「みなさんこれからも当ホテルを
ごひいきに宜しくお願いします。」

そう、善行はお客様の前で挨拶を
した。

晴海は善行が自分の訴えを聞いてくれたと
思ってよろこんだ。

これで家族そろってサザンアイランドを
立て直すことが出来る・・・と。

しかし、愛は純にそっといった。

「まだ、お父さんは何か隠しています・・。」

純はそれが気になって、晴海にいった。

晴海は喜びでいっぱいのところだったが
純は善行が何か隠していることがあるらしいと
いうと晴海はいい加減にしてといった。

晴海は、愛が人の本性を見るというのは
信じていないと言う。

「気持ちはわかるけど・・・」と純はいった。

「あんたが娘ならどうしてお父さんのことを信じて
あげられないの?」
あなたもと愛に言った。

「なにもかもわかったような顔をしないでくださいね。」

そういって去っていった。

玄関先では善行がガラス窓をふいていた。

純が「おとうちゃん・・・」

というと善行は「どうですか?こんなもんで、社長。」

という。

「やめてよ、私はおとうちゃんが一緒に働いてくれるんだったら
社長にならなくてもいいんだからさ・・」

善行は背中を向けてガラスを磨く・・・なんだか怪しい。

「でもさ、何で急に気が変わったの?」

「おれはな、愛君にいわれてたんや、いつまでも意地はってんと
そろそろ男が女に従う時代と違いますかって。」

「じゃ、向こうの商社の人にもここを売らないと
いってくれたのね。」

「あたりまえや・・・お前の考えはきちんと
伝えました。」

そこへ梨田一行が帰り支度をしてやってくる。

「これはこれは・・・
梨田さん、すみませんでした。」

「私らはぼちぼち・・と。仕方ないですよ。
残念ですが、今回はあきらめます。」

純はそのやり取りを見て

梨田に、「本当に住みませんでした」と
頭を下げた。

梨田は頑張ってください

といって去っていった。

「お車のところまでお送りします」と善行。

すみませんでしたと純は何度も言った。

誠の部屋のメーキングをしている
純と愛。

「それで、商社の人たちはなっとくして
帰ったんですか?」

「うん・・今回だけはおとうちゃんのことを
信じてみようと思う。愛君に言われて反省した
っていうし・・おかあちゃんに離婚を切り出されて
目が覚めたんだよ、きっと。」

