贅沢はステーキだ1

正蔵が大往生をしてその後
大阪に地下鉄が通った。

しかし、昭和12年盧溝橋事件に端を発した
日中戦争が日本を大きな戦争へと駆り立てた。

日々、物資の不足が伝えられた。
たとえば、鉄骨。

鉄は自国でとれるものではないので
輸入に頼っていたが、米英に貿易の制限を
かけられ、不足に陥っていた。

物資を軍需へ振り込むために国家による
物資の統制が始まった。

繊維や金属も対象となり、悠太郎の仕事も
物資不足になった。

ーコメもまた自主的な節約を求められて
おりました。
節米料理と申します。

料理の投稿雑誌にはめいこのあらめ飯が載った。

ーそんな、なかめいこは・・・

西門家の台所で
じっと考えるめいこ。
めいこはハッとする。

「きた?お母ちゃん?」

「活男、油揚げ出して!!」

「よっしゃ!!」

ーめっぽう元気なおばちゃんになっておりました。

西門家のにぎやかな朝餉が始まった。

全員そろっているところへふ久が下りてくる。

昭和15年。ふ久は高等女学校で物理に夢中な
風変わりな女学生だった。

朝餉にも本をもってきて、書き込みまでしている。

泰介は中学に進学し野球部に在籍。
活男は相変わらずの食いしん坊だった。

みんな揃ったので、めいこは声をかけた。

「じゃ、ご飯にしましょう。」

すると静が「また節米料理かいな。」という。
「命がけでたたこうている、兵隊さんのことを
思ったら贅沢なんてできヘンでしょ?」とめいこは
応戦した。

「うちかていつ死ぬかわからへんのに、ばあさんの
明日も命がけなんやで。」

すると希子が笑った。
「あはは、大丈夫ですよ、おかあさんは。」

川久保が・・・(結局結婚したのかな?)
「おねえさん(結婚したんだ)これなんですか?」

とめいこに聞く。

節米料理を説明するめいこ。
「ジャガイモを細かく切って油揚げをみじん切りにして
それにちょっとお醤油を入れて
それでお米と一緒に炊いたんよ。」

「香りがええやん」と、活男。

「ほな・・・」と悠太郎は広げていた新聞を
とじていった。「いただきましょうか。」

「いただきます!」と悠太郎が言うと

全員が

「いただきます」といった。

みんなよく食べる・・・・・が

ふ久は本に書き込みをしている。

「ふ久・・・・」めいこは怒っていった。

「ごはん、ご飯食べるときはご飯食べ。」

「・・いただきます。。」

本を広げたまま
しぶしぶとご飯を食べるふ久。

めいこは、

「行儀悪い。ご飯食べるときはご飯食べ。」

そういって、本をかたづけた。

「食べんと体もたんやろ!!!
もう~~~~~
勝手にしぃ!」

やがて、ふ久が登校するために
玄関を出た。

本を読みながらである。いまなら”ながらスマホ”か?
「ふ久・・・」めいこは
ふ久を追いかけ玄関を出た。

「人にぶつかるよ。」

注意をしたが、反応はない。それどころか
向こう側から来た人を
するりとかわした。

どこに目が付いているのか。

めいこは不思議だった。

そこへ近所の奥さんその一が出てくる。
「おはようございます。」とあいさつを交わす。

「ふ久ちゃん?」と彼女がきく。

「ああいえばこういうというか
ああすればこうするというか・・」

わらいながらめいこがいうと
「うちもそうよ、」といって世間話が
はじまる。

「お二人さん~~」ご近所の婦人その二である。

「おはようございます。」と

婦人会の中心者である
その二が声をかける。

「本日午後3時からご出征があります
から、よろしゅう頼んますな!」

「はい!!」

めいこたちは声をそろえて答えた。

ご出征とは召集令状が届いた人を
送り出す会である。

「不肖、谷本和夫、お国のために一命をささげ
闘ってまいります。」

「谷本和夫君~~~ばんざーーーーーい!!!」

日の丸の旗を振って
万歳を叫び
~~かってくるぞと勇ましく~~~~

と、歌うのである。

婦人会では千人針を多くの人に
協力してもらうために走り回る。

めいこも人を見つけては千人針を
頼んで回った。

そんなとき、大八車にのった御寺の鐘が
通って行った。

金属不足である。御寺の鐘まで
姿を変えて戦地へ行くのである。
「半鐘さん、ばんざーーーい」

とめいこは、元気に叫んだ。

悠太郎の職場では
昨今の資材不足からと
工事の説明より、資材不足の現状
報告がなされていた。

「米英からの資源輸入が差し止められる
現状の中で金属資源の多くは軍需に
差し向けられる状況で予定量の鉄筋の
確保が・・・・・」

それに同席していた竹元は

「わたしが・・

今日ここにいるのは設備の仕上げの話し合いの
ためだったはずだが・・・

なぜ、新聞を読めばわかるようなことを
延々と聞かされねばならないのだ?西門!」

「状況を把握していただかないと
ご納得いただけないかと」と悠太郎は答えた。

「ご納得???
あははは・・・
今まで私が何度ご納得してきたか
西門。

天井をあきらめ
アーチをあきらめ
プラットホームをあきらめ
これ以上何をあきらめ
ご納得しろというのだ???」

(すみません、セリフの言葉の問題か
役者の滑舌の問題か?
よく聞き取れません。私の耳の問題かと?
それはご納得できません)

