アイスる力1

関東大震災は1923年大正12年九月。
その年の年末にふ久が生まれた。

という、ところまでお話が行きましたね。

それから、昭和7年から今日のお話が
はじまりますが
・・・というと1932年。

大阪は関東大震災以来、人や機能
の流入で大きく変化した。
東洋のシャンゼリゼを目指した御堂筋の
拡張工事が行われた。

その地下には高速鉄道を同時に建設。
大阪は大大阪と呼ばれる黄金時代を
迎えた。

悠太郎は竹元から高速鉄道課への
推薦をという話が合った。

うま介の店で焼き氷を食べながら
話をする悠太郎と竹元。

「なぜ僕が高速鉄道課に?」

「それは私が地下鉄の駅舎を
設計するからだ。」

「地下鉄?」

「そうだ、階段を下るとそこには
広大な地下空間。息をのむような
壮大なアーチ型の天井。
そしてきらめく特大のシャンデリア。

冷暖房完備で夏は涼しく冬は暖かい。
そこに最新鋭の高速鉄道が走り込み
梅田から心斎橋まで・・・5分だ。」

悠太郎は
「お断りします」

といって、立ち上がって帰りかけた。

「壊れないぞ。」

竹元は焼き氷を食べながら言った。

悠太郎は立ち止まる。

「え?」

「地震で地上が行かれても地下は壊れないらしいし
避難場所にもなる。」

そんないきさつで地下鉄設計に携わること
になる。

一方で震災時における情報伝達の不足
から情報をいち早く正確に知らせる
手段としてラジオ放送が注目され
ここ大阪にも放送局ができた。
震災時に情報を求めて走り回った
希子は設立意図に深く共感し、
無謀にもアナウンサーを志望した。

面接で自己紹介のとき
希子はたちあがり「うち、歌えます」
と真剣に言った。

周りが驚く中、あの馬介印の
焼き氷の歌を歌ったのだった。

その歌唱力でなぜか難関を突破。
なんと最先端の職業婦人になった。

めいこは下の子をおぶって相変わらず
料理に夢中になっている。

家庭にはガスコンロが普及した。
火の取り扱いが簡単になった家庭の主婦たち
によって様々な家庭料理が考案された。
めいこは創作料理の懸賞公募で
こずかい稼ぎ。それをこつこつとためて
氷でひやす冷蔵庫を手に入れた。

そして、牛乳でつくる寒天をつくっている。

冷蔵庫にそのネタを入れて扉を閉めた。

「後はお頼み申す!!!」

で、話は昭和7年になるのである。

めいこの
三人の子供たちはすくすくと育った。

ふ久のしたに、泰介、活男とつづく。
朝になった。
いまだに寝ている子供たちにめいこは
声をかける。「ごはんやで~」。

西門家の食卓はおおきなテーブルに
みんなで集う。
「おはようございます。」

と活男がおりてきた。

「おはよう~~」

とみんなが返す。

めいこがお汁を配る。

気のなさそうなふ久の態度。
その正反対に活男は
食べることが大好きである。

「どうや地下鉄のほうは?」
正蔵が悠太郎に聞く。
悠太郎は新聞を見ながら
食事である。

「資材がどんどん上がってきていますね
頭痛いですわ。」
と答える。

「ふーん」と正蔵は返す。

そこへあわてて希子が
ワンピース姿で現れる。

希子が食卓に座っておかずを見ると
かわった料理だった。
「なんですか?これ・・・」

「あじのひらきのポテトサラダづめ」

「あ、うちの番組でやっていたの?」

「うん、それに一工夫してからしを加えて
みたのよ。」

「それでは、いただこうか?」
と正蔵が言う。

「いただきます。」とみんながいう。

子供たちはよく食べる。

しかし、ふ久は??

