夜、お茶を入れる純。
ーおじい、お父ちゃん、
プレオープンはあさってなのに
愛君のご両親には招待を断られた
ままです。

愛は看板メニューを考えていた。

「そうですか、やっぱり無理でしたか」
「もう一回連絡してみる」

「いいですよ・・・」

「でも、誠ちゃんのためにも
家族で話し合ったほうが良いと思う。」

そこへパタパタと足音がして
誠が降りてきた。

「純さん、ごめんやっぱり帰るわ。
ずっとここにおってもみんなに迷惑を
かけるだけやし。」

「もう一度お父さんとお母さんに連絡する
から。」

「やめたほうがいい、時間の無駄やから」

「でも・・・
このままだと誠ちゃんの今の気持
わかってもらえないよ、それでいいの?」

「純さん、なんですか?それ」

「え?あ、だから当日家族みんなで話し合ってさ・・
わぁ!!!忘れてたぁ~~」

純は何かを思い出したみたいだった。

「なに?」

「招待状に大事なこと書くの忘れてた。
あたし、いまからもう一度お父さんと
お母さんに連絡するから」

そういって、純は誠にいった。
「信じて、お父さんとお母さん
必ず来てもらえるって。
愛君、看板メニュー宜しく。」

「ああ、忙しい~~~~」

「なにあれ??」
「さぁ?」

「このメールできっと愛君のご両親は
きてくれるはず・・・」
と信じよう。

プレオープン前日。
もう前日なのに決っていないのは
壁の絵と看板メニュー。

「どうするんだよ、おねえ、明日だよ
愛君の好きなものって何?」

「ええっと、ええっと・・・
いいアイディアないかな

家族・・・愛君の家族は?」

「デモ違うんじゃないかな。
見に来るのはお客さんだから
お客さんも喜ぶものじゃないとね~~~
う~~~ん」

「剛、あんた本当に大人になったね・・」

と純が感心している隙に士郎がペンキのバケツに
手を突っ込んで
手形を壁にスタンプした。

「ああああああ、ちょっと~~」と剛は叫んだ。

あゆみと剛があわてて
止めようとしたら
バケツをひっくり返して
壁には茶色と黄色の
絵の具がべったりとついた。
そのおかげで手形はなくなったけど・・・。

途方にくれるあゆみと剛。

そのとき、「純さん~ちょっときてください」

と愛が呼ぶ。

「え?いま??」

「純さん、これなんですけど・・」
愛は葉っぱを純に見せた。

「パルダマ?
うちにも生えているよ。」

愛は、苦味があるのでサラダに使えると
いった。
晴海の友人から苗をもらって育てたらしい。

宮古の食材を使ったらお客さんは喜ぶだろうという。

純は看板メニューはみんなが知っている
家庭料理みたいなものが言いと言うが。

「そうだ、クリームシチューは?
愛君のクリームシチューはめちゃめちゃおいしいし。」

「それって純さんだけが喜んでいるような気がします。」
「そうなの?」
「うん。」

とにかく一回作ろう、というが

問題は食材が少ない。
経費削減のため、食材が少ないが
作ろうときめた。

剛のほうは、時間がないのでとにかく書いて
見ようとしている。

「やけに成らないでよ。」

「おねえこそ、ホテルの名前を決めたの?」

「考えているよ」
「なに?」
「えっとね・・

パラダイスホテル

ホテルパシフィック

ホテルカリフォルニア

有頂天ホテル・・・・」

「なんか全部どっかで聞いたような名前やナ」
と誠が言った。

「やっぱり」

「本当にパパとママが来るの?
なに?昨日ゆうてた大事なことって。」
「それは・・・・当日までのお楽しみ」

「・・・?」

「ホテルの名前、なにがいいかなぁ~~一緒に考えて。」

そこに羽純がやってきた。

「魔法の国だから、ホテルマジックランド
は?」

「それは直接的過ぎる」と誠。

「じゃ、愛君の名前を取ってホテル愛」と純。

「なんかラブホテルみたい」と誠。

「ホテルJ&愛とかは?」と羽純。

「なんか意味わからんし・・」と誠。

羽純はむかっとして
「さっきから文句ばっかりつけていませんかね?」

「別に私はそんなつもりは・・・」
と誠は羽純をにらんでいった。

ふたりの間に入った純は剛を見た。

