善行が宮古に帰らないといって
でていって、晴海のきもちは
落ち込んでしまった。
ふさぎこむ晴海。
マリアも純も愛も
どうしようもない。
正が帰ってきて、こわばった表情の
晴海を見てなにがあったのかと聞く。
剛も同じように聞く。
しかも、部屋を宮古風に変えたことで
正はいつも純が勝手なことをするといって
純を非難した。
剛も純が何かしたと非難した。
マリアは純ちゃんが悪いのではないといった。
「純ちゃんはお母さんが喜ぶだろうと思って
宮古風にかえたけど、おとうさんが怒って
宮古には帰らないといったので・・・
それで・・・」
「それでどうしたんだよ」、と正は純に言った。
「もういいのよ。冷静に考えても
宮古にはもう、帰れないのよ・・・」
と、晴海はつぶやいた。
「全部、おねえのせいだぞ。
おねえが勝手に部屋を変えるから」と剛。
「だいたいな、何でもかんでもお前は自分が
正しいと思っていつも暴走しすぎなんだよ。」と正。
「こういうときは俺たち兄弟に相談して
もらわないとさ。」と剛。
ーかっちーーーーーん(純)
「なによ、ふたりしてさ、勝手なこと
いっちゃちゃってさ。」
「は?」と正。
「微妙にいえてないし・・」と剛。
「とにかく家このとは俺が長男として考えるから」
そういって二人は晴海をつれて別の部屋にいった。
ーおじい、何でいつの間にか私が悪者になっているわけ?
里やでは純は張り切っていたが
どこか、むかついていた。
あの笑わない女性客がおりてきて、
「お酒・・・」
といった。
純は、セニョールに、
「例のやつおねがいします」
といった。
「本当にやりますか?」
「やります。」
純は女性にドライヤーを渡して
「これをわたしのこのあたりに・・
(胸から顔にかけて指を刺した。)
このあたりに、ドライヤーを強で
当ててください。」
といった。
女性はスイッチを入れて純に風を
あてると
純は目をつむって両手を水平に
左右に伸ばして
セニョールは純のウエストあたりに手を
やって、「オープン ユア アイズ」
といった。
そして・・・
純は目を開けて
「タイタニック~~~~」というが。
「ばかだね・・・」
と里さんはいった。
そして、ドライヤーでヘン顔をしたが・・
うけない。
セニョールのヘン顔は、従業員には受けたが
女性には受けない。
「退場」
とチュルチュルが言った。
純とセニョールは礼をして下がった。
「社長・・無理しなくて良いよ。
なんだか、やけになってない?今日は」
「家族への怒りのエネルギーが
もう・・・・・満載で。
結局うちの男供はどいつもこいつも
名前負けしているんですよ
うちの兄は正っているんですけど
全然正しくないし
弟は剛だけどちっとも強くないし
父は善行っていうんですけど
悪いことばっかりするし
ああああ・・・・もう~~~
怒りのエネルギーが・・・・・・・」
と頭をかきむしって、いらいらした。
「はいはい、落ち着いて落ち着いて
どうどぉ どうどぉ・・・」
と里さんは純の顔を両手ではさみ、
両肩をとんとんした。
そこへマリアさんが来た。
なにかあったのかと驚いて
聞くと剛のことだった。
「ずっとおかあさんのそばにいると
張り切っているのはいいんだけど
アニマルセラピーといっておかあさんを
むりやり犬とあそばせたり、
音楽セラピーがいいといって
歌をずっとうたったり
おかあさんは、剛君が好きだから
我慢していると思うけど
やりすぎみたいよ。」
「デモ私は余計なことするなといわれたのよね」
「純ちゃんいなかったらだめになるよ、うちの
家族は。」
純はマリアさんに感謝してマンションへ言った。
そこには剛が床に寝転がって
絵を描いていた。
「何しているの?」
「絵を描くのも脳の活性化になるんだって
ほら・・」
といって絵を、差し出した。
そこには、恐ろしい顔をした
女の子が悪魔のような角と
牙を持っていた。
「これ、おねえをイメージしました。
似てるでしょ。」
「はあ?」
マリアさんは笑って「似てるかも・・・純ちゃん」
「やめてよ、似てないわ」
というが
晴海がいない。
剛は「ここにいたけど・・」
といったが・・相変わらず、ぼけである。
部屋のどこにもいない。
マリアさんは、晴海の靴がないのに
気がついた。
知らない間に外出したことに驚いた
三人は、手分けして探すことになった。
愛にも連絡が入った。
警察にもお願いした。
マンションに帰ってきた善行。
「やきいもを一緒に食べようと
買ってきた珍しいからな」というが
誰もいない。
おーいといって探したが、返事がない。
携帯に「お父ちゃんどこにいるの」とメールが
きた。
「おまえらこそどこにいるんや」と
善行はつぶやいた。
「おかあちゃんが行方不明になった」と
あった。
善行は驚いて探しに行く。
そのころ晴海はよたよたと
疲れたかっこうで買い物のレジ袋を
もって歩いていた。
あまりにも疲れたのか、ふらふらっと
車道に出てしまった。
そのとき、止まった車に多恵子が乗っていた。
純は心当たりを探して里やにたどりついた。
愛が里や前で純をみつけて、晴海が
なかにいることを告げた。
驚いた純は入ろうとすると、愛が
多恵子と一緒に楽しそうに話をしていると
いって純を止めた。
純はまたまた驚いて、そっと里やの
ドアを開けて中をのぞいていた。
たしかに、楽しそうに話をしている。
「純がご迷惑をおかけしているのではないでしょうか?」と
晴海が言うと、「もう、なれましたわ」
と多恵子が言った。
「そちらこそ愛に迷惑しているのではないですか?
