ーおじい、おとうちゃん、愛君のご両親を
ホテルのプレオープンに招待することに
しました。

このまま家族がばらばらになるのが
心配な愛君のためにも・・。

誠はホテルで働きたいといいながらも
なかなか熱心になれない。

純は二人に招待状を書いてポストに投函。
思わずポストに両手をあわせて、祈った。

来てくださいますように・・・・。

でもそうしたら新たな問題点に気がついて。
純は慌てた。

「ホテルの看板メニューですか?」と愛。

「プレオープンのときにね、できたら
お父さんとお母さんをその料理で
おもてなしをしたいなって思って。」

「それまでに間に合いますかね?」
「私も協力するから一緒に考えよ。
そんなかた苦しいものでなくてもいいの。
家庭的な一般料理で・・・
カレーとかおそばとか・・。」

「うーん・・・考えて見ます。」

「うん。

それとさ・・・もう一つ大事なこと
わすれていたわ。

ホテルの名前・・」

「それはサザンアイランドでいいのでは?」

「そのまま受け継いでいいのかな??」

「うーん」

「それもプレオープンのときまでにね。」

横から剛が「おねえ、これはどう?」とスケッチを見せて聞く、
「うん、考えておくから。」

「早くしてよ・・・」

「うん。」

プレオープン7日前。
会議中の純たちスタッフ。

「おはようございます。」

「今度プレオープンのときに
愛君と誠ちゃんのご両親を
招待することにしました。

正式のオープンの予行演習になると思うので
皆さん精一杯おもてなしを
したいと思います。」

愛は、誠が浮かぬ顔をしているのを見て
気になった。

が、会議に身を入れた。

「今日から愛君はホテルの看板メニューを作ることに
専念してもらいます。」

「はい」

「おにいちゃんにはマッサージルームを

あゆみさんにはビューティサロンの準備を

お願いします。」

会議が終わって
純は花の手入れをしながら
マリアに聞いた。

「おねえちゃんは、ホテルの名前は
どうしたらいいと思う?」

「うーん、ナチュラルでキュートな名前が
いいかな。」

「フラワーホテルとか?」

「んー普通だね・・・」

「普通ね。」

その様子を部屋の中からじっと見ていた誠。
突然、純と目線があったので
驚いて目をそらせた。
そして、剛のほうを向いた。

剛は壁に向かって悩んでいた。
話しかけようとしたら

羽純が剛に話しかけに来た。
「ね、人間ジュークボックスのレパートリーを
増やそうかなと思っているのだけど」

「うん」

「何か歌って欲しい曲とかある?」

「ああ、じゃさ
”大迷惑”って曲知ってる?」

「知ってるユニコーンでしょ?」

「知ってるの?ははは」

「知ってるよぉ~~♪」

「いい曲だよね」

「(歌って)もらっていい??」

「いいよ、ワンツー・・・」

誠はじっとみていて、ふてくされて
ソファに座った。

♪町のはずれでシュビルバー~~
と二人が歌っているのを背にして
つまらなさそうにした。

そして手にしていたレジメをおもいっきり
丸めた。

その紙だまは・・・
厨房で看板メニューを考えている愛に飛んでいった。

愛は、きがついて振り向いた。
「苦戦している見たいやけどホンマに作れるん?
看板メニューなんか」

「シンプルなメニューがいいというけど
カレーはありきたりだし、おそばはすぐにのびるし
お父さんとお母さんって何が好きだったかな?」

と愛が聞いても誠は無視して

「ね、愛ちゃん。
ホンマにパパとママがくると思っているの?」

「そう、思う・・・

ことにした。」

「あたしは絶対こうへんと思うな。こんなとこまで
わざわざ。」
「そんなこというなよ。
うちら家族のために純さんが招待してくれたんだから。」

「愛ちゃんはええな~~
好きな人と一緒になれて。ほんまうらやましいわ。」

と、羽純と剛がまだ、なんだかんだとなかよく
している様子を背中にしょって横目で見ていった。

それを感じた愛は、「あのさ、誠さ
そんないやみを言っている暇あったら
ちゃんと働けよ。」

誠はむかついた顔をして愛を見て

「ふん」

といって、去っていった。

愛は、頭痛を感じた。

数点の下絵をみながら純は剛と
打ち合わせをしていた。

が・・・・・

決らない。

(楽しそうな絵なんですけどね)

士郎がブランコに乗っていた。

「何かヒントになるようなことないかな」

剛は純のペンダントをみて「それって結婚指輪の替わりだよね?」
といった。

「うん・・プロポーズをするとき
え、プロボーズをされたときかな

ハートの形も拾ったのよ」

「うんうん」

「それで、

「IラブJになるわけ。
すごくない?・・あははは」

「じゃ、ここにIラブJって書こうか??」

「いいね、そうしよう」

「いいわけないでしょ、
そんなおのろけ。」

「うんーーーー」

純が考えていると
突然士郎が壁に向かって絵の具を
つけた筆を下ろそうとしていたので

「ちょっとまって!!!」

と二人は慌てた。

「士郎君ママのところへ行こうか~~」
と純は士郎をつれていった。

剛は
壁を見ながら、「う~~~~ん
だめだぁ~~~~~」

と悩む。

悩みますよね、ホテルの象徴ともいうべき
ロビーですよ。
剛はまだかけだしですよ。
しかし、ここで剛の強さをみることが
できました。
純と対等に話をして、純より判断力が
あります。
以前(中学生のころ)のウンコをもらしていた甘ったれの
剛とはあきらかに違います。(中学生の頃と比べたら当然か)

