愛は純を可哀そうだと思うあまりに
やさしくしていたが。
その朝、うなされている純を見て
また、かわいそうだと思う愛だった。

急に鳥のようなものになったらしく
寝ながら両手をばたばたさせたり

犬のように唸り始めたり

唸り声をあげながら
あばれたり

そしてまた、寝てしまう・・・。

愛は自分が就職をすると
宣言したので、面接に行こうと
着替えて鏡を見た。

愛が鏡を見るともうひとりの愛が
出てくる。

-純さんの心の声が聞こえなく
なりました。

-そうだ、僕が働こう、そうだ、そうだ・・

そういって就活になったことを
思っていた。

鏡の中の愛そっくりなやつは
結構辛口で嫌なことをいうやつだが。

やはり出てきた。

今日は派手な服を着て、ホストみたいな感じ。
赤い口紅を塗って

笑いながら、「やめたほうがいいのではないの?
外で働くのは、まだ無理だよ・・・」

そういって髪の毛をかき上げて
指をぱちんと鳴らして

「ユーには・・・」

といって愛を指差した。

しかし、鏡の中のやつは何者?

純がおきてきて
「どこへ行くの?」と聞いた

「就活です。」

そういった。

すると純は「朝ごはんを作らないと・・・」

といって出てきた。

「いいです。時間がないし。
それより純さん、8時までにごみを出して
下さい。それから、洗濯物を取り込んでください。
買い物はここにいってこれを買ってきてください。
たまねぎ、じがいも、にんじん、エリンギ、しめじ。
エリンギとシメジを間違えないで下さいね。」

というと

「わかっているわよ!!いちいち言わなくても」

と切れた。

そして横穴から隣の部屋に行った。

愛は、

うう~~~~ん
とうなりながら怒りを静めて

人がやさしく言っているのに・・・・・

そして自分の顔をたたいて

「行ってきます」と元気よく言った。

最初の面接は

エロ親父だった。

「愛と書いていとしと読むのですか
女性かと思ったよ」

ほかの人の本性はわかるんだ。
やはり、治っていなかった。

次はドけち・・・
「大学に行かなかった理由は?」

次は足フェチ・・
「就職経験がないのですか?」

マザコン・・
「待田というと一流弁護士ではないですか。」

のぞき魔
「君、顔色が悪いけど。」
「大丈夫です。」

様々な顔がみえる。
「やっぱり就職は無理かな。人に会いすぎて
頭ががんがんする・・・」
疲れた愛は、クリスマスでにぎわう町を歩いていた。

そこには、幸せそうなカップルがたくさんいるが・・
人の心が見えるので愛は驚くことばかり。
クリスマス限定カップルとか

一緒にいるのに、あれこの人の名前なんだっけ?
というふたまたカップル・・
崩壊寸前カップルが
楽しそうに、幸せそうに笑っていた。

愛は思わず、首を振った。

なんで純の心の声だけが聞こえないのでしょうかね。
不思議です。

ケーキを買って帰る愛。
家のドアの前で
一呼吸を置いて「純さんケーキ~~」
ドアを開けると・・・

純が包丁を持って倒れていた・・・・・
自殺をしたかと思った愛。そばにはりんごが。

思わず持っていたケーキの箱を落としてしまった。
しかし寝ているとわかってほっとした。
-寝るときは包丁を持たないで下さいね。

これは、ねむり姫か?それとも白雪姫?

ああ、わからないけど、とにかく、包丁をはずさないと。

なれないことをして疲れたんだろうな。

そういって、はずすと
純はきがついた。
そして、夕飯をつくるといって
台所へたった。

「純さん僕がします。」

というが、

純は、「いいからいいから」といって
作ろうとするがなにしろ、家事は苦手である。
手つきも悪い。

ああ・・・俺腹が減っているのに・・・

包丁で怪我もするし、大騒動。

「大丈夫。今一生懸命作っている
途中なんだから」といって
早く着替えてきてという。

隣の部屋に横穴を通っていくと
洗濯物が取り込んだままほったらかしだった。

「すぐにたたまないとしわになるんだな~~」

と愛がたたみはじめた。

純が来て
「後でするからほっといて」と、言う。

ーだめだ、腹が立つ・・・。

食事がやっと出来たら
真っ黒け・・・

「これはなんですか?」

「イカ墨パエリア。食べて。」

ーうそだろう
ある程度予想は出来たが。
愛はまずそう・・・と思う。

二人はメリークリスマスと言って
ビールで乾杯をした。

純が食べて、というので
無理して食べると、

どう?

