ごめんなすって3

和枝の陰謀にはまって源太のところへ
乗り込んだ悠太郎だった。

どうも、必要以上に妻に親切に
しているようですね。今日限りに
金輪際やめていただきたい

下からにらみつけていた源太は
怒鳴った。

われは礼の一つもなしか。

商店街は騒然となった。

おい源太どないしたんや?

嫁はんせわになっとって礼も言わんと
やめとけのひとつか

一般的な親切を逸脱している男に
礼を言うあほがどこにいるんですか

あいつがここにくるのはおまえのせいやろが
おまえがしっかりせえへんから
あいつがここにきてうだうだと悩んでいるんやんか

・・・・・・・

右も左もわからんと糠床抱えて泣いとったん
しっとんかい。
食費もらわれてヘンていうて市場を走りまわっとったん
しっとんかい

お前その時何しとったんや。おまえがそんなんやから
あいつが苦労するんやんか
あいつはな、四六時中お前のことばっかり考えとるわ
ここにきてもお前やお前んちの話ばっかりや。

そんな嫁はんをなんでお前が信じてやらへん
のんや。

よういうたっ!!!
おまえ、ええこというたのぉ。源太!!

いつの間にかできたギャラリーから
源太に応援の合いの手が入る。めいこは
心配でハラハラしながら見ていた。和枝も
物陰に潜んで事の成り行きを息をひそめて
見ていた。

自信なんてあるか・・・・
悠太郎がつぶやいた。

ああ???

うちの嫁さんはな、ごっつうかわいらしいんや。

ギャラリーからおおおっという声が出た。
めいこは、はっとした。

ただ、心配なだけや!!!
源太はあきれて、力が抜けた。
めいこはどきどきして
あの、ちょっとすみません~~

けんかやめてよ~♪

なんやごっつううれしそうやんか。と源太。

私ってもててる人みたいで♪
私のためにケンカはやめて。
めいこはテレテレになりながら
言った。

私のために争わないで・・・ね?

ギャラリーは大笑いとなった。

悪いけど、こんなあほ、ただでくれるって
いうても、のしつけて返すわ

悠太郎はめいこをせかして帰ろうとした。
もうここへ来るなええな!
でも、糠床が!!!

悠太郎は肉屋に戻って
すみません、糠床返してもろうて
ええですか?

女将さんは、糠床を悠太郎に渡した。

失礼しました。
礼をしてさっていく。

商店街のギャラリーはいつものにぎわいとなり
この件は落着した。

その結論に疑問を持った人がいた。
様子を見ていた和枝だった。
なんやこれ???

糠床は家に帰ることもできず
悠太郎の職場に行くことになった。

なんやこれ?

大村はあきれた。

抜本的に対処した結果このようなはこびと
なりました。
悠太郎は大村にいった。

すみません、明日からは勤務時間外で
せわしますので

悠太郎は糠床をかき回した。

大村はそうはいうてもおまえ・・と
つぶやくが。

上司の藤井が来て、お、糠床か。
これ食べてええの?

藤井の質問に悠太郎は答えた。

是非!

家ではお静と希子とめいこが今しがた
の話で盛り上がっていた。
そこへ和枝がきた。
希子は和枝に睨まれてめいこのそばから
離れようとした。
和枝は今日は肉ではないのかと聞く。
肉というたら肉にするべきやと
いった。
めいこは和枝が洋食を好きではないと思って
いたのでと、喜んで肉を買いに行った。

その日の夕食は肉じゃがだった。

その肉は別の店で買いましたのでと
めいこは悠太郎にいった。
それで・・
糠床は元気ですか?

悠太郎は無言だった。
とんでもないセリフをめいこに聞かれて
しまった照れなのか?

師匠の家で漬物を食べる源太は
投げ文を見ていた。
そしてそれを師匠に見せた。その手紙は
源太と一緒になりたいと書いてある。
これはめいこの文字ではない。
あいつはこんな達筆ではないと
源太は師匠にいった。
そやな、と師匠は答えた。

西門家の仏壇の前で和枝は手を合わせて
つぶやいた。

おもろないことばっかりやわ。おかあちゃん・・・。

そこにめいこが来た。
次の日曜日みんなで梅仕事をしませんか
という。和枝が入ってくれれば、うまくいきそう
だし、ご一緒にどうですかと聞いた。
わかった・・・和枝は一言言った。
ありがとうございます。
めいこは喜んだ。

こうして日曜日、みんなに声をかけて
梅仕事をはじめた。

これ全部梅干しにするのですか?
悠太郎がきくと
めいこは
梅干しだけではなくて砂糖漬けと
梅の甘露煮、梅のジャム
梅味噌に梅酒・・・希子ちゃんのために
あまい梅干しもね。
という。

梅仕事とはまず・・

ほじほじが大事なのです。というと
ほじほじ???と静も希子も
不思議な顔をする。
ながい串でうめのお尻をほじって
黒い皮を取ることだった。

そこへ和枝が来た。
希子を連れて株の旦那衆の
倉田と食事をするという。

希子、さっさとしたくしなさい。

静はそんなおもろないところへ行き
たくないわよねというが。
和枝はがんとして希子をうながす。

しかし、希子はここで梅の仕事がしたいと
いった。

勝手にしぃ!!

