今日でおわカレー1

「もう・・・・

ずっと・・好きで好きで困っているんや・・・」

複雑な気持ちできいていた悠太郎。

「仕事がな・・・。」

「仕事?」

「なんやと思うた?」

「あ・・・いや・・・・・」

「趣味はないし、映画とか芝居とか
見に行く気もないし、論文読んでいるほうが
没頭できるし・・」

そういいながら、亜貴子は悠太郎の消毒をした。

「人付き合いが苦手やしな・・」

「どこが?」

「苦手や、身の上の話なんか特に。」

亜貴子は複雑な身の上があるので
いちいち話をしていられないらしい。
それだけで空気が重たくなる。

「本音で話せる相手がおらんし
ときどきここに、ゆーちゃんがおったらなと
思ったよ・・・。」

「この時間やったら来られるで。」

「え?」

「現場はすごいことになっているから。
どっかでゆっくりとはできへんけど。」

「ホンマに?」

「ああ、どうせ消毒に来なあかんしな。」

診察室を出た悠太郎はなにかしら
罪悪感を感じた・・・かな???

市場ではめいこが肉を安く買っていた。

「今日はあれか?」と源太。
煮込みカレーである。

「牛肉の筋は皮膚にいいと雑誌に載っていたし。
・・・もうちょっと・・・乗せて」

「これでどうや?」

源太は肉を少し上乗せした。

「おおきに。」

「ようやるなぁ~ごっつう手間かかるのに。」

う「ん、これが仕事やし。」といってめいこは笑った。

うま介の店では竹元が室井相手に
ヒートしていた。

「トイ、トイ・・・トイだぞ。
あの美しいアーチに無粋なトイをつけるだと。
あの通天閣は。」

「だから、通天閣どまりなんですよね。」と室井。

「エッフェル塔には成れヘンのやな・・・」とうま介。

「そうなんだよ、」といってパシッと室井の顔をたたいた。

「いってぇ~~~~」室井は椅子の上に倒れた。

「トイみたいな顔をして貴様は・・・!!」

八つ当たりである。

そこへ・・・この店、初顔の男が来た。

「失礼ですが・・・。」すっきりと紳士で、おしゃれな
男である。

「ん?」

「このシャツはパリ仕立てですか???」

竹元の腕の部分の
シャツをさわりながらいう。

「よくお似合いですよ・・・・。

この縞が・・・・」

「縞??」

あっけにとられる全員の前で

「珈琲ください・・・・・・。」

と、言った。こやつは何者?

竹元は悠太郎の事務所で「トイをデザインとして
入れこめばいいかなと思ってな・・」

と、アーチ型の天井に縞模様のトイの
イラストを描いて見せた。

悠太郎は

「ええでえすけど、なんでそんな急に?」

と竹元に聞く。

「無地もいいが縞もいい。
それだけの話だ。」

「あ、女と一緒ですね。
北もいいが南もいい。
な?」と上司池本。

「いや、なにをいうとるんですか?」
悠太郎は無感情で突っ込む。

「そうだな。なにを言っているんだ。
女もいいが
男もいい・・・・・だっ。」

「え?」と悠太郎はまじで聞き返した。

竹元は当然だという顔をして
「美しさとはそういうものだ。」

と、悠太郎をじっと見て

「では・・・設計のほう」

と、悠太郎の腕の部分の
シャツに手を当てて

「よろしく頼む・・・。」



ねっとりいって
鞄をもって出ていった。

「え?男も?」

事務所の空気はトイではなく
むしろたとえの『男』の
ほうにこだわりを持った。

夕餉。
明日から朝7時に出かけると悠太郎から
きいためいこ。
悠太郎はまっすぐ目を見据えたまま
の姿勢でめいこをみないで、いう。
「はい、排水の設計をやり直さな
あかんので・・・。」

