君をアイス4

雨が降ってきた。

西門家では干した布団をとりこむ
和枝だった。

が・・・なぜか一枚だけ取り込まなかった。

うま介の店ではめいことうま介
室井たちと希子が焼き氷の試食をしていた。
氷の上のトッピングを焼く。
(これはブランディをしみこませた角砂糖かと
思われるが、私にはわからない)
そして試食。

一同おいしいと喜ぶが、めいこはまだまだだった。

お客さんは一度は珍しくて来てくれるけど、
次回はどうかな?とこだわる。
すると、ふと悠太郎の言葉を思い出した。

「出てくるメニューはどんな味か想像はできます。
でもその想像を超えるほどうまいというところに
感動があるのです。」

思い出しながらその手は悠太郎の考えるときのくせを
そのまま再現していた。我に返るめいこ。
とにかくこれでは出せれません。

一方、役所の悠太郎はやっとのことで
学校の図面の線引きが終わった。
大村と疲れ果ててソファに座っていた。

思いついてよかった。雨天体操場を
二階に持ってくるって。。。。。
大村はうわごとのようにつぶやいた。

良かったです・・・・。悠太郎もやっとのことで
つぶやいた。
おおーーい。改定案出してきたで。藤井が言った。
ほな、飲みにいこか???

西門家では濡れた布団を見ながら静が怒っていた。
和枝が自分のだけ取り込んで
静のは、知らぬ顔をしたらしい。

そこへ悠太郎が帰ってきた。
静はめいこと希子を早く連れて帰ってほしいと
いう。
正蔵にあうぐらいなんてことないし、ここで
一緒に暮らすわけではないしという。

こんなお荷物を押し付けられたわてらの
気持ち、お荷物にはわかりまヘンわな
と、和枝は静に言った。

家族を押し付けられたのは私だと静は言うが
愚痴を聞いてほしいと悠太郎に言うと
悠太郎は疲れているので寝ますと言って
二階に行こうとした。
静は何時に起きるの?と聞く。
西門家は化け物のような二人の女性で
大騒ぎの様子だった。

くたびれた悠太郎はふとんを出して寝るが
ふと気が付いた。

ーちがうから荷物がないのは和枝さんが
ほおりだしたからで・・・(-から入るセリフは糠床が話す言葉です)

悠太郎また、体制を整えて考えた。

・・・?

ーちがうから、固い意志を持って出て行ったわけでは
ないから・・

・・・?

ーちがう、お父さんの所でもないから

・・・・?

ーそれもちがう、源ちゃんのところでもないから

悠太郎は起きて、市場へ行った。
なにをしに????
営業時間の終わった市場は閑散としていた。
そこへ昆布屋の定吉が声をかけた。
「嫁はん探しているのかいな?」
「たまたま通りかかっただけです。」

「嫁はんならここまがったうますけという
喫茶店にいるで」

「通りかかっただけです・・・。」
悠太郎は頭を下げていった。

うますけの店ではわいわいと
なにやらやっている。

そっと覗く悠太郎だった。

だが桜子が近づいてきたので
さっとかくれた。

店の扉戸をあけて、蒸すからね~~というと
ありがとう~~とみんなの声。
そこでカキ氷!!!
と歓声が上がる。

焼き氷の試食会をしていたのだ。

こんどは角砂糖ではなく
メレンゲをつくって氷の上に置き
ブランディをかけて
それにマッチで火をつける。
わぁと歓声が上がる。

すてき…と声がする。

そろそろ食べてみて。とめいこは言った。

みんなそれぞれ食べる。

いい、これいいよ~~と室井。

もっと氷のした。と馬介がいった。

かしゃかしゃと氷をかき分けて
下のほうを食べると、梅シロップの
味がした。

珈琲ばかりだとあきるので
梅シロップにしたという。

これは馬介さんのアイディア。とめいこ。

珈琲と梅シロップって会うのね~~と桜子。
すごい、ちいねーちゃん、すごい。と希子。

これで十分生きていけれるんじゃない?と
めいこに室井は言った。

桜子は通天閣に頼らなくてもこれだけの腕があれば
ね??

