たいした始末3
源太がめいこに紹介したのは
長屋に住む初老の酉井捨蔵だった。
ふだんは貧しい子供たちに文字や
勉強を教えたり、大人には本を読み聞かせたり
代筆をしたり・・・
その正体は???
わからないらしい。
源太は酉井にホルモンを持ってきたと
渡していた。
酉井はめいこをみてどうぞ、といって
招き入れた。
そして・・・
なべになにやらいい匂いがしてきて
そばによると、うなぎの頭を炊いているという。
ウナギの頭を半助といった。
ウナギ屋でひともり3銭で売っているという。
上手に交渉したら2銭になるらしい。
焼き豆腐やねぎを入れるとおいしいが
捨蔵はおからという。おからも安い。
今日は土手で摘んできたこの草をいれるという。
なんという草か、名前は言わなかった。
セリかな?みたことある草だけど。菊菜かな?
すると、どや、春のにおいやろ?
と酉井がいう。
めいこは鍋の上に顔をちかづけて
においをかぐと・・・
なんともいえないおいしそうな匂いがする。
おいしい・・・・・
え?
においだけでおいしいぃ~~~~~
これは絶対、おいしい!!!
めいこはうっとりした。
酉井はえらい食道楽やなと
感心した。
希子の学校は昼休み。
実は、希子は弁当を教室で食べない。
階段の廊下の隅で隠れて食べる。
先生がそれをみつけて、
なぜ、そうするのか今日こそわけを
きかせてもらいますといった。
一方めいこは一心不乱に食べて食べて
気が付くとウナギの頭をほとんど
めいこが食べていた。
それにきがついためいこは、
驚いた。
源太は「やっと気が付いたか。」
と、あきれた。人の分も食べてしまって
めいこはごめんなさいと謝るばかり。
酉井はたんとおたべなさい、という。
めいこは、自分を見て何も思いませんかと
きく。たとえば、身長が高いとか・・。
酉井はよく育ちなさって。
この食べっぷりを見るとうなずけるという。
めいこは、自分の育った環境を話す。
実家が洋食屋であること。
おいしい料理を毎日食べていたこと。
初鰹は箸がおれてもそれを直して
でも食べていたという。
めいこは、酉井に名前を聞いた。
酉井捨蔵(とりいすてぞう)、ホルモン爺
でいいですよという。
いいえ、師匠と呼ばさせてもらいます。
こんなおいしいもの、捨てるようなもので作れるとは
知らなかったとめいこはいった。
必死で食べるめいこに酉井は彼女の名前は?
と源太にむかって、指さして聞くと
卯野めいこ、と源太がいった。
めいこは、「今は西門めいこ。」
と食べることに集中しながらも
早口で言った。
酉井ははっとした。顔が変わった。
そばにいた、若い女性が
嫁いではったんや、残念だったね師匠と
冗談のように言った。
めいこはきょうはごちそうさんでした。
今日のお礼は必ずしますので
失礼しますといった。
酉井は、あわてたかのように
「あの、めいこさん・・・
またいつでも来なはれ。あんたの食べっぷり
を見ていたらこっちまで幸せになる・・・。」
めいこは、明るくごちそうさんでした~~
といって帰った。
なにやら感慨深そうな酉井だった。
西門を知っているのか???
