷物。
そっとあけると氷が・・・!!!
わぁ~~~と歓声があがる。
源太はくやしそうに、「なんでおまえが
もってくるねん!くそ~~~~!!」と
いった。
希子の放送局でのことだった。
室井が前もって放送の部屋を
見に来たのだった。
合図を出す部屋には
情報局の役人が常駐していてまずい
放送をするとその場で
放送を中止させられると
のことだった。
しかし、ニュース以外だと
あまり厳しくはないそうだ。
「寝てますけど・・・」
と、室井は役人が寝ているところをみて
納得した。
うま介の店ではあの客がやってきた。
待望の焼き氷が出来上がった。
桜子は氷のトップにマッチで
火をつけて
「消えたらお召し上がり下さい」といった。
桜子は、客に上着を羽織らせて
あげた。
なにしろ、冬である。
しかも、食べるのは暖かい
お汁粉ではなく
つめたい
焼き氷である。
ん・・・・・・なにか理由でも?
客は「おおきに」といって
スプーンをもって
食べ始めた。
ひとくち味わいながら
食べて
「妻が
食べたがっていたんですよ」
という。
桜子は
「奥様が?」と聞く。
「結局連れてこられへんうちに
病気になって
逝ってしまいました。」
厨房で聞いていたうま介とめいこは
はっとした。
「向こうでおうたら
どんな味だったか
話してやろうと思いまして・・・」
「向こうでお会いになるって???」
桜子は驚いて聞きなおした。
どういう意味だろう??
客はだまって
急ぐように食べ始めた。
そこへドアが開いた。
男が二人入ってきた。
桜子は、走りよった。
うま介は「特高か?」とつぶやいた。
男は、ひたすら食べている男に向かって
「立て!!!」といった。
客は必死で食べ続けている。
「立て。池上良助!立て」
それでも応じないので
男たちは客を捕まえてたたせて
連れて行こうとした。
めいこは、とめようとした。
「逃げようとしているわけではないので
終わるまで待ってあげてくれませんか?」
すると男の1人がめいこを突き飛ばした。
めいこは倒れた。
桜子が「めいこ!」といってめいこに
走りよった。
「待ってください!!」
それでもめいこは男たちに言い続けた。
が・・・
待ってくれない。
むりやり連れて行こうとする。
そこにうま介が・・
出入り口を両手を広げて
通せんぼをした。
「どけ!!!!」
うま介は
「焼き氷!!
みんなで一生懸命作ったんです!
僕はこの人が食べているところを見たいんです。」
めいこは立ち上がってうま介を見た。
「器が空になったところを
みたいんです!
この人のためやなくて
僕のため、僕らのため
この人に焼き氷を
食べさせてやってください!!!」
うま介は帽子を取って
そこで土下座をした。
そして
「お願いします!!!!」
と頭を土間にぶつっけた。
「うま介さん!!」めいこは叫んだ。
「お願いします!!!!」
どん!!
「おねがいします。」
どん!!
お願いするたびに頭をぶつける
うま介。
めいこは、「その人が死んでしまいます」と
叫んだ。
それでも、
うま介は
「おねがいします」
どん
を繰り返した。
特高も
池上も
じっとみていた。
そして
「一分だけやる」
といった。
うま介は赤くなった額をあげて
彼らを見た。
池上は席に座り
桜子はスプーンを差し出した。
池上は食べ始めた。
うま介はうれしそうに見た。
食べ終わった池上は
桜子を見て礼をし、
そして入り口に座っている
うま介の目線にかがみ、手をとった。
じっと感慨深そう見て
「大将・・・・・
ごちそうさんでした。」
そういって頭を下げた。
うま介は、うんうんとうなずき
頭を上げた池上の肩に手を
おいていった。
「また、来てや!!」
池上は
うなずいた。
ーごちそうさんだね・・・うま介さんこそ、本当の。
めいこは、悩んだ。
わたしはごちそうさんなのか?
かえりみち、子供たちが「ごちそうさん~~」と
呼んでめいこの下に来た。
「おばちゃんのこと、ごちそうさんと呼んだら
あかん。おばちゃんはただの
あかんたれや・・・・・。」
とつぶやいた。
うま介の店では
先ほどのことで話をしていた。
「あか、だったんだね、お客さんは」
と室井がいった。
桜子はじっと考えていた。
様子がおかしいので室井が
「桜子ちゃん??」と聞く。
「なんか・・・
ふう
悔しい・・・・
寒さに凍えて
食べるものも我慢して
命まで差し出すことを求められて」
室井はじっと見ていた。
「言いたいこともいえないで」
桜子は泣きながら言った・・・。
地下室では
悠太郎とめいこが貯蔵状況を
更新していた。
「こんなことやったらあかんのですかね?
