君をアイス5

できたぁ~~~~~~

原稿をもって二階から降りてきた
室井にめいこは驚いた。

やき氷の歌を作ったという。
歌を歌いながらチラシを配るという
作戦である。

お店にオルガンが置いてあるので
だれかが引くためなんだろうとめいこが
きくとうま介は姉がひきますといった。

うま介のお姉さんにメロディーをつけてもらって
だれが歌うのかとめいこがきくと

もちろん、

あなたです・・・。

と、桜子は両手をあげていった。

その手の先は希子だったので
希子はふと後ろを向いた。
だれもいない。

え?うち??

驚く希子だったが自信はない。
やがてうま介のお姉さんがやってきて
桜子相手に歌唱指導を始めた。

めいこは厨房でうま介と一緒に焼き氷の
したくをしている。

手が痛そうだった。
氷をもって力を入れて削るからだった。

うま介はメレンゲを作っている。こっちも
泡立て器をまわして大変だ。

頑張りましょううま介さん
ここが正念場です、

というめいこに希子は
何かを思った。

西門家では和枝が夕飯の
給仕をしていた。

悠太郎に、めいこたちが出て行って
七日。どうするの?
希子も返してほしいという。

悠太郎は籍を抜く話をします。
という。

和枝の言うとおりにしておけば
よかったと反省をしている。
籍を汚してしまいました・・・。

また合わないところに縛り付けて
おくのはかわいそうだと思うとも
いう。
この家に来たのが間違いやったんです。

なにもかも和枝の願いどおりに
運んでいた。

そのよる、希子は厨房に降りると
めいこが梅シロップの瓶の横で
考え事をしていた。

梅が悠太郎に見えた。
希子は声をかけた。

ちぃねーちゃん、うち、お兄ちゃんに
来るようにいおうか?

ううん、そんなんじゃないから。
明日は焼き氷を売る大事な日だから
早く寝ましょう。

翌日、市役所に源太と染丸が現れた。
「源ちゃん、どこへいくの?」
「黙ってついてこい。」

源太が廊下を曲がろうとしたら
師匠が廊下にいた。

あわてて、染丸と陰に隠れた。

師匠は悠太郎にあった。
自分は遠くへ行くから
めいこを呼び戻してあげてほしいと
いうが・・・

「あなただって逃げ出した家でしょ?
問題はあなたではないのです。
関係者面は不愉快です。」

きっぱりと言って去って行った。

源太はもう少し時間を置くかと
言った。
やがて昼時になった。

うま介の店では焼き氷を宣伝できて
売り出すはず・・・
なのに、客は誰も来ない。

役所で源太は悠太郎に声をかけた。

「おい、通天閣。
めし、一緒にいかへんか?」

役所の一室で源太と会った。
「その人は?」と悠太郎は染丸をみて
いった。
「こいつは、わいのこれや」、と
小指をたてて源太は答えた。
「だから勘違いは勘違いとわかってもらった
上で。おまえちーとちっちゃすぎへんか?
けつのあな!!
わしにあうな、師匠にあうな・・・密通でもなんでも
ないのに。」
悠太郎は源太たちと一緒のところを見たことを
いった。楽しそうだった。だから
わかれて、自由にさせてやろうと思うといった。

そして

「話はもうええかな。」

といって
出て行こうとした。

「かっこつけんなや!!
やきもちやきで
しつこくて
懐も小さくて
おまえめちゃめちゃかっこ悪い男だろうが
えーかげんそのかっこうつけやめ!
うっとうしんじゃい!!

わかったふりはやめて
自分の思っていることをあいつにぶつけて
わかってもらえ!!!」

「いいました。」

「いうてへん」

「いいました」

「ゆうてへん(染丸)」

「おまえがいうたんはな、ただ
何があったかということだけやろ?

あいつから話を聞いたときあいつと
おなじことおもたわ。
そんな前のことをほじくり返さんと
前を向いたらどうや?って
これからどうしたいんか、
腹の底の本音を正直に言え!!!」

悠太郎は出口に向かっていた体制を
変えて、椅子に座った。

そしてぼそっと言った。

「嫌われないでしょうか。」

「あ?」

「かなり女々しいうっとうしい話やと
思うんですけど」
「それであかんかったらあかんやろ。
どうしようもないところを好いて
もらわれヘンかったら
どのみちこれからも続かへんわ」

