ふくがきた3

料理ノートをみながら料理を作るめいこ。

なやんだ・・・。

料理っていいですね・・料理は人を傷つけないでは
ないですか・・。

などと言っていたことを思うと、あとひとりの分・・・
悠太郎の料理をどうするか???悩むめいこだった。

ところがである。希子が卯野家の方たち
に泊まっていただく
部屋はお姉ちゃんの部屋でいいですね
と声をかけたので
現実に戻るめいこ。

希子に言われて、東京のお父ちゃんたちが
今日来ることを
思い出したのだった。

あああ!!!
気持ちの準備もできていない。
正蔵のことも打ち合わせをしていない。

あわてて、うま介の店にいった。
とにかく室井さんの口を封じなければ。

桜子が店の前にいたので
「今日、お父ちゃんたちが来たら
師匠のことは黙っていてくれるかな」と
いうが・・・

桜子は手を振って止めようとする。
なぜだ??

すると、うま介の店には・・・

もうすでに、卯野家の家族が到着して
いた・・・。三人がめいこを見て窓から
顔を出していた。

「なに黙っとくんだよ!!!」

大五の声がした。

めいこは、「あああ」と驚いた。

「お父ちゃん、なんで??」

「はははは・・・・・。」

久しぶりの対面だった。

店で話をすることになった。

「すぐにおうちに行こうっていったんだけどね。
この人が焼き氷を食べたいっていうもんだ
から・・・。」とイクが言った。

「そう、焼き氷!!!」

と大五がいう。桜子は「すみません、焼き氷は
冬場はやっていないのですが」

大五はがっかりする。
照生は、ほら見たことかと文句を言う。
桜子はカスタード巻をすすめた。

そこへ室井が下りてきた。

「どうしたおい、きったねーなー」
と大五が言った。
室井はぶつぶつといいながら
書き物をしている。

「よぉ、何かいてんだよ!」

「おでんを通じて世界のあるべき姿です。
いま、こんにゃくがその不確かな存在について
みんなに理解されたところです。」

「そうか・・・おまえもがんばってんだな。」

大五はカスタードまきを食べて
うまいという。

イクは食べ終わったら行くからね。西門のみなさん
まってんだよ、とせわしない。

さて、西門家では静と希子が待っていた。

両家の顔合わせとなった。

「静でございます。
これは娘の希子です。」

「ははーーっ」と頭を下げる両家

「ちぃねーちゃんには、いつもよーして
もらっています。」

「いやぁ、こちらこそ姉が・・・」

照生が言った。

「ちょっと何、鼻の下を長くしているのよ。」
めいこが照生に言った。

「あの・・・もう御一方は?」と大五。

「お姉さまのほうは?」とイク。

「言ってなかったわ、お嫁に行かれたの。」

卯野の三人は、はっとした。

「そうなの?」とイクは言う。

聞いてねーぞと大五。

「そっちだってそれどころじゃなかったでしょ?」
「あのな、そんなことちょろちょろっと
かいてよこしゃーすむことだろ?」

「あの大地震の時に電報ひとつよこさなかった人に
言われたかないです。」

「それどころじゃなかったんだよ」

「こっちだってそれどころじゃなかったのよ」

「止めなさい、恥ずかしい」とイク。

「ちいねーちゃんの家って、こんな感じだったんやね。」

「あかるうて助かっています。」

「こんなやつで、いつでものしつけて
返してくださって結構ですから~~」

「なんてこというんだよ!」とイク。

楽しい卯野家です。

じっとしていない大五は、さっさと立ち上がって
市場にでも行ってくるわという。

そして照生をよんで、いくぞ!という。

照生は「えーーー?」っといって立ち上がった。

「騒がしてくれすみません」、イクが言った。

イクは、めいこと一緒に台所に立った。

「じっとしているのは性に合わなくてね・・」

といいながら、仲良くて安心したという。
どうなっていることかと思っていたから。

「お父ちゃんも心配してたんだよ。
あんたもうちょっとまめに手紙をよこしなさい。」

めいこはうれしそうだった。

大阪と東京の食の違いを見た大五は
うま介の店で一服した。

「こっちはカツっていうと牛なんだな。」
東京はブタである。

そこへ源太がやってきた。

「おじさん・・・」という。

「ん??」

「おれ、源太だよ。めいこと同級生の。」

「おお、源ちゃんか。大きくなったな~~」

と、久しぶりすぎる対面を喜んだ。

「こっちに住んでるのか?」

この点もめいこから聞いてなくて
大五はそんな大事なことを何にも言わないと
怒った。

「忙しいですからね。」

そばにいた染丸が源太に知り合いなのかと聞く。
めいこの父親と弟だと説明すると
染丸はうれしそうに、「わたし師匠にはずっと
お世話になっていて・・・」

その瞬間、空気が凍りついた。

「師匠って?」

大五がきいた。

「あ、めいこさんのお父さん・・・」
「・・の、いとこ!!」
源太はあわててそう付け足した。

亡くなったお父さんの従兄弟でわしらも
おせわになっとったんや・・・。」

とあわてた。

な?と染丸に言うと

けげんそうに・・・うんと答える染丸。

「それも聞いてなかったけどな・・・。」

大五はご機嫌斜めだ。

ご機嫌斜めといえば
こちらは悠太郎の職場。竹元が
なにも見せるものがないとはどういうことだと
怒った。

「僕の力不足です・・・・。」悠太郎はつったったまま
答えた。

「力不足だと?
コンクリートはお前の専門だろう?

