ごめんなすって6
めいこはお見合いを迷っている希子に
アドバイスをした。
どうしたら楽しいご飯を食べれるおうちになるのか
どうしたらならないのか・・
めいこのやることを見て考えて
それからお嫁に行きなさい、と。
希子はすっきりとした笑顔で答えた。
が・・・
難問があった。
では、どうすればお姉さんの顔をつぶさずに
お見合いを断れるか・・・???
めいこは、明日の見合いにでるために
帰ってきた悠太郎に相談しようかと
思ったが、やめた。
そうよね・・・言ったら巻き込むことになるものね。
結論として
だったら、自分が粗相をするしかない・・・
めいこは、苦渋の決断をしたのだった。
見合いは倉田を囲んで西門の家で行われる。
晴れ着を着た希子と
和枝、悠太郎が列席した。
三島家は両親様とご本人様。
向き合うってなかなか緊張しますよね。
希子は顔を上げることができない。
あら??
お茶を飲もうとして三島の奥様が
お茶碗を見ていった。
「これは危ぶのおまっせ。」
お茶碗が三か所かけていた。
和枝はびっくりして、ああ、といって
これ!!とめいこを呼んだ。
「ああ!!
ごっめーーーん!!!」
ため口で答えためいこ。
一同、「え???」と驚く。
座敷に入ってきて奥様のお茶碗を
受け取ったが・・。
「おや、これは?」
三島のご主人がいった。
お茶の中に虫が入っていた。
はいはい、これも取り替えまぁす。
めいこはお茶碗を下げようとして
つまずくわ
持っていたお盆をひっくり返すわ
お茶を息子さんにかけて
アチチチと、大騒ぎさせるわ。
「すみません~~~あら
すみません~~~」
「なにしてるの!!!!」和枝は
あたふたとした。
和枝の叱責もなんのその。
めいこは「すみませんでしたぁ~~~」といって
ふすまを閉めたけど
ぱったーんと大きな音であっちのふすまが
動くくらい勢いよくだったので
相手さんは驚いた。
和枝はひたすら、謝った。
「おなごしさん、かえはったらどうですか?」
奥様はごく当たり前のことを言った。
悠太郎は、おなごしではなく、僕の妻です
といった。
和枝は西門のしきたりで一年はおなごしを
するものなので、という。
三島の奥様は、ではゆくゆくはあの方とも
ご親せきになるわけですか・・・。
いつもはホンマにようできた子なんですよ。
今日は緊張してはるみたいで・・・と和枝は
取り繕った。
ふすまの陰からそっと聞いていためいこは
なんで今日だけほめるのよ・・・
と思った。
その時、静が降りてきたことに
気が付かなかった。
今度の作戦はお茶の中にお塩をいれること。
めいこにとって、食べ物飲み物は大事なもので
神様が宿っていると思っている。だから
こんな作戦に使いたくなかったけど・・・。
あんた、何しているの?お茶に塩を入れたりして。
と静に見つかった。
見合いの席では希子が楽器を弾くとかで
三味線かな?ぜひ、聞かせてほしいと
場が盛り上がろうとしていたが。
希子がどうも、うつむいたままだったので
倉田が、お茶はまだかなと声をかけた。
あ、見てきます。と和枝が言うのを
希子が声をかけた。
「あんさんが抜けてどないしますの。」
と和枝ははっきり言って
いい子でしょう?とアピールをして
愛想笑いをしながら出て行った。
台所では「なんや、そんなことならいうてくれたら
よかったのに。和枝ちゃんの顔をつぶすなんて
面白いやん」と、静が話すのを和枝は聞いた。
めいこは「お姉さんはお姉さんなりに希子ちゃんの
ことを考えてやっているから」、といった。
そして、和枝は一部始終を察知した。
怒りできっとなった目つきをいつもの
表情に隠して平静を装って
めいこに掛け軸を
一緒に探してほしいといった。
静は「おきばりやす。あんじょうやりやぁ」
といって出かけた。
倉の中にあるという掛け軸を
めいこは和枝の指示で探していた。
「どれでしょうか?」
飴色のちょっと変わったのおまへんか・・・
そういいながら、和枝は倉の扉を閉めて
めいこを閉じ込めた。
めいこは、ハッとした。
お姉さん!お姉さん!!!
お昼ご飯になった。料理屋さんで頼んだものを
和枝がお給仕をした。
「お姉さん自らお給仕とは、
すいませんね。
ありがとございます。」
「いいえ、粗相ばっかりですみません。」
和やかに進められている。
和枝の力だ。
めいこは蔵の中で
ま、お見合いが終わったら出して
くれるだろうと思ったが、
それでは遅すぎる。
何とか出ようと出口を探し
そして天窓からでようと
足場を作り・・・
そうしているうちに、足場が倒れて転げてしまった。
悠太郎はめいこは?と和枝に聞いた。
寝かせました。なんや、熱出していたみたいで
それでおかしかったんですわ~~と
今までのめいこの粗相を取り繕った。
蔵のなかではめいこがちらかった
本を集めていた。
すると、なにやら、変わったアルバムが
でてきた。その写真を見て驚いた。
座敷ではこれでお見合いが成立かと
思われた。
そこに、ある人物がやってきた。
その人はお勝手から入ってきた。
お勝手には水ナスがあって
醤油の瓶もあった。
お昼ご飯は着々と
すすんでいた。
三島の奥様は希子が
まったく食べてないのを気にされた。
和枝はいつもは見せない優しい笑顔で
胸がいっぱいやもんなぁ??