純も、剛を認めている様子に、彼が
成長したことが伺えます。

なやんでいる剛の下に
誠が来た。

「そんなに悩むことないのと違うの?
もともとそんなことする義務、ないんやし。」

「ああ、まぁそうだけどさ
おねえも頑張っているし、協力して
あげたいんだ。」

「でも大阪で個展の準備とかもあるんやろ?」

「うん」

「な、ツヨキチ
わたしといっしょに大阪に帰らへん?」

「え?でもまこっちゃんここで働きたいんじゃないの?」

「うん、でも・・・
やっぱりなんかホテルよりもっと才能があるきがするし。
それに宮古は私には狭い気がするし。」

純が影からそれを見ていた。

剛は誠の発言に驚いた。

「なに?」と誠。

「あ、いや・・・なんか・・こう
まこっちゃん昔の俺みたいなこと言っているなって
思って。」

「・・・?」

「ごめん、いったん引き受けたんだし
最後までやりたいんだ。」

作業を続ける剛。
誠は、そそくさと外へ出て行った。
純はずっと誠の様子を見ていた。

海辺で誠は
「わぁ~~あああああ~~~~~~
ん~~ぎゃぁああぁあああ~~」
と、うなりながら

砂をけりちらしていた。

純がやってきた。

それに気がついた誠。
「私もよくここで叫んだりしていたな~。

自分がいやになってどうしたらいいのか
わからなくなった時さ。」

「それで?
なんか答えでたん?」

結局、おなかすいた~~~とか
あつい~~~とかいって帰るだけ」

「なんやそれ」

「でもさ、たまったものをここで
吐き出して、気持ちよくなった気がした。
誠ちゃん、よかったら話し聞く?」

「・・・」

そこに携帯がなった。

謙次からだった。
謙次は、招待状のお礼を言って
忙しいからいけれないと断った。
「そこを何とかお願いできませんか?
愛君もお父さんのためにおいしい料理を
作るんだといっていますし」

誠に代わるといって携帯を差し出した。
いやがっていたが、「話したいことあるんでしょ?」
といって差し出した。

「もしもしパパ?」

謙次は宮古にいけれないといった。

「別にええから、こんでも。
パパの顔なんか見たくもないし。」

そういって携帯を切った、

「誠ちゃん・・」

「おせっかいはやめてくれへん?

そうなんや・・・
純ちゃん・・うちのお兄ちゃんのことやで。
純ちゃんがなくなったら純ちゃんのことばかり
考えて。愛ちゃんが出て行ったら愛ちゃんのこと
ばかり考えて。

うちは末っ子で女やのに、いっつも蚊帳の外や。
誰も私のことなんか相手にしてくれヘン。

おかしいとおもわへん?

でもパパとママの言うことを聞いて
一生懸命ええ子でいようと思ったんや。
もう、わたしは二人に余計な心配をかけないように
強くなろうと思ったんや。

愛ちゃんが出て行ってから
ママに弁護士事務所を継げって言われたときも素直に
”はい”っていうたんや。

それもこれもあのひとらに笑って欲しい
幸せになってほしいと
思ったからやないか。」

誠は泣きながら話を続けた。

「いつかみんなで家族が一緒に笑える日がくるといいなと
信じたからやないか・・・・・。

そんな人の気も知らんと
ママとパパは勝手に別れたりなんかして。

これからうちにどないせいっていうん?」

そういって、誠は走って行った。

追いかけようとしたら多恵子から電話が鳴った。

招待状のお礼だった。

「いらしてくださいますか?」

「無理よ、そんな暇ないし・・・・。」

そういって、携帯は切れた。

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今日は、水曜日なのですよね・・・
水木は、話がド壷に落ちますね。

(わかりますか?関西圏以外のかた・・この表現。)

ま、それはいいのですが・・
誠ちゃんは、以前はなんになりたいという夢を持って
いたのでしょうか?
突然、二人の兄が目の前からいなくなって
弁護士事務所を継ぐことになったというのは・・・

つまり・・・法学部だったのですよね。

目的もなく大学進学したわけですか。

そんな学生多いですからあかんことはないですけどね。
ずいぶん、自己主張ができない素直な娘さんで
いまになって反抗期に入ったと思われます。
多恵子に言わせれば誠は散々自分勝手なことをしてきて
。。。と認識しています。誠が8年ぶりに愛とそれから純に
あってからなにか影響されることがあったのかも
しれませんが。

この認識の差は、どこから来るのでしょうか?
純の「話をすればわかり合える」という哲学が
ここで実践されるのでしょうね・・・きっと。