贅沢はステーキ3

天満の市場、源太の肉屋の奥で
出征祝いの会の打ち合わせをしている。

めいこは、源太に何が食べたいかと
聞く。

源太はしばらく考えて・・・あ、イチゴ・・といった。

「あんときのイチゴ、俺まだ返してもろて
ないで。」

「イチゴね・・・イチゴ・・」

しかし、イチゴは戦時中の物資不足の中では
手間のかかる作物でしかもおなかにたまるものでもなく
次第に作られなくなったらしい。

戦争はこんなこともかなえてくれない、どころか
なにもかも取り上げられていく気分だった

ーそうだね、

「なにそれ?」子供のころお寺の
お供えにあったイチゴ。初めて食べた。

ーあの頃手に入らなかったイチゴが

ーみんなが食べられるようになって

大阪で源太にあって、つらいときに
市場のおばちゃんたちがめいこにあげてと
源太からもらったイチゴ。

ーいつの間にかまた・・・消えちゃったんだね・・。

出征をまえに、源太は遅くまで
店の肉を切る包丁を研いだ。
そして、テーブルをきれいに磨き
店に別れを告げた。

「お世話になりましたね・・・・」

うま介の店での出征祝いの会。
「ビフテキです。」

めいこが出すと「わぁっ」と歓声が上がった。
「ええとこ、つこうてるからな」と肉屋の大将は言った。

「この度はおめでとうございます」
とのお祝いの言葉に
源太は「俺がいったら日本は大勝利や」と
明るく言う。

店の隅では女将さんが相変わらず泣いていた。
みんな悲しい気持ちをこらえて
お祝いをしている。

なぜ祝いなのか?めでたいのか?
どうも、そのあたりが本音と建て前のような
気がする。だから明るくても悲しい。

源太は挨拶をする。
「みなさん、ご存じやと思いますが
わしは、・・・・丸々としたおなごを好んで
参りました!」
笑い声がおこって「しっとるぞ」と声がかかる。

「ところが、先日今まで縁のあった女性に
お別れに回りましたところ・・・・
ことごとくみな すっとしておりました。
遺憾の極みでございました。こんな戦争は
早く終わらせないとあきません。
このままやと日本中の女が・・・あないなことに
なってしまいます」
源太はさっと腕をだして、めいこをゆびさした。

「え?わたし???」

みんなどっと笑う。
スリムなめいこにやんやと喝采が上がる。
「つかなあかんとこについてないだけや~~」
あははは

「すみませんなぁ~~」とめいこは言った。

「泉源太はお肉(お国)のために一命をささげ
戦ってまいります」
源太はそういって敬礼をした。

またもやんやと喝采が上がった。

「食うて!食うて!今日は食うて」
源太はそういった。

そこに、「おまっとうさんどす~~~」

といいながら
静が芸者のきれいどころを連れてきた。

芸者さんに囲まれて源太は

「おれ、いきとうなくなるやないか」

とうれしそうだった。

めいこは、ふ久をみて
びっくりした。

あちらのお姉さんは芸者さんだが
ふ久は舞妓はんのかっこうをしていた。

「お母さん、これ何ぼかかったんですか?」
静は笑うだけで答えない。

~~えらいやっちゃ、えらいやっちゃ、よいよいよい・・
と、三味線に合わせて、みんな歌って踊った。

店の奥で、ふ久は源太にメモを渡した。

「ふ久ちゃん、これはなんや?」

「円周率・・・」

3.141592......
と、数字が並んでいる。

「何にも考えとうないときこれを
覚えたら、忘れられる。」

「うん、おおきに。うん・・」

よくわからないが、源太は
うれしそうに言った。

ふ久は「おじさん・・・・」
といった。
「ほんまは逃げようとおもとったんと
違う?」と聞く。
ふ久はじっと源太をみた。

「まぁ、ちらっと考えたんやけど
逃げるとこなんかないからな。」

「・・・・・」ふ久は何を思ってそういったの
だろうか。

めいこは、そんな様子をじっと見ていた。

そこにオルガンが鳴った。
桜子は源太にお祝いの歌を用意しましたといった。
それから、「私たちは駆け落ちをしてここに来ました。
あの時源太さんがいてくれなかったらどうなっていた
ことかと思います。そんな思いを込めて作りました。」