と、希子に言った。
あの・・・
希子は話をしようと頑張った。
あの・・・うち・・・
希子は顔を上げてまっすぐ見た。
三島のご家族はじっとそれに
注目した。
悠太郎は何かあるんかと聞いた。
和枝さんはいつもつりあがっている
まゆげをさげて、微笑みかけている。
うち・・・
うちは・・・
しーーーんとなった。
うちのようなものは、三島さんのような
りっぱなおうちにはふさわしくないんや
ないかなと思います。
和枝は、あはは・・あはははは・
いややわぁ~~このこ
緊張して・・はははは・・・。
そうやなくて、と言いかけたとき
ええわ・・・
と、三島のボンボンが言った。
ええこやなぁ~~希子さん
ホンマになぁ~~と奥様。
いまどきこんなひかえめな御嬢さん
いてはらへんわぁ。
希子は、うちは、本当に何のとりえも
・・・・ないと言おうとしたが
そこに乱入者が来た。
先ほどのお勝手から入ったやかららしい。
思いっきりふすまが開いた。
はははは・・・・と笑ったそやつは
酉井捨蔵だった。
そして、「ごめん」といいながら台所にあった
茄子をもって
「なすって~~~」とダジャレを言った。
正蔵さん、戻ってきはったんですか?
倉田は知っているらしい。
和枝はしりまへん、ホンマに!!とおびえた。
悠太郎は捨蔵の腕をつかんで、出て行ってください
といった。
おい、離せや、と悠太郎の手を払った。
そして、「本日は・・・」といいかけたところを
悠太郎が出て行ってくださいとまた言った
ので、父親に向かって出ていけはないやろ?
え??せっかく戻ってきたんやないか!!
三島の家族は
いったいどういうことでっか?
お亡くなりになったと聞いてますが・・・
と騒然となった。
捨蔵は、死んだことになってますのか?わて。
ひどい話でんなぁ~~と
もはや酔っぱらっているのに、またそこにあった
酒に手を付けた。
そして、三島夫婦の間に入って
三島のご主人の肩に手をやって
さっそくでございますが・・・
10円かしてくれまへんかぁ???
和枝は絶望的な顔をした。
最近手持ち不足で、子供たちも
冷たくてこずかいもくれません。
おいっ!!!!
怒った悠太郎が無理やり
連れ出そうとしたが、
捨蔵はそれでも、三島夫婦にむかって
五円・・・五円でも・・よろしいわ~~と
ひっぱられながらいうが
気持ち悪くなって吐いてしまった。
和枝、悠太郎、希子・・・力が抜けた。
三島親子、驚きで声が出ない。
角を曲がって静が帰ってきた。
玄関先で悠太郎と和枝
倉田が帰る三島に謝り倒して
いた。
本当にすみません。
三島親子は怒っているのか
足取りも早く帰って行った。
和枝と悠太郎
は倉田に謝った。
なんとか、取り繕っておくから。
ええがな、と倉田は言った。
倉田は怒っていないらしい。
静は悠太郎にどうなったの?と聞くが。
悠太郎は家の中を見たので
静は頭を下げてから
家に入った。
座敷にはいびきをかいて寝ている
捨蔵。呆然自失の希子。
驚いた静は、い、いやぁーーーっと
悲鳴を上げて和枝のところへ行った。
あれ、なに???
知らんがな。
和枝ちゃんが・・・
わてが呼びますかいな。
ほなだれが????
静に言われて和枝は、はたと思った。
もしかしたら・・・
めいこの仕業と思ったのか。
そのころめいこは蔵の中でみつけた
写真に見入っていた。
蔵の戸が開いた。
あんさんがあの男呼ばはったんか?
あの、お父さんて亡くなられているのですよね?
私この人のこと知っているんですけど。
その写真は、あの捨蔵と静だった。
捨蔵は座敷でいびきをかいて寝ていた。
和枝は蔵の中のめいこに近づいた。
その顔は怒りなのか、悲しみなのか
ついにめいこはこの家の本当の歴史を
この家におこった出来事の核心を知ることに
成るのでございました。
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いやぁ~~~アメリカ映画並みに
お見合いぶっ壊し大作戦になるのかと
思ったら、きっちりと和枝さんが
おさめてしまいめいこの作戦は失敗
しました。
しかし、お見合いがうまくいくと
思っていたとたん・・・師匠が来るとは
思いませんでした。
謎が多い西門家。
こんな当主がいるのなら、お見合いは破談ですよね。
10円貸して~~~~
と乱入してくる父親。
しかも落ちぶれているし。
「正蔵はん」というた倉田。
知っていたのかと驚くが。
結果として和枝が蔵に閉じ込めたことで
めいこは謎があることを知ります。
見合いをぶっ潰そうとする不届きな嫁に
怒り狂った和枝が蔵に閉じ込める作戦。
なかなかいいアイディアでしたが。
やぶへびでした。
お見合いがつぶれたことは
西門家の誇りに傷がついたかもしれませんが。
倉田もそんなに怒ってないし。
和枝のメンツもつぶれたわけではないし。
めいこも見合いをつぶした嫁と
ののしられることもないし・・・
結果としてすべて捨蔵の責任になるので
良かったことと思います。
が・・・
なんなんでしょうか???
静さえ驚き嫌う捨蔵。
悠太郎が語らなかった西門家の過去とは。
それを隠してまで結婚したのは
やはり不誠実な気がします。
