貧すればうどんす2

ー昭和18年勢いよく始まった
太平洋戦争でしたが
日本は勢力を盛り返した
連合軍の前に敗戦に次ぐ
敗戦・・・

ーにもかかわらず、戦果を偽り続け
もはや後には引けない悪循環
に陥りました。

ーそして

国民生活もそれにつれて悪循環に
陥り食品、日用品、衣料品はすべて配給制に移行し
店頭で自由に変えるものはほとんどなくなり
ました。

ー主婦たちは今日は米
明日は野菜、明後日はあぶらと
日々配給の列に二時間も三時間も
並ばねばならなくなりました。

ーそれは大変な時間と労力の負担で
隣組で共同購入する人も増えました。

持ち回りで並ぶのです。

ーそんな中めいこは・・・

「あの人や、ごちそうさん・・」

「あの人が??」

ーこのご時世で子供たちにおやつを配る
ごちそうさんとして世の中から
注目されて

ー図に乗っておりました・・・・。

集会所で配給の野菜をみんなで
分け合う。

ある主婦が自分のカブが小さいと
文句を言う。

みんな同じやと言われるが
納得できない。

めいこは、葉のほうに栄養があるらしい
ですよという。
それでも主婦はお腹にはたまらないから
と不服そうである。

めいこは自分の分と変えましょうかと
取り換える案を提案した。

主婦はよろこんだ。「さすがごちそうさんやな」と。

なぜかしら快く思わない人もいたことは確か
だったが。高山さんとか・・・ね。
(やっと名前がわかった)ステーキの時
怒鳴り込んできた隣組のえらいさんです。

家に帰ったら家の前で子供たちが
待っていた。

「ごちそうさん、遅い。」

「今日は何?」

「お腹すいた~~~」

と子供たちは口々に言う。

夕餉の支度の時
カブを料理しているめいこ。
「またかいな・・・・この間もそうだった」と静は言うが
配給は品物を選べない。

そのとき活男が、「おかあちゃん、小池さんが
来はった」といった。

めいこは、あわてて、窓を閉め
障子を閉め、ふすまを閉め・・・

何もそこまでせんでもと言われても
「壁に耳あり、障子に目ありですから
。密告されるといけませんから。」

小池さんというのは
闇業者である。

配給だけでは生活できない庶民は
いろんな手立てを考えていました。

家族の数を水増しして申告したり

農家へ買い出しに言ったり

闇業者から買ったり。

ー多かれ少なかれ
みんなやっていることではありましたが
不正には違いなく密告を恐れ
お互いひた隠しにするのが常でした。

こうして、やっと夕餉になった。

「また闇米が値上がりしたのですか?」

「公定価格の六倍や。お砂糖なんて二十倍やて。
背に腹は代えられへんから」とめいこはいう。
川久保は「市場の人にいうて
都合してもらったらどうですか」という。

「そんな人はたくさんいるから言いにくくて」
とめいこ。

「お金は大丈夫ですか?」と悠太郎。

「何とかギリギリやってます」とめいこ。

泰介は「ごめんな」という。
「高校への進学のお金がいるうえに」と
いった。

「なにゆうてんの。それよりふ久あんたや
あんた。来年師範学校卒業やろ
どうするの?」

「人に教えることはめんどうくさい」

「うちでごろごろしてても勤労奉仕に
駆り出されるだけやんか」とめいこ。

希子に何とかいうて欲しいとめいこは言うと
「働くことは向き不向きがありますから」

という。

活男が中学をやめようかというと
「今このご時世で
コックの修行なんかさせれくれるところは
ないっていうたろ?」という。
だから、中学へ行けとめいこはいうのだが
東京のおじいさんのところへはなぜ行ったら
だめなのかと活男は聞くが
東京も大変なのよとめいこは答えた。

「とりあえず、うま介の店で手伝いをさせてもらって」
とめいこはいう。

翌日、うま介の店に行くと
どのメニューも品切れで商売どころではない。

そこへ、室井が帰ってきた。
手には籠をもっていてなかには
リンゴが入っていた。

講演会でもらったという。
「あやめちゃーん」と娘を呼んだ。

うま介は「それ、店に出していいか」と
きく。「言い値で買うから」と・・・。

室井は嫌そうにするが
桜子は「いいですよ、店に出しましょうよ」という。

室井は「ええ?」と不服そうだった。
「食べられない時に助けもらったでしょ?」
「ここのお客さんに食べさせてもらった
わけでは・・」室井がというと

桜子がバンと持っていたお盆で
室井の頭をシバいた。

「いてっ!!!」

活男は、アヤメに
「店に出せるということでええんかな」と聞く。

アヤメは

「ええと思うよ・・」と笑っていった。

集会所ではめいこが得意の腕を振るって
見た目はきな粉餅を差し入れた。
中身は芋のつぶしたのと、うどんの残りもので
作りましたとめいこはいった。

みんな喜んで食べた。

そりゃそうですよね、このご時世で甘いきな粉餅なんて
食べれるのですから。

外に婦人会の松島副会長さんが来ていた。
ここの婦人会の活動を見に来たらしいが。
実は、ごちそうさんというひとがいるらしい
のでその人に会いに来たという。
そして、めいこにあって感激したようだ。

その副会長とめいこは雑誌のインタビューに
載ることが決まった。

よろこぶ子供たちだったが。
希子はそんなごちそうさんの生き方が

うらやましくてたまらない。

「あんたかて立派な仕事をしているやん」と
静とめいこが言う。

「ええ、まぁ」という希子に何か疑問形がみえた。

そこに、闇物資の疑惑で調べが入った。

ついに、ヤミ米が摘発されて、取り上げられた。
公定価格で買い上げられたので
大損した。

「通報したのはだれやろ」という
話になった。

「目立っていたから」と泰介は言う。
「子供におやつをやるなんて
そんな余裕があるのはおかしいって
思われたんと違うか」という。

「かもしれヘンな」と静も言う。

落胆する家族だった。
悠太郎と川久保が帰ってきた。

「何かあったんですか?」

めいこは、悠太郎を見て言った。
「地下室を作ってください。
絶対、見つからない地下室を
作ってください・・・」

そういって悠太郎を見るめいこは
悔しさに満ちていた。

***********

大枚をはたいてかったヤミ米をもっていかれた
めいこ。

悔しくてたまらない。
せっかくのご飯である。

配給だけでは無理なのである。

どうにもならないご時世。
それで子供におやつは
やりすぎだったと思うけど。

子供たちもお腹を空かせて
いるので、かわいそうである。

一体誰が、この不幸の責任を
とるのか。

権力者は勝手なやつらばかりで
自分のことしか考えてないのは
古今東西どこも同じかもしれない。

しかし、だからと言って許しては
いけないのだ。

昭和18年・・・
まだまだ二年も終戦まであるのだ。

その間、東京の大空襲があり
大阪も空襲で焼かれる。

終戦までにみんな元気で生きていられたら
いいと思うけど・・・・

生きてくださいね。