ごちそうさんへの日々2
関東で地震が起こった翌日から
悠太郎はアンデス丸に乗って東京へ
救援物資を運びにいった。
うま介の店にきた静は桜子と話をしていた。
めいこは家族が大好きだから心配でたまらない
はずだと桜子は話をした。
卯野家の様子は依然としてわからない。
桜子の実家も東京だけど明るく働いているので
静は感心していた。
働いていると余計なことを考えずに済むので
と桜子は言う。
静は桜子の話から忙しかったら余計なことを
考えなくて済むと納得した。
めいこは、心配し過ぎて糠床もかき回しすぎて
ぬか漬けがどんどんまずくなっていることに
気が付かない。
ふと台所に落ちていた50銭を拾ったけど
やっぱりもとにもどした。
この運を使ったらおとうちゃんたちが
助かる運がなくなるかもしれないと思った
からだ。
静は集会所で東京から避難してきたひとを
受け入れるので、めいこに、
炊き出しの手伝いをしに行こうと
提案する。
集会所は気の毒そうな人が多かった。
恐い思いをしてきたのだろう。
源太はめいこをみて奥の炊事場にみんな
がいるから頼むでという。
めいこは台所に入ろうとしたら
避難民の男性があんた湯島だって?
自分もあの近くだったと話をする。
めいこは、はっとした。
そして、湯島の近くにいたという女性に
必死になって話をした。
「開明軒はご存知ですか?
私に実家なのです。
あの近くだったらご存知ですよね。」
藁をもすがる思いで声をかけて
聞いたつもりだったが。
静が止めようとした。
その女性は、「よかったですね~
こっちに嫁いで・・。
親は知らないけど・・・。」
「え?」
先ほどの男性は「あの人は気が立っているから
許してやってくれ」といった。
避難所はけがをした人や元気のない人
がたくさんいた。
炊事場での女性会のリーダーが
先ほどのめいこの話を聞いて
こんな時に聞いて悪かった、あの人たちは
それどころではないはずだから、
と話を聞いたことをよくないといった。
「もうちょっと気を使わんと。
気遣いが足らんねん。」
炊き出しでみんなに食事をふるまう女性会だった。
めいこは先ほどの女性が一口も
食べてないので気になった。
そして、ご飯とお汁を
すすめた。「先ほどはすみませんでした。
私が至らなくて・・・。」
「どうぞ召し上がってください。」
「他の人にあげてください。」
「みなさん一通り食べてもらっていますから
遠慮なく・・じゃおみそ汁だけでも。」
といって、お椀をさしだした。
するとその女性はお椀を手でたたき落とした。
めいこはびっくりした。
「大丈夫?」
「なんてことするんだい、せっかくのものを」
「食べないと力がでませんから。」
「今更力を出して私どうすればいいのよ。」
周りは口々に言う。
「だから、こういう時だから
食べないといけないと・・・」とめいこは、
むきになった。
「あんた、やめなはれ。」と婦人たちが言う。
「つらい気持ちはわかりますが、
こういう時だから食べないとい
けないと思います。」
その瞬間女性はめいこの頬を
ぶった。
周りは騒然とした。
「あんたは私の何がわかるっていうの。」
めいこは何が何だかわからない。
女性会のリーダーは
めいこにいった。
「避難してきた人を怒らせて何を考えて
いますのや?」
「食べないと体が持たないじゃないですか。
本人は食べたくないと言っていますが
体は食べたいといっています。
わたしも食べたくないと思っていたけど
食べたら、落ち着いたから。」
「とにかく、もうここへは顔ださんといて
おくれやす。」
「あの人このままでどうなるのですか?」
「落ち着いたら食べはりますわ。」
そういって怒ってみんな出て行った。
静はめいこに「落ち着き。」といった。
女性会のほかの女性はめいこはここに
来ないほうがいいかもしれないという。
妊娠しているから、今の状況では
複雑な気持ちにならはる人もいると思うと
いうのだった。
家に帰り道
静は「なんや誘うて悪かったな」といった。
めいこは、自分が悪かったからという。
新聞を見て死亡した人の名前をゆびで
たどってため息をつく。
正蔵の家に言ってそんな話をする。
「落ち着かないし、忙しい思いをしたら
まぎれるかと思っても、追い出されたし。」
「避難してきた人に救われ取ったんかいな?」
正蔵は人のために役に立っているという気持ちで
どうにもならない自分が救われることもあると
話をする。
人の役に立っていると自分が救われている・・・。
人の気持ちに寄り添うことは難しいという。
「私は私で救われてそれで人の役に立って
いるのなら結構なことや。」
「でも・・・」
「おもてに出なんだらええねん。」
めいこは、はっとした。
そして、避難所の炊事場にいった。
ここで働きたい。表に出ないからと
いうが、リーダーは難しい顔をした。
すると一人の女性が「この子料理が
とくいでこんな大根もぱぱぱと
切るのですよ。ね?」とめいこをかばって
くれた。
あの女性ふみは避難所で遊ぶ子供を
じっと見ていた。
家族を思い出しのか。
いたたまれなくなり、ひとり顔をそむけて
泣いていた。
めいこは必死で大根を切っていた。
ー山のような大根をむくことで
しばし、救われる人間がいる一方で
どんどんと自分を追い込むばかりの
人間がいたのでした。
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他人事ではありません。
関東大震災は今後ありうるだろうと
思われる大きな地震の代表です。
東京がこうなると、日本はどうなるのか。
多くの人が住んでいる東京はどうなるのかと
恐くてたまらない。
よく、東京の地下鉄のそうこあたりに
水とか食べ物とか毛布などを
備蓄しているという話を聞くが
だからといって、それだけで助かるものではない。
大事な家族を失い。
大事な家や仕事を失い。
友人を失い・・・。
多くのものを失い・・・。
明日からどうすればいいのかと
悩む日々なのである。
かといって
備蓄しなくていいというわけではない。
この時代は情報がなかなか通じない時代だった
から、めいこも心配でたまらないのだろう。
で、湯島から来たというふみについ、
開明軒の消息を強い口調で
聞いてしまったのだった。
そんなめいこに、親切に開明軒の安否を
教えてくれるわけがない。
なにもかも絶望してつらい思いをしている
ふみがめいこの気持ちを察して
開明軒の話をするわけがない。
しかし、めいこは必死だった。
そこで正蔵が人の役に立っていることを
実感するとよけいな心配をしなくて
すむようになるとの話をした。
それで、めいこは追い出されても
もう一度、お願いをしに行って
くわえてもらった。
人のために、おいしい食べ物を作ろうと
黙々と大根をむくとは・・・・。
意地らしいではないですか。
しかしふみさんは、どういった身の上になった
のでしょうか。
あの家族団らんの思い出のシーンを見ると
家族はみんな亡くなったのかもしれません。
今日の分、遅くなってしまいました。
明日???
がんばりますね
