乳のおしえ3
「今日は白身魚のフライか・・・」
市場に魚を買いに行った
めいこ。
並んでいるのはいか、たこ・・
「イカではイカんか・・・・?」
と言われる。
白身の魚がない。
「これは?」
と、銀二がエイを指さした。
「エイ・・・・って白身なん?」とめいこ。
「そこは白身やろ・・・ぼけっ!!」
ふりむくとそこになんと
源太がいた。
「源ちゃん!!!!!」
「ただいまぁ~~~~」
源太は笑顔で言った。
うま介の店で
源太とめいこ、うま介、桜子、室井が
集まった。
現地で病気になって任務不適格で
返されたという。
「体大丈夫なん?えらい痩せたみたいやけど。」
源太は何も言わない。
「源ちゃん??」
「ああ、ろくなもん食えんかったから・・・
そのうち太るやろ。」
「タンポポコーヒー、あれから
うまくなったよ。」
と、コーヒーを出すうま介。
それを前にじっと考える。
一口飲む。
そして、ため息をついて
「戻ってきたんやな」という。
めいこは、ほっとして笑った。
「とりあえず良かったね。
大きな声では言えんけど・・・。」
そして、源太は恋人のもとに報告に行くといって
出て行った。
「タンポポコーヒー・・・まだあかんかったかなぁ」
うま介は言った。
カップの中は減ってなかった。
悠太郎の職場では、鉄筋の調達のことで
悩んでいた。
木崎の靴を見せて
部下その一は(名前がわからない)
「この靴見てくださいよ
直して直してついに穴が開いたんですよ。」
「これ以上は無理だから
上に報告して自分たちで設計を変えませんか」
と究極の話をする。
「もう限界かもな・・・・」と悠太郎。
そんな時、ある部下2がいった。
竹元を見たという。
話はしなかったが、竹元は自分で
鉄筋を探していたという。
「いまいうかその話」と全員愕然とした。
悠太郎は、「もう少し粘ろうか」と
結論を言った。
そこへドアが開いて
「西門く~~~~~~~ん~~」
と元上司藤井が来た。
「取り込み中です!!」
「ええ話あるんやけど。」
おひるごはんを食べながらの
話となった。
悠太郎が弁当箱のふたを開けると
藤井がべに子と名づけた
糠床につけたきゅうりの漬物が
入っていた。
「べに子~~~」と呼ぶ藤井。
さっと蓋を閉める悠太郎。
「なんですか?ええ話というのは?」
「なぁ~~んでしょ?
なんでしょ?」(めいこの口癖)
「まったく偶然と思いますが
冒涜されているような気がしますので
止めてもらえますか。」
藤井は、さっそく話をした。
鉄筋の代わりに竹を使う
竹筋コンクリートの話をした。
「僕は不安でつかえません。」
そう、いった。
藤井はそれは昔のもので今のものは
ずっと良くなっているから、
書類を読むだけ読んでみてほしいと
いう。
西門家では、静が源太が帰ってきて
良かったなと話をしていた。
めいこは、エイをつかってフライを
作ろうとしている。
活男に指図しながら活気があった。
ところが・・・
泰介が帰ってきた。
なんだか元気がないので
あかんかったんかと静は聞く。
ところが、泰介は勝ったという。
なのになぜか元気がない。
どうしたものかと聞くと
「試合は勝った・・・けど全国大会は無しやって。
今後五年間、全国大会は中止。
甲子園はないと」いう。
「なんでや???」
めいこたちは面喰う。
「自分たちもわかりませんが・・
試合が終わってから
監督に言われました。」と諸岡は
いう。
「そして、じゃ、これで失礼します」と
いって
帰ろうとした。
「まって、ご飯食べて行って。」とめいこは
いう。
諸岡は、とんでもないという風に
「いただけませんよ、そんな・・。
もう・・・甲子園・・・ないのに・・・・。」
「今更そんなこと言わんでも。
大会始まる前から来てはったやんか。」
と活男。
「それは・・・」
「あ、けど、予選は最後まであるんと違う?」
めいこはそういった。そして、
「カツ食べないと・・・」といった。
活男もそういった。
諸岡は遠慮気味に
「お相伴させていただきます」と
いった。
「うん、うん、さ、二人とも
手を洗ってきて。」
二人とも「はい」と言った。
ふ久はじっとみていた。