源太はそういって出口から出て
いった。

「げんちゃん、惚れ直すわ~~」

染丸も出て行った。

悠太郎はため息をついた。

「お客さんこーへんなぁ~~」
「来ませんね~~」

うま介の店ではめいことうま介が
ため息をついていた。

室井たちが市場にいってチラシを配り
ながら歌を歌っているはずだ。
だれも来ない・・・。

希子は心配になって見に行くといって
出て行った。

案の定、甲高い声で桜子が
音をはずしてうたっていた。
行き交う人は耳をふさいでいた。
室井は希子にみんな耳塞いじゃってさ
これじゃ藪蛇だよ~~~~

という。

希子はいままでのめいこの頑張りを
思い出した。
いまのめいこの頑張りも思い出した。

♪天神橋すじ・・・
♪あまくて不思議な焼き氷~~

♪うま介印の焼き氷~~

小さな声で希子が歌った。

桜子は台の上から降りて希子の手を
とって台の上にあげた。

緊張しながらも希子は歌い始めた

♪こおり、こおり、こおりなのは
間違いないのさ。

♪ところがどうにもうわさだと
なんでも火を噴く氷だと

♪氷のお山にしろ帽子
パッと火を付け
こんがりやけて
解けそうで解けないもどかしさ

♪あつくて~~~つめたくて~~

「焼き氷頂戴!!!」
お店にはお客さんが来始めた。

「おいしいい~~~」
お客さんの反応は思ってもいなかったほど
良かった。

♪一度食べたらもう虜~~

♪あなたもわたしも
♪あなたもわたしも

♪テーブル囲んでドレミファソ
♪食べてみはって摩訶不思議

♪よってみてよ
♪天神橋筋

♪世にも不思議な焼き氷

♪うま介印の焼きごおり
♪うま介印の焼き氷~~

市場の人たちは手拍子をして
やんやと喝采した。

希子は笑顔になった。
そして人並みの中に悠太郎を
みつけた。

室井はチラシを希子にわたして
悠太郎に持っていくように言った。

「ゆーさん、早くいかないと無くなるよ!!」

室井が言った。

悠太郎はチラシをもって去って行った。

希子はうれしかった。

うま介の店は大繁盛だった。
もう、材料も少なくなったし
閉める?
そうね。

そんな話をしていたら
店のドアが開いた。

あ、すみません・・もう・・
といった桜子は、アッと思った。

めいこはふと見ると
ドアのところに悠太郎が来ていた。

****************

悠太郎のどこに惚れたんだ???めいこ!
こんな女々しい
うっとうしい男のどこがええんやろ???
見かけ以外みるとこないやんか。

うーん、見かけも濃いし・・・
どうなんだろうなぁ~~~~
ほんまに、思っていることを
ぶちまけることすらしないって
こいつ・・・
おんなをなめとんのか?

源太の威勢のいいこと。
私も惚れ直すわ。

プライドだけでは生きていけれません。
めいこは朝から晩まで無休でしかも
お給料もなしで女中のごとくこき使われて
ぼろぼろになっても働いて・・・
知らない土地で心ぼそいのに
僕は仕事がありますからと、ほったらかしにして。
恐ろしい小姑のなかで、口にあわへんと
せっかく作った父親譲りのフォンも
捨てられて。

お出汁の取り方も教えてもらえずに
全部、源太の力で西門の味にちかづくことも
できたのに。

そんな源太に会うなとは何事なん???
悠太郎。
僕の妻を助けてくれてありがとうと
感謝してこそ、夫としての器でしょ??
しかも、自分の嫁が不倫をしていたのではと
疑惑を持つこと自体、おかしい。
めいこを信じていない。
めいこにとって友人もいなくて
大事な糠床を家においていたら捨てられるので
どうしようと悩んでいたところを
源太にあって預かってもらったし。
和枝のいけずで魚島季節のごあいさつで
安く大量に手に入れた鯛をだれも受け取ってくれない
ばかりか、和枝がまえもって挨拶に行った先から
お返しの鯛がどかんと家にやってきた。
どうしようと悩んでいたところを救ってくれたのが
師匠、正蔵だった。

西門の嫁と知って、助けてくれた
わけかもしれないけど。

そんなめいこのピンチを何度も救った
源太や師匠にあうなとは????

それ以上にめいこを傷つけたのは
悠太郎のいいなりになれという価値観の
違いだった。女は奴隷ですか?

悠太郎がいいということはいいけど
ダメということはだめという価値観。

人の価値観の否定は
人の存在の否定

存在の否定は
人間性の否定なのです。

嫁は主人の言うとおりにカラスが白いと言ったら
白いといわなければならない、めいこはこれに
反発をしました。

ごめんで済むかな?????

これって・・・

ある意味

人権侵害です。

ごめんで済む問題ではないと

思いますが・・。

どうやって事の収束を図るので
しょうか????明日が楽しみ。

自由に好きなものを作れるうま介の店。

めいこはここで働くほうがいいと思うけど。

いや、これは冗談ですけど・・・。