家族でホテル経営をがんばって
借金を返せると思った純。

ところが、善行は簡単に諦めて
いなくて、ひそかに立てた計画は
お祝いをすると称して純と愛と誠を
家に呼ぶ。その間にリサイクル業者に
ホテルの備品を売る。

そしてホテルを閉めることだった。

がらんとしたホテルで善行は晴海にいった。
「ビーチを売って大阪へ行こう
それで借金は返せる」

晴海は「お父さんのいうとおりにします。」

純は驚いて「おじいにどういうの?」

というと晴海は「もうこれ以上苦しめないで」
といった。

善行は「そうか、じゃ始めるからな」といって
出て行った。

晴海は戦う気力はなくなってしまった。

「もう、いい加減にしろよ。純」と正がいった。

「そうだよ・・もう無理だって・・・」と剛が言った。

みんなもう戦う気力がない。

そこへトラックの大きな音が聞こえてきた。
まさか、始めるって?

純は走ってでていった。
愛が追いかけた。

「純さん待ってください
危ないですよ」

純はトラックの前に立ちふさがった。

天安門事件を思い出した。
あの時
権力に抗議する学生に対して攻撃しようとして
彼らに向かって進む軍隊の戦車の前に
両手を広げてとめようと一人の学生が立ちふさがった。
いつだって、一生懸命な人は
命がけである。

トラックはあぶないといってとまった。

善行は
「お前はいつだって俺に恥をかかせやがった
なにをするんや。どかんかい。」

「おじいのホテルを私が守ると言ったのだから。」

純はトラックにすがりつくようにして
叫んだ。

「お前がいくら邪魔しても実力で排除していいと
法律で認められているねん、」
そういって、愛に、「おまえのかあちゃんに聞いてみい」

といって頭をコツントたたいた。

「どけ
ほらどけどけ・・」

そういって善行はいやがる晴海
と純をどかせた。

解体業者はホテルを目指した。

「まってよお父さん

昨日もおとといも家族でうまくやっていたじゃない。

お客様だって昔に戻ったって喜んでいたじゃない
あのままみんなでがんばれば、借金なんて
全部返せたのに・・・」

善行は

「いつまで俺の邪魔をしたら気が済むんや
どあほ!」

といった

「なぜそんな考え方しか出来ないのよ
たった二日だったけど家族でホテルを
運営したとき夢がかなったってうれしかった
のに・・・・

うれしかったのに・・・・・・

おとうちゃん~~~」

善行はだまって大またでずんずんと歩いて
去っていった。

純の悲鳴のような叫びに背を向けた。

純の夢だったサザンアイランドは
無残にも解体業者によって
壊されてしまった。

おじい、この世に魔法の国なんかない。
悲しい人間の欲望と言う国しか・・・・

純は瓦礫の中からおじいのテープがはいった
カセットデコーダー。サザンアイランドの
プレート、オオサキの銘板を見つけて
取り出した。

呆然としている純に愛は寄り添ったけど
純の手からはそのプレートが落ちていった。

そこに愛の携帯がなった。

なんと

多恵子だった。

「あれから魔法の国はどうなったかと思って」

「・・・・それは・・」

「その声からするとなくなったみたいね」

「純さんのおとうさんにホテルの建物と土地を
売ればと言ったのは・・・」

「そういう既成事実をつくってしまえば
ビーチだって諦めて売るものよ。
そんな事例を何度も見たわ。
先生がおっしゃるならあんしんですって
梨田さんたちも信頼してくれたわよ。
あそこの顧問弁護士をやっているのよ、私は」

「じゃ、こうなることを見越して僕たちに
アドバイスをくれたんですか?」

「あなたがあの女と別れるためには何だってするわよ
これからも・・」

多恵子の電話は切れた。

愛は呆然とした。

家では善行がご機嫌で荷物を整理していた。

「大阪へ帰ったら一生懸命働くから
梨田さんが会社の近くにええマンションを
みつけてくれたんや」

善行は庭先に来た純と愛に声をかけた。

「おい、大阪へ一緒に行くか?
白旗上げて降参やな
へへへへへ・・・」

晴海がいった。

「ごめんね純、でもね

剛はまだ子供だし、正はこれから
赤ちゃんが生まれるし
親としたらこれ以上苦労をかけたく
ないの・・・」

晴海は祖父の写真を大事そうにしまった。

マリアは血相を変えて
やってきた。
「私はお父さんと口も利きたくないわ
一緒に住めない、グッバイです。
いくわよ、正」
「お、おいおい」と善行は言ったが
そういって正を連れて出て行ったのだった。
「たのむからさ、考えを変えてくれないか?」
と、いいながらマリアについていった。

剛は「お世話になりました」といった。

「剛、剛・・・」と善行が言う

「おれもまこっチャンみたいに
自分を見つめるたびに出るわ」

「なにいってるのあんたまで
ちょっと・・・・剛・・・」

「結局ばらばらじゃん・・・家族みんな・・・」

つぶやいた純は去っていった。

晴海は呆然とした。
誰も頼りに成らないのだ。
頼れるのは自分だけ。
子供たちのためと思って
大阪行きを決意しても誰もついて
こないのが現実だ。

愛は純を追った。

晴海は声を震わせて泣いた。

空港で純と愛と誠がいた。

誠は愛に聞いた

「これからどうするの?」

「とりあえず大阪に帰るよ
・・誠は?」

「もう少し宮古に残ろうと思って
ここの人はあまりにおわへんから。」

「うん、そうか。」

「ほな行くわ。
元気出してな、純さん・・」

「ありがとう」
・・純は搾り出すように笑顔をつくって
言った。

口数の少なくなった純のよこで愛は
カセットレコーダーのスイッチを入れた。

純の音痴なハッピーバースデーの歌
につづいて、おじいが聞く。
ー純は大きくなったらなんになりたいか?

ー私はおじいのホテルの女将になる
それでね、ここを魔法の国にするの
できるかな?

愛はこらえきれずに、スイッチを切ろうとした。
純はその手を押さえた。

ー純なら大丈夫さ
女将さんになった気持ちで練習してご覧?

ーうん・・・いらっしゃいませ
ホテルサザンアイランドへようこそ
女将の狩野純です。

ーああ上手上手、純は日本一の女将さあ

ーほんと?

ー純がいてくれたらこのホテルはずっと大丈夫さ

ーうふふふふ・・ありがとうおじい。

純は表情も変えずに聞いていたが

愛は思った

僕にはかける言葉がない

純はうつむいて目を伏せてしまった。

おじい、純さんの心の声が聞こえ
なくなりました。(愛)

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私も何もいえないです。

あの明るい純がこんなに暗くなって。
大阪に帰ってもなにも希望もないのに。

愛だけが頼りになりました。

しかし、多恵子の執念深さはすごいですね。

愛は自分の母親の本性をみて、立ち向かうことが
できないと思うほど絶望したのでしょう。

家族はばらばらになりました。
しかし、善行のこの犯罪のような行為。
この人の将来が明るいわけないですよね。

息子を頼りにしてもどうにもならないことを
晴海はわからないのでしょうか?

この師走・・・大阪で純と愛はどうなるのでしょうか。

気がついたけど、愛が純に契約を破棄する
書類だけでも見せてもらったら?と聞くと
純が信じたいと言ったとき、誠は
「愛ちゃん、パパとママを信じられる?」と聞きました。

愛はこたえていませんが、誠もまた家族を信じられない
悲しい状況なのです。

待田家は、もはや崩壊・・・・。

問題は多恵子です。