ごんぶねーしょん7

「おつい(お汁)」がどう工夫しても西門の味にならないと
がっかりしためいこ。

静さんからなにか情報でもと
話を聞きに行く。

静さんなら作っていただろうと思ったがなかなか
思うような情報が得られない。

昔、和枝さんと一緒に台所に立ったこともありましたよね。

昔なぁ~~。
一緒に団子作ったこともあったな。
はい・・。めいこはメモを取ろうとした。

団子丸めて二人で黄粉の上をころころところがし
とってん。
はいっ・・・(メモメモ)・・

そしたら、「お静さんは団子ころがすの
おじょうずでんなぁ。うちの父をころがすの
かんたんでしたやろ。」
て…いわれてなぁ・・・

はい

うちはな、あのひとにせがまれてせがまれて
この家にはいってんで。

あの、お静さん・・こんぶのことは・・??

あのひとが・・・・・。

話しが脱線したけど
確かにお静はおついを作るときは
和枝は昆布しか使ってなかったと
いった。
かつおも、にぼしも使ってないという。

雑巾がけをしながらめいこは考えた。
んん・・・・・。
こんぶだけでとってもおいしい「おつい」??

めいこは不思議だった。そこに和枝が外出の
かっこをして階段をおりてきて
廊下を曲がろうとした。

めいこはじっと、その姿を見た。
めいこの視線に気が付いた和枝は
きりっとしてめいこをみた。

なんや?

あ、ああ・・・うろたえためいこは
「毎日、毎日どこへいらしているのかな?と
思って」といった。

和枝はあっさりと「逢引や」といって
さっと廊下を曲がった。

へぇ~~~~
納得した感じだったが
よくよく考えると物騒なことだった。

えええ?????

つい、大きな声を出してしまったので
消えたと思った和枝が姿をみせた。
そしてめいこをにらんだ。
「すみません・・・
いってらっしゃいませ。」

和枝はじと~~~とめいこに凝視の視線を
残しながら
去って行った。

市場へ行って定吉におついがどうやっても
もう一つおいしいと言われないことを
いうと、ええ昆布使っているのと違うかなという。

山だしの昆布でもこれなんかは料亭で使って
いるやつだしね。
一般家庭ではあまり高級なものは使えないと
めいこはいうとあんたとこは旧家で
金持ちなのではという。
めいこはそんなにお金があるようには
見えないと言った。

悠太郎は職場の先輩大村と居酒屋に
いた。
その日の会議で
図面を出した大村は、柱に合わせはりをする
図が描いてあったので悠太郎を呼び出したのだった。

あわてたやんか。
どうみても俺の名前がはいっているし・・・。
嫌がらせにもほどがある、という。

大村さんのを参考にして僕なりに
やってみたのですが、やっぱり僕には
木造建築の仕事はあってないのでしょうか。

大村は自分といても得にならない、という。
公共建築ではこれから木造は減っていくと思うから、と。

悠太郎は安全な街を作りたいけど
予算も人も足りないのであれば
木造に正面から向かい合って
できるかぎり、安全で丈夫な建物を作ろうと
することから始めたいと思うといった。

それであの合わせ梁か。
わしかて自分が作ったものが壊れてほしくないしな。

悠太郎は大村に認めてもらってうれしくなった。

へい、お待ち!

蓋つきのコップ酒が二つ来た。
蓋をあけると、熱燗の中に昆布が浮いている。
これはなんですか?
これか?これは魔法の酒や。
飲んでみぃ。
悠太郎は飲んでみて、おいしかったらしく
顔がほころんだ。
大村は機嫌よく笑った。

料理の研究に余念のないめいこだった。
でも、まだなにか違う・・・。
ため息をついて上り口に座った。
そのとき、悠太郎がご機嫌さんで
帰ってきた。
手には一升瓶のお酒。
「魔法の水や。
安酒のくせにな、上等な酒にばけよるんや。」
小鉢に酒をつぎそのなかに昆布をちぎって入れた。
「飲んで。
めいこのために買ってきたんや。」
そういって悠太郎は上り口に
倒れて寝てしまった。

めいこは、お酒はよくわからない。
しかし、悠太郎が作った昆布入りの
お酒を飲む。

うん!

