君をあいス2

思いもがけない状況の下で
めいこは文士室井と桜子の訪問を受けた。

彼らは駆け落ちをしたという。

なぜどうして?
などと言っている場合ではなかった。
状況の難しさを知らない桜子は
じっとみている和枝と静を見て

あの・・といいよどんだ。
すると文士室井のあっけらかんが

どちらがお母様ですか?
と恐ろしいことを聞いた。

二人ともカチンと来ている。

貫禄のあるほうが姉で
童顔のほうが母です・・・。めいこが答えた。

ああ、なるほどぉ、と室井。
(一層怒らしたぞ反省しろよ)
桜子は遠慮がちに2~3日泊めて
いただきませんか?と聞く。
和枝はにっこりと笑顔をたたえて

「めいこはんのおともだちどすか?
御とめしたいのはやまやまなんですけど
どうも出ていかはるようで・・・」

めいこはでてきませんよ!というが
和枝は無視していった。

「そういうことですので、おひきとりいただきません
やろか。そこまでおおくりいたしますさかい、いき
まひょかぁ。」

二人の荷物をもって外に出た。
それにつられて室井と桜子が
おいかけ、めいこもおいかけ
外に出たところを
和枝は玄関に戻って錠をかけた。
そして玄関の内扉をぴしゃんと閉めた。

やられたぁ~~~~~~~

めいこは家のまえで
立ち話ではあったが
二人に事情を説明した。

ということでたったいま家から追い出されたところ
です。

思った以上に大変な家なんだね~~。
室井は言った。

とりあえず仲直りしてよ。と桜子
え?
私たち今日泊まるところないし。
人の話聞いてた???

困り果てためいこは、市場の八百屋の
おばさんに、相談しに行った。

市場では室井も桜子も水ナスとか大阪の
ごぼうとか珍しそうに見て喜んでいたが。

おばさんは源太に相談しようといった。

めいこは源太と話をしたらダメと
言われていたので、室井たちと
桜子で話をしてほしいといった。
源太は、焼き氷やではどうかなという。
源太は顔が広いらしい。

めいこは焼き氷と聞いて
ハッと振り向いた。
そしてついて行くことになった。

焼き氷ってなんでしょうかね?
その店はお客がいなくて
やる気のない馬の介が主人だった。
室井と桜子の住むところについては
これですんなりと話が決まった。

めいこはじゃまた後でと言って
店を出た。

源太はどないしたんやあいつはという。

桜子は家を追い出されたみたいというと
またか、といった。

ところが、家の前では和枝が大八車に
めいこの荷物を積んでいた。
その荷物のまえに希子が立ちふさがっていた。
和枝は、そこをどきというが
希子はどかない。

めいこが帰ってくるとなんや、心を入れ替えた
んでっか?と和枝がきいた。
入れ替えていませんというめいこ。
でも出ていくつもりもありませんというと
和枝はそんな言い分通ると思っているのかという。

希子は小さな声でいった。

うちもでていく。ちいねえちゃんがでていくのなら
うちもでていく・・・

そうか・・・・・ほなら・・
勝手にしい!
捨て台詞を残して和枝は家に入って行った。

悠太郎は忙しい思いをしていた。
学校の工事の線引きをやり直しているのだった。
この面積は大きすぎるとか小さいとか
大村と話をしながら打ち合わせをしていたが
そこに、めいこが来たとの連絡が入った。

なんですか?
そっけなく悠太郎がきいた。

正蔵に会うのなら出て行けと言われて
出てきたという。
希子も一緒だといった。
それで?
と悠太郎は冷たくきいた。

めいこは正蔵の人の好さを話した。
昔はいろいろあったと思うけど
いまは別人になっているし考え直して
あげてほしいという。

悠太郎はそもそもあの人が戻りたいと
いったのかと聞いた。

そんなことはいってないけど。

あの人がいてだれが楽しくなるのですか?
楽しくなるのはあなただけやないですか?
あの家のだれもあの人ももどることなんて
望んでないと思いますけど。

私は望んでいます。

あなたは西門の人間やないでしょう!

