晴海は朝になって
疲れたような顔をしていたが
正夫婦、剛と共に
里やを出ることになった。

正はマリアに晴海と外で待っておく
ようにいって純に話があると言う。

「おまえな、しばらくうちに来るな。」

という話だった。
「また、余計なことをされたら
いい迷惑だ、こっちは。」

「余計なことって私はおかあちゃんの
為を思って・・・」

「とかいって、お前がやっていることが
おかあさんを苦しめているのではないか?

これは長男としての命令だ。

おかあさんのことは俺たちが見るから。」

「・・本当に大丈夫なの?ふたりで。」

「また、そんな。自分だけ正しいみたいな
ことをいう。」

そういって二人は里やを出て帰っていった。

その日、純は元気が出なかった。
ぼーとしていた。

いつもの笑わないお客さんが、「どうなったの?」
と、「笑わせてくれないの?」と聞く。

「すみません・・・」
といって、女性の前にたって

「なんでだろう?なんでだろう~~~~」
と、どこかの芸人の真似事をする。

「わあ。誰だった?あれやってたの」

セニョールは「えっと?」

「でもでもでもでも、そんなの関係ない、
そんなの関係ない・・」

純はふと立ち止まった。

「どうしたの?」

「すみません。
やっぱり無理です。お客さんを笑わせるのは。。」

みんなシーーーんとした。

女性は、お酒を飲んで

「そんなこったろうと、思った・・・」
といって、部屋に帰っていった。

里さんは純に帰ってらどうだ?と聞くが
はっとわれに返って、
大丈夫です~~と元気よく、食器を提げる

しかし、セクシーは、「そうしたら?」という
「また何かトラブルを起こされたら迷惑だし」
「同感」とチュルチュル。
セニョールは、さっきのなんでだろう?が
テツアンドトモだってことをにきずいたが
言いかけてやめた。

士郎は、紙をだして「ひどい、かお」と書いて見せた。

家に帰った純はいった。
「もう、最悪」
「純さん落ち込まないで下さい
お兄さんたちもわかっています。
誰よりもお母さんのことを心配しているって」

何でこんなに成るのだろうと純は落ち込むが
愛は、今までのやり方ではだめなのではないかと
いう。
純は正しいことを言っても人を攻めているような
言い方になるからと。

確かに純は自分の意見を主張するときは
何もしないくせに、なによ、とか
わかっていないくせに、余計なこと言わないで
とか、
剛に対しては、はなっから、否定形だったし。

「あんたはなにもわかってないのね。」
「そんなことできるわけないでしょ。」

「いいアイディアはないの?」「なんで?」
「よく考えてよ」
「なんで出来ないの?」
とか、自分の考えは誰にも相談しないで決めるし。
「そうだ、おかあちゃん、里やにきたらどう?」

そのときは確かに一応、正にも了解取った形だった
けど、あの場は雰囲気が盛り上がっていたので
純の押し切りの形で晴海は里やにとまることになった
わけで・・・・。
最初から正たちに相談したわけではない。

「おじいだったらこういうのでは?
純、いまお前が苦しいのは今こそ変わる時だと。

純さん、いまこそ本当の意味で大人になるとき
なのではないでしょうか?僕も、純さんも」

そこに里やから電話があった。

里さんが言うには、善行がきたらしい。
ところが、晴海はマンションに帰ったというと
あわてて出て行ったという。

純はマンションに電話するとマリアが出た。
善行は来ていない。
晴海は台所で怪我をして、正にキッチンに立つなと
いわれて、今寝ていると言う。

純は正と剛はどうしたと聞くと二人とも仕事だと言う。

つまりマリアにまかせっきりなのである。
男だからそうなる。
仕事があるから介護などできないのである。
そして介護サービスを使おうと言う話になって
いる。
どうしてもそうなるのが現実である。
ところが剛は、善行を離婚して一緒に宮古に帰ろうと
言っているらしく、もらってきた離婚届に
晴海はサインをしたという。