さて、うま介の店では物資不足が
珈琲の味にまで影響していた。

源太は今日は肉がない日と定められた
ためか、店でコーヒーを飲んでいた。

珈琲が薄くなったとうま介に言うと
物資不足だからという。

輸入制限と税金の高騰である。
焼き氷も珈琲シロップが必要なので
難しくなるという。

そこへめいこがやってきたので源太は
隠れるように逃げようとした。

めいこは、桜子に千人針を頼んだ。

「またぁ?」

「ひと針づつでいいから。」

「よくやるよね、あんた。」

「お国のために戦いに行っているのよ。

できることはして差し上げたいのが
人情というものでしょ。」
めいこは源太に気が付いた。

「あら源ちゃん。ここでなにを?あ、そうか。
今日は肉なしデーか。」

ー少しご説明しましょう。肉はぜいたく品だから
売ってはいけない、食べてもいけないと月に
二日は肉なしデーとなりました。

源太は「じゃ、また」と言って、去ろうとしていたら
店の戸が開いて
一人の婦人が来た。

その婦人は、源太から
何かの包みを受け取り
感謝して帰って行った。

めいこは、源太を捕まえて聞いた。

「あれ・・・お肉???」

「え?ちがうで」

「何を考えているの?」めいこはきつく言った。

「売ったのは昨日、
今日渡しただけです」

「せいぜい気を付けや」とめいこ。

源太は急いで帰って行った。

桜子は「かっこいいわね。源太さんて」
という。

めいこは、「え?」と聞き返した。

「何があっても変わらないじゃない。

それに比べて」

と、桜子は店の本棚においてある
室井の本を見た。

「おでん皇国戦記?」
これはすごく評判が良くて子供の教育に
いいと言われているとめいこは言った。

が、桜子は最悪という。

一ページに一回は「お国のため」という
言葉が出てくるのだ。

「うんざり・・・・」と桜子

「けど・・・」・とめいこはいった。

「今はそれが必要なんじゃない?
心を合わせて戦うことが!」

桜子があきれて反論しようと
したら、うま介が止めに入った。

「ああ、ちょっと・・・めいこちゃん。
たのみがあるんやけどな。
珈琲の代用品一緒に考えて
くれへん?」

めいこは、考えた。

西門の台所で頭を痛めていると
ふ久が「ただいま帰りました」と
いった。

「お帰り・・・」
そこにいた静も

お帰りという。

めいこは、ふ久に
つい聞いてしまった。

「珈琲の代用品になりそうなん。
なんかないかな?」

ふ久はだまってめいこを見た。

「ああ・・・聞くほうが間違いでした。
どうぞ、どうぞ、お勉強なさってください。
ふう・・・・。」

「・・・たんぽぽがええらしいで。」

「え?どうやって?」

「そこまでは知らん。ドイツではそうやって
つくるんやて」

「だれに教わったん?」

「友だち・・・」

ふ久はそういって二階へあがって行った。

「友達っておるんかいな?」と静。

「さあ??」とめいこ。
相変わらずの変人でふしぎちゃんなのだ 。

ふ久は部屋に入り。
大の字になってひっくり返り
天井を見た。

そして不思議なことをつぶやいた。

「3.14 1592 6535..19....     」