和枝は怒って出て行った。

行った先で倉田と会った。
希子がこれなくなったことを言うと
急にいうたから、仕方がないと
倉田は言う。
めいこのせいで家の中がぐちゃくちゃと
和枝は愚痴った。
一体誰のおかげでここまでやれたと思って
いるのだろうと。
ない金を絞り出して頭下げて回って。

今まで倉田には世話になったと和枝。
妹弟に情けない思いをさせまいと
和枝が必死で頑張ったことは倉田は知って
いる。
苦しいときこそ看板を下ろしたらもう終わりになることも
教えてもらった。勢いなくしたら落ちていくのも簡単やって。
妹弟に惨めな思いをさせたくなかったら
和枝ががんばるべきだと倉田は教えた。

あの嫁はそんなものン全部こけにした
と和枝。
そんなこと言うのかと倉田がきくと
言わないけど、いるだけでこけにしている
気にさせると和枝は言った。

梅をつぶしながら作業をするめいこは
和枝のことを考えていた。

和枝にとってめいこは虫が好かないという
ものなんだろうかと思った。

悠太郎はめいこのせいではないという。
嫁ぎ先でやられたことをやり返しているだけ
だといった。

和枝はきっちりと物事を遂行するので
生意気やと言われていじめられたという。
子供が事故で無くなって
もう、縁もなくなったし嫁をしている必要もないからと
追い出された。
父親はさすがにもんくをいったらしい。あんまりやと。

そしたら?

何ぼでもいうとおくれやす。それでこの人と縁が切れる
んやったらやっすいもんですわ。
これまでなんぼやんわりいうてもわかってくれはら
しませんで。さぁ、お引き取りねがいまっしゃろか。

めいこはそんなひどいことを言う人がいるんだと
言った。

あなたには信じられないことかもしれませんね。

追い出されて戻ってきたら新しいお母さんが
来ていたってこと?

その新しいお母さんとは芸子上がりでとんでもないと
和枝はお静さんを追い出そうとしたが仲裁役の
父親がいなくなって今に至るとのことだった。

希子は言った。
陣取り・・・
ずっと陣取り。

報われない争い事だという意味だった。

そこにいた静がいない。

突然大勢の女性を連れてやってきた。

ご近所の女性たちでガスが入ったと
立ち話をしたら見たいというので
連れてきたという。

女性たちは何しているの?
とか、
ガスコンロの手入れは?とか
聞いた。
すると、めいこはとまどいながらも
説明をする。
へえと聞きながら女性たちは
感心していた。

なんや、和枝さんが言うのと違うなぁと
めいこのことをいう。

静は本当はええ子やでと彼女たちに
いいながらガスで梅仕事をやってと
めいこに言った。
そして悠太郎にごっつうええ子
やなぁという。

めいこは、追い出すとか追い出されるとか
この家にはそんな理屈しかないのかと
さみしくなった。

******************
源太と悠太郎。
どっちの理屈もそのとおりで
悠太郎は源太に言われた
めいこが悩んでいる間
何をしていたとの質問に
答えることができなかった。
なにもできない。
話も聞けない。
悩みも解決できない。
しかし
かわいいので心配になると、のろけだった。

確かに和枝の苛められて
食費もケチられて
どうするのかと悩んでいるときに
源太のところで話ができたことは
良かったと思うが。

源太はそうはいってもめいこが好き
だったのではないかと思う。
子供のころ、めいこの弁当のおかずを
つついたり、お供えのいちごを一緒に
盗もうと計画したり・・・
新聞でめいこの父親の店がこっぴどく
書かれるとそれでめいこにちょっかい
を出したり
イチゴを落としてめいこが泣いていると
きれいなイチゴを手渡してくれたり・・・
子供のころから気が合ったんじゃないかと
思いますね。

しかし、めいこは食べることしか興味がなく
引っ越していった源太のことなど忘れていた
わけだ。
そして、悠太郎にあった・・・ということだった。

源太の初恋はめいこなのか?

それはそれとして、和枝さんのいけずは・・・
不発となりました。
梅仕事もドタキャンして何をしたかったのか?
倉田との話からずいぶんとお金で苦労をした
ことはわかります。
しかし、きちんとしすぎて、めいこが
好きになれないわけですよね。
好き嫌いは仕方ないです。

静は何を狙っているのか???
めいこ側について好き勝手しようと
もくろんでいるのか???

わかりません・・・・・・。
お父さんは、もしかしたら生きているのでは??
仏壇に手を合わせてお母ちゃんと和枝さんは
いいました。
父親も位牌があるなら、おとうちゃん、おかあちゃんと
呼ぶはずですが・・・。