アイディアが浮かんで
かまどに火をくべた。
お酒と昆布を一緒に何とかと
工夫を重ねた。
その工夫は数日間に及んだ。

料理ノートに書き込む日々。

ついにある結論にたどり着いた。

家族が一斉におついを飲む。

静は

「これ・・・・
(和枝さんのと)一緒やで。」

「え?」

「どうやったん???」と静。

めいこは

昆布にお酒を塗って
小さな火であぶって・・・・
その昆布でだしを取ったといった。

「へぇ~~~~」と静は感心した。

悠太郎は西門の味やなと
感慨深そうに言った。

和枝は無言だった。

希子は
「ち・・・

ちぃねーちゃん。」と小さく言った。

めいこはよくわからなかったが
静はああ、おおきいねえちゃんは
おるしな。といった。

希子はおついを全部飲んで
「ごちそうさん・・でした」
といった。

はいっ!!!

めいこはうれしかった。
悠太郎も笑った。

しかし・・・

その夜、和枝は希子を前に言った。

「あんたあの人を姉と認めるのかいな。
わてが認めヘンあの人を勝手に
姉とみとめたということでっか。
わかりました。

わてはあんさんを妹と認めまへんから。」

「うちがまちごうとりました。」

「これからどないしはんの?」

「できるだけ、くちききまへん。」
希子は小さな声で言った。

翌朝、悠太郎に弁当を持たせて
行ってらっしゃいというめいこ。
希子にもお弁当を持たせて
いってらっしゃいといった。希子は
逃げるように出て行った。

和枝にも、

「お姉さま行ってらっしゃいませ!!!」

というと

和枝は耳をふさいでうるさいといわんばかり。
「お国訛り直してくれはる?」
とキンキン声で早口で言って出て行った。

「え???私???」
追いかけるめいこをカワすかのように
和枝はぴしゃりと門を閉めて
出て行った。

和枝のいけずも多少慣れてきたようで
ある。

洗濯をしていると静がやってきて
これも頼むわという。

めいこは

あの・・・和枝さんの恋人ってどんな方ですか?

というと

静は驚いたように、え??と
聞き直した。

だって毎日逢引をなさっているのでしょう?

え???

静はめいこをじっとみながら
近づいてきた。

そして、

考えながら、めいこのそばで
立ち止まり
めいこを見上げて

うれしそうな顔をして

あんた・・・

なに?その話!!

と、言った。

****************

昆布に酒、それも昆布に酒を塗って
火であぶって、だしに使う。
よくぞ見つけたさすがめいこです。

しかしまだまだ、嫁として認めてもらって
いません。
和枝はそれでも認めないらしいです。

めいこは卯野の家のものを全部
捨ててまでつかえようとは思っていません。
いまある自分は父母、弟、祖母、多くの
東京の友人たちから支えてもらって
足りないところは、力をもらって
そのおかげであると信じていると思うのですね。
だから、全部捨てることはできない。
けど、郷に入らば郷に従えということわざも
ある通り、西門の家に入ればそれに従うことが
常識でもあります。

大阪にきたら大阪を受け入れなくてはいけません。
めいこの探究心は道なき道を切り開く
ように、ゴールを探って
ついに、西門の家の味にたどり着いたのです。
これはこれで

ばんざ~~~~~~いですね。

しかし、この家の複雑な事情。
お静さんはなぜ、うれしそうな顔を
したのでしょうか?
あわよくば、和枝さんを追い出したい?
再婚させたい?
ぎゃふんと言わせたい?

希子はなぜ、自分を持っていないのでしょうか?
なぜ、おいしいものをおいしいといったことや
めいこを姉と認めたことで
和枝に妹ではないと言われたのでしょうか?
なぜみんな和枝を怖がっているのでしょうか。

まるで独裁者のように君臨する和枝には
ヒトラーやムッソリーニのように
屈辱的な最後が待っているのでは?
と思いますが・・・・。

「逢引」と言ったのは、冗談ですよ。
人と会うだけのことで
彼氏と会うのではなく・・。
逢引というのはもともと男女が
ひみつに恋人と会うことを言います。
和枝さんは恋人ではないけど
人に会うので(それも男性とも思います)
茶目っ気?を出してめいこをからかい半分
で言ったことです。

が・・・・

めいこには

冗談は通じなかったのです。

ストレートにとってしまったのです。

大阪の言葉の文化は会話の中に
適当なクッションをおきます。
商人の街なので商売をやりやすい
ように、やんわりとかわしたり
インパクトの少ない言葉に置き換えたり
します。
だからみたまんまストレートな表現の
東京とは違うと思います。

地方出身の
子供たちが多く集まる
大学では、私の経験ですが
そういった会話がうまく伝わらなかった
ことが多くありました。
特に大阪の子にはちょっと引く感じで
地方の子は何あれ?とあきれていたことを
覚えています。

抽象的ですみません。
今度はことばの違いでめいこは
苦労するみたいです。

お嫁さんは大変です。