大嫌いといわしたい5

流産しかけて倒れためいこの代わりに
和枝が台所をする。
めいこの部屋に食事を持ってくる和枝。
和枝の作ったものは見た目がきれいで
味がやさしくて、驚くものばかりだった。

しかし、和枝は黙ったまま、無表情だった。

いただきますといったが
和枝は黙ったままふすまを閉めて出て行った。

一口食べると本当においしかった。

うま介の店では竹元が入り浸っていた。
れいの焼き氷が気に入ったのだ。

その思い入れからか、なんとうま介の店には
カキ氷機が登場した。
手伝いに行った希子に桜子は説明した。
手でハンドルを回すと動力がベルトを使って
伝わり、氷を削ることができるものだった。
京都帝国大学の総力を挙げて作ったと言った。

すると、竹元はこの程度のことで英知の総力とは
京都帝大へ侮辱だ。という。

失礼しましたと桜子は笑いながら言った。

つぎはミキサーというものを作ってやるからな。
追加を!!!

と、カキ氷のおかわりをした。

つまり、おかわりしたいために作ったのだった。

希子が市場に行くと、めいこのためにと
野菜やら、魚やら・・・差し入れがどかんとあった。
みんながめいこに食わせろと言ってると源太。
希子はそれらを肩に背負い、両手にもち・・・家に持って
帰った。

家ではガスやがきて注意をして帰って行ったらしい。
静はその対応で謝りっぱなしだったという。

希子の持って帰った食材を見て驚いた。
クマかクジラと思われているのかいなといって
笑った。

それをじっと和枝は見ていた。

倉田は悠太郎と話をしていた。

和枝は肩身が狭いのではという。

詐欺にあったとかガス漏れとか人の口に戸はたて
られない、そのうえ悠太郎君にややこまでできたら
居場所がないと違うかという。
悠太郎は気を配ろうと思っていますというが・・・。

家ではめいこの部屋で静が三味線を弾き
歌を歌っていた。

希子は手をたたき、めいこも楽しそうだった。

しかしめいこはじっとしているのに飽きてきたらしく
動けないのかなというので
希子はたしなめる。

今は休むのが母親の仕事です!

はい・・・

とめいこが返事をしたので二人ともふふふっと
笑った。

ほな呉服屋よぼか?と静が言う。

部屋の外では和枝がご飯を持ってきていた。

なんで呉服屋ですか?

いろいろあるやんか、産着とか初参りの着物とか

それはお母さんが呉服屋を呼びたいのでしょう?

わかるか?

そういって二人とも笑った。
めいこも笑った。

それを廊下で聞いていた和枝だった。

昔、自分が妊娠した時のことだった。

姑はなんでいまごろややこができるのかと
うっとうしそうに言った。
夫は、しゃーない。できたものはできたんやから。という。
子だけもろて里に返すのはあかんの?

自分の時はそうだったのに、めいこの妊娠では
みんなが祝福し、めいこを大事にしている。
和枝はねたんだらあかん、と自分に言い聞かせた。
そして洗濯した着物をそっと部屋の前に
おいた。

イワシを煮つけながら和枝は希子の言葉を
思い出した。

「お姉ちゃんの心がいびつやからや。
そんなにしていたら、どんどん周りの人
はなれていくよ。そやからいつまでたっても
さみしいんや・・・」

ーしんどいね和枝さん、子供じゃないから
いつまでも生きているから
変わるのはしんどいね・・・

めいこの部屋で食事の用意をする
和枝と希子。

すごい・・・こんなに???
めいこは、食材の多さに驚いた。
希子は市場に人たちがめいこに差し入れと
いったことをつげた。
「ほんまに?」
「ちぃねーちゃん、大阪弁になっている・・」

そういって希子は笑った。

和枝は去って行こうとしたので、
めいこは、こんなにたくさん、大変でしたよね。
ありがとうございます・・・と言った。

相変わらず、無言で無表情だった。
食卓にはイワシがあった。
たじろぐめいこ。

悠太郎は和枝を心配した。

まだ口をきいてくれないのですか?

うん、ご飯は出してくれるの。
おいしいし、彩も盛り付けもすごいです。

イワシを初めて食べれたことを報告した。
全然生臭くなかったという。

洗濯物の中ににおい袋まであって
悠太郎は和枝はめいこを大事に
思ってくれるようになったのかと
言った。

めいこなのか、子供のことなのかわからない
けど、うれしいめいこだった。

こうして、一週間ほど安静が続き晴れて動ける身
となった。

市場に行った和枝はイワシを買った。
習ったらどうや?和枝に・・・

あの正蔵の言葉を思い出した。

和枝は部屋でおしめを縫っていた。

そして、昔のことを思い出していた。
嫁ぎ先で嫌がらせにあったこと。

そして、なんでうちだけは・・・といいつつ

あかん、と首を振った。

そこへめいこが来た。

イワシの料理を教えてほしいといった。
和枝はイワシを取ってかごに入れた。

そして、塩水で洗った。

背骨を取り、皮をむき、手際がいい。

山椒も入れて、天ブラ粉にいれた。

いくらでもいけれるとめいこは言った。

天ぷらおいしくできた。

和枝は無表情、無言だった。

料理って本当に人柄がでますね。
めいこは和枝の料理はていねいだったので
すごく好きですといった。

そんな和枝から見てめいこの料理は
ダメだったかもしれない。
「これから少しずつ直しますのでいろいろと
教えていただけたら・・・」といった。

「お姉さん・・・??」

「あかん・・・

どないしても

あんたを好きになんか、

なれへんわ・・・。」

「え???」

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和枝の無表情で無言のわけは
なにかあったのでしょうね。
めいこは、だれからも好かれて、
何事も一生懸命なので
市場の人たちからもこんな時には
心配されて、差し入れまでもらえて。

和枝は自分の時とそれを比較している
かのようでもあります。

妊娠を喜んでもらえるめいこと
ちがって自分の時は姑や夫から
おめでとうとも言ってもらえず
嫌がらせを受けたりしたことを
思って、妬ましく思ったのでしょう。

また、めいこには多くの味方がいること。

さて・・・

和枝の将来はどうなるのでしょうか?