ーおじい、おとうちゃん、宮古にひっこして一ヶ月。
ホテルのオープンにむけ
着々と準備が進んでいます。

あ、そうそうおじいのホテルにあった
あのジュークボックスが戻ってきました。

近所の万屋をやっているキンさんの
おかげで。

おかあちゃんは、その間キンさんたちと
すごしています。

まるで島全体でおかあちゃんの介護をしてくれて
いるみたいです。

写真のおじいと善行に話しかけているとき
ホテルにあの、セクシー親子が来た。

といっても、もうセクシーさんではなくて
あゆみさんだけどね。

「私頑張るからさ、なんでもいってね。社長。」

「その呼び方やめてください・・」

「社長」、とまた羽純がいった。

「やめてったら。」

と、笑いがはじけた。

「奥のほう、すごいよ。。
見に行って。」
と純が羽純にいってあゆみを案内してもらった。

「純さん、これでスタッフがそろいましたね。」
と愛が言った。

「おじいがおばあにホテルサザンアイランドを作った
みたいにわたしもここを愛君への愛情がいっぱいつまった
ホテルにしてみせる。」と、純は愛に言った。

「はい。」愛はうれしそうに答えた。

マリアとあゆみ、そして愛が縫い針を持って
手作業をしている。

士郎は「みんな何しているの?」

と聞く。

「いまはね、お客さんの部屋のベッドカバーを作って
いるんだよ」、と純は答えた。
「ホテルで大切なのは居心地と寝心地だと
思います。それにこだわりたくて。
でも、一番の理由はお金がないからなんですけどね。」
みんな笑った。
「ね、なんでブランコがあるの?」と士郎が言った。

「あれはね、仲直りのブランコと言って
けんかして人達に乗ってもらって
仲直りしてもらうの。乗ってみる?」と純は言った。

純は士郎が乗ったブランコをうしろから
おした。おしながら、つぶやいていた。

「もう少し何か、うりになるようなものは
ないかなぁ~~~。

里やの時の正のゴットハンドマッサージと
あゆみさんのビューティサロンを
続けてもらうとして・・・」

純は常にホテルの事を考えていた。

「ね、純ちゃん人間ジュークボックス続けて良いかな?
ここにはない歌を歌いますっていって。
私もっと曲を覚えるから。」

「もちろん、そのつもりだったよ」

「純、あそこはどうするの?」

晴海が真っ白な壁をゆびさした。
そこだけが白いまま寂しげだった。

「なんかさ、このままだったらだめなんじゃない??
・・・えっと・・・ん・・」

「殺風景って事?」

「そうそうそう、殺風景。」

「だったら剛君に言って何か書いてもらったら?」

とマリアが言った。

その頃剛は大阪で仲間と一緒に個展を開く
準備で創作にはげんでいた。

純は電話をしてその話をすると
今は忙しいから無理だという。
電話を晴海がかわった。

「剛、なんで帰ってこないの?
困ったとき、助け合うのが家族でしょ。
帰ってきなさい。」

うむをいわせない、言葉に剛は

帰ってきた。

「早かったな、剛・・」
と正がいった。

「おかあちゃん、ただいま。」

「剛、あんたなんで帰ってきたの?」

「え?おかあちゃんが帰って来いっていうから
帰ってきたんでしょ。」

純は剛に
「お母ちゃんはあんたに会いたかったんだよ」
という。

剛は納得した。

「そうそう、それに今日は剛君の好きな
モズクのてんぷらだよ。」

そうマリアが言うと剛は喜んだ。

夕食をかこんで
剛の絵をみながら、
いいね~
おもしろいね~~
これなんかいいね

とわいわいと盛り上がった。

「俺さ、どんなに辛くても死ぬ気でがんばるから
今までみんなに散々迷惑をかけて
きたけど、やっと自分の生きがいを見つけることが
できたし・・」

「なんかいうこともりりしくなったな」と正。
「かっこよくなったね」とマリア

「よかったね、おかあちゃん・・」と純。

笑いのはじける狩野家の食卓だった。

晴海がノートを取り出した。

純は「どうしたの?」と聞いた。

「あのね・・・みんな聞いてくれる?
わたしは思いついたことを話そうとした瞬間に
頭から消えてしまうの。
あとで思い出すだろうと思ってもだめなの。
だからこうしてメモをすることにしました。」
晴海はメモを読み上げた。

