君をあいす6

うま介の店を訪ねてきた悠太郎。
焼き氷を注文した。

めいこはメレンゲに火をつけた。

「ブランデーですか?」
「火が消えたらお召し上がりください。」

めいこは事務的に
そういってスタスタと
厨房に戻った。

珈琲のシロップなんですね・・・。

一口食べてつぶやいた。途中からは
梅シロップに代わって・・

「焼き氷の話をしにきたの??」
めいこは大きな声を上げた。

大きな声でする話やないんで・・・

めいこはたすきを外した。
そして悠太郎の前の椅子に座った。
悠太郎は目の前の焼き氷をすっと
横に移動させた。

外には桜子たちが見守っていた。
市場でつかったオルガンをもって
室井や希子たちも帰ってきた。

悠太郎は父親のことを話し始めた。
僕が父を許せないのは、僕も逃げだした
かったからです・・・。

仕事を辞めてもどってきたのも
お静さんをつれてきたのも
みんな僕たちのためだったのに。

良かれと思ってやったことが全部
うらめにでてしまう。同情しました。

しかし、ある日父がいなくなりました。
首でもくくるつもりなのかと思い
心配してみんなで探しました。

その父は愛人の家でのん気に
していました。愕然としました。

それから姉とお静さんは罵り合うように
なりました。希子は震えていました。

だから、いうしかありませんでした。

僕がこの家を守る・・・と。
これからは父は死んだものと思うことと。

傷ついた姉とお静さんは相手を攻撃
するようになりました。

姉の料理をほめたらお静さんの料理が下手という
ことになる。お静さんをほめたら
姉がへたということになる。
何か言う前に口に手を当てて考えるようになり
しだいに、無表情になりました。
食卓も会話のない味気のないものと
なりました。

安全な街を作ること
父を見返すこと

それを頼りに生きてきました。

あなたの家族に会ってあなたにあって
こんな食卓がほしいと思いました。

相手の幸せを考えることが
愛情だを思うなら
僕はあなたの手を放すべきだと
思いました。

何度も考えたけどしなかったのは
嫌だったのです。
あなたは僕が手に入れた
たったひとつの宝だったから。

他の人にとられるのではと思い
私はこんな掃き溜めにいる人間ではないと
言われるのではないかと・・・

不安で・・

くだらない、くだらない人間やと思います。

せやけど、僕を見捨てないでください!!

悠太郎はあまたを下げた。
めいこは立ち上がって
悠太郎のそばにいった。

「悠太郎さんてバカだったのね。
私のこと宝物だというひと
ほかにいないし

ばかで子供でわかろうと思えば
合図はいくらでも出ていたのにね。

わたしも、ばかでごめんね・・・。
ひとりにして・・・ごめんね・・。」

悠太郎は立ち上がって
めいこを抱きしめた・・・・。

テーブルの上に焼き氷は
とっくに・・・

溶けていた。

店の外では室井が「元のさやだね~~」という。

「ほんと、ごちそうさんってかんじ。」と桜子。

希子はうれしそうだった。


家への帰り道市場でめいこは源太の
店で一番いい肉を買った。
源太は驚いて悠太郎を見た。
悠太郎は頭を下げた。
「ほんまにいっちゃんええ肉にするからな。」
「うん!」

悠太郎は希子に言った。
よう人前で歌えたなぁ

ちぃねーちゃんのことを考えたら
歌えた。
ちぃねーちゃんの焼き氷みんなに食べてもらうんや
って思ったら歌えた。

・・・

兄ちゃんもいつか変わるよ

・・・?
お父さんのこと許せる日が来ると思う。

生意気いうて・・・

二人は顔を見合わせてふふふと笑った。

ーそうだね希子ちゃん、氷はいつか溶けるものね。

大八車をひいて三人は家に帰った。

「おねえちゃん、怒っているやろな・・きっと。」
「希子ちゃんは大丈夫と思うけど」
「あなたも意外と大丈夫と思いますが・・」
「え?」

玄関が開いて静がでてきた。

満面の笑みを浮かべて
お帰りといった。

問題は・・・・家の中を見ると
和枝がぶすっとして立っていた。

あの・・・・・

とめいこがいうと

蚊も出てきたさかい、さっさと閉めて!

そういって家の奥へ入って行った。

静もはよ入ってという。

二人だけになったら殺しあわんほどの勢い
だったので疲れ切ったんだと思います。
と悠太郎が言った。

久しぶりの夕餉だった。
お皿の並んだステーキ。
ひとによってステーキの味付けも
付け野菜も変えるめいこ。
希子は、一口食べておいしそうだった。

静さんは、このお肉ホンマにおいしいなという。

悠太郎の説明を応用すれば、めいこちゃんは
料理がうまいねというと和枝さんは下手ということ
になるので、肉がうまいと表現したと思います。

悠太郎さんが奮発してくれました。
おかわりありますのでどんどん食べて
くださいね。

希子の記念でもありますから。

え?(和枝)

希子ちゃん、歌を歌ったんですよとめいこ。
それがとっても上手で。

和枝は芸人やあるまいしはしたないという。

ごめんなさい、と希子。

おねえさん、お口にあいませんか?

なんにも言われていませんでしたからな。
別れるというてたのに。
肉出されてものど通りませんわ。

あ・・。(めいこ)

悠太郎は

親父のことはみんなの気持ちがそろうのを
まつことにしました。
その気になったら縁を復活させることを考える。
そうならなくてもめいこも無理強いはしない。
自然に任せようって。

といった。

時々様子を見にいくってことで

和枝はため息をついた。

さて、市役所では藤井が茄子を落とさんばかりに
なって仰天していた。

糠床がないのだ。

ない、ない・・ない!!

「あ、糠床か?さっき赤門の嫁さんが来て
もってかえりよったで。」と大村。

「べにこぉ~~~~~~~~~~~~~」
と藤井が叫ぶ。

「べに子って名前まで付けとったんかいな。」

ーとらですよ。

さて、源太の店でめいこは糠床をかき回していた。
ぬか床からトマトが出てきた。

「トマトぉ~~~~~??
悠太郎さんやるなぁ~~。」

ー悠太郎さんではないからね。
藤井さんだからね

源太は「うまいこといっとんのか、最近は?」
と聞く。

「あちらを立てればこちらが立たず・・・
気長にやるわよ」
ーそうそう、ぬか床だってねおいしくなるのに
時間がかかるんだから

氷だっていつか溶けるんだから・・・
めいこは久しぶりの糠床をかきまわしながら
いった。

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良かったです。なによりも東京のお父ちゃんが
心配していたのは二人が仲良くできること
だったからです。
二人が仲好かったら大丈夫なのですから。

悠太郎ってこんなにも小心者だったのですね。
かわいそうにね・・・。自分の家に自信が持てなくて
しかし、やっぱりお父さんのことはかくしていた
ってことはよくなかったです。めいこを他人扱い
していたことになります。

希子ちゃんも笑顔が出るようになりました。
静さんもやっと安心して暮らせるでしょうね。
和枝さんとケンカばかりしなくて済むしね。
めいこ、今週はしっかり焼き氷と取りくみ
うま介の店を繁盛させました。
これは楽しかったと思います。

糠床のトラさんも源太の店に帰りました。

よく大八車が出てくるドラマですね。

驚きます。和枝はそれでもめいこをまだ
追い出したいのでしょうね。
今後どんな手を使って追い出そうと
するでしょうか。

この人のいけずは天才的です。