こんぶねーしょん2
めいこは女中と言われた。
西門の家の家風ですと和枝は続ける。
長い歴史があって子供が生まれないとか
家風にあわないとかいろいろあって
とりあえず、一年間は籍を入れんと女中さんで
様子を見ようということに決まっているという。
それから昨日までいた女中さんは里に返したといった。
嫁になるひとが女中さんから指示されるのも
嫌やろうなと思って。
めいこは驚いたが、お気づかいありがとうございました。
といった。
すると静がみそ汁を飲んで、辛いといった。
希子もおなじく辛いといった。
和枝は東京ではこれが世界一ですか。
そういってみそ汁を鍋に返した。
向こうへ行っておひやでぶぶづけをします。
え???
ぶぶづけとはお茶漬けのことですよ。
冷や飯にお茶をかけて食べるそうです。
一人で食事をするめいこに
糠床が話しかける。
みず・・・めいこ・・・みずが・・・・
蓋を取って中を見ると
水浸しだった。
驚いて昨日の夜糠床をもっていった姉の部屋
へいった。
お姉さん!!!
といってふすまを開けた途端閉められた。
お話がありますとふすまの向こうから座って
声をかけた。
手短にね。
糠床に大量の塩をいれたのはお姉さんですか。
女中がしたことではないかしら。
しらばっくれているとめいこは思った。
台所で糠床をみていると静が話しかけた。
女中のせいではないわよ。
そうですよね、お姉さんですよね。お料理が
得意ではないと言っていたから。
静は本当にそう思う?和枝さんはね
料理の腕前は相当なものよ。
え?
あんた本気で信じていたの?
いけずされたのわからなかったの?
笑いながら、これ洗濯頼むわね
といって去って行った。
一方悠太郎は初めての市役所で職場の
紹介をされた。
学校の図面を見てほしいと上司が言った。
大村という名前が大きいが身長がやけに
低い男が図面引きのベテランで
彼が引いた図面をみて、悠太郎は
木造???とつぶやいた。
一方めいこは、みそにしろ、しょうゆにしろ
なぜかうすいし、味も違う。
そこに出入りの商人がやってきた。
注文のいりことシイタケです。
めいこは、普通の味噌としょうゆがほしいというが
普通ですよと彼は言う。気に入らないなら
市場に言ったらどうですか?
めいこは市場にいった。
これなに?
白菜です、知らないの?
魚屋では、ててかむいわし~~~と
言って売っているのでゆびをそっと
イワシの口の前にもっていった。
おくさん、手を噛みそうになるほど生きがいいという
いみですやん。
めいこは人だかりをみつけた。
肉屋でバーゲンをしていた。
肉、百匁ください~~~
それから骨も~~~~
洋食なら大丈夫だと思った。
フォンを作りながら、メンチカツを作った。
静はおいしいといった。
和枝はじっとお膳をにらんでいた。
希子は猫舌なのでメンチカツを切ってあげた。
懐かしい味だわ、明星亭よく行ったなぁ~~
と、静は言う。
とたんに和枝はお膳をひっくり返した。
これはうちの味ではない。
あんた台所をつぐっていうのはその家の
味をつぐってことやで。
嫁に入るというのはその家の色に染まるという
ことやで。わけのわからん洋食など
うちの家の味ではない。
めいこはちらかったメンチカツを見た。
おっしゃることはわかります。
でもこんなことしなくても。
食べ物は粗末にするものではないです。
和枝はそうやな、あんたのいうとおりや。といった。
ほんならあんた食べ。
めいこは、ちらかったメンチカツをつかんで
食べた。和枝に抗議をするように。
おいしいです。
おいしいです、いいお肉です。
ごちそうさんでした。
静も希子も様子をじっとみていた。
和枝はにらんでいたが、ほっと笑顔になって
「まだそこ残っています。」
床におちたソースだった。
「なめたらえーのんとちがう?
お掃除ご苦労さん。」
そういって二階へあがって行った。
めいこには恐怖と怒りが込み上げてきた。
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さすが、怖いですね。
この和枝さんが仕切っている西門家は
ぞっとする家なんですね。
悠太郎が結婚して嫁さんを連れて帰る
気がしないのがよくわかります。
この状況を打開するには????
あほになって、「では、西門のお味を
教えてください」というしかないですよ。
昔のお嫁さんはこんな感じでいじめられて
泣きながらも耐えていたといいます。
女性の地位が低いから、そうなるのですね。
東京と大阪は味が違います。
みそ汁のお出汁は大阪は昆布でとります。
関西は昆布です。
かつおとかだしじゃこ(いりこのこと)
あまり使いません。
昆布の味にはすごくいい、グルタミン酸が
豊富です。
そのだしにあうようにしょうゆも味噌も
東京と違います。
醤油はうすくちで塩気が多いです。
お皿にとるとお皿のデザインが醤油の
中に見えるほど透明です。
その薄い醤油で昆布の出しでとったおつゆが
じつはきつねうどんのおつゆです。
うどんがくっきりと底まで見えますが
決して味がないわけではないです。
ほっこりしたまろやかなうまみのある味です。
それに九条ネギがとても会います。
試しに日清のどん兵衛ですが、蓋を取ってみてください。
出汁を変えています、との表記が。
関西で売るどん兵衛は昆布だしです。
ただし私とて、味噌は信州味噌が好きです。
関西はお出汁は昆布が基本。
いくら洋食屋の娘とはいえ、文化の違いは
辛いですね。
だれかちゃんと教えてやらんかい!!!!!!
いけずばっかりしていると関西人はいけずやと
誤解されますやん。
和枝さん一人のおかげで・・・・・。
わたしだって、この人恐いわ~~~~~ぁ。