ひとりじめせんともっと振舞うべきなので
しょうかね?」
「ここにおむすびがあります。」
悠太郎が話を始める。
「これを食べないとあなたは死んでしまうとします。
となりに、おなじくそんな人がいたとします。
あなたはそれを譲りますか?」
「それは、うちの子ですか?」
「いいえ、よその子です。」
「・・・・うん・・
無理ですね。」
「そういう人がええかっこうしても
後が続きませんし、みんな施される
コトを望んでいません。」
「何かいい方法はないでしょうかね。
貧してもどんしない方法。
現実で出来る範囲で・・・・・」
めいこは悩んだ。
翌日のことだった。
めいこはずっと考えていたがいい案が出ない。
そこにラジオがかかった。
今日の小国民の時間は
室井が出演するのだった。
「おでん皇国はいま
ポトフ帝国率いる連合軍と
戦っていますね。」と希子は
室井に聞く。
「は・・・・?」
室井は上がっていたので
答えられず、希子が
脚本をゆびさした。
「あ・・・こほん
そうです。一度は友好関係を保っていた
両国ですがポトフ帝国は変質し
おでん皇国を滅ぼそうとしているのです。」
「では、激突おでん皇国連合艦隊。
大海原の勇者たちをお送りします」
ざざーーーーー
擬音係が音を出す。
「眼前に広がる大海原・・・・」
室井が話を始める。
「おでん皇国の軍艦土鍋丸は
おでんの勇者たちを乗せ
一路ポトフ帝国へと進んでいました。」
話がどんどん進んでいく。
情報局の役人は寝ていた。
どうせ、子供の番組である。
ミキシングは川久保ともう1人いた。
「捕らえられた白天丸を助けに来た昆布の介。
そこには白天丸にばけた薄汚いソーセージ兵だった。
昆布の介、何と言う不覚。
見ると幾重にも繋がったソーセージ兵。
もはやこれまでかとおもったその時
そのとき・・・・・・」
室井は言葉を切った。
神風が吹くのである・・・
そしてポトフ帝国は滅びるはずである
のだが・・・
室井は考えた・・・・
希子は室井を見た。
「そのとき・・・・
マグマが・・・どどーーーーーーーーん!!!」
希子は・・・・?
めいこも・・・・?
活男も・・・・あれ????
神風ではないの???
「続いて天まで届くかと思われる
水柱・・・・・!!!!
ごおごおとほとばしる水柱に
ポトフ帝国の軍艦も
おでん皇国の軍艦も
ひっくりかえってしまったのです。」
川久保は役人を見た。
彼は寝ていた・・・。
このまま行こう・・。と合図を出した。
希子は
つい聞いてしまった。
「両方とも???」
「そうです。
両方ともひっくり返りすべてのものが
水中へと投げ出されました。
てやーーー
えやーーーー
こらさーーー」
室井は絶好調で掛け声まで入れた。
「白天も昆布のすけも
大根の条も、たこ衛門も
ソーセージ兵と力の限り
戦いっています。」
桜子はじっと聞いていた。
めいこもただ事ではないと思った。
「ところが・・・
マグマのせいでしょうか・・・
海はどうにも暖まってきました。
ぽかぽか・・・ぬくぬく・・」
めいこも活男も
泰助も・・・ラジオの前に
集まった。
「ぽかーぽか
ぬくーーーぬくーー
その暖かさにおでんだねの本能が
うづきます。
思わず白天王丸がつぶやきます。
ええあんばいや~~~~~~」
希子は・・・ふっと笑いました。
「たこ衛門もつい・・・ほっこりするな・・とほほを赤らめます。
さて!!!」
役人がおきた。
「問題は昆布の介・・・。」
川久保は
役人を見た。
「あまりの気持ちよさについつい
御出汁をにじませているではありませんか!!」
希子は身を乗り出した。
「大根の条が思わず叫びます。
あかん~~~
昆布の介はーーーん
御出汁だしたら
あきまへーーーーーん。
それ出したら
それ出したら・・・・・・
まろやかに
なってまう~~~~~~~~」
ラジオのまえの泰助と活男は
笑った。なんやこれ~~~あははは
めいこは真剣にきいた。
「ふと気がつくと
にっくきポトフ帝国の兵たちも
おなじことが起こっているではありませんか。」
役人は脚本をチェックし始めた。
「もともとは陽気な性格のソーセージ兵たち。」
希子も川久保を見た。
「あまりの暖かさに踊りだしております。」
役人は、顔をしかめた。
「それを見たおでんたちも踊りだします。
あなたも私も
踊れば楽しい!!!
気がつくとみんな笑顔で
炊かれていました・・・。」
役人はどうしたことかと
疑っている・・。
「白天もたこも大根もソーセージも
キャベツも・・・
にんじんも・・・
同じ鍋で・・・
それも
大きな
大きな
地球と言う
同じ鍋で
ございました・・・・・・・。」
ミキシングルームはてんやわんやと
なっていた。
希子はあわてて
「しょ・・小国民の時間でした。」
といって番組を終わった。
うま介の店では・・
ー唖然、ボウぜん。
「昆布の介出しだしてたな」とあやめ。
「ソーセージ踊っていたで・・」とうま介。
「まろやかになってまう??」と桜子・・・
「あははは」
「ないわ~~~」と桜子
「ないわ~~~~~~~。」とあやめ。
「あははははは・・・・」
ー大笑い。聞くものたちを混乱の渦に落としいれた
室井さんのお話でございましたが・・・
ーひとりこの話に心底打たれた
おなごがおりました・・・
めいこはつぶやく。
「一つの鍋・・・・」
活男がふりむく。
「そうやわ、一つのお鍋や・・・。」
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面白かったですね。今日の内容。
絶対面白い。
室井さんってこんなにもおもしろかったのかと
改めて感動しました。
最初はアカの思想犯がきて
緊張しました。
やはり、この言論統制の時代だ
と思いました。
暗いなぁ~~~やっぱり・・・・
と思ったら、室井さんです。
これは・・・ええのか???
まさか投獄されることはないでしょうね。
どうでしょうか?
川久保への影響は???
希子へのお咎めは???
でも、室井さんのお話は
いいお話ですね。
一つの鍋でほっかほか~~~です。
大きな地球と言う同じ鍋で・・
ええ、話やぁ~~~~~~~ぁああ
今日はすごい雪です。
みなさん、今宵は鍋で・・ほっかほか~~~と
なりましょうぞ。