剛は目線をそらした。

愛を見た。

愛も目線をそらした。

純は二人を見て、
「まぁまぁまぁ~~落ち着いてさ。ね?」

誠はぷいっとあっちへいった。
羽純も去っていった。

おじい、おとうちゃん、どうしよう
まだ何も決らないよ

「みんな頑張っている~~~?」

マリアさんと晴海が来た。

「差し入れもって来たよ。
じゃあ~~~ん。」

豚マンだった。

「おお、」純は大好きなのでいただこうとしたら
愛が呼んだ。

「え??」

「さっきの食材で肉野菜辛味噌炒めを作ったけど
試食してください。」

「おいしい~~~~いけるよ」

「でもね、看板にするにはインパクト
というか面白みにかけるんですよね
なんかいいアイディアないかなって思って。」

「あ、おかあちゃん。ちょっと、なにやってるの」

と剛の悲鳴が聞こえた。

見ると
晴海は茶色と黄色の対象する位置に
青色を塗っていた。

「え?だって落書きしていいのでしょ?」

「ちがうよ」

「あああああ・・」

「おかあちゃん、これは剛がね・・」

「楽しそうだね」と事情を知らない正が参戦。

「おにいもやめてよ」

「おかあちゃんも~~」

大騒ぎのなか、正が書いたのは高台にある
ホテル。
どこかで見た風景だった。

そうだ、ビーチとサザンアイランド。

みんな、はっとした。
「おじいのホテル・・・ね?純」と晴海が言った。

「うん、いけるかも」
剛は納得した。

「お母ちゃんはここに青
おにいはここにぱぁっと・・・」

剛は指示した。

「みんな豚マン食べよう~~~」

マリアは豚マンを配った。

愛は、豚マンを食べながら

「あああ!!」

という。

「なに?」純。

「これがあったか。」

つまりさっきの肉味噌炒めを
肉まんにするアイディアだった。

試作した愛は純に試食してもらった

「うん~~~~おいしい」
「いけますね~~~」
「看板メニューが出来たね」

「おねえ来て、来て」

剛が呼んだ。

出来上がった絵は、サザンアイランドの
建物とビーチだった。海の上には明るい
色彩の太陽が。

「なつかしいね、おじいのホテルがあるさ」

晴海はいった。
しかし剛は「なんか足りないな~~~」という。

マリアに抱かれた勇気が「足りない」といったようなきがした。

勇気が純のペンダントを見ている。

勇気にペンダントを貸したら落とした。
それを拾おうとした愛が
ひざまづいて純に手渡すかっこうになった。

剛は「ストップ~~~~」

といった。

絵をバックにして純と愛を見た。
「これだ、何か足りないと思っていたのは
人だ。愛が足りなかったんだ。
愛の瞬間が足りなかったんだ。これだよこれ。
そのままストップ。」

そういって、なにやら書き足していた。

「え?なに??」
「え?ずっとこのまま?」

「完・成」

そこには砂浜の絵のうえに
「と」が書いてあった。
真正面から見ると
純と愛の間に「と」の一文字があって
絵の前でプロポーズをしているみたいに見える。

あのときのシーンそのままだった。

ー「僕の心と体は永遠にあなたのものです」

「この絵はここに人がふたりたって
始めて完成する絵だったんだよ。」と剛。

純はわらった。愛も笑った。

ーおじい、おとうちゃん、
明日のプレオープンにむけて
準備が整いました
あとは愛君と誠ちゃんの
ご両親が来てくれれば・・・

誠の寂しそうな背中を見て純は思った。

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この剛君の絵はすごいです。

ぱあっと明るくなります。

しかも、楽しい絵です。
色彩がきれいです。

先代サザンアイランドが絵のなかにそのまま残っています。
もしかしたら、もう、新しいホテルの名前はサザンアイランド
に決めたのかもしれません。

みんなが楽しそうにしているなかで
ひとり、よりどころを失っている誠が気になる
純。

果たして明日は多恵子と謙次は来るのでしょうか。
来るんだろうね。なにかメールしたみたいだし。
それで・・・待田家の再生は・・・・???