プレオープン当日

ーおじい、お父ちゃん

純たち一家はホテルのロビーで
おじいさんとお父さんの写真に
手を合わせていた。

おかあちゃんや宮古のひとたちのおかげで
私たちのホテル
ここまでくることが出来ました。

このご恩を一生忘れずにみんなで
返して生きたいと思います。

「純・・」と晴海が言った。

「今日は何の日ね?」

「今日は、プレオープンの日だから
おじいとおとうちゃんにほうこくして
いたの。」

「ああ、そうだったね。」

晴海はうれしそうにいった。

「それともうひとつ・・・」

純はこっそりと
晴海に耳打ちをした。

晴海はうれしそうだった。

「ああ、よかったね。」

「秘密だよ。」といった。

みんな「なんだよ」、と笑った。

純は外をしきりに気にしながら
掃除をする。
愛は話しかけた。

「まだ、うちの両親が来ると
思っているのですか?」

「うん」

「大切なことを伝えるのを忘れたといって
ましたが何か関係あるのですか?」

答えに詰まっていたら
玄関のドアが開いて

なんと

謙次が来た。

驚く愛。

「どうも
今日はお招きありがとう。」

愛は呆然として

「いら・・・っしゃいませ・・・」

と言った。

「元気に頑張っているか?愛。」

純は「お部屋にご案内します」
といって謙次のかばんを預かって
部屋のほうへ行った。

それをじっと見守るしかない愛だった。

ロビーで謙次にキンさんのお茶を入れた純。

「どうもありがとう。

ああ・・・旅の疲れが取れますねこのお茶は」

「ああ、よかった」

「何でブランコがあるの?」

「あれは仲直りのブランコと言って
けんかしたお客さんに乗ってもらった
仲直りをしてもらおうと思って。」

謙次は複雑な思いをした。

「どうせやったらママと乗れば?」

と、誠が言った。

そのとき玄関が開いて
多恵子が来た。

「いらっしゃいませ。お母さん
お待ちしていました。」

純は、多恵子を出迎えにいった。

謙次はどうしようかと
おろおろしたが

多恵子は、謙次を見て
「あら、あなたもいらしてたの?」
と言った。

緊張した謙次は
「純さん、トイレはどこですか?
トイレは??」

というので、純は謙次を案内した。

困ったときはトイレに行くという
愛の台詞の根拠はさだかではないが
もしかしたら、謙次かもしれない。

誠はあきれていた。

愛は多恵子に「ありがとうございます。
でもびっくりしました。
お母さんまで来てくれるとは
思ってもなかったもので。」

と・・・言うと

多恵子はかばんから
ねむり姫の本を出した。

「わたしは、これを届けに来ただけよ。」

その本は愛が実家に帰りますといって
実家に帰ったとき置いていったものだった。

里やの火災に会っても燃えずに多少
焦げてしまった絵本であった。

愛は絵本を受け取った。

多恵子の部屋に、誠がお茶を持って
入ってきた。

「あなた本当にここで働く気?」

「そうや、もんくある?」

「本気じゃないことなどわかっているのだから」

「どうでもええやろ。うちがなにをしようが
もうママの弁護士事務所を継ぐ気はないし」

「被害妄想のようなことを言うのはやめなさい」

「いったいうちはママの何?」

「え?」

「ママはうちが必要なん?」

「は??何をくだらないことをいってるの?」

「ああ、そうやね
ママから見ればうちの悩みなんか本当に
くだらないやろね。」

誠は部屋から出て行った。

しばらくして、夕飯の用意をする純たち。
ロビーで謙次がブランコに乗っている。
多恵子が降りてきて
「なにやっているのあなた。」
と声をかけたので謙次はびっくりして。
ブランコから降りた。

「いえ、別に」

「あの、お二人とももうすぐ料理の準備ができますので」

「はい・・・」
謙次は愛想よく答えた。

「どうなの、東京は
一緒に事務所を始めたパートナーは
若い女なんでしょ?
再婚なさるき?」

「別に・・そんなこと」

「遠慮しなくてもいいわ、女性がいないと
生きていけれないんだから、あなたは。」

「キミのほうはどうなんだ?忙しいのか?」

「ええ・・・」
多恵子はブランコをみて乗った。

「あまり無理しないで。」
謙次は多恵子の隣のブランコに乗った。
「少しは仕事のペースは
落としたほうがいいのではないのか?
生活に困っているわけではないのだし。」

「別に、お金のためにやっているのではないのよ。」

「そうではないよ。僕はキミのことが心配で」

「もう、そうやって、無理にやさしくしようとするのは
やめたら?
あなたの優しさは本当のやさしさじゃない。
自分を守るために奏しているだけよ」

「だったら言わせてもらうけど」

謙次はいきなり大声を上げた。

驚く多恵子。

「どうしてキミはいつも相手を傷つけることばかり
いうんだ。」

そういいながら、ブランコをこいだ。

「確かにキミは弁護士として僕より優秀かもしれない。
しかし、妻としてはどうなんだ?
母親としてはどうなんだ?