驚く純だった。

このことは純には内緒にと言われていたが。

純は善行の携帯を鳴らしたがでない。
どこへ行ったのかと悩んでいると
愛が心当たりはありませんかと言う。
ないわよ、といいつつ、ふと晴海との
会話で、お父さんは純が動物園が好きなので
家族で動物園へよく行っていたという話を思い出した。

善行を探しに行こうとする純に愛は
手のひらに、「大」・「人」とそれぞれに
マジックで書いて、「今日は何を言われても大人になって
下さい」、といった。

純は動物園へ行った。

夕方の動物園は、最終の蛍の光が
流れていた。

そこに迷子の女の子が泣いていた。
純が気にしていると
善行がやってきて
どないしたんや?
迷子になったんか?
ないたらあかんで、探してあげるから。。

と、いって親御さんの名前を
呼んだ。

そこへお父さんらしき人がきて
お礼を言いながら帰っていった。

純は、善行にちかづき
手をとって歩き出した。

「なんでここにいてんのや?お前は。」

「ほら・・・」

「どこへいくねん」

「お母ちゃんのとこに決まっているでしょ。」

善行は手を振りほどいて
「おれにどうせい、いうねん」
と聞く

「これからずっと一緒にいて
ずっとそばにいて、ずっと支えるって
おかあちゃんにそういってよ。」

「おまえな、娘のくせにな
親に向かって上からものをいうなよ
それにな、おかあちゃんは俺を一緒に
ならへんほうが、幸せになれたんや」

「何いってんのよ、いまさら」

と怒鳴った純はふと、両手を見た。

「大人」

純は「おとうちゃん、お願いします
おかあちゃんとちゃんと向き合ってください
このままおかあちゃんを手放してもいいの
私はいやだよ

いつかまた家族で動物園だって行きたいし
それからみんなで私が作ったホテルに
来てほしい

今がどんなに辛くても明日は晴れるって
信じたい。
だめかな
だめかな
そうおもったらだめかな?」と言った。

「純・・・」

と善行は手を出した

「手をはなさんといてくれるか?」

純は善行の手をとった。

純は善行とマンションへ帰った。

マンションでは相変わらず晴海はずっと
寝ている様子だった。

話には聞きますが、昼間はこんこんと寝て
夜になったら元気はつらつでうろうろする
なんてこと、あるそうですね。
昼夜逆転になっているのでは?
そうなると家族は介護が出来なくなります。

とりあえず、話に戻りますが
善行は純のことばもあって、晴海と向き合うことに
しました。
その前に純は善行の手のひらに
「あ」・「い」

と書いて、「おとうちゃんの心の中にはこれがたくさん
詰まっているのだからね」、と言った。

「うん・・・」
善行は晴海の部屋に入って行った。

ーおじい、こんなことたのむの初めてだけど
今日だけはおとうちゃんを守って、お願い・・・。

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これが結果どうなるのか?

もし、正が純が勝手にやってきて善行を
つれてきたと知ったら怒るでしょうね。

基本的に純は自分が正しいと信じることを
行動で示しますので、誰にも相談などしません。

それが大人ではないと愛は思って
今回は大人になってくださいといったのです。

いままでの純の数々の暴言、暴挙?には
驚くばかりで、こんなホテルマンがいていいのかとか
家族で純ばかりが自分の主張をしていると
うっとうしくなったりとか、セクシーさんの件では
勝手にいっしょにビデオにうつろうとして
結果、DV夫に居所を知られたとか。
晴海のことを心配する剛を頭ごなしに

「あんたになにができるのよ」

と否定したこととか。

晴海の認知症になってからの言動は
ある意味、心のなかの真実を話している
ようであります。

あんたは昔から、私を攻めることばかり
言うことを聞かないし。。勝手なことをするし
と純にあたったこと。

正にあいたい、剛にあいたい・・

晴海にとってはどのこも同じくかわいい
けど、純はひとりどこか別のところにいる
娘でいいときは良いけど、悪いときは
悪いので、晴海も手放しで純に甘えられない
のではないのかと思います。

「えがおのゆくえ」のタイトルどおり
晴海の笑顔は戻るのでしょうか?

あのお客さんの笑顔は戻るのでしょうか?