それからめいこは、魚屋で切り落とした
さばの頭を安く分けてもらい
八百屋では売り物にならないという
キャベツの外側の葉っぱを
わけてもらった。
源太の話を聞く酉井だった。
一緒にいた女性がめいことのことは
別の女性にはだまっててあげるからというと
源太はめいこが悠太郎と約束したという
話をした。
毎日一年365日うまいものを作って食べさせて
あげるということだ。
だから、協力しようと思ったという。
全部で10銭の予算で夕食ができた。
めいこは喜んでそれを話す。
捨てるものでこれだけのものが作れるなんて
感激したと明るくいった。
食べるときに銭の話はやめてもらえますか。
と和枝。
食べながら和枝は「これは始末ではない
ドケチや」という。
「これ全部ほるもんばっかりですやん。
わてらこれから残飯ばっかり
食べさせられるのですか。」
「え?」
とまどうめいこ。
希子は横でめいこを見た。
家計簿をつけながら
何かいい考えはないかとなやんだ。
あとは野草をつむとか
庭で野菜を作るとか
魚釣りに行くとか・・・・
お静が来た。
「あんな嫌がらせにまともに答えて
どうするの?どんなに頑張っても
認めへんのやから。」
めいこはまかり間違って認めてくれるかも
というがそれこそ向こうの思うつぼや。
手を抜くことを考えないと頭がおかしく
なるでというだけ言って去って行った。
お金をかけずにみんなにおいしいものを食べさせる
方法・・・・とは???
悠太郎と相談するが、少し出しますという。
それはだめですとめいこは断る。
良い考えがないかなと
めいこは、考えるので悠太郎も考える。
ふと、悠太郎の顔色が変わった。
いや、だめや、と否定している。
なにかアイディアが??
これはさすがに・・・あかんやろうと
なんですか?
この時代、トイレはもちろんぽっちゃん式。
人様の出したもの、肥えですがね・・・
汲んだものを天秤で桶に入れて
市場に運ぶのですよ。
すると市場に野菜を売りに来た農家が
買ってくれるそうです。
(まさか、めいこ、そこまでするか!!!!)
めいこは野菜をただでもらうために
肥溜めを桶にいれて市場に売りに行ったのだ。
野菜はもらえたけど匂いが気になるめいこ。
家に帰ると東京から荷物が届いていた。
なかみは、クッキーやら、ジャムやら・・
懐かしい食材だった。
母はめいこがいなくなったことをお米のへり方で
感じていたという。
お店には宮本先生とか民子さん桜子さんが
来るようになってめいこの学校時代の
おかしな話をよくするらしく、にぎやかそうである。
最後に祝言はいつになるのかと書いてあった。
源太の店で糠床をかき回すめいこ。
源太のところに東京から送ってきた食材を
持ってきて、定吉さんにも、師匠にも
分けてあげてという。
見つかったら捨てろと言われるから。
決してお安くない食材ばかりなので源太は
ため息をつきながら
おまえも切ないな。金はもらえない、もらった食材は
使えないって。
めいこは糠床をかき回しながら
元気なくつぶやく。
認めてもらう日は来るのかなぁ・・・・・・・・。
源太もしんみりした。
家で母イクへの返事を書いていたら
来客だった。
希子の学校の先生だった。
何事かと思うめいこだった。
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めいこ、いくら自分の部屋でも
手紙、書きっぱなしで開けたままに
していると、だれかに読まれるよ!!!!
大丈夫かなぁ??
捨てるもので料理をするのはドケチですか。
和枝さんのプライドからみると
和枝さんならこんなやり方はしませんよね。
人に捨てるものをもらうなど、しなかったはずです。
きゃべつなら一個丸丸買って
柔らかい葉のところはそのまま食べて
芯に近い固いところはスープにして・・・
捨てることを極力避けるようにしたのでは
ないでしょうか???
魚なら、一匹丸丸買って、捨てるところがない
くらい使うというやり方をしたのではないでしょうか。
それだと、きっとおかずの品数が少ないと思います。
ご飯も節約してあまり炊かないらしいし。
酉井さんと学校の先生が謎です。
酉井さんは、特に西門の家を知っているかのようです。
希子はなぜ、教室でお弁当を食べないで
廊下の隅で隠れて食べているのでしょうか??
あの子には友達はいるのでしょうか?
久しぶりに開明軒がでました。
やはり、懐かしいです。
いまや、小姑のいびりに毎日耐えている
苦労の日々。
これを聞いたら、お父ちゃん、悲しむだろうな。
お金のために肥溜め担いだなんて・・・・。
しかも、祝言を上げる気は和枝には
ないらしいし。
もっとすごいいびりが出てくるのでは?
この努力なんなんでしょうか。
