ーおとうちゃん、やっと女将さん・・
じゃない、ボスが里やをつづけていく
決心をしてくれました。
「いってくるよ」、
里さんは金策に出て行った。
里やの玄関先には
「里や、リニューアルオープン
準備中」と貼紙をだした。
そして全員で会議をはじめた。
「里やの売りが三つできたけど、
それだけではなくてもっともっと
いろんなことを考えたほうがいいと
思うけど・・・」
純がそんな話をしていると
そこへマリアがやってきた。
「はぁ~い みんな頑張っている?
差し入れもって来たよぉ~~
どしたの純ちゃん難しい顔して」
「他に何か売りがあるかどうか
なやんでいるんだよ。」
と正。
「おねえちゃん、なにかないかな」
「う~~~ん。
全然わかんない・・」
純はガクッと来たが
「でもね、ここが全然だめ~~~」
とマリアは全員スタンダップといって
里やのロビーの雰囲気を変えようとした。
メニューが書かれた油がしみこんだ札も
とって、床にもあかるい花柄のジュータンをしいて
「一応、ロビーでありながらレストランでもあり、
マイホームのリビングのような落ち着ける場所
ってことで。」
「うまいうまい」、
「上手ね~~」
と、わいわい言っているところへ
階上から多恵子と誠が降りてきた。
「お母さん、まだいらして大丈夫ですか?」
と純が聞くと
「悪い?」と答える。
できたばかりの、スペースのソファに座ると
「なぁんか落ち着くわ~~~~今までと違って」
と満足そうだった。
「ホンマ、なにこのここちよさ」と誠。
「やっぱりそうですか」
「よかったぁ~」
とみんな喜んだ。
「ねぇ、お茶くれる?
アールグレイ。
おなかもすいたから
今日はビーフストロガノフがいいわ。
サイドメニューはリンツ風サラダ・・・」
愛とセニョールは、「よろこんで」といった。
「ねぇねぇ、じゃ、待っている間に
私の琉球舞踊なんかいかが?」
「結構です・・・」
といって多恵子はクッションを抱いて
横を向いた。
「ま、愛想もクソもない女ね」
正は師匠に「良かったらマッサージしましょうか?」
といった。
「あら、そう、うれしいわ」
(ホンマにこんなホテル、行きたいですね・・・。)
誠ちゃんはセクシーから髪の形やメークを見てもらって
いるし、多恵子ははくつろいでお茶を飲んでいるし
師匠はマッサージをしてもらっているし・・・
「そうだ、ここをホテルと思うからいけないんだ。
フラット遊びに来る感覚で来てもらうんだ。
食べたくなったら食事をして
ヘアメイクとかマッサージが必要な人は
してもらって、お客さんが、あれ?もうこんな
時間、泊まっちゃおうかな・・って気分になったら
二階に部屋ありますけど・・
キャッチフレーズは
ここにいる人はみんな家族だ。」と純が言った。
「いいね、」
「おれまたチラシを作るよ」と剛。
「純ちゃん、お香なんかたいてみたら?」とマリア。
「いいね~~」
「癒される~~」
と、わいわいが始まった。
そこに1人で羽純が出て行った。
純は気になって様子を見に行った。
ランドリーでジュースを飲んでいた。
寂しそうだったので声をかけた。
「私だけ出来ることがないなと思って。」
「そんなことないよ、私だって
すきでギャーギャー言ってるだけだし」
という。
羽純は、純はいろんなことを考えて
みんなをぐいぐい引っ張っていって
すごいというが。
「羽純ちゃんだって、きっと羽純ちゃんにしかできない
ことがあるよ」
そう、純は言った。
「そうだ、一緒に考えてよ
ずいぶん良くなったけどまだ何か足りないのよね。」
「なにが???」
「この辺なんだよな
何かが足りないんだよね。」
ソファーの奥のほうのスペースが
どうも純には納得いかないらしい。
一方では、師匠がおいしいと料理を食べているし
愛が正にマッサージをしてもらって
きもちいいと
言っているし・・
様々な雰囲気があったが
どうも、奥のスペースがいまいちのようだった。
羽純はじいっと様子を見ていて
考えた。
すると、
「聴覚」
という。
五感のうち聴覚がないという。
「音楽とか聴けないの?ここ」と多恵子が言った。
純は思いっきり立ち上がって
「あああああああああ
ジュークボックスだ・・・」
正は、「それっておじいのホテルにあったやつか?」
「あの音は、落ち着くよね」と剛
愛がいくらするのかネットで調べると
・・・
「40万円・・・・」
高い・・・・・。
「ああ・・・いいアイディアと思ったのにな~~。
さっきから頭のなかをひな祭りが流れているのよ・・・・
二番なんだけど・・・」
お内裏様とお雛様
二人並んですまし顔
「それから??