めいこは、やっていけるかどうかわからないけど・・・
楽しい!!といった。

これ食べてもらえると思うとどきどきする。
めいこの言葉に一同、どきどきだねと
納得して笑い声がはじけた。

様子をうかがっていた悠太郎は力が抜けて
さっていった。

室井たちは、客を集めるのに、ちらしだけではなく
なにかないかな~~と話をしながら
市場を歩いていた。

源太が安くなったよとタイムサービスを
叫ぶと
客がわぁっと集まる肉屋を見て
あんな風にね~~と思った。

うますけの店では、めいこと馬介で
カスタードまきを作っていた。

焼き氷と珈琲とカスタードまきだけで
いいのかな??とうま介がいう。

めいこはつくりながら、自分の父親の
話をした。
昔は腕自慢みたいにいろいろ作って
いたけど、結局は経費だけ高くて
だめだった。材料が無駄になって・・・。

これだけだと、置いておく材料は
珈琲、小麦粉、卵、牛乳、砂糖、梅シロップ、氷
そのくらいで済みますから。
納得するうま介。

ちょっと考えたんやけどなと言って
あまったフルーツや野菜で日替わりジュースとか
どうやろか?という。

そうですね。いいですね~~うま介さん
天才。それができるように早く
これを成功させましょう。
めいこは楽しそうだった。

悠太郎の職場では、藤井が独り言を
いいながら、ぬかをかき回していた。

じつはね、嫁の糠床とおふくろの糠床を
半分半分にしておきましたんや。

ー悠太郎さん、今そこに引け目を感じないで
いいから・・・。

そやのに、うちのほうがうまい、わてのほうがうまいって
・・・あははは・・あほですわ、あほ~~~。

藤井は笑いながらきゅうりを半分に折って
ぬか床へ入れた。

・・・楽しそうやったなぁ~~めいこ・・・・。
悠太郎はつぶやいた。

うま介の店ではまたまたうま介が
料理を工夫したらしくそんな話をしていた。

めいこはところで桜子たちはどうやって
こうなったのかと聞いた。

桜子はおもしろそうに、実はねと話を
はじめた。

めいこが大阪へ行ってから時々開明軒に
桜子は行くようになったという。

そこで室井を見たのだが、小説が好きというと
室井は自分の原稿を自信満々に見せたという。
しかし、桜子に言わせると、文章がくどいうえに
人物の心理などがわかりにくい。腹が立った桜子は
一言室井に言ったという。

小説って紙の無駄でもあるんだなと・・・

するとおいおいと室井が泣き出したらしい

泣いた???

一同唖然とした。

それでまた腹が立った桜子だった。
だからまた言ったという。

涙でその字が流れても、悲しいと思うのは
この世であなた一人のことでしょ?

「きつ・・・」と、源太。

よう立ち直りはりましたな~~室井さん、と、うま介。

おかしいのは、次に書けたと言ってもってきた
原稿のタイトルが「涙でその字が流れても」っていうの・・

そのままやがな。と源太。

でもその作品は人物の気持ちが伝わってきて
前よりはよくって、いいというと
また泣くのよ。今度はうれし泣き。

それから二人で直した原稿が入選したという。
その結果を一刻も早く言おうとして
室井は桜子の家に忍び込んだらしい。

すると番犬に追いかけられて木に登って
叫んだ。あやしいものではない。僕はあの人の
しもべなんだ~~。あの人は僕の幸運の女神
なんだ~~。
桜子は本当にだめな人だと思ったという。

それで自分がいなくてはだめなんだと思った桜子
は、涙が出てきたという。

親の財産ではなくて、これほどまでに
桜子自身を大事にして
くれる人はいないのではと思ったという。

私たぶんそういうものに飢えていたのね。

そして、もっとすごいものを手に入れるつもりだという。
それは、室井さんが一流作家になるという奇跡。

源太は、男前やなあんた・・・と言って笑った。

笑いながら話す桜子を見てめいこは思い出した。

この人の夢は私の夢でもあるのです・・・!!!

そこへ「できた~~~」と原稿をもって
室井が二階から降りてきた。

小説と思ったら…実は・・・・

室井は、焼き氷の歌を作ったと
叫んだ!!!!

めいこは、「歌???」とびっくりした。

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悠太郎はうますけに行って、どうするつもり
だったんでしょうか?

連れ戻す。
話し合いをする。
絶対、困っているはずだから
その弱みに付け込む
話を聞いてあげる・・・。

全部必要なかった。
めいこは、うま介の店を盛り立てるために
おいしい、焼き氷を作ろうと
必死だったのだった。
それこそ、めいこの真骨頂だった。

楽しそうにしているめいこを見て
連れ戻すことも、話をすることもできずに
帰る悠太郎。
今まで西門の家にいても楽しくなかったのかもしれない。
ただ、ただ、悠太郎のためにとがんばっためいこには
西門の家のものではないという一言もそうだが
悠太郎の意に反することをしてはいけないと
言われたことのほうがショックだった。

そして、出て行ったわけではないが、成行き上
うま介の店に居つくことになったわけだ。

仕事もないので桜子はこの店を盛り立てて
繁盛させたいと思った。
その計画にめいこはのってしまった。

さて、焼き氷。

あるべきではない素材が同時あるという
矛盾した面白い食べ物。

だが、面白いだけでは客は増えない。

めいこの父譲りの考え方が発揮される。
おいしくてまた来て食べたいと思うものを・・・

はたして、ヒットするだろうか???

で、どんないきさつで悠太郎の家に戻るのだ
ろうか???

今のままの悠太郎では、桜子が納得しないだろう。

だから、君をアイス

なんだろうと私は思いましたがね。