大学で何を習ってきたんだ?」
「習ってきたことに自信が持てないのです。

震災でコンクリートが必ずしも安全だとは
いえないことが分かったので
こうすれば安全だという確信が持てないのです。」

「申し訳ありません・・・」

「責任感はあるが責任を全うする覚悟はなかったという
ことか・・・
え?

お前には失望した。おまえにはがっかりした。
別の奴に任せよう」

そういって出て行こうとする竹元を
悠太郎は止めようとしたが

「ちょうどいい、私がこの世で一番嫌いな言葉を
教えよう、がっかり・・・。がっかりだ。」
そういって帰ってしまった。

藤井は「明日から休みだから気持ちを切り替えて
また頑張ってほしい」といった。
そしてよいお年をといって帰って行った。

大村は、悠太郎に言った。
「あんなぁ棟梁、どんなにがんばっても
完璧なんかあらへんで。

しゃーない。どっかで腹くくらんと・・・」
そういって、よいお年をといって出て行った。

悠太郎は、うつむいたままだった。

家に帰った悠太郎は、大五の声を聴いた。

「めいこ、おまえなにやってんだよ」

味付けである。濃いとか薄いとかの
あんばいが東京と違うのである。

「もうすこし薄くしないと・・・うん、まだかな~~。」

という。心配そうにみている大五だった。

悠太郎が「お父さん」といって家に入ると
めいこは「お帰りなさい」と言った。

「ゆうさん、お邪魔しているよ」

悠太郎は頭を下げた。

「すみません、遅くなりまして・・」

「忙しいんだろ?わかっているよ、そんなことは。
おいしいの作ってやるからな。」

すき焼きだった。

大阪は酒と醤油でやく。
東京は割り下で煮るってところかな
と違いを説明する大五だった。

静は東京風のすき焼きを食べて 
「あら・・おいしい」という。

「どうも・・・まずいっていわれちゃ、
立つ瀬がないですからね。」

と、大五はうれしそうだった。

「ほら、うすめてちょうどよかったじゃない。」

「だまってろ、おまえは。」

「味あわせてもろて、ものたりなくないですか?」
と希子がきくと、イクはもともと濃いから
ちょうどいいよ、ありがとう、という。

「ゆうさん・・・。
元気ねーじゃねーか。」

「あ、仕事でちょっと・・・」

「なに困ってんだよ、いってみな。」
「飯まずなりますよ。」
「いーから、いーから。おやこじゃねーかよ、な?」
「そうですね・・・。」

悠太郎は、小学校の建築を任されているといった。
しかし、子供の安全を守るためのコンクリート造だが
震災で被害が出たところでなかったとこがあって
同じコンクリート造でもその違いはどこから来るのか
わからないので、結論が出ない。だから安全を
どう、見極めるか…自信がないといった。

はぁ~~~~~
と、卯野家の三人は感心してしまった。

めいこは、「そんな難しいことをこっちのお父さんに言っても
むだよ、そんなことはあっちのお父さんにでも
相談しないと・・」

一瞬にして卯野家の顔色が変わった。

悠太郎は、ぎくりとした。

「ま、あのひとやったらなぁ~」と静まで言う。

「なんだったら私、向こうのお父さんに相談しましょうか?」

そういっためいこは、一同の顔色を見て

やってしまった・・・と後悔した。

「向こうのお父さんて?」とイク。
「ここのお父さんはなくなっているんだよね?」と照。
「まさか、新しいお父さんとか?」とイク。

「ひょっとして生きているとか?」と照。

「生きています・・・」悠太郎が言った。

「聞いてねーぞ。こらぁ。

なんだこれは?どういうことだ?

死んだって言ったよな??」大五である。

静は「行方知れずだったのです」といった。
「生きているのか死んでいるのか
わからないのであれば、死んだことにしようと
思ったのです。」

希子は、「最近生きていることが分かったのです。」
という。
「いつだ?」と大五。

悠太郎は六月ですというと半年もたっているではないかと
大五は怒った。
お膳をひっくり返そうとしたのでイクがとめた。

「そんな大事なことをなぜ言わなかったんだ?」
大五の言う通りではあるが、このことは
門外禁句だった。

大五は「そんな大事なことをいわないで
いいたかないが、祝言もあげれもらえねぇ
女中扱いされているってのも我慢してきたよ。

それはな、ゆうさんのことを信じていたからだよ。
ゆうさんだったら絶対悪いようにはしないって。
でもよ、こんなに隠し事が多いんじゃ
信用できねーじゃねーかよ。

それはよ、ゆうさんは俺のことを信用してねーって
ことだろ?
あてにもしてねーってことだろ?
なんでいわねーんだよ。」といった。

そういって、大五は部屋に帰って行った。

気まずい雰囲気が流れた。

****************

久しぶりのにぎやかさ。
卯野家は楽しい。
悠太郎がいっていた、家族とは
こういうものだったんだ。
いつも笑っていて、楽しく明るい
家族を夢見たはずだった。
ところが、今は仕事につまづいて
落ち込んでいる。

そのうえ、今回でよくわかったことだが
大五にあまり報告をしていない。

一本気な大五が怒った。
隠し事が多いとはなるほどと思った。

悠太郎の優柔不断さがでてしまった。
そりゃ~~祝言は上げてないわ
女中扱いだって、それは大五にとって
じっと我慢だったと思いますよ。

大事な娘なのにね。

隠し事はだめですね。
いいことがないし。。。

さて・・・どうなることやら?