「話があるの。」
「僕もです。」
アパートの部屋に入った二人は
向かい合って座った。
「純さん、その顔どうしたのですか?」
「え?ああ、これ・・・えっと・・
あの、話がいっぱいあって
まとまらないけど。
わたしは、ホテルで働くことで人を
笑顔に出来るし、幸せにすることが
出来ると思っていた。」
「はい・・・。」
「・・・ていうのは建前。
本当は寂しいだけなの。
本当に自分に自信がなくて
だから、人のために何かをして
ありがとうと言われたいし
がんばってすごいねって言われたいの
周りの人が笑顔ではないと不安なの
考えてみたら小さい頃から不安だった。
もっともっとおとうちゃん、おかあちゃんに
見て欲しかったし、純が一番かわいいって
いわれたかったし
もっともっと愛されたかった。
だから
おじいにおまえはそのままでいいんだよって
言われたとき死ぬほどうれしかった。
だからおじいのことを好きになったし
おじいのような魔法の国を作りたいと思った。
人のためなんかじゃない。
全部自分のためなの。
愛君とあって好きになったのもそう。
私は、ひとりぼっちで、愛君は
あなたはそのままでいてくださいって
いったよね。それだけ。
もう一人ぼっちはいやなの。
愛君にはいつも味方でいて欲しいの。
応援して欲しいの。
所詮その程度の女なの。
もう二度と魔法の国を諦めるなんていわないから
これからも、私のことを支えてくれませんか?
お願いします。」
純はこころからそう思った。
「僕はどんな職業についても
あなたを支える覚悟でここにきました。
いまのあなたが、今の待田純が一番好きです。」
二人は泣きながら、笑顔で言った。
「ありがとう。」
そこへ、ドアの外から音がしたので、
出てみると秋代がたっていた。
「どうしたのですか?」
「渡したいものがあって。」
秋代は封筒から写真を出した。
「まだ例の男と一緒に仕事をしていた頃
都に旅行をしてすっかり気に入ったので
別荘を建てたの。
年取ったら二人で余生をのんびりと
送ろうと思って。
もうそれもできないし
あんたさ
ここでホテルをやってみない?
ここを魔法の国にしてくれないかな。」
純は驚いた。
「でも・・」
というと
愛が、純を押し出すようにして、純の背中越しに
「ありがとうございます。
頑張ります・・・。」
と言った。
純は驚いて愛を見て、それから秋代を見ると
秋代もうなずいていた。
純は、「ありがとうございます。」
と元気よくいった。
「がんばります。」
ふたりで深くおじきをした。
その二人を秋代は、微笑みながら見た。
「ね、気づいてない?
わたし、笑っているんだけど・・」
そしてまた笑顔になった。
純も笑った。
晴海が出てきた。
「どこへ行ってたの純。
さみしかったよ。ずっと
いなかったもの・・・。」
ーおとうちゃん、おかあちゃんが私のこと
わからなかったのは、私が本当の自分を
見失ったいたからなんだね。きっと。
その宮古のホテルの話を正にしにいくと
マリアは喜んでくれた。
「それで?」と正。
「え?
それでって?」
「俺たちも数に入っているんだろうな?」
正は、純の決定に従うといった。
純はいいの?と聞いた。
マリアも正も手伝うという。
純は里や前で、かつての従業員に
ホテルの話をした。
「開業のめどが立ったら皆さんにも
宮古で一緒に働いてもらいたいなと
思って。」
「いつでも連絡待っているから」とセクシーが言った。
「待ってるから」と士郎も言った。
「わたしも沖縄に帰るから
一緒に開業準備から手伝いたい」と羽純がいった。
「すみません・・・」とセニョールが言った。
「女将さんと離れたくないですか?」
「はい・・・。」
「社長、何話しをしているの?」
と里さんが来た。
師匠も来た。
「晴海から聞いたわよ
あんた宮古でホテルをやるのね。」
「はい、」
「良かったわね・・・。
見られないのは残念だけど。」
「そんなこと言わないで下さい、師匠。
ホテルが出来たら、いつでもかえってきてください。
我が家のように。」
師匠は、横を向いて涙ぐんだ。
そしてそこにいた愛とハグをした。
里さんはドラマチックだねといいながらも
「かならずあんたのホテルに泊まりに行くからね」
といった。
「なんだかやっと連ドラの主人公っぽい顔になったね。」
と里さん。
「え??そんなやめてくださいよ。」というので
みんな笑顔になった。
「女将さん、本当にありがとうございました。」
里さんも涙ぐんでいた。
「あ、もうそういうのなしなし、別れは明るくなくちゃ。
やるよ、ほら~」と三線をだして、歌って踊った。
ーお父ちゃん、改めて思う。素敵な人達と出会い
成長するのがどんなにすばらしいことか
純は師匠と別れをつげ、
セクシーとも
士郎とも、別れを告げた。
羽純と、一時の別れを告げ
里さんとも、お別れをした。
「アディオス~~」
と里さんが言った。
セニョールが里さんを追いかけた。
三人はセニョールを見た。
里さんは「しょうがないね。一緒に来る?」
というとセニョールは「はい」といって
涙ぐんで女将さんの三線をもってついて
いった。
純と愛はそんなふたりを大きく手を振って
見送った。
純と愛は里屋を見上げた。
「お世話に・・なりました。」
「さよなら・・・」
そして、純は愛と手を取りあって
そこから去って行きました。
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笑いましたね~~~秋代さん。
きれいな笑顔でしたね~~~~。
人は嘘偽りのない笑顔を
見ると笑顔になるのですね~~。
里さんの連どらの主人公ぽい顔になったという
せりふ・・・アドリブではないですよね。
脚本にあるのですよね。
週末、ほのぼのとした気持ちになったお話でした。
わたしもみんなの幸せそうな顔を見るが
好きです。