と純が聞く。

「個性的な味ですね」

と、気を使って言う。

「まずかったらまずいって言って。
気を使わなくても良いのに・・・」と
愛の心を読むのである。

純はビールをごくごく飲む。

純さんは食べないのですか?と聞くと
「いらない。おなかすいてないし。
だってまずそうだもの。」

愛はびっくりした。
-自分は食べないのかよ・・・

「で、 就活はどうだった?」
「全部だめでした。」

「だよね~~そうだとおもった
ま、気にしなくて良いよ。」

愛はあきれた。

言っちゃうの・・・それ。
気まずくなって愛が真っ黒の
鶏肉の足を硬そうに食べていると
純は、隣の部屋の洗濯物を
見に行った。

「うっそぉ~~~」

その声に愛はびっくりした。

シャツが青くなっていた。

「色がうつっている。」

と言う純に、愛は、ジーパンはほかのものと
一緒に洗ったらだめなの、と教える。

純は、ふんといって、いいのよ、捨てるからと
いって庭先のごみ袋に入れた。

「ごみ・・・出すのを忘れたんですか?」

なんとも愛は大変なのだ。

「私が余計なことをするとこうなるのよね。

だってさっき、こおろぎがいてね
外に出したら、カラスに食べられたの

余計なことしなかったら、よかったのに~~~

何をしてもだめなの。キッチンだって
洗濯だって・・」
またわめきちらしはじめた。

そしてビールをぐびぐびと飲むので
愛はもう、飲むのをやめたほうが良いのでは
というと

「うるさいよ、いちいち・・・
今は愛君に優しくされたら、辛いの
はぁ~心の声が聞こえなくなったとたん
デリカシーがないんだから。」

そういってビールをまた飲む。

愛は
あきれて

「すみません・・」といって
台所へ戻ろうとした

純は、「はっきりいえばいいじゃん、」
という。「そっちだって本当は私の顔なんか見たく
ないんでしょ?何でこんな女と結婚したんだろうって
思っているんでしょ。」

愛は黙っていた。

「じゃさ、遠慮しないで浮気でも何でもしてきたら?
きっとそこらへんに私よりいいひといっぱいいるから。」

「それ本気で言ってるんですか?」

愛は純の顔をみていた。

見ているのに、それに気がつかないのが純。

愛は荷物を持って家を出た。

ーおじい、すみません、どうしても冷静に
なることができませんでした。

クリスマスでにぎわうカフェバーで
なきながらひとりで飲んでいた。

「所詮僕はこの程度の男です。」
やけになって飲んでいると

ふと1人で飲んでいる女性を見た。

その人の心の声が聞こえた。
誰でも良いから慰めて・・・

ひとりはさみしい・・・・

愛は、よからぬ思いになった。

一方純は、昔の家族の写真をじっとみていた。

家の中は荒れ果てて、そのままだった。

愛はその女性と一緒にホテルにいた。
女性は、「先にシャワーを使って良いですか?」
と聞く。
「もちろん・・」

純は洗濯物をかたづけていた。

ホテルでは愛と女性が一緒にベッドにすわっていた。

徐々に距離をつめて一気に女性をベッドに押したおした。

ーおじい、いいですよね、一度ぐらい。浮気は
男の何とかと言うし・・

そういって、愛はキスを・・・・・。

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この場合、ストーリーテラーが愛なので
純の心が現れない。

ただ、純は自分が何かをしたらみんなに
迷惑がかかると思っている。
だから何も出来ないでいる。

無気力になっているので何もする気が起きない。
でも、なんとか愛のために家事をしようとするが
もともと出来るタイプではないので
失敗ばかり。何を言われても、素直になれず、
失敗すると自分は余計なことをしたと
後悔する。

たしかに、今の純には愛の優しさが辛い。

なにかをしてもらっても、自分が何かをして
あげることが出来ない。
お荷物である。でも元気になれない。

だから、余計辛いのである。
それが愛には分からないので・・・・。

愛目線のドラマ展開ではあるが・・・
純の気持ちが視聴者に理解できにくい
週なんだなと思う。

しかしです・・・

愛君・・・

浮気はあかんと思います。
裏切りですから。

ばれなければいいというのは
どこか、後ろめたさをひきずることに
なって安心して一緒にいられなくなります。

じゃなんで純は浮気でもしてきたらというのか
ということですが。
捨ててほしいと思っているのよ。
そうすれば愛君が楽になるって
思っているのよ。

肝心なところで心の声が聞こえなくなる
んだから。やっかいな能力です。

昨日と同じトーンだったら
辛いな~~~と思っていたが
さすが、脚色が面白くできている。
今日は最悪の日のストーリーであるが
面白かった。

出て行くシーンもあまり修羅的ではなく
さらっとしてていい。

私には、多恵子や晴海の声が聞こえる。
私が言った通り
うまくいかないでしょ。
さっさと別れなさい・・・と。