「明日の朝まで時間をやるから
どっちにするか選べ。
俺と一緒に帰るか
このホテルと一緒に俺を焼き殺すか」
「明日の朝までに雨がやんだら
助けてあげるわよ。」
「わかりました。朝までにかならず
雨をやませて見せます。」
「楽しみにしているわ・・・。」
でどうするのか?
「私に辞書に無理と言う言葉はない」
「どうするの?」誠が聞いた
「とりあえず、・・・
照る照る坊主を作ろうか・・・」
おい・・
「そんなこと約束したのですか?」
照る照る坊主を作りながら愛と連絡を
取り合う純。
誠が外を見るとますます雨が激しくなって
いる。
「予報やと明日の夜まで雨やし」
「どうしよう?愛君」
「まさか、そんな約束をするとは思わないので
解決策が全然思い浮かびません」
「そっちは状況は変わってない?」
「あの人がいきなり火をつけたりしないように
男4人で見張ることにしました。」
ドアの外の廊下に
セニョール、謙次、師匠、愛が
毛布をかぶって待機している。
しかし
師匠が「わたし、男じゃないわよ」という。
「今それど頃じゃないですから」と小声で
愛は師匠に言った。
これという案が浮かばないのでとりあえず
電話を切った愛。
「明日の朝までに雨をやましたら
助けてやるとお母さんに言われたそうです。」
と愛は言った。
「そんなの無理よ。どうするのよ。」
と師匠。
「そうだ、北京オリンピックのときに
ロケットを打ち上げて。。。雨を降らせないように
ああああ・・・」と愛。
個人がそんなこと出来るわけがない。
そんな時セニョールが何か気がついたらしく
思いっきり息を吸った。
「どうしたんですか?」
「いや、なにも」
「セニョールさんは何か言うとき
おもいっきり息を吸いますよね。」
そうだ、そうだといわれて、セニョールは
なんでもないですというが。
「何でも良いから言ってください。」
と愛は懇願した。
実は、以前テレビで晴乞いを見たと言う。
しかも、それで番組中に
降っていた雨の中でやって
雨がやんだという。
「それ、教えて。」
と純が言うので、愛は晴乞いの仕方を
セニョールにしてもらって
動画ファイルを送った。
「えええ??」
純はそれをみて、驚いたが
やることにした。
「ほんまにやるん、こんなあほらしいこと」
「やらないよりましでしょ」
純は外に出て、一応雨合羽を着た。
そして
「なんとやら~~~~~~~~~~エイヤッ
ほにゃらららぁ~~~~~~コンチワッ」
(私が聞いたままの勝手な呪文です)
とか、言う儀式を始めた。
あああ、おじい、なにやってんだろ、私
その声は家の中にも届いていたが。
多恵子は薬を取りに下に降りてきたとき
愛からのメッセージが録音されているところ
だった。
”おかあさん、どうしても純さんはおかあさんに
助けてもらいたいそうです。
お願いですから純さんの気持ちわかって
もらえませんか?”
多恵子は平然と薬を飲んだ。
里やは、まんじりともしない夜だった。
セクシーは士郎のそばにいたが。
チュルチュルも階段で寝ていた。
相変わらず純は雨乞いをしていた
めっさいよぉ~~~~エイヤ
トロリ~~~よぉ~~~ドド
純は雨の中うたれながら、疲労感もあった。
誠は心配そうに見ていた。
愛は多恵子にメールを送った。
「助けてください、おかあさん」
というものだった。
雨はやまない。
多恵子は外を見た。そして窓を閉めた。
「もういいかげんやめたら、こんなばかばかしいこと。」と誠。
それでも純はやめない。
そして雨合羽を脱いで
また始めた。
多恵子のほうも携帯にびっしり愛からの
助けてメッセージがとどいている。
誠は「ママ、いい加減ゆるしてやったら?