ー戦局拡大の影響でこの年甲子園の
全国大会は
突然中止となりました。
泰介の部屋で諸岡は言った。
「あんまり湿っぽくならんようにしような。」
「・・・・はい。」
泰介は答えた。
それをふ久が陰で聞いていた。
悠太郎と川久保が帰ってきて
甲子園が中止となったことを
静から聞いた。
「そうか・・・・」
「あの・・」と川久保は言いかけたが
やめた。
そこへ、めいこが息を切って
帰ってきた。
近くの鶏を飼っている家で
卵を一個だけもらってきたという。
カツの衣につける分しか
卵がなかったので
タルタルソースにする分を
もらってきた。
夕餉になった。
「これ、むちゃくちゃうまいんですよ。」
と泰介が諸岡に言った。
「おとうさん、早く早く」とめいこが
悠太郎に合図をするようにいう。
「では、いただきます。」
といったので、全員で「いただきます」と
いって、食べた。
カツを食べた諸岡は
「なんなんですか?これはぁ~~~~??」
とあまりのおいしさにびっくりした。
「おいしい?」
「おいしいなんてもんやないです。」
「がつがつ行き。」
「がつがつ・・」
「はははは・・」
にこやかな夕餉だった。
諸岡はタルタルソースの作り方を
聞いた。
材料がたくさん必要だった。
卵も必要だ。
みると、ほかの家族の分は
タルタルソースではなく
普通のソースだった。
「僕たちのために?」
「大変やと思うやろ?
ところがやぁ・・・・。」
と、めいこは鳥を買っている
おじさんに、自分がにこ~~っと
笑ったら、くれたんや。自分の魅力で
もらったんやと面白そうに言う。
静は、「はよ食べや・・・」と
面倒くさいことに気を使う必要はないと
言わんばかりに言う。
「はい・・。」
「おばちゃんの魅力やで~~~あははは」
家族が笑っているときに
諸岡は・・・泣き始めた。
「諸岡さん・・・?」泰介は聞いた。
「すみません。
こんなに応援していただいたのに
甲子園いけへんで
すみません・・・・」
「なにいうてんの。」とめいこ。
「あんたら、何も悪ないやんか。」静
「わしも、カツ作れたし。」活男
「私もええ夢見せてもろたよ。」希子
「さっき、泣かへん
言うたやないですか。」泰介。
「今そんなこと言うなや・・。」
めい子も泣いた
「食べ、おばちゃんの分も食べ」
「ぎょうさん食べ!!!」
泣きながら、みんな思いは一緒だった。
悔しいと。
食後、悠太郎の部屋でのこと。
「もしかしたら知ってました?こうなること。」
悠太郎は川久保に聞いた。
「今年は大丈夫と思っていたのですが。」
川久保はひそかにわけを言われずに
ラジオの拠点局を設置する仕事をして
いるという。この時代に増局である。
米英の空襲に備えての予防策としか
思えないとの話だった。
「ホンマにそんなことになるんですか・・・。」と悠太郎は
言った。
いつものように、路地で
キャッチボールをしている諸岡と泰介。
最後に思いっきり投げた諸岡は
泰介に近づいて
「もどろうか」と声をかけた。
玄関の陰でそれをみているふ久。
二人が戻ってくる。
ふ久がずいっと門の前に出てきた
ので、二人はびっくりして
一歩下がる。
「あの、諸岡君・・・
これからも遠慮せんと
来てな。」
「え?」
「二人の青春はうちの青春やから。」
そういって、中に入って行った。
ーいつの世も変わらぬ青春のたたずまい。
けれど、時代は移り変わって
行くのでございました。
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戦争によって人は傷つき
心も、体も
壊していきます。
おそらく源太も、つらい思いを
したことでしょう。
また、これからもおいしいものを
食べることもできず
すきなこともできず・・・。
国家は安心して平穏に暮らせる
幸せを、というささやかな庶民の願いを
無残にも打ち砕いていきます。
これが人の道かと思うような時代に
入って行きます。
ふ久の青春とは???
なんでしょうかね・・・。
不思議ちゃんなので、よくわかりません。
めいこのカツに対する
執念すごかったですね。
タルタルソースは難しいです。
わたしは買います・・・けど。