正蔵は魚とイモは意外に会うなという。
ホンマやなと静。
希子は「からしがよーきいていますね。
生臭さが消えて・・」

「でしょ?
ほらふ久も食べてみ。」

めいこはふ久におかずを
分けて与えると
いやいやながらも食べている。

「どう?おいしい?」

「・・・・わからん」

「あ、ほなこっちは?」

活男が大きな声で
おかわりという

「はいはい・・・」

めいこは思い通りにいかないので
いらいらする。
そんな時新聞を読みながら食事をする
悠太郎が気になった。

「食事の時ぐらい、新聞をやめたら?」

「うん・・・・」

「そんなにお仕事大変なのですか?」

悠太郎がお茶碗を出しておかわりをする。

「活男、それねーちゃんのやろ?」と泰介。
「だってくれるってゆーたもん」

「ふ久・・ちゃんと食べんと大きくなられヘンよ
返事ぐらいしぃ。あんた人の話をろくに聞いてへんやろ?
授業中もろくに聞いてへんでぼーっとしてるって先生が」

「あんたもそうやったんやろ?」
と静が助け舟を出す。

「そんなことないですよ・・」

その隙をぬって活男が
ふ久のおかずを食べる。

「活男、それふ久の!」

「しまつやぁ~~~」

「あんたが始末せんでもええの!」

めいこは活男のおでこをポンとたたく。

そして

ひとりひとり、学校へ行く。

「行ってきます。」泰介は元気がいい

ふ久はぼーっとしている。

「ふ久、お弁当ちゃんと食べるのよ」

ふ久は学校へ力なく出かける。

悠太郎の職場は大変な状況である。

大阪はもともと地盤が低い
しかも地下水が多いこともあって
地下を掘ると水がどこからともなく
しみだしてくる。

防水の工事をしても無駄になる。

漏水の対策で土木でよろしくといったが
土木は建築課への非難をする。
「勝手なことばっかりゆうて
お宅の先生が天井をアーチにするという
から苦労しているのに。」

「しかたないやないですか。竹元さんが
欧州に引けを取らない駅舎にするというので
それを議会が承認したので。」

「建築はええの~夢ばっかりで。けつふくのは
全部土木や。」

「階段の位置が全部50センチずれていたときは
設計変更でこちらが対応しましたけど。」

「50センチぐらいどうってことないやろ」

「こっちはミリ単位でやっているのですが」

「こっちは自然相手や
具合見ながら掘って行くしかないんや」

悠太郎の上司がいうてることはわかる。
やるしかないんやから。
頼むと頭を下げた。

全員頭を下げた。

一方、ふ久の小学校は。

休み時間だった。

ふ久が空を見ていた。
太陽と雲をみているのか?
そこへ、男たちが集団で走ってきた。

ふ久にぶつかってふ久は倒れてしまった。

大丈夫?ともいわない。

「ボーっと立っているからや、ぼけ。」

「そうやそうや。」

「行くで。」

女の子たちはくすくすと笑っていた。

ふ久は立ち上がってまた
空を見ていた。

こちらは、希子の職場。

料理研究家を招いての料理の話を
希子がきく番組だった。

ラジオから流れるその番組は
おいしい作り方を説明する番組だった。

それをうま介の店で聞いているめいこ。
またまた、創作の料理の投稿をしようと
悩んでいた。

うま介は野菜と果物のジュースを
絞って作っている。

その厨房に活男がきて
おかわりという。

「もうないで~~」

「え?あるやん。」

「かっちゃんのはもうないという意味や。
これでもしゃぶっとき。」

うま介は活男におかしを渡した。

かじった途端、おいしいという顔をした。

「かっちゃんのたべっぷりは胸がすくようやな。」

めいこにいうと、めいこは泰介も活男も
よく食べるけどふ久はあまり食べないし
食べてもおいしいと言わないしと
愚痴った。

「おいしい?と聞くとわからへんというし。」

桜子が来て、「食べることに興味のない子は
いるっているわよ」という。

「ふーん。室井さんとあやめちゃんは?」
「動物園へ行っている。」

あの、だいこんやら食べ物を主人公にした
童話は売れたらしい。

うれたとたんあまり仕事をしなくなったという。

うま介はめいこが書いているレシピをみて
この番組のお料理自慢に出すのかと聞く。

めいこの採用率の高さは有名である。

「うちにふ久姫様には一切採用されへん
けどね。」

すると桜子が「それってやっぱりえこひいき
なの?」

と聞く。

希子の番組だからめいこが採用されるのかと
思ったのだった。

「えこひいきだったらもっと採用されて一番になって
いる」とめいこはいう。

めいこががんばっていると創作料理の達人と
いうか、一番採用されている人がいて
ミセスきゃべじという匿名の人である。

本名も住所も書かずに作り方だけ
よこしてくるそうだ。

そこへ源太が来た。

「牛乳屋が牛乳がたいそう余ったらしい。
いるのだったら勉強するけど」という。

めいこは「買う!すぐ買う」と即答した。

活男はうれしそうに

「おかあちゃん、もしかして???」

という。

ーめいこが今日のおやつをたくらんでいたそのころ・・

ふ久の学校。
男の子が足をけがして泣いている。
そのよこには大きな石がころがっていた。

その石が当たったのか???

鳴き声に友達が集まってきた。

男の子の目線の先には
校舎の二階から下をのぞくふ久が
いた。

ー小さな大事件が幕を開けていたのでございました。

ふ久の手にはなぜか小石が
握られていた。

*****************

さて、大阪の生活もながらくになって
めいこは大阪弁も使うようになりました。

朝の食事の時間にはしまつやぁ~~という
活男にあんたが始末せんでもええのと
つっこみをいれる。

あの引っ込み思案の希子が
アナウンサーとなった。

料理の時間で紹介される創作レシピで
何回か採用されためいこは懸賞金を
ためて氷冷蔵庫を購入した。
それで冷たいスイーツを作るのである。

が・・・今回牛乳を買って、何を作るのかなと
思った。杏仁豆腐?それともアイスクリーム?

めいこの料理をおいしそうに食べる活男は
めいこそっくりである。

そうそう、悠太郎の作ろうとしている地下鉄。

心斎橋やら淀屋橋の駅舎は確かに天井が
アーチ型だったと記憶している。
こんどいったら見とこ。

大阪の街の真ん中を走る御堂筋は
南方向一方通行で大変広い。
オフィス街が両側に並ぶ。

心斎橋あたりから商業ビルが見える。

秋になるとイチョウ並木がきれいで
おしゃれな風景である。

地下鉄の工事はそんなにも大変なものやったのかと
感心した。

大阪は水の都で地盤も弱いし地下水も
すぐでてくるし・・・
いいけど、悪いことにもなると思った。

京都はずいぶんと遅れて地下鉄ができた。
遅れすぎ・・・といえば遅れすぎである。
政治の混乱やら京都という町の
特色が原因やったと思うが。

これも、地下水も関係すると思うけど
遺跡がでると工事がストップするのである。
京都はよくある話である。

悠太郎のしている仕事は後世に残る
仕事である。

なかなかやりがいのある仕事だと思う。

しかしふ久は?
そんなにやんちゃなこではないけど。

どうなんでしょうね???

ふくはけがをさせたのでしょうか??