なんだっけ?」
お嫁にいらした姉さまに
よく似た官女の白い顔
と羽純が歌った。
「おおお~~~すごい~~」と絶賛。
師匠が「ねぇねぇ
ヘドバとダビデのなおみの夢って知っている?」
羽純が歌った。
一人見る夢はすばらしいキミの
踊るその姿
僕の胸になおみ
なおみ、カムバック、ツーミー。
「やだ~~~なつかしじゃない~~
何で歌えるの?」
「友達いなかったから、ひとりでカラオケに
いって、全部歌ってたの。
それで、覚えて・・。」
「じゃ、あんたさ」
と多恵子が言った。
「朧月夜って知ってる??」
「あ、はい。」
菜の花畑に、入日薄れ
見渡す山のは・・霞ふかし
はるかぜ、そよふくそらを見れば
夕日かかりてにおい淡し。
愛が、うつむいているので
「どうしたの?」と純が聞くと
弟の純が中学で合唱コンクールで
歌う歌だったとのこと。
「ママ、よろこばそうと思って
すごく練習したけど
結局具合が悪くなって
でられへんかったんや。純ちゃん」
と誠がいった。
羽純の歌は続いていた。
かわずの鳴くね~~も
鐘の音も~~~
さながらかすめる・・朧月夜
多恵子はじっと聞いてた。
涙がうるんでいた。
「ありがとう・・・」
拍手があがった。
羽純もうれしそうだった。
純は、「羽純ちゃん、にしかできないこと
あったよ。」という。
「え?」
「あなたの思い出の曲を歌います。
って宣伝したらきっと喜ばれるよ。
キャッチフレーズは人間ジュークボックス。」
「ああ~~」
みんな納得した。
羽純はよろこんだ。
「ねね、羽純ちゃん、
モームスの
ハッピーサマーウエディング
一緒に歌って」
と、マリアはいった。
ふたりでふりをつけて
歌った。
愛は純に言った。
「純さんよかったですね
五感が全部そろって」
「うん。
ね、こうなったら第六感も
みたしちゃう?」
と誠にいった。
「そうやね、愛ちゃんの本性占いってどう?」
「いいね~~」
「勘弁してくださいよ。
よほどのことがない限り
あまりみえないんです。」
多恵子は振り向いた。
「それは、幸せだから?」と純が聞いた。
たぶんと愛は答えた
誠は、「はいはい、ご馳走様」
といった。
多恵子は最近になく微笑んでいた。
ハッピーサマーウエディングが
盛り上がった。
拍手のとき
里さんが帰ってきた。
「女将さん、聞いてください~
一番の売りは羽純ちゃんの
人間ジュークボックス~~」
里さんの後ろから、いかつい男たちが
入ってきた。
「え?お客様ですか?」
「わたしにお金を貸してくれた人。」
「え??」
「ごめん
返済待ってくれってたのんだけど
だめだった。」
ーうそ・・・・
**********************
軌道に乗りかけていたのに・・・
金策がうまくいかない。
しかも、やくざのような町の金融業者に
お金を借りたのか、里さん。
それやったら、利息高くないかな?
でも、そこにいるのは敏腕弁護士多恵子。
何とかしてくれるのではないかなと思いますが??
