今日でおわカレー5

「おかぁちゃーん。」

部屋にこもり落ち込みふさぎ込むめいこ。

子供たちは心配しておむすびを
もってきた。

「おかあーちゃん、大好きな酉味噌の
おむすびやで。」

返事がないので三人は
そのお皿を部屋の前において
去って行った。

さて・・・めいこが追い出した悠太郎は
ちゃっかりと亜貴子の部屋にいた。

そして、カレーが出た。

刻みネギが載っている。

「変わったカレーやな。」

「ミセスきゃべじの特製カレーや。」と亜貴子

あれからしばらくして
三人の子供が自室のふすまを開けた。

廊下をはさんで向かいのめいこの部屋の前に
おいてあったおむすびのお皿が
やはりそのままあった。

「なんかあったんかなぁ?」

泰介は心配そうに言った。

階下では静と正蔵と希子が話をしていた。

「ほな、おにいちゃんは今夜帰ってこないの
ですか?」

「この人ったら連れて帰るつもりが
ほだされて帰ってきはってな。」

「けどあんな状態で帰ってきても
めいこさん、苦しめるだけやと
おもたんや・・」

「子供たちはなんて?」と希子。

「お父さんはお仕事が急に忙しく
なったから、おかあさんは具合が
悪なったからというてる。
泰ちゃんあたりは相当疑って
いるけどな。」と静は言った。

「おにぃちゃん・・・・・。」

そのころ、亜貴子の家で
カレーを食べている悠太郎。

「亜貴も料理するんやな。」

「光男さん、表に出ぇへんひとやったから
一緒に楽しめるものっていうと
食事ぐらいなものやったし。」

「どう?おいしい?」と聞くと
悠太郎は、「おいしいけど
ちょっとあっさりしているな」と
いった。

しばらく、沈黙があった。

悠太郎はパクパク食べている。

亜貴子は、写真楯を見た。

「そこの写真光男さん?」

すると、亜貴子はうつむいて
泣き出した。

「亜貴、どないしたん?」

「ごめんな、だれかとこうして
家でご飯食べるなんて二度とないと
思ってたから」

そういって、立ち上がって
涙を拭いた。

悠太郎は、その後ろ姿をそっと
抱きしめた。

(いいのか?)

そのころ、めいこは布団もしかずに
畳の上でまるくなって
寝ていた。

そして朝。

子供たちは、ふすまを開けて
めいこの部屋の前においていた
お皿を見た。

「食べてる!!!」

三人は飛び出した。

泰介はふすまを開けようとした
が、開かない。

「けど、出てけーへんか・・・。」

朝餉では
子供たちはおむすびのお皿が
からになっていたことを静に報告した。

よかったと静は言った。

泰介は「けど、あれでおかあちゃんは
よくなるのか」と聞いた。
「おむすび置いといたらでてくるん?」と。

「おかわりぃ~~最後やから
おお目にして~~~」と活男。

静は、「泰ちゃんは心配しなくて
いいからしっかり食べ。な?
活ちゃんはいつもと変わらヘンな。」

という。

泰介は顎に手を乗せて(親子だ)
考えていた。

ー具合が悪いなんて嘘だよね。

学校の二宮金次郎の銅像のしたで
泰介は顎に手を乗せて考えていた。

ーむくれて出てこれなくなったんだよね。
どうしたら出てきてくれるのかな~~

そこへ友達がわらわらと来た。
「泰ぃ~~おばちゃんどうや?」

「どうもならん・・・」

「そろそろおばちゃんのおやつ食べたいんやけど。」

「食べたいなぁ~~~」

「そやなぁ~~~~~」

うま介の店では源太たちが心配していた。

「『私が邪魔者・・・』か・・・・」と源太。

「とそういったっきり
だまってしまったのよ。」と桜子。

「桜子、行ってみる!」と源太はいう。

桜子はエプロンを外して室井に
わたし、源太と一緒に出て行った。

めいこはうなされていた。

「この世でたった一人の心を許せる
相手を後から来て持って行ったのは
あなたなの!!!

あなたなの・・・・!!!」

おやつの時間だった。

活男は階段の下にいた。

静は「まるやのちょぼ焼きやで~~」と

いって、お皿にとって渡した。

が、活男は

「ちょぼ焼きがええ・・

おかあちゃんのちょぼ焼きがええ~~!!!」

と泣いた。

静はびっくりした。
「もう、どないするん?」と正蔵に言うが
どうにもならない。

「ただ今戻りました~~~ぁあ」

と元気よく泰介が帰ってくる。

「お邪魔します~~~~」と

友達たちがわらわらとやってきた。

「泰ちゃん、今日はあかんで~」と
静は言うが。

「二階、二階」

といって泰介と友達は部屋に上がって
二階へ行った。

「タイちゃん!!」と静は止めようとした。

泰介に何か考えがあるのか?

