「大変、マリアさんが!!」

と、晴海からの電話。

純は飛び出した。

行き先は両親のマンション。

実は、マリアさんがまさしく走るトラックの前に
、死のうとしたとき救ったのが善行だった。

そのとき善行はマリアを突き飛ばして
ころんだ。善行の出現にマリアは驚いた。

「あほなことをするな・・いたたた」

マンションでは晴海が勇気を抱いていた。
マリアさんは、鎮静剤でねむっていた。

善行は怪我をして、いたたた・・と自分で
薬を塗っていたので、純は手伝った。

「おとうちゃん、本当にありがとう。
助けてくれて、ありがとう。」
純は、言葉を詰まらせて感謝した。

「でもなぜ、あの時間あの場所におとうちゃんは
いたの?」

と聞くと
「あれや、あれ、得意先があのあたりにあるんや。
あ、トイレに行ってくるわ・・・」

夜になってマリアは目を覚ました。
純は、そばにいて、マリアに声をかけた。

「なぜ、こんな馬鹿なことをしようとしたの?
勇気も死ぬところだったんだよ。」

するとマリアは周囲を見て安心したらしく

「ほっといてよ。他人なんだから」
「怒るよ、そんなこといったら」

「もう離婚届出したの。わたしは」

両親はそれを聞いておきてしまった。

純は「それが何?
何があっても、勇気は私のかわいい姪だよ。
違う?
マリアさんのことたった一人の大事なおねえちゃん
だと思ってる。
あ、これからお姉ちゃんて呼ぶね、いやと言っても
呼ぶね。」

純はマリアが勇気を生んでくれたとき、家族がまた
集まって笑顔になったことを感謝しているといった。
そして、マリアは1人ではないと。

マリアは泣き始めた

そんなマリアをだきしめて
純は言った。

「女が諦めたら世界は終わりなんだよ・・・」

次の日、マリアは里やにいた。
しばらく、ここで暮らすそうだ。

里さんは「イケメン兄貴はどうしているの」と聞いた。
純は、「どうしているのか、ぜんぜん
携帯に出ないもので・・」

と、愚痴っているとマリアが里さんに言った。
ここで働かせてくださいと。

「いいわよぉ、そんなの」

と里さんは言うが、「お金ないし、なんにもしないの、
いけないね。」
といって、さっさと、かたずけをした。

汚れた食器をさげることや、厨房のセニョールの本、
チュルチュルのジュースのコップ。

ぱぱぱぱっとかたづけた。

「手際いいのね~~~」
と、里さんもみんなも感心した。

そこへ、正がやってきた。

「おにいちゃん、遅いよ」

と純が言う。

「マリア・・・・」

「あなたに呼び捨てにされる覚えはありません」

「あ、ごめん
マリア。。さん大丈夫?怪我とか」

「ご覧のとおりぴんぴんしているから
大丈夫です」

といって、階段を上ろうとして
マリアを正が追いかけた。

「マリア・・さん・・・」

マリアが振り返ると
正とマリアの間に里さんがいた・・・

「あ、またわたし、やっちゃった・・
邪魔だね」

「俺、向こうの人とは別れたから
本当だ、信じてくれ。もうなんとも
ないんだ・・」

「だから何?
私たち離婚したの。
あなたが誰と別れようが関係ない。」

そういってさっさと階段を上って
いった。

「おにいちゃん、本当に向こうの人と
別れてきたの?」

「そうじゃなくて」

「はあ?嘘ついたわけ??」

詳しくは里さんが解説しながら
説明が入るが
正が彼女に自分は離婚したというと、
わたしそんなつもりではなかった、
遊びだったといったらしい。
で、向こうから別れようと言ったと言う。
つまり、リベンジしただけだと里さんは言う。
結婚式で奪われた夫を取り返して
優越感をもっただけ。だからといって正のような
どうしようもない男と結婚するなんて
不幸になるだけだと気がついたのだった。

正は踏んだりけったりである。

その夜、純の家でどうしたらマリアさんが許して
くれるか、考えることにした。

しかし、いいアイディアはでない。
「俺はだめな男だ~~」とやけになる正。

「そんなことないですよ、おにいさん、背が高くて
かっこいいし・・・ね?」

「それから?」と正。

「え?」

「もっと良いところないの?」
と純は言う。

愛は考えてもわからないので、純さんのほうが
詳しいでしょというが、
純はどう考えてもマイナスな部分しか思いうかばない。

「いやなところはすぐ思いつくな
必要もないのに英語を使うとか、大事なときにはすぐに
逃げ出すとか、決断できないのに、すぐごまかすとか・・」

「はいはいはい、どうせ俺なんか何のとりえも
ありませんよ。純みたいにホテルの仕事に生きがいをみつけ
られないし・・・」

そのうえ、スポーツも出来ないらしい。
見掛け倒しである。

英語も、単語しかはなせない。

「いいところ、ないのかな?」
と純は言うが・・

・・・・・・・

「あ、そうだ、忘れていた。」

そういって、正は合掌をした。

何をしているのかと思ったら、今日は1月17日。
阪神淡路大震災の日であった。
正はそのことを覚えていて毎年この日は合掌をして
祈りをささげると言う。

純と愛も合掌をした。

「そういえば、おにいちゃん、あのとき、
地震がおさまるまで私と剛をまもってくれたよね。
うれしかったなぁ~~おにいちゃんだなって
思った。」

正は覚えていなかったが、親切にされた人は
覚えているものだと愛は、言った。

「そうだね、おにいちゃんはさ、自分が思って
いるよりやさしいんだよね。
愛情もいっぱいあるんだよね、だからおねえちゃん
もおにいちゃんを好きになったんだ。」

で、純と愛の二人で
もういちど、マリアさんにプロポーズをすることに
きめた。

「二度目は無理だ・・・」

「なぜ?」

「おれ、一度もプロポーズしたことないし
だから二度目はない。」

「あ・・・・・・そうか・・・・
あの時、マリアさんにひっぱられて
いったんだ・・・

ていうかさ、今までちゃんと愛を伝えて
いなかったのが問題なのでは??」

翌日里やのまえで
背広姿の正がバラの花束を持って
たっていた。

「だめだ、できない~~~」と正が言うが

がんばって、と純と愛に
いわれた。

「ごめんな純、おれ、あんなこと
言って・・・妹でもかわいいと思った
ことがないし、とかいったこと・・」

「あ、ああ、また後日話し合おうじゃないか
だから今日はがんばって。」

正はうなずいた

里やに入って

「話があるんだマリア・・・・さん・・・」

マリアに声をかけた。

里や、従業員の前であるが。

おじい、おにいちゃんを応援して・・・・・・

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本当に自殺したくなるほど、辛かったとはいえ
勇気まで殺したら殺人でしょ~~。マリアさん。

軌道修正というか、正の人生の軌道修正が
はじまったようでありまする。

言われてみれば、正はマリアにプロポーズをされて、
結婚したから、プロポーズしたことない・・

里やの従業員の前でどんなプロポーズをすること
やら・・。

楽しみです・・・・。