いったい家族のために今までどうした?
子供たちを幸せにしたと胸をはれるのか?
自分の考えが正しいといつも家族に
押し付けてきただけではないか?」

純、愛、誠は驚いて
見守った。

謙次がこうして多恵子に意見するなど
ありえなかった。

ブランコから降りた謙次は
「そんなこといえる資格はないけどね。ごめん・・」

そういって、去っていこうとした。

「どこへいくん、パパ・・・」

「かえる・・
母さんと話していると耳鳴りがひどいんだ。」

「なにいうてんの。
ママは全部しているのやで。
耳鳴りも、においの苦痛も、本性もわかる。
三重苦や。それでも文句いわんとずっと戦っている
の、ママは。」

謙次は多恵子を見た

「それなのに、パパは何?
ずっと家から逃げて浮気して
あげくのはてにママと別れて
うちら子供のこともほっといて・・・」

「もういいわよ、誠・・・
私が帰るから・・・」

多恵子はブランコから降りた。

「すみません、タクシー呼んでくださる?」

「あの、そんなこといわないで。」
と純はあわてた。

「私がいるとみんな不愉快みたいだから。」

「おかあさん、」と愛が言った。

多恵子のそばに行って、「覚えてますか?
この時計、高校の入学祝におかあさんから
いただいた時計です。」といった。

「家を出るときに無意識に持ってきましたが
実はあのときから止まったままなんです。」
「・・?」
「この時計と同じく純がいなくなってから
うちら家族の時間もとまったままなんじゃないかな
って・・・
でも僕は、宮古の海で純さんが僕にプロポーズをして
くれて初めて僕は愛されても良いんだと思った
のです。
人の本性がわかる苦しみから解放されました。
幸せだって思ったのです
僕はみんなにも幸せになってもらいたいです。

だから僕はこれからみんなのことを心から愛します。
全身全霊で愛します。
いやだといっても愛します。
だって僕の名前は
愛と書いて
いとしとよみますから・・・」

待田家族の怒りのエネルギーが消えて
静かな落ちつきがただよった瞬間

明かりが消えた。

みんな驚いた。

ドアが開いて
正、剛、晴海・・・あゆみ、羽純が
現れた。

ハッピーバースデー ツーユー

と、歌を歌いながら・・・ロウソクの火がついた
ケーキを持って。

ハッピーバースデー ディア
愛君~~~
ハッピーバースデーツーユー~~~

「あ・・???」
愛は驚いた。

「ほら、消して。」と

純が言う。

愛はケーキのロウソクの火を吹き消した。

明かりがついた。

みんなが歓声を上げて拍手をした。

「純さん、お父さんお母さんへの連絡って。」

「このホテルを愛君への愛でいっぱいにしたいから
プレォープンは愛君の誕生日ではないとだめだし
お父さんとお母さんいは絶対きていただかないと
だめなんですって、書くのを忘れて・・・」

待田家がテーブルについた。

晴海は愛に話しかけた。

「あなたに言いたいことがたくさんあるけど
いつも忘れるから、書いてみたけど
聞いてくれる?」

「はい・・・」

晴海はノートをひろげて、
それをみながら話し始めた。

「愛さん、いつも純のことありがとうね。
純はあなたがいなかったらこんな素敵な
ホテルを作ることは出来ませんでした。
これからも末永く、純のことを
宜しくお願いします。

お誕生日・・・ほんとうに・・おめでとう。」

多恵子はうれしくなった。

愛も・・・

涙声になって

「ありがとう・・・ございます」

とやっといえた。

「ありがとうございます。」

その様子を多恵子も誠も謙次も
それぞれの思いで見ていた。
気持が和やかに成ったようである。

待田家の四人になったテーブルに
ワインが置いてあった。

謙次は
多恵子にすまなかったと謝った。

多恵子は、「私より子供たちに謝ってください」
といった。

「そうだね
愛、誠
すまなかった・・・・」

「もう、ええから
乾杯せーへん?」と誠が言った。

「そうだな。
愛、お誕生日おめでとう。」と謙次がいった。

「待ってください・・
僕の誕生日は純の誕生日でもあるので
みんなで純におめでとうを言いませんか?」

多恵子はかばんから家族5人で写した写真を出して
愛にわたした。

愛は、写真の中の純を見た。

みんなでワイングラスをたかくあげて

「おめでとう~純」と多恵子

「純・・・おめでとう」と謙次。

「おめでとう純ちゃん」と誠。

そして愛が
「おめでとう~~」と言った。

厨房からは純がじっと見ていた。

*********************
仲直りのブランコ・・・
これを実行した第一号は
多恵子と謙次。

こんなにこじれたカップルを
仲直りさせたブランコだから霊験あらたかであると
いえましょう。

そして今回の画面にうれしくなるぐらい
素敵に写る剛の絵。

青い空を背景に青い海に浮かぶ赤、オレンジや黄色などの色を使った
太陽にちょうどライトが当たるように
できているのか、太陽がくっきりときれいなんですよね。

多恵子と謙次がなんだかんだと言い合うシーンが
この絵の前。それがまたいい感じに見える
風景のようなんですよね。

ケーキのシーンで暗くなりますが・・
太陽のあたりにスポットでライトが当たるのですよね。
うーーーん雰囲気がいいのですね~~~。

バックスに気をとられた放送でした。

しかし、待田家・・・再生の第一歩のお話。
よかったです。

はじめて謙次が怒り狂ったように怒鳴りましたが。
たまにはカッコもくそもなくこうでないと
話が気持ちよく出来ない場合もあります。

晴海は最初、愛が晴海の本性をみたことで愛を嫌います。
純と離婚して欲しいとまでいいました。
しかし、晴海が病気になってからなぜか仲良くなります。
そして、今回の晴海からのメッセージです。

うれしいですよね~~
愛にとって。
盆と正月がいっぺんに来たみたいです。