めいこは、「私なんていないほうが・・・」とつぶやいた。

そこに、「おかあちゃん」と泰介が廊下で声を
かける。

「おばちゃん、おやつ~~~」
「いつまでまったらええねん~~~」

「おばちゃーーーん、おなかぺっこぺこや。」

「う、うち帰り~~

うちで食べ!!」

めいこは面倒くさそうに言う。

そこへ

「おかあちゃん、ちょぼ焼き作って。
おかあちゃんのちょぼ焼き食べたいねん~」

めいこは起き上がった。

「かっちゃん・・・・・」

廊下にいた軍団は
泰介の音頭で歌いだした。

「~ちょぼ、ちょぼ、ちょーーーぼ・・・・・・・
ちょぼ、ちょぼ、ちょーーーぼ」
手をたたいてちょぼコールである。

静も加わった。

「ちょぼ焼き、のーこりもんのちょぼ焼き~~

ちょーぼ、ちょーぼ~~ちょぼちょぼちょーぼやきぃ~~

なんでもかんでも  ちょーぼやき
始末の料理は

ちょーぼやき!」

乗りに乗っていた瞬間
ふすまが開いた。

全員ピタッとだまった。

「おばちゃん、今日
めっちゃくちゃ機嫌悪いからな」

とめいこはにらんだ顔だったが

ふと笑いに変わった。

「死ぬほどちょぼ、くれたるで」

「やったぁ~~~~!!!!」

子供たちは歓声を上げた。

泰介と活男はめいこにだきついた。

つまりはタコ焼きの元祖なのか?

あのたこ焼きのプレートに
粉を水で溶いたネタを注ぎ
具を入れて・・・
ソースをつけて完成。

「おばちゃん、ちょぼ焼きめっちゃうまい」

「ほんまにうまい」

「うまい」

そのころ、源太と桜子が
家の前にやってきていた。
さしいれのお肉を源太は持っていた。

「あいつにはせんの言葉より一枚の肉や」という。

ところが、家の中から

「うまい」 の連発が聞こえてきた。

「うまい、おばちゃん、うまいわ。」
「何ぼでも食べれるわ・・・」

驚いた桜子と源太がのぞいた。

めいこは つぎつぎとちょぼ焼きを
作っている。

「あんたら、飲んでるやろ。噛んで食べ!!
あほになる。」

と元気なめいこだった。

静も正蔵も笑っていた。

「おばちゃん、はよして~~~」

「ちょぼちょぼ。ちょーぼやき」

と連呼。

「お肉いらなかったね」と桜子はいった。

「せやね、」と源太は言った。

ラジオ局では、川久保が希子が
早退したのを聞いて
追いかけた。

家の前で肉を持って帰る源太と
あった希子。

「どないしたんですか?」

「肉持ってきたんやけど、なんやいらんかった
みたいやわ」、といった。

希子は源太にお礼を言った。

源太は帰って行った。

その後ろ姿を見ていた希子だった。

川久保がそれを見ていた。
希子はきがついて、川久保に
話しかけた。

「心配してきてくれたんですか。」

「うん、何もなかったらええねん。
彼と・・・うまくいくとええね。」

そういって帰って行った。

希子は、お礼を言って見送ったが
「え?」と思った。

その夜、室井夫婦も来てにぎやかだった。

めいこは「気がまぎれるから、うれしいです」

という。

桜子は「亜貴子さんとどんな話だったのか」と聞いた。

めいこは答えられない。
二人が秘密にしてきたことだからという。

「今更義理立てることないのでは?
もう壊れたんだしさ。」と室井。

桜子はお盆で室井をたたいた。

「いてぇ~~」

正蔵が小話をする。

「ある男が古女房に飽きて
妾のところにころがりこんだんや。
毎日、毎日一緒に暮らしてたら
その妾が女房みたいになってきて
その男は結局・・
元の女房と浮気した・・・。」

静は桜子にお盆を貸しといって
正蔵の頭をボンとお盆でたたいた。
「アホ!」

全員笑った。

すると希子が

「うち、おにいちゃん、帰ってくると思うけどな」

という。

「毎日一緒におるって・・・

強いですよ・・・。」

めいこはうつむいた。

静は「どうするつもりか」と聞く。
迎えに行くなら一緒に行くという。

「待ちます・・・
気持ちは縛れヘンから。

悠太郎さんの気持ちに任せます。」

「けなげだね~~~」と室井。

「けど、何があっても私はここから出て
いきませんけど、ええですか?」

正蔵は、「あんたは出て行ったらあかん。
あかんで。」という。

静も「そうやな、まさかの時は悠太郎さんに
籍をはずれてもらったらええやない。」

(むちゃくちゃや)

「子供にはお母ちゃんのほうが大事ですもんね」
と室井。

「な??」と静は希子に聞くが

そこへ

桜子がめいこに外を見るように言った。

めいこが振り向くと

暗がりに

悠太郎が立っていた。

驚くめいこだった。

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ちょぼ焼きがこんなところに出てくるとは。
おもしろい。

大阪のたこやきはこうしてできたのか・・・
おもしろい。

悠太郎は亜貴子の家に上がったのは
なぜか???

行くところがなかったから?
カレー屋が閉まっていたから?

そういえば、悠太郎は開明軒を
追い出されたことがあって
室井の部屋にぐうぜんにせよ
転がり込んだことがあった・・。

あの時も雨降って地固まる
だったから、今回もそうかもね。

子供のパワーはすごい。

ちょぼコールでめいこは
元気をもらったようだった。

もしこれが、夫婦と子供だけの
家なら、悲惨な状況だろうけど

爺と婆がいて、希子までいる。

こんな強力な家族だと
落ち込んでいても
そっとしてくれないし
子供たちがやはり
母親の作ったものが食べたい
と思うだろうし・・・・。

で・・・

あした、

声を先にかけるのは

めいこだと思うけど

お帰りなさいって

いうのでは???

あさいちで有働がどっちがさきに
声をどうかけるかが問題だと

いっていたけど

私はそう思います。