「話があるんだ
マリア・・さん」と正が言った。

「いままでのことは全部俺がわるかった
と思っている
だから・・・」

マリアはすっと正の横を通りぬけた。

唖然とする正。

「純ちゃん、そのひとにいっといって
あなたの顔も見たくないし
口も利きたくないし
においもかぎたくない
って」

そういって階段を上がって行った

「待ってよ、おねえちゃん」

部屋の前で(天野さんがいた部屋)マリアさんに
純は言った。

「話を聞いてよ。」

「時間の無駄です。」

「もう一度お姉ちゃんと結婚したいっていってるのよ
プロポーズをしようとしているの」

「私はもう信じられないのよ、正を。

裏切られるのが嫌なの

だから、帰れっていってくれる?」

と、振り向いていった。

「それまで出て行かないから。ここで」

そういって、扉を閉めた。

「ちょっと・・・」

再び開かずの間になった。

階下では愛と師匠や従業員たちが
だまって様子を見ていた。

純が降りてくると

愛が「どうでしたか?」

と聞くが純はまっすぐ正の元へいった。

「おねえちゃん、お兄ちゃんが帰るまで部屋から出ないって」

「おれ、飽きられめるよ、男らしく」

そういって帰ろうとしたら
師匠が「じゃ私と付き合わない?ね??
だいたいね、女じゃ男のことなどわからないものよ」

「師匠はだまってて。いま大事な話をしているんだから」

純は師匠を正から離した。

「お兄ちゃんこれくらいであきらめないでよ」

「じゃどうしろというんだよ」

「決まっているでしょ、二階へ上がってちゃんと
おねえちゃんにプロポーズするのよ」

「えええ??」

里さんは

「大丈夫よ、この間閉じこもったお客さんがいたけど
あんたの妹が説得したらちゃんとでてきたから」

「いや、僕の辞書には無理という言葉が・・」

「しのごのいわないで、はやく行くのよ」

ドアの前、
「マリアさん・・・あの聞いていますか?」

「帰れ!!」

「頼むから話だけでも聞いてくれるかな?」

「昨日純たちと自分のいいところ考えたんだけど
全然思い浮かばなくてさ
そしたら純がおにいちゃんは本当はやさしいんだって
いってくれたけど、自分では全然そう思わないし」

「だったらかえって」

「あ・・純と愛君はそれでもいいというんだよ
大事なのは心から愛することだって

この世には不完全な女と不完全な男しかいないから
正直ずっとこわかったんだ
自分に自信がないのを見抜かれるのがさ」

マリアは勇気を抱いて聞いていた。

「でも気づいたんだ
こんなダメな男を変えられるとすれば
世界中でマリアしかいないって
マリアは俺を一人前の男にしてくれるために
現れた天使なんだって
そういうの
私の愛があなたを作り
あなたの愛が私を作るって
純から聞いたけど
俺に今できるのは、マリアの曲がっているネックレスを
治すことぐらいかもしれないけど

おれがんばるからさ

世界中のほかの女のことなんかどうでもいい
この世におんなはお前一人しか存在しないんだよ
俺には・・」

純は愛にいった
「結構行けてんじゃない?おにいちゃんのプロポーズ大作戦。」
愛は
「おにいさん、かっこわるいけどかっこいいです。」

「なあ、マリアそこから出てきてくれないか?
頼む・・・

頼む・・・・・・・」

しばらく時間がたった。
正は、あきらめて帰ろうとした

そこへマリアが現れた

「ごめん、まだ信じられない
今の言葉が嘘じゃないって勇気に証明して。」

そういって、勇気を正にあずけた

「勇気が泣き止んだら、信じてあげる。」

勇気は俺だと泣き出すんだと正は困った。

「それは、勇気がわかっているからじゃないの
父親が本当は愛のない男だってこと」

里や全員・・あっけにとられた。

階下で正はいった
今度こそ絶対無理だと。

勇気は必ず正が抱くと泣くのだ

純はそんなことないからと
機嫌がいいからと勇気を正に渡した。

すると泣き出した。

「どうしてかしらね、私なんかあんたにかかると
大喜びしちゃうのにね」

と師匠がいうが、純が師匠をどかした。

「やっぱり勇気は俺のこと世界一嫌いなんだよ
おれが父親になりたくないと思っていたのをしって
いるんだ。」

「そんなことないから
他の人が抱いてもなくかもよ

おかみさんお願いします。」と純は
里さんに勇気を渡した。

里さんが抱くと泣き止んだ。

「おかみさんはだれからも愛されるキャラだから

セクシーさん」

泣かなかった。

「チュルチュルちゃん」

泣かなかった。

「勝利」

「勝利って・・勝ち負けじゃないのよ」

顔の怖いセニョール。

「子どもは苦手です」
しかし

泣かない

師匠にも

なかない

「純さんは?」

泣かない・・・・・。

「うれしいけど・・泣いてよ・・」

「今のうちにお兄さんに渡して」と愛。

すると火がついたように泣いた。

「お兄さん、勇気ちゃんが泣かない方法を
みんなで考えましょ」

で、レジ袋をもって
全員でかしゃかしゃした。

レジ袋の音はお母さんのおなかの中の
音に似ているらしい。

これで泣き止むだろうとの作戦である。

が・・・

正に抱っこされた勇気は泣き止まない。

つぎに、勇気はうさぎさんが好きだというので
正にうさぎの着ぐるみを着てもらって
勇気をだっこした。

しかし、泣き止まらない。

全員、顔に正の顔写真のおめんをかぶって
正の顔に慣れてもらうために端から
ならんでだっこして
最後に本物の正にたどりつく作戦。

しかし・・・・

機嫌がいい勇気は正にたどりついたとたん
泣き始めた。。。

作戦ことごとくだめだったので
全員がっかりした。

純は士郎君にきいた

「このおじちゃんのどこがいけないんだと思う?」

すると士郎は紙玉を正に投げた。

「うそっぽい」

とあった。

かもしれない。

「なぁ本当におれが悪いのか?

勇気が泣くのはきっと生まれてきたくなかったんだ
声からの未来は暗そうだし
地球温暖化や、格差はひろがるし
戦争や・・」

「なに、ひらきなおっているのよ」

その時、音がして
マリアが降りてきた。

「勇気おいで」

というので愛はマリアに勇気を
手渡した。

「ママの国に帰ろう。」

「どういう意味?おねえちゃん。」

「これ以上時間の無駄ね。

皆さんに迷惑をかけるわけにはいかないし」

「わたしたちはいいのよ、暇なんだし」

「お世話になりました。

純ちゃんいろいろありがとうね。」

「そんなこといわないでよ、おねえちゃん」

「さよなら」

マリアさんはそういって勇気をベビーカーに乗せた

おじい、本当にこれで終わりなの??

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今までまっすぐに現実を見てこなかった男の
なれの果て・・・。

こういうことになるんだよってことです。
父親になりたくなかったなんて、
原因を作ったのはあんた。

自分の都合よくなんでも行けると思ったら
大間違いであることを正は思い知るべしです。
純も簡単にマリアが許してくれないことを
覚悟するべきです。

なんでもハッピーエンドのわけがない。
勇気が一番よく知っています。

うそっぽいといった士郎も、人の心がわかる
のでしょう。人の心がわかるといえば
愛だってわかるはずです。

人の心がわかっても人の心を変えること
は別のことです。

里やのメンバーは本当にいい人ばかりという
ことが勇気によって証明されました。