源太は神妙に聞いていた。

希子が歌う。

~高く遠くあてもない空、道を亡くした
あの日・・・・
差し出された君の手のひら・・・
かかれていた希望・・~~

めいこは、幼い日、源太の手のひらにあった
イチゴに喜び
ここにきて悲しいときに
源太が差し出したイチゴがはいった
お皿に手を出して食べたことを思い出した。

~~ああ・・君よ忘れない・・かけがえ
のない君であること
君にすがる者たちのこと
ぼくたちはここで・・待つ・・・・~~

夜も更けたころ、すっかり酔いつぶれた源太
は店の外で寝ていた。

めいこは、水を持ってきた。

「大丈夫?源ちゃん?あしたちゃんと
いけれるの?」

源太は気が付いた。
「ほら・・・」

差し出しためいこの手に
ふれて、源太は言った

「いきとうない・・・・行きとうない」

それを見ていた悠太郎は
「出征祝いや」

といってさっていった。

その夜、西門家。

悠太郎に、めいこは出征祝いに
顔を出してくれたらよかったのにという。

「個人的に済ませましたので」

「え?」

「寝ます」

「お腹は?」

「活男に適当に作って
もらいましたから」

「あ、おやすみなさい」

「僕はひょっとしたら源太さんの
代用品かもしれませんね」

「え?代用品???」

めいこは、ふと代用品ということばで
代用品を思いついた。

「そうだ!!!!」

翌日、うま介の店で
タンポポコーヒーを飲む源太。

「まぁまぁやな・・」

「戻ってくるころには
もっとおいしいものにしてるさかい」

そう、うま介はいった。

「ほな、わし、行くわ」

そこへめいこが入ってきた。

「源ちゃん!!!」

そして源太にお弁当箱を渡した。

「はい、腹ごしらえしていって。」

差し出されたお弁当箱を
源太は受け取った。

中には、赤茄子飯でつくった
イチゴそっくりのおにぎりだった。
緑の野菜で下手までついている。
源太はそれを一個つまんでみせた。

「ああ、つまめるの?」
うま介は驚いた。

「どうぞ。代用品で申し訳ないけど」

「ほな、いただきます」

一個食べると
あの日、開明軒で食べた
赤茄子飯を思い出した。
あの日、めいこと一緒に笑いながら
赤茄子ごはんを食べたことも
思い出した。

「おまえんちの味やな・・・」

そういった。

「うん・・・・

ほな、ね?」

行こうとするめいこに

源太はごちそうさんといおうとした。

「まだやから」

「え?」

「まだいっぱい残っているでしょ
全部食べてから
ごちそうさんって言いに来て」

「おおっ!」

「ほな・・・ね。」

めいこは、店を出た。

源太はテーブルについて
イチゴの代用品を食べた。

じっと見守る

うま介、桜子、室井・・・

源太はおいしそうに
うれしそうに食べた。

**************
このあとあさいちで
有働アナが号泣されました。

こんな別れはないやろと

これで源太とお別れなのかと
思うと、やっぱり悲しいですよね。

子供のころ一緒に遊んで
いつのまにか、別れてしまって
そして

何もわからない大阪に来て
であっためいこと源太。

めいこは、心の友かもしれませんが
源太はひさしぶりにあっためいこが
人妻でした・・・・。
だったら、その幸せを見守ろうと
思ったのかどうなのか。

めいこを影に日向に支えてくれました。
悠太郎が王子様なら
源太はナイトでした。

そうしてかけがえのないひとを
失うさみしさ、悲しさの戦争が
身近にやってきています。

ふ久の舞妓はん姿かわいいですね。
静が目に入れても痛くない
「かいらしい」といっていただけあります。

それにしても赤茄子ごはんで
イチゴを作るとは!!!!

すごい!!!

これって

すごいキャラ弁になりませんか。

何のキャラやろ?