汁のすみか3
希子の結婚式のためには
西門家のしきたりを知らなければならないと
正蔵にきくめいこ。
まず料理だが・・。
鯛の御かしら
ハマグリの吸い物
赤飯
西門独特のまるい御煮しめ
もともと西門家は造り酒屋だった。
まるいお煮しめとはあの杉玉を
まねたらしい。
「新しい酒ができたら杉玉を軒下にかける。
それが最初は緑でだんだん色が変わってくる。
でも形だけは丸いまま。夫婦はいつまでも円満
にというご先祖様の思いや。
そうや、魚のかす漬けがあったな。
その時の魚を何を選ぶかによって
御寮さんの才覚が問われるという
ことや。」
「才覚??」
「趣味がええとか
機転がきくとかを試されるんや」
「聞かんかったらよかったかな」
「言わんかったらよかったかも・・。」
才覚に悩むめいこだった。
市場の魚屋定吉の店で
粕漬けの魚の話をした。
「普通のマナガツオとしゃけとか
をつかったらええ」という。
「西門の酒粕にあうと思うけどな」
といった。
「ふーん。それって普通ですよね。」
「普通が一番うまいんやで・・」
「そこに才覚って感じられますか?」
「めいこちゃん、無い袖は振れヘンで。」
「・・・そうなんやけど。」
どうにかしたいめいこ。
うま介の店ではあの倉田と
悠太郎と希子が倉田に相談事を
していた。
悠太郎は、親戚はお祝いものをくれたり
したが、問題は姉たちだった。
倉田は、嫁に出て行った人らやから
来なくてもいいのと違うかというが。
希子は西門の
姉妹がそろっているところを
父に見せたいと願いっているらしい。
和枝がこないとそのほかの姉妹も
来ないはずと思って相談した。
一緒に行ってほしいと。
めいこは
粕漬けとお煮しめは決まったが
粕漬けが決まらない。
おいしいお魚はみんなが知っている
魚になるとめいこがいう。
正蔵は、祝言というのは二人の新しい
旅立ちを祝うのとこれから親戚づきあい
をしますので、よろしくという意味もある
といった。
その席でめいこが何を伝えたいのか
それが大事だと正蔵はいう。
「何を伝えたいのか・・・ですか。」
和枝の家で和枝と希子と倉田が話をしている。
祝言に出るか出ないかの返事はすんでいると
和枝は言った。
もとより欠席である。
希子は正蔵が倒れたことを話した。
「まだ元気なんやろ」と和枝。
いつまで元気かわからないと希子は言う。
「おねえちゃんにとってお父さんがどうなろうともしったこと
ではないが、最後は気持ちよく親孝行したいと
思っているのでは」と希子は言う。
「お父さんが生きているうちに兄弟姉妹がそろって
いるところをお父さんに見せたいとおもわへん?」
「畳の上で死ねるだけでもあの人にしたら
上出来なんと違うか?」
「雲の上のお母ちゃんもうちらソロているところを
見たら安心しはるんと違うやろか?」
「お母ちゃんも喜びはるんと違うやろか?」
じっと聞いていた和枝は、「大人になりはったな。
あんさん」といいながら立ち上がった。
こんな時だけお母ちゃん引き合いに出して
えらいこと。世なれたやり口だすな。」
そういって、縁側に立った。
希子は和枝を見上げた。
「どないしてもわてに出てほしいと
いうんなら、ちぃねーちゃん・・・・。
追い出してもらいまっか?」
「それは・・・」
「それはできん、これはのめでっか?
アナウンサーって偉いこと。
居丈高でんな。」
交渉決裂である。
それをきいためいこは「どのみち
お料理をするんだし、ばたばたしているし
私は別にいいですよ。」と。
そういうが、静は「それはない」という。
それ以上にめいこは和枝に義理立てして
祝言も上げていない。これ以上
遠慮することなんにもないと静。
悠太郎も賛成するが
希子は「そうしてもろてええ?」
と聞く。
静は希子に「ようもそんなむごいこと言うな」
という。
希子はどうしても正蔵のためにも
姉たちに出てほしいと思うのである。
そんなにしても正蔵が喜ぶとは
思えないと悠太郎は言うが
希子にしたら和枝は育ての親変わりである。
兄である悠太郎にはわからないといった。
めいこは、「そうしよう」という。
「ええやないですか、肩書なんて・・・」と言って笑った。
翌日、大根の皮をむくめいこに正蔵は言った。
「それでよかったんかな?和枝の代わりをすると
いっていたのに・・・」と。
めいこは、そのほうが料理に集中できるからと
いった。
「めいこさんには我慢ばっかりさせてしまうな」
「そのおかげで粕漬けを思いつきました。」
「え?」
「こういうのを結果の功名というのですかね。」
「怪我の
(功名やで)・・・」
正蔵は・・返した。
『当日ちぃねーちゃんは台所に入ってもらいます
ので、希子』
と手紙を倉田が持ってきた。
「どうや?、無理が通ったら通ったで
やりにくいものやろ?」
和枝は反論できない。
「なぁ、和枝ちゃん・・」
倉田は立ち上がって庭の木を見て言った。
「あの柿木、葉はおちないのか?」
和枝は今年ばかりは落ちないと
不思議そうに言った。
「へぇ・・・なんでかな?」
和枝も考えた。
「ほなこうしましょうか?」
希子への返事は
『柿の木の葉が当日まで残っていたら
出席します・・・。』
「なんですか、この柿の木って」
「しょうことないがな、ほな柿の木に
決めてもらうって言い出して・・・」
「ええ~~
そんな、私はお姉ちゃんの条件のんでいる
のに・・・・。」
静は「もうええんと違う?来てもらわなくても。」
正蔵も「わしのためならもう、ええ」という。
希子は悩んでいった。
「倉田さん、ちょっと待ってくれますか?
今返事書きますから。」
そういって二階へあがって行った。
「ちょっとまってぇな
郵便でやってほしいわ。一日仕事やで。」
「すみません」と静と正蔵は頭を下げた。
ーけど、その後和枝からは返事は来ず。
ーそうこうする間に祝言の前日となりました。
「お着物なおしてなかったけど
大丈夫ですかね?」
とめいこ。
「裾引きにするなら大丈夫や」と静。
「ただ今戻りました。」と希子。
川久保さんの親御さんは楽しみにしていると
いう。しかし和枝の返事は来ない。
「もう!!!」と怒って希子は二階へ上がった。
そして当日になった。
西門家には多くの人がお祝いに来た。
希子はイライラしていた。なぜだろう??
近所の奥さん方も手伝ってくれた。
「いつも子供がおやつをもらっている
からね・・」
と協力してくれた。
そこへ御届け物ですと荷物が届いた。
開けると熨斗紙に和枝と書いてあった。
中身はたくさんの柿の葉寿司だった。
「これが出席???」
めいこは、がっかりした。
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このころの祝言の様子がよくわかりますね。
家でするってこんなにすごいこと
なんですね・・・。
いまでは、家の外で葬式も結婚式もします。
だから、わからないことが多いです。
結婚式のお料理って
大変なんでしょうね。
ご近所のかたも手伝いに来て
みんなで力を合わせてお祝いするって
いいなぁと思います。
が・・・
人付き合いの面倒くさいことも
多いです。
和枝は何を考えているのでしょうか?
まさか、このままでは
終わらないと思います。
はい・・・・