その夜、夕餉の時だった。
悠太郎、川久保、希子とめいこ。

「タンポポの根って
たしか漢方でも使われていますよね。」

と希子は言う。

「珈琲に入れるってどうやって?」とめいこはきく

「乾かして入れるんと違いますか」

「なんやほっこりしますよね。」と川久保。

「そうやろ?代用品と言っても
さみしい感じがしないのがいいよね」と
めいこ。

「それに銃後が節約するのは人として
当たり前やと思うんよ。前線で命がけで
戦っている人に対して・・・ねぇ?」と
悠太郎に言う。

悠太郎は、言葉に詰まった。

何かあったのかとめいこは聞く。

「鉄筋にも代用品があったら
ええんですけどね。」

その悩みの深さに言葉に詰まる
三人。

節約どころのレベルではないのだ。

翌日、職場にはいるとき
廊下で元上司の藤井にあう。

「相変わらずでっかいなぁ~~」

「藤井さん!」

悠太郎は笑顔になった。

さて、めいこは市場にいた。

にぎやかな商店街をぬけて
源太の店に行った。

「源ちゃん~~これなんぼ???」

店の奥に源太がいた。

店の大将と女将が
一緒にいて、深刻そうである。

「何かあったんですか?」

「来てもうたんや・・・・」と大将。

「何がですか?」

「赤紙・・・・・!!」
大将はイライラしていった。

源太は赤い紙を見ていた。

戦地への召集令状である。

「あかがみ・・・???」

めいこは源太を見た。
****************
戦争ですね・・・

嫌ですね・・・

ついにこの時代の話になりましたか。

ああ・・・

よかったなぁ~~~~

明治大正が。

のんびりしていたなぁ~~

っていっても、日清日露戦争
がありましたが
まだ、民間人の召集までは
いかなかったのですね。

それまでは、兵隊になりたいと
希望する人が軍隊に入って
いましたが・・・あまりにも
長引く戦争と、相手が強いことも
あって、日本にとっては
厳しい戦争になったわけです。

よくよく考えてみればですよ。

鉄骨にしても
珈琲にしても

何にも資源のない国が
どうやって貿易を拒否されて
産業が成り立ちますか??????

当時の政治家のあほさかげんには
いつもこの時代にふれれば
ふれるほど、腹が立ちます。

今もそうかもしれませんが・・。

めいこも、しっかり洗脳されていて
節約は銃後の務めだなんて。

そのうち、食べるものもなくなります。

今後一億総国民が飢餓状態になるという
のに・・・銃後ではありません。
飢餓との戦いがあるのです。
命がけです。

他人事ではなく、兵隊さんも大変だけど
自分たち国民も命の危機がやってくる
のです。

その時
なぜ、どうして、国のトップは
国民を守らないのかと
腹が立つと思います。

なぜ、現人神(天皇)は国民を守らないのかと
疑問に思うでしょう。
天皇は神様と信じられていた
時代です。

ごちそうさんもいえない食卓が
そのうち、めいこの家にも
現れるのです・・・・・・・・・・・・。
大変です。
宮本先生は「人は食べなければ
生きていけないのです」とおっしゃいました。
あの言葉の重みを感じます。

それから
ふ久は・・・・・???