あのひと確実に風邪ひくで。
もしかしたら、肺炎で死ぬかも。」という。
多恵子は携帯をしまった。
「だったら喜ばしいことじゃない」
といって部屋から去っていった。
「ちょっと、ママ・・・」
外はしらじらと明けてきた。
ーおじい、おねがい、奇跡を起こしてくれないかな。
純は座り込んでしまった。
すると雨がやんだようだった。
ふと見ると
愛が傘を差して立っていた。
「もう帰りましょう、
セクシーさんが、あのひとと一緒に行くと言ったのです。
これ以上迷惑をかけたくないからと」
里やに帰った純。
里さんは、「社長、愛君のお母さんは?」
と聞くと、「どうしても雨がやまなくて・・・」と
純は言った。
すると二階から、DV男とセクシーと
士郎が降りてきた。
「どいてくれ、あゆみ行くぞ。」
「セクシーさん、ごめんなさい
お母さんを呼んでこれなくて。
デモもう一度、考え直してください。
このまま、いったらきっと
いままでの繰り返しですよ。」
「いいかげんにしろ。なんなんだおまえは。」
そういって男はセクシーと士郎を
ひっぱって外に出た。
純はさっていく三人の姿を見ながら
雨が上がって明るくなっていくのをみた。
「あああああーーーーーっつつ」
と純は叫んだ。
「どうしたんだよ」
男はびっくりして振り返った。
「雨が・・・
雨がやんでる」
「それが何なんだよ」
そこへ多恵子が誠と一緒に現れた。
「おかあさん」、
「多恵子・・」
つかつかとこちらにやってきた多恵子は
じろっと男を見て
「これが例の男?」
と聞いた。
「なんなんですか、あんた。」
多恵子はもっていたかばんを
後ろに飛ばして、誠がキャッチした。
「悪いけどこっちは一晩寝てないから
機嫌が悪いのよ。
さっさとその汚い手を奥さんから離し
二度と現れないと誓ってこっから
出て行きなさい。」
「何言ってんだあんた」
「知ってる?この世の中には二種類の人間しか
いないの、人を傷つけても平気な人間と
そうじゃない人間。
私にはわかる、あんたは他人を傷つけても
へいきでなんとも思わないロクデモない男よ。」
「おれはあゆみを愛しているんだ」
「悪意には個性がないのよ。
私はあんたみたいな男が女を苦しめているのを
散々見てきた。
あんたのような人に危害を加えることしか出来ない
おとこは即刻死刑に出来る法律でもできないものかと
思っているのよ。
さっさとその汚い手を奥さんから離して、
二度と現れないと誓ってここから出て行って
1人で死になさい。」
「ふざけんな、このくそアマ」
その瞬間、多恵子は男にぶん殴られた。
多恵子は倒れた。
「おかあさん」
「多恵子、大丈夫か」
「何するんですか」と純は叫んだ。
「いいのよ、これで。
傷害罪で刑務所にぶち込めるから。
あんた、接近禁止令が六ヶ月で終わっても
奥さんにやった傷害罪はまだ残っているから
これで確実に実刑ね。
何年にしてあげようかしら。被害者は私だから
覚悟しておきなさい。」
そういって多恵子は携帯をかけた。
「大正警察?弁護士の待田だけど
署長お願いします。」
男はあせってちょっとちょっと待ってくれ。
といって携帯を取り上げようとした。
「おとなしく出て行くなら
許してあげても良いわよ。
でも、また戻っても無駄よ。
傷害罪の時候は10年だから
その間、こっちはいつでも
訴えることが出来るんだから。
わかったらとっとと出て行きなさい
この
くそ
おとこっ」
「俺は諦めない。
何年たとうがおれは会いにくる。」
「そのときは」、と里さんが言った。
「私が相手をするよ」
「なんだとこらぁ~」
里さんはセニョールを前にだして
「従業員とお客様を守るのが私の
仕事よ」
「あたしはこんな顔をしていますが」
とセニョールはいった。
「女将さんに何かあったら・・・」
すると、師匠が言った。
「わたしだって、大阪中の仲間を呼んで
あんたを襲うからね。」(それは怖い)
チュルチュルは
にらみながら言った。
「抹殺・・・」
すると士郎が紙をだした。
「ママは
ぼくが まもる」
「くそ・・・
くそ・・・・・
く、そーーーー!!」
といいながら男は走って去っていた。
士郎、士郎・・・とセクシーは士郎を
抱きしめた。
誠は
「ママもう帰るの?」
と聞くと
多恵子は
「忙しいのよ、こっちは」
といってかばんを持って
向こうを向いた。
「ちょっと待ってください、お母さん。」
と純が言った。
すると
多恵子はふらっとして、
倒れた。
「おかあさん」、
「多恵子・・・」
みんなの声が遠くに聞こえた。
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スカッとしました。
多恵子っていいひとじゃないですか。
いやいや・・まだそういいきれない。
待田家は神戸と言う設定ですが
その距離感を乗り越えるほどのテンポのいい
話の進め方でした・・・。
しかし、多恵子さんは大丈夫でしょうか。
セニョールさんは、里さんが好きなんかな?
多量の薬を常用していた多恵子。
大丈夫でしょうか。