あの十年を一緒に過ごしてないという
いみです。

めいこは驚いた。

それだったら、嫁は何も言うなということ
になります。
めいこは必死でみんなが楽しく過ごせる
方法を考えようとしているのに
それをなにもいうなとはと驚いたのだった。

それは感謝しているけどこれは違うと言って
いるのです。
めいこは、決めるのは悠太郎の気持ち
ひとつなのかと疑問に思った。
悠太郎の気持ちの中でやっているうちは
いいけど、それを外れたらだめだってこと
なのかとめいこは言った。
そんなことはいってないと悠太郎は言うが
めいこにとって、悠太郎の考えがすべてで
あって、嫁はそれに従えというのは納得でき
なかったのだった。

突き詰めて言えばそういうことになります。
そういって悠太郎は仕事に戻ろうとした。

めいこは、私を幸せにするといったでしょ?
私がそうなったら(お父さんと一緒に生活する)
幸せだと言ってもお父さんを許せない
のですね?
許せませんね。

私の気持ちよりも自分の気持ちの
ほうが大事なのですね?

悠太郎は黙っていた。
めいこはわかりました。
よっくわかりました。
そういって帰って行った。

馬の介の店では室井と桜子と源太が
話をしていた。
めいこの置かれている状況が
めんどうくさいことになっていることに
源太はため息をついた。

桜子はめいこは要領が悪いからねという。
そこにめいこが入ってきた。

大きな荷物と希子と一緒だった。

どうしたの?
三人は立ち上がった。

めいこは泣きながら桜子に
だきついた。

今日は四時に起きたの。

ああそこからか・・・それで?と桜子。

起きてみんなのご飯を用意して
かたずけて、掃除をして
お見合いの準備をして・・・
邪魔したら蔵に閉じ込められて
出されたらお父さんが寝ていて
許してあげてと言ったら追い出されて・・・

その辺は聞いた・・・。

朝から何にも食べてないのよぉ~~~~~~

そこか!!!源太はあきれた。

桜子は焼き氷はというと馬の介さんは帰ったと
室井は言った。
倍付払うからといって連れてきなさいよ!!

室井は呼びに行った。

希子は

ちいねーちゃん?

と呼ぶ。

桜子は、おっきな声で!!!と叫んだ。

あの、ちいねーちゃんは女中扱いされていて
それで、祝言も上げてもらえんと
それでも一生懸命みんなのためにがんばって
くれたんです。

桜子も源太も辛くなった。

それやのに、おにいちゃんに西門の人間やないから
口出すなって言われて・・・

その悠太郎の職場では
藤井と大村がめいことケンカしたことを気にしていた。
もう帰ったほうがいいと違うかというが

悠太郎は帰っても僕からあれ以上
いうことはありませんので・・ときっぱりという。

(こんなところ、和枝さんそっくりだね)

桜子の膝で泣いていためいこは

顔を上げていった。

わたし・・・・離縁する・・・・・・。
辛そうな顔だった。

******************
悠太郎の気持ちに背いたことをしたら
いけないなど、自分の気持ちなどいってはいけない
ことにめいこは不条理を感じました。
嫁は、一生懸命女中をするものなら
めいこでなくてもだれでも女ならいいということに
なります。めいこの気持ちが言えない家。
そんな家には住みたくないとめいこは思ったのでしょう。
これほどまでに一生懸命できたのは
いつかみんなが幸せになって笑ってご飯を食べれる
家になるだろうと、そんな希望が持てたから。

ところが悠太郎の意志に背くようなことをするなら
出て行けとは。
悠太郎はめいこの気持ちよりも自分の気持ちのほうが
大事だというのであれば
めいこという嫁ではなく女中であればいいのです。
私も同感。
自分という存在を認めてもらえない愛なんて
愛ではないですよ。
めいこの明るさを自分のために利用しただけとは
悠太郎のエゴイズムになんということだろうと
思いましたね。

さて、めいこの危機。
それにどう立ち向かうのか???

めいこ、源太、盟友桜子、文士室井。
そして馬の介さん~~はじめまして~~

面白そうなキャラですね。