「ふーーーーん。」

めいこは横から悠太郎の顔をじっと見た。

「なんですか?」
ちょっとあわてた悠太郎。

「忙しくても病院だけはちゃんと行って
くださいよ。」

「あ・・・・
はい・・・・。」

「どうぞ。」

めいこはカレーを出した。

何気にほっとした様子の悠太郎だった。
「いただきます!!!」
おいしそうに食べる。

「悠太郎さんこれホンマに好きですよね」

「これたまりませんよ・・・・」

と食べながら言う。

「今日のは特別柔らかく煮えているでしょ?」

うなずきながら食べる悠太郎。
「あなたのカレーは天下無敵です」

ーそれからしばらくの間・・・

悠太郎は朝は、早くに「行ってきます」といって出ていく。

ーめいこは何も知らずに悠太郎さんを送りだし

「いってらっしゃい。」

ー悠太郎さんは消毒のついでだと自分に言い訳しつつ
亜貴子さんとの早朝デートを繰り返しました。

「ほな結婚したことも伏せてたんや。」
「うちの場合結婚しても苗字変わらへんし。
なんでそんなことになっているのやと
聞かれるし、どうしてもいわなあかんとき
以外は・・・・。」

「大変だぁ~~~~」

病院へ室井がけがをしたあやめを背負ってきた。

看護士があわてる室井をなだめているとき
室井はガラスの向こうに、
あの、亜貴子と悠太郎が一緒にいるのを
見た。

うま介の店ではめいこは料理のヒントを
ノートに書いていた。

「忙しいんやな、悠太郎さん。」と、うま介がきく。

「ほんまに寝る暇もないくらいで・・・。」とめいこ。

そこにラジオから希子の料理の時間の
番組がかかっていた。
ご主人の職場の差し入れ用のレシピについて
料理研究家との話が聞こえてきた。

めいこは、差し入れということばに反応した。

「ああ、恋がしたい、恋がしたい・・・恋がしたい・・」

と桜子が言う。

あれから何も書かなくなった室井に嫌気が
さしたのか、「なんであんな人と一緒になったんだろう

・・・・と思うことない?」

と桜子がきく。

「うん、じゃ、わたしそろそろ、ごちそうさん。」

そういってめいこは店を出ようとした。

そこに室井がアヤメを背負って
帰ってきた。

「めいちゃん・・・・?」

「室井さんそろそろかかないと
桜子に捨てられるよ。」

「え??え????」

さて、悠太郎の職場である。

池本が

悠太郎のけががずいぶん治ってきたのを
みて、声をかけた。

「あの、きれい先生にもあえんようになるね~~?」

茶化すように言う。何を言うのかと悠太郎は無視した。

「マルナカ百貨店のケーキが
ええらしいで。」

「は?」

「奥さんどう?ケーキええ?
サービスしといたほうがええで~~」

何気に意味深なことを言った。

「そんなんと違いますから」

さて、あの日から希子は川久保と
帰るようになった。

川久保は自分がいるから変質者が
現れないのかもという。

希子は川久保に迷惑をかけているようで
一緒に帰らなくてもいいというが。

「一つ提案があるが・・・
僕と一緒にくらさへんか?」

と・・・これはプロポーズか?

希子はこともあろうに

「すみません、うち今・・
部屋が埋まってしまっていて・・・
すみません・・。」

といった。

求婚が通じなかった。

すると遠くで源太が
「おねえちゃん、べっぴんさんやな。
俺とつきあわへんか?」

と、ナンパしていた。

めいこは希子の食事時に
桜子がいった恋がしたいという
話をした。

「そうはいってもね~~」とめいこは言う。

希子は桜子は駆け落ちしたぐらい
情熱家だからという。

「希子ちゃん、いいなあと思う人いる?」

とめいこはきく。

「ええなぁと思う人は結婚に難ありというか・・・。」

「妻子ある方とか?」

「あははは、違いますよ。」

そこへ「ただ今戻りましたぁ~~」と
悠太郎が帰ってくる。

「お帰りなさい」といながら、
めいこは、希子に

「不倫はあかんで」という。

その瞬間、悠太郎の顔色が変わった。

「わかっていますよ。(笑)
見てても結婚に向かへんなと思う人
いるやないですか。」

「いくら好みでも浮気する旦那さんはなぁ。」

悠太郎は、あわてていた。

「これ・・・」といってケーキの箱を高く上げて
「ここ、置いておきますね。」とおいて

そういって、水を飲んだ。

「あ、あーーーーこれっ!!
マルナカ百貨店のケーキやないですか
どうしたんですか?」

「職場の人に勧められたのです。
おいしいらしいです・・・。」

「へぇ????」

部屋に入った悠太郎。
部屋着に着替えて、ため息をついて座った。

ーそんなに罪悪感を感じるんだったら
いかなきゃいいじゃないか・・・ね?

