こんぶねーしょん5
絶食して倒れためいこに悠太郎は
絶食が終わった明日の夜
なにかうまいもんでも食べに行きましょ
といった。
めいこはなにがいいかな~とグルメ雑誌を見ながら
考えるが力が出ない。
西門の台所へおりていった悠太郎。
めいこさんはどうなの?と静に聞かれて
明日の夕方専門の病院へ連れていきますので
それまで食べ物は食べさせないでくださいと言った。
大きいカラして、体が弱いんやねぇと和枝は
ふんといった表情でいう。
悠太郎は姉さんにもこれから迷惑をかけるかも
しれませんので別居をしたほうがいいかもしれませんね。
という。
和枝も静も驚いた。
悪いですが今日明日は各自で食事をしてください。
静さんはうんうんとうなずいた。
市役所では上司から話が合った。
大村が悠太郎は木造に向いてないから
外してほしいといったらしい。
すぐコンクリートの仕事についてもらうから
それでいいか?と聞く。
悠太郎ははいといったが。。。。
で、その夜となった。
死にかけのめいこはあのうどん屋に行きたいと言ったらしい。
元気のないめいこにうどん屋の親父はうちより病院へ行った
ほうがええんと違うか?と心配する。
悠太郎は食べたら生き返りますからといった。
めいこは出てきたうどんを前にわりばしも割るのももどかしい。
悠太郎が割り箸を割って手元において
おさじを貸してくださいと言ってスプーンでおつゆをすくって
めいこにのませた。
めいこは、「う????・・・・・・・・」
なにがあったのだろうか。
「大丈夫か?めいこ???」
とたんにめいこは勢いよく
食べ始めた。
「おいしい~~~~
昆布だしがめちゃくちゃきいてる~~~~~」
「ほら、食うて。何杯でもええで。」
うどんをすすってうんうんと言いながら
食べるめいこ。
「そんなにうまいか?わしのうどん。」
「おいし~~~~~~~~~」
目の前に食べたうどんの丼ばちの山ができる。
がつがつと食べるめいこに
うどん屋の親父は手拭いで涙を拭いた。
帰る道々、昆布だしはかつおだしと比べて
まろやかで女性的。かつおだしは男性的。
そう語るめいこだった。
うれしそうですね。
うれしいよ、わからないことがわかるって。
「目の前がぱぁーーーーーああっと開けた感じで。
これから私にとって大阪の食べ物が
おいしいって思うようになると思ったら
うれしくて、うれしくて。」
「あなたはすごいですね。
そうやってどんどん変わって行って
初めは料理も勉強もなにもできなかったのに。
変わらなあきませんね僕も。」
ままならない状況でもなんとかやっていかないと。
悠太郎はその夜、市役所にもどって図面を出した。
「大村」とハンコがある図面だった。
めいこは昆布だしを使ってその良さを出して
おいしい料理をしようと思った。
翌朝、台所に静がやってきて大丈夫かと聞く。
めいこはお薬が効きましたと言った。
味見しようとかというと
それも大丈夫ですと、明るく答える。
和枝はその様子をじっと見ていた。
めいこの探究心はどんどん進化した。
市場で源太に昆布屋さんの定吉を紹介して
もらった。
山だし昆布、利尻昆布、日高昆布、昆布にも
産地によって
味が違うらしく何を作るかによって
使い分けるらしい。
その話を聞いて、実際源太の店の奥で
料理の研究もした。
源太は昔からかわらへんなぁと
笑った。
めいこはおいしいものはとことん追求する
タイプだったから。
そして、西門の台所には
ずらっと昆布の産地別のお出汁が並んだ。
和枝はそれを見てなんやこれと聞いた。
昆布は産地によって微妙に味が違うし
さらにそれに合わせるかつおぶし、にぼし
あご、シイタケ、貝柱
さぁ、西門家にとって一番おつゆを探求しましょう。
あほらし。一番おいしいと思うものを
あとで持ってきて。
これ・・・全部食べるの?静と希子は目をまん丸くした。
市役所では悠太郎は仕事に頑張っていた。
帰ってきて台所を見た悠太郎。
「これは???」
フラッシュバックが起こった。
いつか、世界一の塩むすびを探求しましょうと
言って台所にずらっとおむすびが並んだことを
思い出した。
「で、どうだった?」と悠太郎。
「かなわないっ・・・・て。」
「かなわない??」
希子はどれもおいしい。でもおねえちゃんの
おつゆのほうが一番おいしいという。
和枝さんのおつゆはそんなにおいしいの?
と悠太郎に聞く。
ねえさんのというより、死んだ母のといったほうが
いいと思います。
それって、西門の味よね・・・・・。
複雑なめいこだった。
***************
大阪は食い倒れの街といいます。
お店の方はそんな街で昆布一つにしてもこだわりをもって
仕入れをして客に情報とともに
おいしいものを食べるために商品を売ります。
だから定吉は昆布のだしの取り方も
丁寧に教えてくれました。
昆布は軽く布巾で拭いて
沸騰したお湯に入れて
それに鰹節を入れて・・・と。
(真似してやってみよう~~~~
難しくないから。結果はわからないけど。)
でも、最後のもうひと手間という奥の手は
各家、各店によって違うと思います。
だからある程度はレシピ通りにすれば、
それなりの味が出ます。
が、この最後のもうひと手間、
うちの家の秘伝の味付け。
それが企業秘密というおいしいものの秘密なんですが
西門の秘伝とはなにか????
大きな壁にぶつかっためいこです。
そこは、だれにもわからないですね。
和枝さん以外は。
「あなたはすごいです。」
悠太郎がいったそのひとことは
食に対するこだわりは何ものにも負けない
どんな過酷な環境にも負けないという
めいこの強さをたたえています。
悠太郎はかつてのおにぎりに代わって
一緒に暮らすことでその姿勢を
見て勇気づけられました。
自分の思い通りにならなくても
腐ってはいけないと、前向きに
仕事に向かうことになったみたいです。
東京にいたころはお昼のおいしいおにぎりがパワーの
源でしたがいまは、めいこの大阪の食べ物
に対する探究心が悠太郎の
エネルギーになりました。
あのどん底のめいこが生き生きとし始めた。
悠太郎はどれほど勇気をもらったこと
だろうかと、思います。
しかし、西門家の秘伝・・・
これに迫らないと西門の嫁と
認めてもらえません・・・・。
頭を下げて和枝さんに教えてもらうのは
負けを認めることになるのかな?
ここまでがんばりましたが、西門の味には
到達しませんでしたと・・・これって
残念ですよね。
ん・・・・
できれば、その味に到達して
家族においしいと
絶賛されるようになってほしいけど。
あの和枝さんはそれでもなかなか
嫁として認めてくれないと思いますよ。
この調子でいづれお静さんや希子さんは
ごちそうさんと言ってくれたとしても
和枝さんの「ごちそうさん」を聞くのは
まだまだ先のような気もしますが?