「”私は今携帯の使い方もわからなくて
メールもおくれないときがあります。
階段を下りるとき
足をどう出していいのかわからなくて
落ちそうになるときもあります。

朝起きたら、なんでここにいるのかわからなくて
不安でたまりません。
でも、わたしは病気に負けないように頑張るからね。
どんなに苦しくても生きていくからね。
家族みんなのために。
おしまい。”」

「おかあちゃん、私たちもおかあちゃんのためなら
なんでもするからね。」

「うん」

「頼りないかもしれないけどなんでもいってよ
かあさん・・・」と正。

「うん」

「私お母さん大好きよ」、とマリア

「うん」、

「おれももっとビッグになっておかあちゃんを
楽させてあげるからね。」と剛は晴海の手をとって
いった。

「ありがとうね、みんな。」

「おまえはすぐなにかをやっては、やめてきたけど
もう大丈夫だよな」

「今日に至るまでの道のりさ」

「家族がそろったら良いねぇ」と純は晴海にいった。

「そうだね・・・」

愛は腕時計を見ていた。
あの日から止まったままの・・・

おいしいね~~
と楽しそうな食卓だった。

ホテルでは、純と愛がかたづけものをやって
いた。
愛が頭をおさえるので、純は疲れていると
思った。

「愛君、今日は遅いからこの辺にしようね」

「そうですね。」

「剛も帰ってきたし今日からここで寝泊りしようか。
オープンが迫ってきたらもっともっと
忙しくなるし。」

「はい」

「ね?ブランコに乗ろうか?」

二人はブランコに乗った。このブランコ
言いにくいことを言うには適している。
向かい合って緊張しなくて良いから。

「愛君さあ
家族に連絡したら?}

「いやぁ~~」

「だってずっと連絡してないのでしょ、こっちに
きてから」

「そうですね」

「腕時計、昔家を出たときからずっと止まっている
って。心にひっかかっているのでしょ。
自分のせいで家族がばらばらになったんじゃないかって
ご両親ともちゃんと仲直りしてないし。
できれば、純君がなくなる前の家族に戻りたいって・・・。
私もそうなって欲しいし。」

「いまさら僕が何をしても
うちの父とは母もう離婚しているし」

「あきらめたらだめだよ。
とりあえず、誠ちゃんに連絡してみたら?
誠ちゃんも愛君とおなじことを思っているのでは?」

愛は、じっと考えて
誠に連絡した。

「もしもし何?愛ちゃん」

そっけない誠の声が聞こえた。

「誠?元気かなって思って
今どこにいる?」

「宮古やけど」

「え??」

玄関のドアが開いて誠が来た。

「純さん、うちもここで働かせて
くれへんかな?」

純は誠の顔をみて「え??」といった。
そして、愛の顔を見て
また「え???」といった。

**********

これぞ、ルーツ朝ドラ。
幸せ家族の笑い。
信頼の仲間との絆・・・・

晴海の病気は進行しているらしい
けど、島中がしっているひとばかり
なので、どこにいっても、晴美さんだと
気がついてくれるってのは、ありがたいですね。

晴海さんも、宮古のきれいな空気のなか
きれいな海を見てしかも大好きな家族と一緒で
幸せそうで良かったです。

狩野家の繁栄とはうらはらに待田家の
寂しさを思うと愛は辛いのでしょうか。
そんな時、誠が宮古にやってきました。

まだ、人生の目的が見えないのか
ホテルで働くと言います。

思えば、誠は両親の間にたって
橋渡しをしていたようなもので
私は何のために生きているのかと
疑問に思っても当然のなりゆきだったはずです。

愛でさえ、家を捨て世を捨て、未来を捨てた
わけで、誠はもっと孤独だったのではと思います。
しかも、それまでいわれてなかった家を継いで
弁護士になれとの多恵子のきたいが愛がさりしあと
のしかってきて・・・・・。

いまでは、多恵子と一緒に暮らすこと
になったのに。誠が宮古にきたら・・・
多恵子はこれで独りぼっちになりましたね。

しかし。モズクのてんぷらって・・・

どんなものなのだろうか?

モズクって海草で、モワモワしたもので
あれをてんぷらにできるのかと
思ったし、それって・・・本当においしいのかと?