本性がわかるなんていって。」
晴海は笑いながら「いいえ」、といって、「デモ昔から
変わっていたのですか?と」聞く。
「小さいときはニコニコしてやさしい子でした。
何で私みたいな女からあんないい子が生まれたのか
不思議でした。」
「私も同じです。」と晴海はいった。
「何で私みたいな女から純が生まれたんだろうって。
純がいて助かりました。
正と剛は優しいけど頼りないから。
純は私のかわりにおとうさんににいえないことを
いってくれて、助かるし。あの子がいつも
頑張っているところを見るとどんなに落ち込んでいても
たくさん元気をもらえます。
純が生まれてきて本当に良かった。」
純は里やのそとからそっとそれを聞いていた。
すると正と剛がやってきた。
晴海がいると言って入ろうとしたが
とめようとした純と、もめて
ドアが開いてなだれ込んだ。
晴海はびっくりして何しているのと聞く。
「お母ちゃんこそ何しているんだよ」
と剛が聞くと、
晴海は「え??」と言葉が詰まった。
多恵子はすかさず、「待ち合わせして二人で
あっていたのよ」
といった。
「え?何のためにですか?」と正が聞くと
「もちろん
あなたたちの悪口を言うためよ。
ね?」
と言って晴海を見た。
晴海はうれしそうに
「はい」と言った。
多恵子はそれじゃといって
帰ろうとした。
「あの、おかあさん、ありがとうございました」
純は頭を下げた。
「別に・・・
あなたにお礼を言ってもらえる
ようなことはしていませんから。
それより折角家族がそろったんだから
食事でもしたら
おかあさん、仲良くなってもらおうと思って
なべを作ろうとしたみたいだし。」
里やの外には善行がいた。
多恵子が出てくるので
こそこそと隠れた。
元気なく帰る多恵子を愛が追いかけた。
「おかあさん・・・
僕に出来ることがあれば
なんでも言ってください。」
「じゃ・・・
一緒にうちに帰って
なべでも食べる?」
と聞く。
「え?」
と、愛が返事に困っていると
「冗談よ
鍋がいやなことしってるでしょ」
そういって
颯爽と帰っていった。
愛は髪の毛が上がって顔が出ていましたよ。
その愛はなべ奉行をしていた。
わいわいと言いながら
なべをつつく。
外では善行が見ていた。
わずかにドアをあけたが
みんな気がつかない。
純は晴海に里やにこないかと言う。
「ここなら宮古の雰囲気もあるし
1人になることもないし」
という。
里さんは賛成してくれた。
「ちょうどいいからセニョールに
宮古の料理を教えてほしいのよ」と言う。
微妙に客が食べ残すことが気になるらしい。
純は正と剛にも了解を取った。
「じゃ、決まりだね、おかあちゃん。」
と、決まった。
善行は入ることが出来ず
ドアを閉めてひとりで
寂しく帰っていった。
***************
雨降って地固まるとか
いうが、けんかのあと家族はやはり
離れずにいた。お互いいやな思いをした
ぶん、やさしくなれる。
ところがその現地から逃げた善行は
そのなかに入れない。
けんかも出来ない、仲直りも出来ないとなると
家族でも、仲良くなれない。
家族って何でも許してもらえる理解してもらえる
と思ったら大きな間違いであることを学習
しなければならない。
特に、口がうまくない、頑固で思いを伝える話術
ももってない、また、女性や子供に
謝ることも知らない善行のような
中年男性は難しい。
「ちゃんと人の顔を見なさい!」
はじめて純が待田家にいったとき
多恵子は愛にそういった。
この日の愛は髪の毛をわけて
顔がスッキリと見えていた。
そしてまっすぐ、多恵子の目をみて
話をした。
多恵子は気がついたのだろうか。
気がついたはずである。
純と愛が幸せに暮らしていることも
認めざるを得ない様子でもある。