「本音で話す相手もおらんし。ときどきここに
ゆうちゃんがおったらなと思うたよ・・・。」

亜貴子の言葉を思い出していた。

ーあ~~そうなんですか。そっちはそっちで
罪悪感を覚えるわけですか・・・。ただでさえ
孤独な亜貴子さんを一人にしてしまったって。

悠太郎はたちあがった・・・。

翌朝も消毒デートだった。

ーま、罪悪感って便利な言葉ですね。

「おいしかったなぁ。あそこのカレー・・・。」

昔話に花が咲いていた。

そういえば、亜貴子もたっぷり食べる
ひとだった。

「亜貴は大盛りにしとったなぁ。」

「つぎはもう、抜糸でええわ・・。」

「ああ・・・・そうなんや。」

悠太郎は残念そうに言った。

「名残惜しかったらまた怪我でもして。
ここは入院もできるし、毎日毎日

手取り足取り・・看病やで。

看護婦さんがな???
あはは・・・

なんやと思った?」

悠太郎は、亜貴子の言葉に
顔に感情が出過ぎですぐに考えている
ことがわかる。

うま介の店でお茶をしながら
差し入れの話をしていた。

「へぇ、いまから現場に差し入れに行くんだ?」

と、桜子は
ちょっと、引っかかるような言い方だった。

「考えたらそういうことしてなかったなと
思って・・」とめいこ。

後ろのほうではうま介と室井が
たったままきいていた。

「あのさ、悠太郎さんが通っているって
大阪南総合病院だよね。」と桜子。

「そうだけど?」

「誰かにあったとか言ってた?」

「特に・・・・なぜ?」

「あ・・・あははは・・あそこは有名な人が
よく来るところだから・・・」

「悠太郎さんはいても気づかないのでは
ないかな??」とめいこは答えた。

そして行ってくると言って
出ていった。

しばらく沈黙の店内。

めいこが見えなくなってから
急に室井が

「何も知らなかったね??」と
大声で言った。

「なんか

嫌な予感するな~~~」と桜子。

現場ではめいこの差し入れが大好評だった。

おいしそうなおかずに
おいしそうな俵型で海苔でまいた
おむすび・・・

おいしそうだ。

ええ嫁はんもろてうらやましいわぁ~

西門さんは幸せ者ですね。

毎日こんな・・・うまいものを食べれて・・

などと職員さん、職人さんにほめてもらった。

「奥さんもうすぐ西門君戻ってくると
思うんで・・・。」
めいこはおおきにといった。

めいこはふと事務所を見ると

女性が池本と話をしているのをみた。
ちょっと横向いた顔が見えた。

亜貴子だった。

「え??」驚くめいこだった。
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知らぬはめいこばかりなり・・・・。

昔・・・悠太郎は亜貴子と結婚するつもりだった
のかな?
許嫁とはいわなかったはずで
よくよく、話を聞けば
亜貴子は養子先の家をつぐはずなので
西門の長男の悠太郎とは
一緒になれないはずで・・・
それだから、亜貴子は離れて行ったのかと
思うけど。東京であったときは
親しい様子で・・・これだったら、めいこの入るすきは
ないと思うほどだったですね。

それが、別に好きな人がいたのか
自然に離れて行った感じだったけど。

ここにきて、夫婦の危機の種になるとは
思わなかったですね。

しかし、希子は鈍いですね・・・・。

川久保は一緒に暮らしたいと
言っているのは結婚してほしいということ
ではないのですかね。

西門の家に住みたいといったと
理解したのかな???あれれ??

希子は源太が好きなんだろうけど、あれは
遊び人で・・・。家にこじんまりとまとまる
ような人ではないはずです。

悠太郎が犯した、妻への裏切りを
めいこはどう対応するのでしょうか??