善行に「二度と現れないで、私たちの前に」
といった純だった。

そのことを考えると朝食も
すすまない。
「どうしたのですか?」
と愛が聞いた。

「はぁ~~~~~
離婚届渡さないほうが良かったかな~
私が怒ったから・・・」

「おはよう~」と晴海が出てきた。
「何の話をしているの?」

純はあわてて、「え?朝食おいしいなって
いってたの。」

「そう。」

「おかあさん、お茶いれますね。」

と、愛は言った。

「ねぇ純、お父さんから連絡あった?」

「うん?まだだけど。」

「思い出したことがあったの。
わたしなにか、お父さんにひどいことを
いったようなきがする・・・」

純はどきっとした。

「・・なにもいってないよ」

「ほんと?これから何があっても
隠し事をしないでよ。
私は大丈夫だから。」

「わかった・・・。」

「おかあさん、はい、どうぞ。」

愛は晴海にお茶を勧めた。

純は晴海に里やにくるように言った。
ずっとアパートにいるより良いだろうと
いう考えだった。

二人は出来かけた。

愛は見送ったが、善行がいることに気がついて
いて、「お父さん出てきてください」
といった。
善行はアパートの陰に隠れていた。

「どうして出てきてくれなかったのですか
お母さんと話があったのではないですか?」

「もうあいつと話すことなんかない
それよりな、これや・・・」

「はい?」

善行は離婚届を出した。
善行のサインがしてある。

「これをあいつに渡してくれ
そしてな、好きにせいと伝えてくれ。」

善行は愛に渡すと、「さらばじゃ」、といって
去っていこうとした。

愛は、離婚届を受け取って善行が背中を向けたとたん
びりびりと破り始めた。

「こら、こらぁ。なにをするんじゃ、お前は」

「あ、いや・・好きにしろとおっしゃったので」

「お前に好きにしろと言ったのはないぞ」

「でも、お父さんも本当はこんなもの
出したくないんじゃ?」

「そんなことあるかい」

「嘘つかないでください。」

「おい、なんでも上からものいうな。
おれかて、年の功や。人間の本性など
みぬけるわい。」

そこに山田さんが出てきた。
山田さんも認知症にいいという料理を
作ったと言う。晴海に食べてもらいたくて
もってきたらしい。

愛はありがとうございますと言って
山田さんの料理を受け取った。

じゃ、といって山田さんは部屋に帰ろうとしたら
愛は、待ってくださいと言った。

「お父さん、この人の本性が
わかりますか?」

と善行に聞くと、善行はにこやかに、
「このかたはみたままやがな。
清楚で清純なかたやがな・・」

と、いった。

愛は、「違います。
理由は分かりませんが
このひとは悲しい人です。
永遠の愛を信じられなくて
僕と純さんの間を壊そうとして
僕を誘惑しています。」といった。

山田さんは、驚いて部屋に駆け込んでしまった。

愛の部屋に入った善行は、純と愛の結婚式の写真を
みていた。

愛はお茶を出した。

「おまえ、何で女みたいな真似が出来るんや?」

「お父さん、生まれ変わるとしたら
女が良いですか?男が良いですか?」

「そりゃ~男や。当たり前や。」

「僕は、女です。」

愛は、「男はズボンしかはけないけど、女の人は
スカートもズボンもはけます。
すごくないですか」という。

善行は意味がわからないという。

「男ってつまらないプライドや見栄があるから
だめなんです。所詮女の人がいないと
なにもできないんです・・・・」

「おれはな・・・・」と善行は言った。

「もうお前みたいな考えかたはできひん」、という。

「このままで、何千キロも何万キロも歩いてきたから
もう引き返すことが出来ない・・・」というのだ。

帰ろうと立ち上がった善行に愛は言った。

「少し待ってください。
おかあさんが、昔お父さんにもらったのよって
うれしそうに何度も何度も僕に
よんでくれるのです。」

それは、古い手紙で、真栄田晴海様とあった。
差出人は狩野善行。

その手紙を読んで善行は泣いた。

ー晴海さんは美しい人です。
あなたが一緒にいてくれたら
僕はもう何も要りません。
晴海さんが今のまま、宮古の海のようなうつくしい
心で僕を愛してくれさえすれば。
晴海さん、僕を愛してくれませんか?ーー

そうあった手紙だった。
善行は決意した。

そして、謙次のもとにいって
土下座をして借金をした。

謙次は「何に使うんですか?」と聞いた。

善行は、「晴海と一緒に宮古に帰ります。
晴海の介護をします。」といった。
「そして、ずっと一緒にいます・・。」という。

「失礼ですがお仕事は?」

「宮古で探します。なんでもやります。
私の残りの人生、女房のためだけに使おうと
思います。」

「あなたは強いですね。
僕は諦めた、いや逃げ出した男だから・・・。」

善行は借りたお金を持って里やにいった。

ところが里やでは純があわてていた。

今日は師匠やみんなと宮古の踊りを踊って楽しんで
いたが。

「メロちゃんに会いに行きます」

との書置きを残して晴海は消えたと言う。

善行はびっくりした。

純は「メロちゃんて誰なの?」と聞いた。

「メロちゃんはおれや」と善行は言った。

純は驚いた。晴海は善行に会いたくて
たまらなかったのだ。

二人は探すことにした。

そのころ、愛は純から連絡をもらっていて
アパートを出るところだった。

そこに訪ねてきた山田さんと出くわした。

ドアを勢いよく開けたとたん、山田さんに
ぶつかって山田さんがこけた。

愛はあやまったが、晴海が行方不明になったこと
をつげると、山田さんも探すと言ってくれた。

愛は晴海が帰ってきたらいけないので、
アパートにいてくださいといって
鍵を渡した。

そのころ純と善行は海沿いを探していた。

こんなところに晴海がいるのかと
聞くと、この海を晴海は好きなんだと
純はいった。

ふたりで手分けをして探すことになった。

善行は、「おーい・・おーい・・」と呼びながら
探した。

晴海は岸壁の上に座っていた。
海に沈む夕日を見ていた。

「メロちゃん・・・メロちゃん。」

その声を聞いて善行は晴海を見つけた

「め・・・ろ・・ちゃーーーーんーーーー」

と海に向かってさけぶ晴海。

善行は、それを聞いて

「は・る・み・さぁーーーーーーーーん」

と、晴海の背中に向かって叫んだ。

振り向いた晴海は善行を見た

そして笑った。

善行には時間が止まったような瞬間
だった。

晴海が何かを言った。
善行も笑顔で返した。
あのときの恋人だった頃の
ふたりのように・・・微笑みあった。

ところが

晴海は岸壁から体のバランスを崩し

海に・・・おちて

しまった。

海に落ちる音がした。

その音は善行を現実に引き戻した。

善行は驚いて、駆けつけた。

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メロちゃんは善行のことだったのです。
晴海は会いたくて会いたくて

メロちゃんを探しにでたのでした。

一方善行は、昔の晴海宛の自分のラブレターを
読んで、あのころを思い出したのでしょうか。

もういちど、宮古にいって晴海と暮らそうと
決意したにもかかわらず・・・・何が起こったのか?

しかし、愛は山田さんの本性を見ていましたね。

すっきりしました。愛はやっぱり愛だったのです。うれしい
浮気父の息子は浮気者かなと思ったけど・・あははは

山田さんのなぜか傷ついた心が
いやされたらいいのですけどね。