大嫌っていわしたい3

悠太郎の職場に現れた竹元は
暑いの連発をする。

大阪は東京より暑いのではないかと
悠太郎は京都のほうが熱いでしょと言い返す。

大村は心頭滅却すれば火もまた涼しと
根性論を説く

竹元の出した答えはその大村の声が暑苦しいと
いうものだった。
「来るもんじゃないな」と竹元はいう。

悠太郎は「夏だけくつをやめはったらどうですか?」

といったので

「おまえは私の生き方にもんくあるのかぁ!」と大声を
だす。悠太郎は「怒るとなお熱くなりますよ」と
涼しく言った。

悠太郎はなぜ市役所に現れるのですかと聞く。
「大阪市の都市計画事業が最近私に関心を
寄せてきてね。ハイヤーは出ないのだが・・・。」
一言多い。

めいこは気になっていたことを和枝に聞いた。
「お姉さんのにおい袋擦り切れていましたが
繕っておきましょうか?」

すると和枝は「あれは・・・・擦り切れてええねん」という。

わけを聞くと「・・・なんでもや」、と思い詰めたように答えた。

正蔵の家でおいしいいも煮を食べて満足なめいこ。

正蔵はうれしそうにする。しかし、といいながら
和枝の結婚話に驚いたようだった。

和枝は几帳面な子だった。
墨をすっておいてい欲しいというと
ちょうどいい具合にできている。
よくよく聞くとお父さんのは100と68回
お母さんの時は92回と決めているという。

お父さんは濃い目が好き
やさかいナといったらしい。
めいこはにおい袋の質問をした。

あれは、和枝の死んだ子供の着物で作った
ものだという。
かたみということだが、もう擦り切れてもいいというのは
どういうことだろうとめいこは思った。

その子供の墓に手を合わせる和枝と安西。

「お子さんはおいくつだったのですか?」
「・・・6つです。池に落ちて亡くなったのです。
それを理由に嫁ぎ先を追い出されました。

わてはえらい姑に嫌われましてな。
几帳面すぎてうっとうしいって

それからも苦労続きで何度も踏ん張ってくれたのは
この子のおかげです。」

におい袋を出した。

不幸に会うたびににおい袋をにぎりしめて、
負けるものかと思ったという。

「恨みの力で気張ってきました。」

「もう擦り切れていますね。」と安西。

「もうそういう生き方はやめということでしょうね。
同じ生地で作ります。今度は優しくなでて
やろうと思います・・・」

うま介の店で焼き氷を食べる竹元。

大変気に入ったらしい。
「人の心を惑わす罪深い黒い魔女だ」という。

もう一杯おかわり・・というと

桜子は一人一杯だけという。
暑さで人気になり、うま介は氷の削りすぎで
手の甲を痛めてしまった。

あまり売れるとまずいのだ。

「申し訳ありませんがまた明日いらしてください」と
桜子。

「だったら仕方がない」と竹元は言った。

悠太郎は経済学部の安西教授を知ってますかと
聞いた。「縁のある方なので。」と。
そういうと「ああ、あの夢とうつつの間をいったりきたり
する先生だな。」と竹元は言った。
「人の話を聞いているのかいないのかわからない先生だ」
という。「その癖に言うことはやけに鋭い。」

「え、あのシュッとしたええ男の・・」

「お前の審美眼はどうなっているんだ?
懇親会の写真があったな。みるか?」

そういって、写真を見せてくれた。

すると

なんと・・・

丸い顔の、メガネも丸く・・どこをみているのか
わからない焦点のあってない眼をしていて
あの、安西ではない。こっちのほうが年を取っている。

悠太郎は驚いた。
違うのである。

めいこは買い物から帰ってきた。

「今日は何?」と静が言う。
希子も一緒だった。

そこへあたふたと悠太郎が駆け込んできた。

「え??おかえりなさい」とめいこがいうが
急いで株券をもって出て行った。

そこへ和枝が帰ってきた。
「おみやげ買ってきましたで。」

というが、三人はおかしな顔をしていた。
何があったのと和枝がきくと
「さっき悠太郎さんが帰ってきたけど
血相を変えて出て行った」と静が言った。

「ふーん・・・???」
和枝はものごとの意味が分からずぽかーんと
していた。

そこへ、また悠太郎が帰ってきた。

そして、和枝に株券をだして、
「この会社はありません」
といった。

和枝はぽかんとした

「登記もしてないし、この住所にこの会社はありません。
これはこの世にない会社の株券です。」
「・・・・・?」

「詐欺やったんです!!!」

やっと事の重大さがわかったのか和枝は
顔が青ざめてきた。

なのに、
「でもあの人も同じものを買っていたので
あの人も騙されたのと違うか」という。

悠太郎は和枝の手を引いて警察へ行った。

次の待ち合わせの日、いつまでまっても
安西は現れなかった。

しばらくして、詐欺事件として報道された。

ー複数の人間による組織ぐるみの犯行で被害者は
のべ50人。被害総額は100万円にのぼる大事件でした。

うま介の店で氷を削るめいこは呆然としていた。

和枝は寝込んでしまった。

食事もあまり食べていないらしい。

倉田は悠太郎にあって和枝の状況を聞いた。
心配していたのだ。そしてうっすらと涙を
ながした。

「倉田さん・・・・??」悠太郎は聞いた。

倉田は和枝の苦労をよく知っていて報われない
ことばかりでかわいそうだという。
「なんであの子だけこんな目に・・・」

正蔵も心配していた。

「和枝はちゃんと食べているか?」
と聞かれて「なにも」、とめいこは答えた。

めいこは和枝が口をきいてくれないので
何が好きなのかどうなのかわからないと
いった。
和枝は特に好き嫌いはないが
ただ、一つだけ好きなものがあった。
イワシというのだが、めいこはイワシが嫌いだった。

正蔵は「うまいがな」というが・・・めいこは好きになれない。
「ほなら和枝に習ったらどうだ?」という。
「いまだから頼られるというのも張り合いが出ることだから」
といった。

和枝の部屋の前で静と希子が声をかけるが
返事がない。

開けるとそこには・・・

だれもいなかった。

あわてる希子。

部屋には株券が巻き散らかされていた。

****************

悠太郎が安西を怪しいと思ったのは
それなりに、勘が働いたということだった。
弟であっても姉の事件ににおいをかいで
警察に届けを出した。

が、時はすでにおそく、和枝のお金は
架空の会社の株券になってしまった。

あれほど、素直になった和枝だったのに。
そして、苦しくとも踏ん張ってきた、そのとき
子供の形見の着物の布で作ったにおい袋を
にぎりしめていたという。
しかし、もう結婚したらそんなことも
必要でなくなるはずだった。
今度は握りしめるのではなく、優しくなでて
あげようと決めたのに。
倉田は和枝のために涙を流した。
一番和枝のことを理解している人と思える。

お金は取られたけど、土地や屋敷は取られなかった
だけでも良かったと思うが。

和枝はこれからどうするのだろうか?

二日間、忙しくて記事をアップできませんでした。
やっと今日の分を今日の夜にアップできました。

すみませんです・・・。たまにこういうことがあります。