「書類だけでも見せてもらったほうが良いのでは
ないですか?」

「ごめん、もう疑うのはやめようと思う。
私の父親はあの人しかいないし・・」

「・・・すみません・・・・」

純は部屋を出て行った。

誠がドアのところで待っていて
純がでていってから
愛に言った・・・

「私はまだ臭いと思う・・・あの親父。」

「え?」

「さっきも裏のほうで誰かとこそこそと
電話していたし・・・
愛ちゃん、向こうのお母さんに携帯の履歴とか
調べてもらったら?」

愛は、逆効果だという。

晴海も純もお父さんを信じているといいながらも
信じたいと願っているという。

「愛ちゃんは信じてるん?パパとママのこと」

愛は答えられない。

純はおじいと家族の写った写真を見ていた。

愛が掃除を終えて降りてきたとき

善行もいた。

「お疲れ様でした。」と愛が言った。

善行と晴海がそろっているときに
善行は明日は予約がないから
お休みにしてお祝いしないかと言う。

「お祝いって?」

「うん、純の勘当も、とかんとな。
ああ、みんなで食事しよう」

「そうですね。よかったね、純」

「うん、そうね」

善行は「愛君・・・」と背中を向けたまま言った

「誠ちゃんも一緒にな?」

「ありがとうございます」

「ほんならな~~」

「うん、おやすみ~~~」と純。

善行と晴海は家に帰った。

翌日、純と愛と誠は実家に言った。

善行以外はみんなそろっていて
食事の用意がなされていた。

純は庭先から中を見た。

晴海も正も剛もマリアも入ってと言う。

純は思い切って
ただいま~~といって家にあがった。

おかえり~~とみんなは迎えた。

そして純は仏壇に手を合わせた。

食事の用意をする晴海を純は手伝って
いる間、正と剛と愛と誠が
話をしていた。

「人はなぜ結婚するのか?」と剛は
愛と誠に聞いた

誠は「私も手伝ってくる~」といって
逃げた。

「ちなみに、お兄さんはどう思いますか?」
と愛は正に聞いた。

「おれは結婚とはミッションと言うか
義務の遂行だな・・・・所詮」

「わァ~夢がないな~~」と剛。

「じゃ、剛君はどう思おう?」

「俺は好きな人とずっと一緒にいたいというか
俺が魚でキミが海・・みたいな。」

「お前は結婚してないからそんな甘いことを
いうんだよ」と正。

「じゃ、愛さんは?」と剛がきいた。

「僕は、純さんが呼吸をするところに
空気を送り込むみたいな存在になりたいです。
友人の言葉が好きなんですけど
私の愛があなたを作りあなたの愛が私を作る・・」

「ん~~~どっかで聞いたことがあるな~~」と剛。
水野君のトルストイさんです。

「はい、おまたせ~~」と純がご馳走を持ってくる。

「何、三人ではなしをしているの?」

と聞くと、剛がおねえの悪口・・と
いいながら、うまそう~~とご馳走に反応した。

「あれ?おとうちゃんは?」

善行は用事があるとかででかけたらしい。
それを聞いて愛は・・・・何かを見た。

そして急に立ち上がって、出て行った。

「愛君、どこへ行くの?ちょっと」

愛はものも言わずに走った。

まってよ~~と純は追いかけた。

もともと足が速いのでなかなか追いつかない。

愛はホテルへ向かった。

ホテルではリサイクル業者が備品を運び出していた。

二人は驚いた。

「おとうちゃん、何をしているの?」

「いらんようになったから、運び出してんねん。
今日でここを閉める」

「は?みんなでここをやり直すんじゃなかったの?」
「おれはやり直すとは一言も言ってへん」
「なにいってんの?」

そこへ晴海たちがやってきた。

「どういうことですか?お父さん」

「みんなを油断させて、だましたわけね」

「みんなお前が悪いんじゃ。お前がビーチのことなんか
入れ知恵をするか離婚なんかいいだしたんや
おかげで俺はむこうの会社の人間に
女房を説得できない男やと見下されて損害賠償を
吹っかけられて詐欺で訴えられそうになってんねん。
もう、自己破産だけではすまヘン。犯罪者になって
しまう。だから持っている家も土地も売ったんや
どこが悪いねん。」

「おとうちゃん、みんなで頑張って借金を返そうよ」

「そうですよ。お父さん」と晴海。

善行は狂ったようにわめきちらした。
「おれはこの島にいるのが耐えられない。
この島におったら死んでしまう。
お前らよってたかって俺を殺すきか」

「おれは全身全霊をかけて家族を守ったんや
これからは俺は俺のために生きるんや」

純は善行は狂っていると思った

業者はジュークボックスを持って出ようとした。

それはおじいのだからやめてと純は叫んだ。

善行はそれはおれのもんやともみ合いに成った。

結局、リサイクル業者は5万円を払って持っていった。

がらんとしたホテル。

晴海は「おとうさん、これからどうしたらいいのですか」
と呆然として聞く

「ビーチを売って大阪に行くしかない。
これで家族を路頭に迷わせないですむ」

純は、だまされないで。
ここでやりなおそうというが

晴海はどうやって?と聞く。
純は答えられない。

「正は?」と晴海が聞くと
大阪に行くのがベターだと言う

純は「なさけない。長男として責任を感じているの?」

というが、
正には長男という立場が重みでしかたがないという。

善行は晴海に「おまえはどうする」と聞く。
「家は抵当に入っているし
離婚すると収入がなくなるのでどうするんだ」という。

「わかりました・・・お父さんの言うとおりにします」

「おかあちゃん・・・おじいになんというの?」

「純、おねがい、これ以上苦しめないで」

晴海は力が尽きたようだった。

愛は様子をじっと見ていた。
何が見えたのか?

おじい、助けて・・どうしたらいいの?

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家族のしあわせな笑顔は一瞬にして消えた。

善行の謀略にかかってしまった。
愛が見ようとしていたことが現実になった。

純の言うことは無謀なことなのだろうか?
もう、やりなおすことすら思い描けない晴海。

やる気のない長男。

逃げることしかしない善行。

純は、今まで生きてきたなかで一番の危機に
あった。

純はどう生きていくのか?
自分自身への問いかけが始まった。

善行は常にサングラスを掛けたり
愛に背中しか見せなかったりと
なにか策略をしている風にみえていた。

愛と誠は善行の怪しさをしっていたが
家族である狩野家は善行を信じたいのであって
愛の忠告など受け付けられない。

これで狩野家の崩壊が決定的をなったわけで・・・

愛は純を心配しているのでしょうね。