「明日朝までに生きる希望を
見つけられなかったら
電車に飛び込もうが
どこへいこうが、好きにしてください。」

と、天野巌と約束した純。

しかし・・・・

なんのアイディアもない。

どうしよう??

と悩んでいたとき

愛が宿の外からやってきた。

琉球舞踊の師匠金城志道、従業員、剛
が、そろっている中、愛はたくさんの絵本を
買って持ってきた。

「なにこれ?」

と純が聞くと

「天野さんの娘さんの目を見たときわかったんです。
お父さんにたくさん絵本を読んでもらったことだけが
思い出に残っているそうです。

天野さんにとってもいい思い出だと思うし
きっと
本を片っ端から読んでいったら
娘さんに会いたくなって出てきてくれると
思うんです。」

純はうなずいた。

純は本をかかえて天野の部屋の前に行き
「天野さん、私はもう何を言ったら
いいのかわからないので
代わりに、本を読みます。」
といい、部屋の前に座った。
「まずは北風と太陽です。」
ーある日、北風を太陽はどちらが強いかで
言い争っていました。
ふと下を見るとマントを来た旅人がいます。
どっちがあの旅人のマントを脱がせることが
できるか、競争しよう・・・

純の読み聞かせは続きます。

マッチ売りの少女、

フランダースの犬

一寸法師

花さか爺さん・・・・

冬の夜は寒くて、廊下に座って読んでいると
冷えてくる。

愛、里さん、剛
セニョール・・・チュルチュル
セクシー、士郎、金城

みんな階下の階段にすわって聞いていた。

里さんは

「なんだかアラビアンナイトみたいだね」

という。

「なんですか、それ?」

と剛が聞くと
「しらないの?馬鹿ね~~」

という。

純の読み聞かせは続いていた。

愛はそっと純に上着を着せて
応援した。

・・・フランダースの犬をよんでいて
純も眠くなってきた。
ーパトラッシュ・・僕もう・・・疲れたよ・・

純は本を落として寝てしまいそうになった。

すると、士郎が紙玉を純に投げた。

純はそれを広げると

「がんばれ、バカ」

とあった。

純はありがとう・・といって
また、気合を入れて
読み始めた。

もう、世はふけてしらじらと朝が
やってこようとしていた。

ーあくる朝になりました、けれども
少女の見た美しい夢を知っている人は
誰もいませんでした・・

「かわいそう・・・
あ、すみません、かわいそう過ぎて・・・つい」

階段にいたみんなは、転寝をしていた。

純は、もう本がないことに気がついた。
しかし反応はない

ーなくなっちゃった。おじい、どうしよう?

すると、愛が、ねむり姫を持ってきた。

ー昔々あるところに小さな国がありました・・

純はねむり姫を読み聞かせをした。

階段にいたみんなも目を覚ました。

純のねむり姫がおわった

「これで本当に

終わりです。

やっぱり無理です・・・」

そういって純はトイレに
「トイレ限界です~~」といって
走っていった。

そこから出てきて驚いた。

従業員たちがそこにいた。

里さんは「あまのいわと」の絵本
を順に渡した。

「あのみなさん、どうしたのですか?」

「あまのいわとだよ。あまのいわと!!」

と里さんは言った。

ースサノウノミコトが悪さをするので
怒った天照大御神はおこって天岩戸に
こもってしまいました。
すると世界は暗くなりました。

里さんは三線をならし、金城は
さあさ、さあさと
踊りだした。
みんなも一緒に踊りだした。

ー天照大神に天岩戸から出てきてもらうために
みんなで、歌ったり踊ったりしました・・

まさしく、廊下はその絵本のようになった。

ーそして、天照大神はその様子が気になって
中から出てきました。こうして世の中は
また明るくなりました・・・

金城は「沖縄の人はね何もかも失った人を
助けずには折れないのよ、あんたのためじゃない
のよ。
眠くても、膀胱が破裂しそうになってもあきらめない
バカなおねえちゃんのためなんだから

出てきなさいよ・・」といった。

純はうれしかった。

そしてついに
開かずの間、あまのいわとは開かれた。

「どかんかい」

「天野さん・・・どこへ?」

「風呂に入るんや」

「それって・・・まさか」

「娘に会いに行くのにこんなかっこうやったら
あいにいけれヘンやろ」

そう天野は言った。

「はいっ」

パリッとした背広に着替えた
天野は、旅館を後にした。

「すっかり見違えたね」と里さん

天野はまっすぐ娘の結婚式場へ
行った。
そして、そっと影で見守った。

ーおじい、あのひとがこれからどんな人生を
歩むかわらかないけど、太陽の光を浴びて
まっすぐに生きてほしい。大切な人を思えば
生きる希望は必ず見つかる
と、私は信じることに決めた。

里やでは純にセニョールがゴーやチャンプルの
定職を差し出した。

「こんなんでよかったら」

「ありがとうございます」

チュルチュルがジュースを差し出した。

「大儀・・・」

「今ほめてくれたの?

ふふふ・・」

食事をしながら純は思い出した。

「そうだ、天野さんの部屋を掃除しなくちゃ」

「もう終わった、ティッシュの山で大変だった
わよ・・。たぶん一番中泣いてたんじゃないの
あんたの話を聞いて・・」

とセクシーが言った。

里さんは
「やっぱりあんたがいると面白いね
ドラマチックで・・」

といった。

「あの皆さん・・・」

純はみんなの前で言った。

「わたし、これからはおせっかいとかやめて、
お客さんのリクエストや無理難題でも
答えられるような
24時間コンシェルジュになりたいと思います。」

「は???」

みんなの驚く顔が純にむいた

「キャッチフレーズは
待田純の辞書に無理はない
ということでひとつ

よろしくおねがいしまーーす。」

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いやぁ~~~~今日は泣いたぞ

いいね~~~

あまのいわとが開くって・・・

人の心が開くようで・・

いいなぁ~~いいなぁ~

天野さん・・絶対この旅館の
事忘れないと思う。

おせっかいな純のことも。

懐かしい思い出が、またあたらしい

人間関係の連鎖になるんだろうなぁ。

ドラマチックで、よかった。